「そういやよ」
寝る前となって思い出したように――実際にはただ言わなかっただけなんだが――みんなに話を振る。
布団に入った雄二達はそれぞれ反応をしながら「どうした?」と質問してきた。
「大富豪で負けた罰ゲーム。あれ言ってなかったわ」
「そういやそうじゃったの」
「……撮影会に熱中していた」
「うげっ」
「え、僕まだあるの?」
聞いてなかったという声を上げる明久。それに対し俺は言った。
「しりとりでぼろ負けしたから罰ゲームだって話になっただろ、プール掃除で」
「……あ」
「そういやそうだったな」
「姫路たちの試合で忘れておったわい」
「……死に掛けた」
康太の言葉は無視しておいて、俺は布団をかぶってから言った。
「霧島と島田さんに犯人は別だってことを信じているなら、謝りに夜一人で来てというメール送っといたから。今から返事したところでこの時間帯に来てないんだったら謝る気ないんじゃね? お休み」
「……って、ちょっと待て! お前今さらっと罰ゲームの内容言ったが、明らかに最悪じゃねぇか!!」
「そうだよ! 雄二なんて別に関係が変わらないからいいけどさ、僕が美波に送ったら変な意味にとらえられちゃうでしょ!?」
「……グー」
「嘘だろ!? この状況で堂々と寝やがった!!」
「って、それどころじゃないよ雄二! 下手したら寝てる間に……」
『お前ら何時まで騒いでいるんださっさと寝ろ!!』
「「ゲッ! 鉄人!!」」
もう知らん。
合宿中俺は入り口側の隅の方で寝ている。一度寝たら鈍器で殴るぐらいの衝撃を与えない限りどんなことをされても起きないと周囲に言われているが、寝返りうたれて被害が少ない場所のほうがいいに決まっている。
ま、そんな訳で昨日一昨日と割とぐっすり眠れているのだが(押し入れの中でも寝れるが、それをやったら点呼の時に怪しまれるのでやめた)、体感的に一時間位後に誰かが俺の近くに来ていた。
自然と意識が覚醒していく。眠っていた思考が通常通りになっていく。
なんでだよ畜生と思いながら欠伸をしつつ体を起こすと、明久を起こしている島田さんと雄二のマウントポジションを取った霧島、そして隣に留美がいた。秀吉は寝ており、康太はカメラを構えている。おそらく島田と霧島の写真を撮るのだろう。こちらに向けるほど馬鹿じゃないはずだきっと。
起きた原因こいつか…なんて考えた俺は嬉しそうにしている留美の頭をげんこつしてから再び眠りにつこうと……
「(って、なんで殴るんですかお兄様!?)」
……小声で怒ってきたために妨害された。
俺はため息をついてから言った。
「(合宿で夜這い掛けるとは何事だ)」
「(夜這いではありませんわ。添い寝です)」
「(どっちも一緒だろ……で、お前と一緒に島田さんと霧島が?)」
「(ええ。丁度ばったり会いまして)」
見ると島田さんが明久の口を手で抑えている。叫ばれたら大変だという自覚はあるようだ。
だから人の感情を操れるわけないだろ雄二…なんて今にも貞操を奪われそうな友達を見ながら考えた俺は、押し入れを静かに開けた。
それを見ていた留美は若干興奮しながら訊いてきた。
「(お、お兄様。押し入れを開けてどうするつもりなのですか!?)」
答える気も失せた俺は押入れの布団が入っていた方へ上がって静かに閉めてから言った。
「お休み」
「(ああ! お兄様の生殺し!!)」
いやー落ち着く。
合宿最終日。朝。
押し入れから出た俺は首を回して腕を伸ばしつつ「よく寝た」と言うと、「そりゃ良かったな…」と恨みがましそうな目を向けながら雄二が呟いた。
俺は少し考えてから親指を突き立て笑顔で言った。
「罰ゲームイエー!」
「罰ゲームイエー! じゃねぇ!! あの後マジでヤバかったんだぞ!?」
「だからこその罰ゲーム。と言うより俺も予想してなかった。寝る前に来るものだとばっかり思ってたからな」
「『夜に』なんてフレーズ入れたらあいつは夜這い掛けてくるんだよ!」
ある意味純粋だねぇなんて考えた俺は「でもまんざらじゃ……そういや明久は?」と話題を変えた。
「あいつならトイレで寝てる。逃がした後トイレ行ったら戻ってこなかったから……って、お前今言いかけた言葉言ってみろ」
「良かっただろ?」
「絶対違う言葉だったろ!? その上最悪だったわ!!」
「嘘つけよ~。本当は嬉しかった筈だろ~?」
「テンメェ……!!」
雄二が朝から顔を赤くしながら拳を力強く握っているので、図星だろうなと思いつつ「なんじゃ騒がしい。もう少し眠りたかったわい」と目を擦りながら秀吉が体を起こした。
その瞬間、立ち上がっていた雄二が俺に向かって拳を大きく振りかぶって接近してきたので、何も持ってない俺はとりあえずしゃがんで枕を持って大きく振りかぶって雄二のむこうずねを打った。ちなみに中身は小豆。
「(ごすっ)~~~!!」
そりゃ痛いだろうなと思いながら立ち上がると、痛みをこらえながらまだ向かってきたので執拗に同じところを今度は蹴りで狙う。
がすっ、がすっ、がすっ、がすっ、がすっ、ごすっ、がすっ、がすっ……
「って、流止めるのじゃ! 雄二の動きが完全に止まっておる!!」
「なんだと!? それは大変だ!! すぐさま霧島呼んで人工呼吸を――」
「なんでそうなんだよ流ぇぇぇぇぇ!!」
「朝からうるさいぞお前ら! さっさと起きて朝食を食べろ!!」
「うーっす」
怒られた俺は切り替えてからさっさと着替え、雄二達に「ほら早くしようぜ?」と促した。
ちなみに明久は部屋にあるトイレじゃなく部屋を出たところにあるトイレの個室で寝ていた。
島田さんと明久の様子がおかしいのはまぁ、あんなことしたからじゃないかねぇ。
話数見ずに更新しました。すいません。