馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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開……戦?

 坂本の「Aクラス打倒宣言」を受け、先ほどまでの罵声はどこへやら。何やら一気に落ちていた。

 

 この学校、点数によってクラス分けがされ、その点数によって強くなったり弱くなったりするシステム「試験召喚獣システム」、それらを用いて下剋上を行う「試召戦争」なんていうものが採用されている。というより、発明したのがこの学校の学園長なわけなんだが。

 

 で、そのシステムに関して言うなら、完全なブラックボックス。ある程度研究を進めているという話らしいが、全く分かっていないと思われる。

 

 で、なんだっけ? あ、試召戦争?

 

 あー、それね。簡単に説明するならクラス代表倒せば勝ちだよーっていう戦い。無論、試験召喚獣を用いて。

 まぁ戦争なんで何したっていいんじゃないかなぁと思えるんだが、思いのほか戦争を仕掛けようとするクラスがいないらしい。

 

 負けるリスク考えてるからだろうなぁと思うが、そこはどうでもよく。

 

 今の坂本の発言について誰か詳細な説明をくれ。

 

 ……などと都合よく心の声が分かってもらえるはずもなく。

 

「よし、お前らには今から勝算について教えてやろうと思う」

 

 坂本がそのまま進めてしまった。

 

 

 

 

「おい康太。姫路のスカートのぞいてないでこっち来い」

「(ブンブンブンブン)」

 

 おそらく最初の一人であろう勝算の根拠は、坂本の一言で畳から起き上がって必死に否定していた。

 その必死さに思わず「完全にばれてるって」て言おうと思ったが黙っておき、坂本がどんな紹介するのか耳を立てて聞いた。

 

「こいつがあのムッツリーニだ」

 

 あのってなんだぁぁぁ!! 根拠になんのかよぉぉ!!

 そういって荒れ狂いそうになったが他の奴ら(男子が)がうなずきながら何やら言っていたので、黙っていることに。

 

「それに姫路だっている」

 

 再びざわめくクラスメイト達。呼ばれた当人は驚いていたが、先ほどの質問の意味から察するに、学力は高い方なのだろう。

 

「木下秀吉だっている」

 

 さらに盛り上がるクラス。秀吉っていうのは、おそらく女みたいな男の奴を言うのだろう。言われた当人は気にしていないようだが。

 

「当然、俺も全力を尽くす」

 

 まぁ以前は神童と呼ばれていたからなぁ。そこでその宣言は当然だろうが……お前ら、こいつがこのクラスにいる意味わかってるのか?

 過去に何があったのか知らんが、今じゃお前らと学力が同等なわけだぞ? 根拠としては薄いだろ。

 

 一人でそんなことを思っていると、

 

「吉井明久や豊橋流だっている」

 

 俺と明久の名前が呼ばれ、一気に士気が落ちた。

 当然、俺と吉井は立ち上がって抗議する。

 

「ちょっと! どうして僕の名前を言うのさ! みんなのテンションダダ下がりじゃないか!!」

「そうだぞ坂本! 転校生でお調子者の俺を勝算の一つに入れるなんて、やっぱり頭の回転落ちたか!?」

「ちょっとまて豊橋。お前今なんて言った?」

「あん?」

 

 坂本に言われふと自分の言葉を反芻する。

 

 ………………。

 うん。下手したらばれたかもしれないな!

 やっちまった――――などと思いながら、咳払いをして訂正した。

 

「『やっぱりバカなんだな!』って言った」

「よし。目ェつむって歯を食いしばれ」

「わざわざ近づくかバカ!」

「安心しろ()。お前のことはあいつには言わないでおくから。だから一発殴らせろ…!」

「うおっ!」

 

 いきなり来たのは黒板消し。それを反射的に避けたら坂本が歩いてきて右手で殴り掛かってきたので、俺も反射的に顔面直前まで来た坂本の右手をつかんで窓の外へ投げ飛ばした。

 

「あ」

「おぉぉーーーー!?」

 

 やっちまった、と思ったがすでに遅く。

 坂本は窓から落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してくれやがるテメェ」

「悪かった悪かった。だからほら……な?」

 

 あれから。坂本が戻ってくるまで俺は周囲から『あの悪鬼羅刹を投げ飛ばしただと……どこかの不良か?』と噂されながら立ち尽くし、今は坂本がその強面な顔で俺のことを睨みながら怒っていた。

 

「な? じゃねぇよ! お前のせいで危うく死にかけたんだぞ」

「前より体が頑丈になったんだからそうでもないだろ?」

「……チッ」

 

 坂本は舌打ちすると、首をコキリと鳴らして教壇に戻り、再び説明に入った。

 

「さっきの続きだ。豊橋流は転校生だが、前に何度か会っているのでその実力は知っている。おそらく姫路より上だろう」

「「「なにぃぃぃぃ!!」」」

 

 ……やっぱり気づいていたのか、坂本。俺の事。

 だがなぁ。お前にも何かがあったように、俺にもあったんだよ(・・・・・・)

 だからお前も(・・・)、昔と同じだと思うなよ。

 

 そう言いたかったがざわめく教室では何を言っても無駄だろうから、そのまま黙って席に座った。

 

「そして明久だが、こいつは観察処分者だ」

 

 再びシンと静まる教室。

 俺はこの学校のパンフレットの内容の記憶と照らし合わせながら、坂本に聞いた。

 

「なぁ雄二(・・)。観察処分者って、バカだろ?」

「ああバカだ」

「そこはオブラートに言ってよ二人とも!!」

「だが「無視しないで!」バカはバカなりに使えるってか?」

「……まぁな」

 

 後ろの方で明久が泣いてる気がしたが俺は気にせず、また雄二がにやりと笑っているのはあえて無視し、俺は頭を働かせてみる。

 

 観察処分者。さまざまな面でバカと認められた人間がもらう超不名誉な称号。召喚獣にフィードバックがつき、なおかつ教師の雑用を手伝わされるという、かなり理不尽な称号。

 これではおいそれと試召戦争では使えないと思うが、あいつのことだ。観察処分者としての偶発的なメリットを考慮して名前を挙げたかもしれない。

 

 ……単に憂さ晴らしだというのも否めないが。

 

「よし! それじゃサクッとDクラス獲りに行くか!」

「「「「「「おぉーーーーーー!!」」」」」」

 

 そうこうしている内に雄二の口上が終わった。

 

 しかしDクラスか……まぁ、無難だろうな。

 そんなことを思いながら、Dクラスへ行くことが決定した哀れな生贄(明久)を視界の端へとらえつつ、俺は教壇の前にいる坂本の、その闘志に感心した。

 

 

 

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