馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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あっさりと行きます


開戦!

「じゃ、ミーティングしに屋上行くぞ。流もついてこい」

「へいへい」

 

 ボロボロになった明久の喚き声を一切無視した雄二は、俺を指名して手招きしてきたので生返事でついていくことにした。

 

 後ろで土屋が一所懸命首を振っていたが、あれは何かの宗教行動なのだろうか?

 少し気になったがそれ以上聞こうとせずに雄二の後ろを歩いていると、あっちから声をかけてきた。

 

「元気だったか?」

「生憎と。色々あって今じゃ勘当された……このことは秘密だからな」

「マジかよ……あんな優等生の塊だったお前が勘当とか、どんだけのことをやったんだ?」

「別に。単純に俺がお払い箱だっただけだよ」

 

 不貞腐れる様にそういうとそこら辺の事情を察したのか、雄二が急に「悪い」と謝ってきた。

 

「なんだよ気持ち悪い」

「うっせ。本当はあの時思いっきりばらそうかと思ったんだが……やらなくて正解だったか」

「性根腐ったなぁ、お前」

「うっせ!」

 

 そんな話をしながら階段を上り屋上へ着いた。

 遅れてきた土屋や木下、島田や姫路を待っている間、気になったことがあったので雄二に質問してみる。

 

「なぁなぁ。霧島はどうったの? まさかの別学校?」

「……いや。あいつはAクラスの代表だ」

 

 それを聞いた俺は納得しながら空を見上げていると、残りの奴らが来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてDクラスなの?」

 

 明久が待っていられないのか、そんな質問を開口一番してきた。

 

「その前にお前、ちゃんと、正確に、開始時刻を言ってきたんだろうな?」

「失礼な。そこまで僕はバカじゃないからね」

「ならいいんだが」

 

 そう言った雄二はどこか安心していた。ひょっとすると、あれだけのことを言うのにへまをやらかす可能性まで考慮していたのだろう。用意周到なのか単純に使者役が頼りないだけなのか、まるっきりわからんな。

 

「で? どういう意図があったの?」

「そうじゃ。なぜEクラスではないんじゃ?」

 

 明久と木下の言葉に頷く他三人。俺はというと、お昼どうすっかなぁと考えていたところだった。

 二人の質問に雄二は鷹揚に頷き、こういった。

 

「そこら辺のことは流に説明してもらう。こいつはもう、俺の意図に気付いてるみたいだからな」

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 その発言でこの場にいた雄二以外の視線がこちらを向いたので、仕方ないと思いながら説明した。

 

「雄二はEクラスに歯牙にもかけてねぇんだよ。こっちには姫路……さんっていう強力なクラスメイトがいるんだから。時間稼ぎ次第ですぐに勝負がついちまうからな。だがDクラス。これは成績自体の差があるから、いくら姫路さんがいても勝てるかどうかわからない」

「だったらどうしてDクラスなのよ?」

「いきなりAクラスなんてやってみろ。俺達瞬殺だぞ? そうさせないために、まずは腕慣らし感覚で勝てるかどうか怪しいクラスを倒すんだよ」

 

 それで姫路さんは何かに気付いたのか「あ、だからですか……」と呟いたので、俺はまとめることにした。

 

「つまりだ。召喚獣というやつに慣れる為にDクラスを踏み台にするってわけだ」

「「「「なるほど」」」」

 

 ようやく納得したのか頷きながらそういう明久ほか三人。は~疲れた。

 

「いまだ健在だな、天才」

「うっせぇ捻くれ神童」

 

 息を吐いた俺に向かって厭味ったらしく言ってきた雄二に対し、俺も皮肉を込めて返した。

 

 そんな会話は聞こえていなかったらしく、「じゃ、お昼食べよう? 作戦とかはそのあとで」と明久が提案してみんな頷いていたので、俺はそこに便乗した。

 

「なぁ、昼ってみんなどうするんだ?」

「私は……お弁当を作ってもらってますので」

「儂もじゃな」

「ウチは自分で作ってるわ」

「……学食」

「えっと、僕は……」

 

 何やら答えにくそうにしている明久。ただの昼食の話なのに、どうして躊躇いがあるんだろうか?

 そんなことを思っていると、雄二が答えてくれた。

 

「仕送りを全額使って水と塩と砂糖しかないんだろうが」

「うっ。仕送りの額が少ないんだよ!」

 

 ……つまり、水と塩と砂糖で生活してるってこと……か?

