西村先生の会議の始まりを受け、高橋女史は真っ先に発言した。
「西村先生。初日にカメラ騒動があり、Fクラスの男子が覗きを行おうとしたという話は聞きましたが、覗きがあったんですか?」
「高橋先生。それは今から説明します」
誰も俺がここにいることに関して言わない。その理由は多々考えられるがこの場で言ってもどうしようもないだろう。
「確かに吉井たちは覗きを行おうとしました。が、それは脅迫犯を自分達で捕まえようと考えたからだそうです」
「なぜですか?」
「秘密をばらされたくないからでしょう」
「…なるほど」
納得した様子だったので西村先生はこれ以上続けず、「それでこうして先生達に集まっていただいたのです」と言った。
「それは分かりましたが……現在も行われているとはどういう事ですか?」
「カメラがもう一台仕掛けられていたようです」
「え?」
「そうなんですか?」
「Aクラスのセリーヌ=アミエから報告があったので従業員の方に調べてもらったら奥の方にありました。私が持っている最初に見つかったカメラと同じものなので、犯人は同一人物でしょう」
「なるほど……わざと見つかりやすい場所に隠してもう一台あることを気付かせないようにしたと……随分用意周到ですね」
「ちなみにこれらはFクラスの男子には不可能だということは判明しています。ここに来てから対象となる男子は部屋で休んでいたので」
「となると我々はどう行動するべきですかね?」
福原先生の質問に対し西村先生はこう答えた。
「風呂場近くで監視が一番でしょう。それ以外にやる事があるとすれば、豊橋に提案してもらいます」
面倒だなと思いながら、俺は言った。
「証拠は押収してるので犯人が分かるのは時間の問題でしょうが、それを回収しようとして探す生徒がいるでしょう。挙動不審の生徒がいたら別室で話を聞いてください」
「ということです。あと二日ありますのでよろしくお願いします」
そんな感じですぐさま解散となり、俺は自室に戻って布団に入って寝た。
霧島がいたが、無視した。
朝。
綺麗に目が覚めたので起き上がって時間を確認したところ、午前五時。
随分早いな…と思いながら背伸びをした俺は、せっかくだからと言うことで旅館の外に出て散歩することにした。
「しっかし霧が出てるなー」
散歩しようと出てみたら霧が立ち込めて視界が悪かった。
こりゃ最悪道に迷うんじゃねぇかな…と思いつつ適当に歩いていると、人影が映った。
背が低い感じなのである程度の予想はできるなと思いつつ近寄ると、案の定セリーヌだった。
俺は普通に「おはよう」とあいさつした。
「…おはよう」
「早起きとはどうしたんだ?」
「……目が冴えた」
目が冴えた、ね……。まぁどうでもいいけど。
霧が段々晴れていく。見えたところは山とかそう言う自然。
綺麗だねぇなんて思いながら立っていると、セリーヌがピタリと体を寄せてきた。
「どった?」
「…少し肌寒い」
「そんなの知らんよ」
どうでもよかったので少し距離を置く。が、セリーヌもついてくる。
そういやこいつなんでこんな学校に来たんだろうと考えていると、「…ようやく二人きりになれた」と言われた。
「どういうこっちゃ?」
そう訊ねると、俺の身体が急に横に動いた。
視線に映ったのはセリーヌの顔。ただし見下ろす形。
表情はうかがえない。まったく表情が変わっていない。
俺は一体何を言われるんだろうかと待っていると、その表情のまま彼女は言った。
「――あなたが好きです、豊橋流」
表情変わってない告白ってのは意外と新鮮だなと思った俺は、それでも特に揺れ動かなかったので「いや、俺は特に好きじゃないから」と言って断った。
「そう……どうして?」
「どうしても何も情報はあるけど特に知ってる訳じゃないし。お前が俺を追っかけてきたというのはすごい事だけど別にそこまで嬉しいわけじゃないし。あとは……正直言うと好みじゃない」
「……そう」
