馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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十月に二話連続更新したので先月はしませんでした。


時間経過して(ただ傍観するだけ)

「いやー二階だっていうのに阿鼻叫喚だ」

 

 教師も生徒も関係ない。そこにあるのはただ己が勝つために戦う人たちの姿。物理的にもFFFの連中を倒した俺は、積み重ねた上に座って見物していた。

 

「結構派手にやってるねー先生達も本気だよ全く」

『さて教頭。現在どうなってるんだい?』

『え、ハァ……現在三十分が経過して教師は全員残ってますね。逆に生徒は十人単位で減ってます』

『ま、当たり前っていえば当たり前さね』

 

 スピーカーから聞こえてくるそんな放送。

 まだそれしか時間が経っていないのかと思った俺はどうしたものかと思いながらぼけっとしていると、前方から矢が飛んできた。

 

「撃ち落せ」

 

 召喚獣の方を見ずにそう言うと、飛んできた矢が粉々になった。発砲音が聞こえたから銃でも撃ったのだろう。

 ここも危なくなったなーと思った俺は、バリケードみたいになってしまった人の壁から降りて三階へ戻ることにした。

 

『二階の通路に人の壁が出来てるさね』

『みんなFクラスの様ですね。しかし不気味ですね』

『二階の連中はあれのせいで真のバトルロイヤルになったようさね。逃げようにも逃げられないとは随分ひどいことするさね、あいつは』

『まぁ流君だからしょうがない気もしますけどね』

 

 随分呑気な解説者達だと思いながら未だ静かな三階に戻ってきた俺はまた手持無沙汰になったのでどうすっかなーと考えてから、散歩することにした。

 

 

 ――電話をしながら。

 

「ういっす。どうよそっちは? どんちゃん騒ぎで本音ダダ漏れ?」

『そっちはって……社長。そっちは何をやってるんですか?』

「サバイバル」

『えっと……無人島とかじゃないですよね?』

「召喚獣を戦わせたサバイバル。俺を除く生き残った誰かが優勝」

『……暇だったんですね社長』

 

 電話越しから騒ぎ声が聞こえるのに李里香さんはいたって冷静。酒が入ってない証拠なのだろう。

 

 ……まぁ、前に飲ませて大変だったことを全員知ってるだろうから無理に勧めてないだろうし。

 

 ともかく時間つぶしになるだろうなと思いながら、「で、楽しんでる?」と質問すると、『ハイ』と返事が。

 

『社長に対する愚痴を……といえば少々語弊がありますが、まぁそんな他愛のないことを酒を飲みかわしながら言って騒いでます』

「そりゃ良かった」

『殴り合いで次の開発するゲームを決めたりしてますね』

「そこは普通止めようぜ」

 

 何やってるんだうちの社員。旅館に迷惑かけてるんじゃねぇよ。

 ため息をついてそう思った俺は、「まぁいいや。ところで何か変わったことある?」と質問する。

 

『いえ特には。ビンゴ大会の商品が予想以上に豪華でしたので皆さん喜んでいましたね。私も当てました。カタログでしたけど』

「カタログかぁ……宝石? 時計? 実用品?」

『実用品ですね。丁度鍋とかフライパンが欲しかったので』

「そりゃよかった」

 

 電話しながら無防備に歩いているが誰も来ない。一階二階で固まってしまったせいだろうか。

 ここに隠れる人位いるだろうになんて思いながら歩いていると、『そう言えば社長。夏休みはどのぐらいあるんですか?』と質問してきた。

 

「うーん……補習で休みが削られるからなー。行こうとしなければいかなくてもいいかもしれん。俺の扱いが現在どうなってるか分からないから、普通に補習で潰されて二週間ぐらいあれが良いかも」

『それぐらいあれば墓参りいけますね』

「まぁどうなるかは分からな……消して来い」

『はい?』

 

 目に留まった召喚獣を従えた奴がいたので指示して消した。

 