 いやいやいや。さすがにそんな風に生活してるわけないだろう。

 そう思い雄二に確認すると、首を横に振るだけだった。

 

 俺は明久の肩をポンと叩き、憐みの視線を送りながら言った。

 

「本当に馬鹿だな、お前……」

「ちょっと!? 僕そこまで落ちぶれてないからね!?」

「いや、大分落ちぶれてるだろ、お前」

「そうじゃな。飯抜きでは生きられぬぞ、普通」

「(コクン)」

「ひどいやみんなまで!」

 

 あわや泣く寸前まで行ってしまった明久だったが、そこで救いの手が差し伸べられた。

 

「あの……よろしければ明日お弁当を作ってあげましょうか?」

「ゑ?」

「日本語日本語」

「はっ。本当、姫路さん!?」

「は、はい!」

「やったぁー!!」

 

 よかったな明久。弁当を作ってもらえて。

 しかしそこに横槍を入れる人物が。

 

「へぇ~。姫路ってば、吉井にだけお弁当を作ってあげるんだ~」

 

 島田だ。どうにも姫路の行動が気に食わないらしい。

 

 う~む。ひょっとすると、この二人……なんて考えていたら姫路があわててこう言った。

 

「あ、いえ! 皆さんにも……」

「いいのか?」

「はい」

「ふむ。ならば相伴にあずかろうかの」

「(コクン)」

 

 ここにいる全員の弁当を作ろうってのか。すごい根性してるな、おい。

 そんなことを思っていると、「豊橋君はどうですか?」と聞いてきたので少し悩んでから、「お願いするわ」と言った。

 

「じゃ、作戦を説明するぞ」

 

 明日の昼食のめどが立ったのか気を取り直して、雄二は本戦争の作戦を説明しだした。

 

 ……まぁ、内容自体は単純明快だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さぁ始まった模様のDクラス戦。まぁ俺と姫路にそんなことなど関係なく。

 

「どのくらい獲ればいいんだ?」

「お前……ふつうは自分の限界までとるんじゃないのか?」

「なんか、面倒だ」

「とかいいつつスラスラと書いてるな、本当」

 

 たった二人で回復試験を受けております。

 

 一時間で問題無制限という試験方法故に四百を超える人間がいるとのこと。

 逆に言えば、この程度の問題で四百しかとれない人間しかいないと言い換えられる。

 このぐらいなら六百ぐらいはいくんじゃないか? なんて思いながら解いていると、雄二が呆れた声を出した。

 

「お前……なんでそんなに出来てこんなところにいるんだよ?」

「あ? そりゃお前、ここが試験校だからだろうが」

「……もういいから問題解いてろ」

 

 へいへい。なんてことは言わず、俺はただただ問題を解いてくことに集中していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、うちのクラスは姫路の活躍のもと、Dクラスに勝利した。

 途中、明久がどうしようもない作戦使って逃げたり、雄二がその報復だといわんばかりにえげつない放送を須川に流させて。

 

 俺? ずっと問題解いて……るわけないだろう。適当に切り上げて、適当に観戦してたわ。雄二たちには呆れられてたけど。

 

 で、現在俺は雄二と明久(なんか名前のままでいいらしい)と一緒に学園から帰っている。

 

「そういや、流。お前はクラス交換について意見あるか?」

「あ? ……いや別に」

「そうなんだ。流は頭がよくていいなぁ」

「そうだな。せめて流の二兆分の一ぐらい明久が賢ければなぁ……」

「貴様雄二! 僕は頭の悪いバカだといいたいのか!?」

「実際そうだろうが。明日のために勉強道具持ってきたのか?」

「……あ」

 

 雄二の言葉に思い出したらしい明久。おそらく、教室に勉強道具を置いてきたのだろう。

 

「取ってくるね!」

「俺たち先に帰ってるから」

「じゃぁな」

「ひどいや二人とも!」

 

 そう言いつつも学園へ戻る足を止めない明久。

 そんな後姿を見送ってから、俺と雄二は歩き始めた。

 

「次はBクラスだろ?」

「ああ。言ってないのによくわかったな」

「Dクラスを倒したってまだ怖気づくだろうからな。ならそれに近いクラスを次に狙う」

「それだけじゃないんだがな」

「そうなのか?」

「さすがに転校したばかりだから分からんか。Bクラスの代表、ムカつくからその報復」

「霧島でもとられたのか?」

「バッ! ち、ちげぇって!! ……根本ってやつでな、カンニングの常習犯なんだよ」

「ふ~ん」

 

 そんな風に会話しながら歩いていると坂を降り切ったので、俺は雄二と別れて一人帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 誰もいないアパートの玄関でそう言い、俺は自分の部屋へ戻った。

 

「激動の一日だったなぁ……」

 

 鞄をテーブルへ置き、山積みになっている書類を無視してソファに寝転がった俺は、天井を見つめながらそう呟いた。

 

 まったく。転校初日でまさかのFクラス行になったし、しかもそのクラスメイトの大体が頭のねじ数本外れてるし、とんでもないバカはいるし、昔馴染みのやつが見違えるほどおかしくなってたし、試召戦争起こしてDクラスに勝っちまうし……本当

 

「楽しかったなぁ、おい」

 

 思わず顔がほころんでしまう。

 色々なものを置いてきたうえに捨ててきたが、あの学校での生活は、この先とても楽しそうだ。

 

「これからも続けていくためには……」

 

 ソファから起き上がりながら、俺はテーブルの上を見る。

 そこには、山積みにされた書類。そして、放置した鞄。

 

「――――よし。先に飯食べるか!」

 

 こうして、学園生活初日が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 書類は全部片づけたので問題ない! ただ深夜までかかったがな!




読んでくださりありがとうございました。
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