馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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「姫路さんはあれですね、女性の敵ですね」

「はい……」

「そうね」

「ええ!? な、なんでですか!?」

 

 女性陣が何やらいざこざをやってる様だが俺には関係ないのでパーカーを脱いでさっさとプールに飛び込んでゆっくり背泳ぎをする。

 

「お前よく入れるな……まだ秀吉と薫が来てないだろ?」

「暇なんだからしょうがない。俺はお前達みたく一緒に居る異性がいないからな」

「……夫婦(ポッ)」

「俺の意志はないのか!?」

 

 とりあえず二十五メートル泳いだのでターンしてクロールで戻る。

 戻ってきた時プールサイドが一瞬にして静まったので、俺は上がって何事か見て見ると。

 

 女性用の水着を着てショックを受けている秀吉と、アニメキャラが入ったトランクスタイプの水着を着て誇らしげな薫が来ていた。

 

 俺は直球で訊いた。

 

「秀吉。お前店員さんに間違われたのか?」

「どうやらその様じゃ……」

「でも僕は間違われなかったよお兄ちゃん!」

「そりゃお前はそうだろうがよ……」

 

 どうせ行きつけの店行ったんだろうから間違われることないだろ。そう言いたかったが別にそこまで追求することでもない事象のため首を左右に曲げてから完全に見惚れていた明久に声をかける。

 

「あの二人は男だぞ」

「せレアkjkふぁsふぁえ!!」

「何言ってるか分かる人ー?」

 

 明久の言語が分からないので聞いてみたが誰も分からないらしい。

 とりあえずプールに落とせば元に戻るかなと(危険なのでやめましょう)考えていると、薫が「お兄ちゃん! 僕男っぽいかな?」とわざわざ近づいて訊いてきた。

 

「それを俺に聞くのか? まぁ小柄なのに体幹はしっかりしているみたいだし、か弱い女ではないな」

「本当!? それじゃぁ秀吉さんとどっちが男っぽい?」

「それは……」

 

 現状どう考えても秀吉の方が女に見えなくもない。それを言ってしまうと秀吉が完全にいじけてしまいそうなのでなんとも答えづらい。

 純粋無垢ってすごいな…いやこれも計算の内か? などと勘繰りながら急かす薫に言った。

 

「似たような境遇の人がいるからって比べるなよ薫。お前だって女っぽいと言われるのが嫌いなんだから、そう言われるのが秀吉も嫌だってわかるだろ?」

「……あ」

「なによりそうやって同類で差別しようとしてる時点で男らしくないぞ? どちらかというと女々しい奴らのすることだ。そうだな……お前達の家みたいに」

「え、それじゃ僕ひょっとして……」

 

 すぐさま気付いたらしく声のトーンを落とす薫。

 やっぱり聡いなと思った俺は、薫の目線に合わせて頭を撫でながら「分かったのなら秀吉に謝って来いよ」と笑顔で言っておく。

 

「うん分かったよお兄ちゃん」

 

 そう言って秀吉の基へ行く薫の後姿を見ながら何とか誤魔化せたという成功のため息を吐いた俺は、何故か視線を一身に帯びていることに気付いて首を傾げた。

 

「どうしたんだお前ら?」

「スゴイお兄ちゃんまるで本当のお兄ちゃんみたいです……」

「まぁ薫とはあいつが五歳の頃からよく一緒に居たし、あいつには上がいないからな。自然と俺の事を兄のように慕っているんだろ」

「そうなんですか…」

 

 更に静かになったプールサイド。何やら湿っぽい空気になってるのは決して俺のせいではないはずだが、とりあえず誰か何か言って……って。

 

「おい康太どこ行った? さっきまで血の海に沈んでいただろ」

「ああお兄様。そういえば先程クーラーボックスから輸血パックを取り出して黙々と輸血している殿方がいらっしゃいましたわ」

「どうりで静かなわけだね……」

 

 しかもまだやってるらしい。もうなんか、哀れとしか言いようがなかった。

 

 

 

 

 で、なんとか康太の輸血が終わったようなので。

 

「んじゃ、改めて……ヒャッホーー!」

 

 ザバァン!

 

「テンション高いわね豊橋」

「よっぽど忘れたい何かがあるのか、それとも全力で遊びたいからか分からんが……気持ちわぷっ」

「はっはっはっ! さっさと入ってこいや雄二!!」

「上等だ! テメェを沈めてやる!!」

 

 とりあえず俺はプールに入って全力で遊ぶことにした。

 んで、雄二を怒らせて追いかけっこを今やっていると、同じくプールに入っていた明久が姫路さんから相談を受けていた。おそらく泳ぎを教えてもらいたいのだろう。

 追いつかれて殴りかかられたので潜って雄二の足を引っ張って沈めてから逃げる時に浮きあがったところ、今度は島田さんと姫路さんのペアに。

 

 薫と秀吉は二人で水を掛け合い、康太はそんな二人の写真を連射していた。

 葉月ちゃんは明久に近寄っており、霧島は……あれ、どこ行った?

 

「よくも沈めやがったな!」

「すげぇな雄二」

 

 自力で浮かび上がって怒りの形相で俺の事を追いかけてきたので、素直に感心しながらも逃げる。

 逃げながら留美や由美は何してるのかなと見渡してみたら、どこから持ってきたのか知らないがパラソルとデッキチェアがあり、それに二人は座っていた。

 

「おぅら!」

 

 大振りを沈んで回避した俺は振り返る。

 そこにはそれを見越して沈んできた雄二と、その雄二の背後から音もなく忍び寄る霧島の姿が。

 突っ込んで来ようとする雄二はそれに気付かないまま来て――霧島に足をつかまれたらしい。

 動きを止められた雄二は何度も足をばたつかせるものの霧島には勝てないらしく、そのまま引っ張られる。

 引っ張られた反動で息を吐いてしまった雄二は思わず水上に顔を上げて酸素を確保するようだ。

 これは俺のせいじゃないんだがな…と顔を上げた俺に雄二が「テメェの、仕業か!?」と叫んできたのでおとなしく首を横に振る。

 それで次の候補を見つけたのか「テメェを沈めてやるぞ明久!!」とものすごい勢いで葉月ちゃんの近くにいる明久めがけて泳いで行った。

 

 三つ巴のバトルというか一方的な負の連鎖のような気がするんだがなと思った俺は、ゆっくりとプールサイドへ上がった。

 

 

 

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