「ああすまん。ちょっと召喚獣に戦わせてた」

『なるほど……まぁ決まったらちゃんと連絡してください』

「ういうい。またねー」

 

 …………。

 

「暇潰しには一応なったか」

「とんでもないな!?」

「さっさとカード出せよ」

 

 そう言ってカードを没収する。

 確かあいつBクラスだった気がしたな……なんて思いながら奪ったカードを確認した俺は、他に誰もいないか探すことにした。

 

 

『ただ今四十五分が経過しました』

『なんというか、教師陣もちらほらと脱落者がいることに喜んでいいのか分からないけど、やっぱりAクラスが残ってるさね』

『Fクラスでも残ってる奴もいるみたいだけど、まぁいつものメンバーみたいですね』

「だんだんざっくりとしてきたなー」

 

 三階を徘徊し、向かってきた奴を全滅させたため誰もいないということでぼけっと廊下で座りながら放送を聞く。

 残り人数を把握できないが、どうもAクラスと吉井たちが奮闘しているらしい。教師も脱落するこの戦場内で生き残っていられるとは。恐れいった。

 

 というかまだ開始三十分しか経ってないのか。あまりにも暇過ぎて寝てる間に不意打ちくらって負けるパターンが見えてきたぞおい。

 

 点数一点も減ってないからな…と思いながら壁に頭をつけて天井を見上げていると『そう言えば流君だけが生き残った場合は?』と荒木さんが質問する。

 

『あん? あいつは残っていても順位に入り込めないから関係ないさね。あいつだけになった時に集計で結果だすよ。とはいっても逐一点数は更新されていくんだけどねぇ』

『となると流君ともう一人になった時点で生き残りボーナスが発生するわけですね?』

『そうさね』

 

 生き残りボーナスとは最後まで残った一名にのみ加算される点数の事である。それが結構高く、それゆえ逃げ回っている奴もいるだろうと考えてこうして三階を歩き回っているのだが……意外と少なくてこうして暇を持て余している。

 

 隣の召喚獣もけだるげに壁に寄りかかっている。寝てるんじゃないかと思うぐらい動きがない。

 動きにてるな俺達の……と観察しながら、今なら俺の召喚獣の顔を見れるのではないかと思い至る。

 

 ……やってみるか。

 

 そう思い立ったら即行動したところ……触れない。

 

 まぁ分かってたけど。なんとなく空しくなりながらため息をついた俺は一時間経ったら全滅させようと思い立ち欠伸をしてから立ち上がった。

 

 特に何をするわけでもないが。

 

「……暇だな」

『さぁ開始四十五分で半数が脱落したこのゲーム! 果たして優勝するのは誰なのでしょうか!?』

『高橋先生じゃないさね』

『なるほど……確かにそうですね。教師陣という立ち位置でも、点数という点においても絶対に最後まで残りたいでしょうし!』

『それもあるさね』

『他にも根拠が?』

『加減を知らないからねぇ』

『あ、そっちですか』

 

 なんだか気の抜けた返事をする荒木さん。それを聞きながら手首を回していた俺は呟く。

 

「さすがにあいつらに集団で襲いかかられたら高橋先生でも無理じゃね」

『そんなこと言っていたら西村先生が三十人を一気に減らしたぁ!!』

「嘘だろっ!?」

 

 聞き捨てならない情報に俺は反射的に突っ込む。が、不意にこの学校の先生という時点で研究者の面も持ち合わせているのだからおかしくはないかと思い直す。

 

 しかし他の連中は素直に聞き入れなかったらしい。

 

 三階にまで響き渡る声で『なぁにぃぃ!?』と絶叫していた。

 

『こりゃ西村先生が残る可能性も出て来たねぇ』

『まぁ流君には勝てないでしょうけど』

 

 余計なひと言じゃねと思いながら、俺は仕方がないので二階へ降りることにした。




ご愛読ありがとうございます。
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