馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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約一ヶ月ぶりの更新。さらっと流していきます。


証言(見てないけど)

 とりあえず何とか風呂に入る時間までに間に合った俺は、そのことを報告しに事前にもらったパンフレットに書かれていた西村先生の部屋へ向かう。

 荷物をそのまま持っての移動なので細心の注意を払いながら誰とも会わずにたどり着いた俺はノックする。

 

『誰だ?』

「西村先生。ただ今到着しました」

『豊橋か。丁度いい』

 

 そう言うと部屋側から扉が開いた。開けたのはなんと秀吉。

 

「なんでお前が?」

「うむ……今反省文を書くためにここに連行されたところなのじゃ」

「?」

「ともかく入れ豊橋」

「うぃーっす」

 

 何があったのか知らないが西村先生が急かすので俺は荷物を持って部屋に入る。

 そこにいたのは案の定、康太、明久、雄二の三人。しかもどこか安堵した様子。

 荷物を置いて近づいた俺は西村先生に聞いた。

 

「何があったんすか?」

「こいつらが女子風呂を覗こうとした」

「へぇ」

 

 嫌な予感ってのは当たるものだなと思いながら「その前に何か騒動ありました?」と質問すると、「女子更衣室にカメラが仕掛けられていたそうだ」と返ってきた。

 

 ……なるほど。

 

「確証はないですけど、少なくともこいつらができる可能性は低いと思いますよ?」

「なぜそう思う?」

 

 一通り頭の中でシュミレーションして一番可能性の高いことを口にしたら当然の様に食いついてきたので、俺は雄二に聞いた。

 

「なぁ。ここに来た時お前達どうしてた?」

「あ? ……ムッツリーニが乗り物酔いでグロッキーで明久は栄養失調気味でフラフラ、俺や秀吉はその二人の介抱で付きっきりだった」

「そうじゃの。電車から降りたらムッツリーニがいきなり吐いたから慌てたぞ」

「って、あれは僕の食事を雄二達が奪ったからじゃないか!!」

「……先程まで酷かった」

 

 移動中に色々あったのが容易に想像つく証言の数々。

 まぁそんなことはいいとして、俺は西村先生に言った。

 

「とまぁ、本人達はこう証言してますからね。それに、一緒に来た人たちならわかるはずでしょ?」

「……お前達と一緒に来たのは誰だ?」

「鉄人が僕達の話を真面目に聞こうとしてる!?」

「西村先生だ。吉井、お前は俺をなんだと思ってる」

「鬼教師」

「お前は英語の反省文だけじゃなく数学のプリントもやってもらうぞ」

「横暴だ!!」

 

 明久の罰が増えたのは自業自得なので無視していると、「一緒に来たのは島田に姫路、それにアミエ姉妹もいたの」と秀吉が代わりに答えた。

 それを聞いた西村先生は目を瞑って何かを考えだした様子。

 

 俺は正座している明久と雄二と康太に近づいて「初日から災難だな」と言うと、「ああまったくだ」と雄二が吐き捨てた。

 

「こっちはこっちで面倒なんだがな」

「何かあったのか?」

「脅しをねつ造された」

「……それまたなんで?」

「知らん。身に覚えのない言葉が録音されていたんだ。きっと今回のカメラ騒ぎの犯人にな」

「あ、同一人物だってわかったのね」

「ああ。だが肝心の奴だけは分からん」

「だから覗きを、ね」

「……その話詳しく聞かせてもらおうか坂本」

 

 長考の際にも話を聞いていたのか急に反応してきた西村先生。その態度を見た雄二が反射的にしまったという顔をしたので肩を叩いて「俺に任せろ」と耳打ちして西村先生の方を向いた。

 

「西村先生。雄二達は少々答えづらいそうなので俺が代わりに言ってもいいですか?」

「来たばかりのお前がなぜ説明でき……いや、分かった。話してもらおう」

「まぁ言われた通り来たばかりなので大部分が想像なんですけどね、簡単に言うと脅迫犯を探すためにのぞきをしようとしたそうです」

「脅迫だと?」

「ええ。雄二は身に覚えのない発言が彼女の元に「あいつは彼女じゃない!」あるそうで。康太と秀吉は手伝いで、明久も脅されたんじゃないですか?」

「そうなのか吉井?」

「は、はい……」

「まぁ合宿のパンフレットを渡された日に人目のつかない場所――つまり屋上へ行って確認してわかったんでしょう。外で叫び声が聞こえたのを覚えていますから」

「流って本当にすごいね。尚更Fクラスにいる理由が分からないや」

「まぁそこは置いといてくれ。……で、カメラが置かれていたという話で標的にされた時に気付いたんでしょう。自分達を脅した奴とカメラの騒動の人間は同じだって」

「なるほど……その話は本当か坂本?」

「あ、ああ。流の言うとおりだ」

「そうか……」

 

 そう言って再び考え込んでしまったので、どうしたものかと思いながら視線を彷徨わせていると、没収したと思われるカメラが普通に置かれていた。

 

「これ風呂場のですか?」

「ああ」

 

 考えているのか短く返事をする先生。

 その隙に俺はハンカチでそのカメラを持って様々な角度で会社名を探し、それを脳内で記憶している学園内の隠しカメラの会社名及び購入者のリストを照らし合わせる。

 とはいってもそれほど種類は少ないのですぐさま該当した。

 

 ……清水美春、か。

 

 理由も見当ついたしどうしたものかな……と頭を悩ましていると、西村先生が「明日お前達と一緒に来たやつらに話を聞くから犯人探しのための覗きはもうするなよ」と言ってくれた。

 

 が、雄二は眉をひそめた。

 

「どういう事だよ? 脅しに怯えてろって言いたいのか?」

「違う。お前達は真面目に勉強しろと言ってるだけだ。犯人探しは俺達の方でやっておく」

「鉄人が生徒思いな発言をしただって!? 僕は今夢を見てるのか!?」

「……生徒のトラブルを解決するのも教師の仕事の一つだ。お前達は学生の本分である勉強をしろ」

 

 おー西村先生が輝いて見える。

 と、俺だけ思っていたようで。

 

「鉄人の癖に話が分かる、だと……!」

「……しかも教師らしいことを言っている!!」

「何かの前触れだよきっと!」

「驚きが隠せぬのじゃ……」

 

 四者四様の驚きがあったようで、それだけで普段西村先生の事をどう思っていたのか分かった俺は苦笑いし、当の本人はため息をついておでこに手を当てていた。

 

「……お前らが俺の事をどう思っていたのかはこの際置いておこう。今はこれからの事だ」

 

 そう言うと西村先生はどこからか段ボール箱と筆記用具、原稿用紙を人数分取り出した。

 

「犯人探しは任せてもらうが、今日の覗き未遂に関しては反省文を書いてもらうぞ」

「「「「なっ!」」」」

「それと吉井、お前は数学のプリントをやってもらう。丁度一枚だけ余ってたからな」

「鬼教師!」

「ああ、豊橋。お前は風呂に入って部屋へ戻ってろ」

「了解っす」

「ああ待ってよ流!」

「お前達は廊下で書け!!」

「「「「いやだー!!」」」」

 

 こうして、強化合宿初日は終わった。

 

 ちなみに、部屋は雄二達と同じ部屋で、寝ようと思った時『カメラって絶対あれだけじゃないよな…』と思い浮かんだが、他人に言うことなくて寝ることにした。

 

 明日からどうしたものかね…。

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