心なしか気落ちしてるような気がするが、そこで優しい言葉を掛ける事自体間違っている。それじゃ好かれてくださいと言ってるようなものだ。断っているのだからな。
と言うかこんな理由でここまで来たのなら本当にすごいなこいつ。一応そこを感心しながら向きを変えて自然を眺めようとすると、「……あの女達が気がかり?」とどこか怒った口調で言ってきた。
何する気だろうと思いながら「言っとくけど、あいつらに何かしようとしたら家ごと破滅させるぞ」と脅しておく。
「……しない。というより、出来ない」
「まぁそうだろうな」
「…だから」
そう言うと俺の耳を引っ張ってこう耳打ちした。
「あなたに好きになってもらう女になる」
体勢を戻した俺は、鼻で笑って「ああそうかい」と突き放した。
そんな、朝の出来事。
で、恒例の自習中なんだが……。
俺はババアの元に来ていた。
「自習したらどうだい?」
「え? 帰っていいなら帰るけど?」
「誰が帰宅の許可を出したんだい?」
「ま、俺には帰省する実家もないけど」
「……で? 一体どうして来たんだい?」
これ以上埒が明かないからか話を戻しに来た学園長。
俺は読んでいた漫画を閉じて言った。
「合宿最終日にイベントやろうぜ。召喚獣使って」
「……それまたなんでだい?」
「折角合宿したんだから最後ぐらい遊ばせようぜと思ったり、勉強の成果確かめたいなと思ったり」
「だが景品とかルールはどうするんだい? こんな急じゃ準備できないさね」
「ん? そこはほら、俺の持ってる券類使えば。それに、ルールはある程度決めてるし」
そう言うと食いついたらしいババアは「参考までに聞かせてもらおうじゃないか」と挑発するようなことを言ってきたので、俺は敢えて乗る形で説明した。
「形式的にはバトルロワイヤル。教師陣も混ざってくるというおまけつき。制限時間内で取ったポイントが高い人が優勝。当然、クラスが上の方がポイントは高いし、先生も高い。で、負けたらその時点でのポイントが結果になる。そんなところかな?」
「そのポイント集計ってのはどうするんだい?」
「今朝早く起きたからアメリカの知り合いに頼んでカードをこの人数分発送してもらった。そろそろ空軍ヘリ辺りが落としてくるんじゃないか?」
「……一年の間にどれだけの人脈を築いたんだい」
「ま、それにポイントのデータと人物の名前入力すれば入れ替えの防止になるから、一応大まかな部分はカバーできてる」
「だけどあんたはどうするんだい? 裏方じゃ納得する奴いないんじゃないか?」
「ん? 参加するけど俺から勝負を仕掛ける気はないよ。それに、勝った奴にはボーナスとして副賞も用意してやろうと考えてるし」
「ふーん。そこまで考えてるなら文句はないよ。ただ、教師がランクインした場合どうするさね?」
「どうもしないさ。バトルロワイヤルなんだから集団で教師潰すのもアリだし」
「フィールドは?」
「そうだな……総合科目でいいんじゃね? 合宿の中での集大成ってことで」
そう言うとババアはため息をついて「そこまで言うならもう文句は言わないさね。さくっと張り紙したりしな」と折れた。
「ま、それは夜にやるさ」
「ったく。性質の悪さは血のつながってない義理の親そっくりさね」
「あの人は俺ほど捻くれてないって。ただ純粋に相手の首を絞めるのがうまい人間だっただけ」
「ほらさっさと作業に戻りな。どうせ自習しないんだったら、さっさとやりな」
しっしと追い払うようなしぐさをしてきたので、俺はマンガを持って「はいはい」と言いながら立ち上がって部屋を出た。
「あ、流。君宛てに空から落ちてきたんだけど」
「あざーっす。そんじゃ、部屋使わせてもらいますね」
「え?」
こうして最終日、バトルロワイヤルが開催されることになった。いやー誰が勝つんだろうな。
こっから先かなりオリジナルになります。
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