三階にいた奴らはうち漏らしなく全滅させたので、残っているのは二階と一階にいる奴ら。
二階の壁、どうなってるかなと思いながら降りたところ、未だ積み上がっていた。
ぴくぴくと動いているのを見ると生きてはいるようだが、少し他人の関節巻き添えにして積み上げたせいか動くに動けないらしい。
こうなったら完全に手出しができないので、ご愁傷様と手を合わせてから一階に降りることにした。
一階で待っていたのは高橋先生と生き残った生徒達。他の奴らは全員悔しそうにしていた。
生き残った生徒達は大体がAクラス。久保利光とか霧島翔子とか工藤愛子とか、木下優子とか。留美やセリーヌもいるようだが、他の奴らはみんな上なのだろう。
現状対峙してるようなのでこっそりと見ていようと考えたがさっさと全滅させた方が時間短縮できるよな。
そう考えたのが伝わったのか、召喚獣はいつの間にかスナイパーライフルを構えて地面に伏していた。
言わなくても伝わるんだなと思った俺は、柱の陰に隠れて「やれ」と呟く。
その瞬間、高橋先生の召喚獣は消滅した。
『え?』
全員が言葉を失う。それを聞きながら笑いをかみしめていると、俺の召喚獣は次々と速射していた。
一発撃つごとに一体。命中率百%で気が付けば全滅していた。俺の点数は少し減っていた。
銃弾一発ごとに点数減るのか? と思いながら姿を現して彼女達に近づく。
「うっす」
「……流の仕業?」
「そういうこと。ほら全員カードくれや」
「っていうか、どこから狙ってたのよ!」
「え、階段近くの柱」
そう言って全員のカードを回収していると、「お兄様、昔より賢くなってません?」と留美が聞いてきたので「何言ってるんだ? そりゃ年取れば老獪にも賢くもなるだろ」と答える。
「それはそうでしょうけど……一万点に近いってちょっとした暴力ではございませんか?」
「取れないのが悪い」
バッサリと切り捨てた俺は、回収したカードを弄びながらこの階を後にした。
『一階は全滅。そりゃ流が出たらそうなるさね』
『しかしスナイパーライフルで全滅ですか。フィールドが全体ならではですね』
『まぁ基本はまばらだからね』
そんな実況を聞きながら二階に戻ってきた俺は、未だ聳え立ったままの人の壁を見上げて呟く。
「これどうっすかなー」
まぁ二階で生き残った奴が優勝だから俺が手出しする必要ないかなと思っていたら俺の召喚獣は人の壁をよじ登って頂上に立ち、スナイパーライフルを構えたと思ったらパンと発砲した。
「いたっ! あ、頭がぁぁぁぁ!!」
『吉井君見事にヘッドショット決められました!』
『フィードバックあるから脳天を貫かれた痛みと衝撃が走って悶絶してるさね』
『これは気絶必死だー!』
「え、マジで? 明久すまん!!」
明久の悲鳴と実況二人の解説に状況を理解した俺は手を合わせて謝る。
が、無情にも召喚獣は次々と狙い撃つ。さながら仕事人のごとく。
そろそろやめようかと思った俺の想いが通じたのかスナイパーライフルを肩にかけ、人の壁から飛び降りてこちらにきた。
『……さて、教頭先生。残ったのは誰だかわかるかい?』
『えーっとですね。Fクラスの坂本君とAクラスの妃さん、そしてBクラスの上下院くんですね』
『これ、二時間もいらなかったんじゃないかい?』
『いやーそう言われましても……って、始まりましたよ』
そこから叫び声などが聞こえ出したので、がんばれーと思っていると人の壁が崩されそこから西村先生が明久を抱えてきた。
「お疲れ様でした。そしてすいませんでした」
「まぁ銃弾を避けるなんて言うのは難しいが……なんであんなに完璧にとらえられるんだ」
「あっちで拳銃使ってましたからね。そのおかげでしょう」
「そうか……まぁ相変わらずでたらめな奴だな」
そんな話をしていると、ババアと荒木さんの二人が『さぁ生き残りは妃さんとなりましたので、現在集計を始めようと思います!』と言ったので「終わったようっすね」と言う。
「だな。清水の方はどうなった?」
「俺は知りませんよ。会う前に終わってたと思います」
「そうか。まぁ吉井を置いてきてから清水を再び捕まえるか」
「もう大丈夫だと思いますけどね」
そう言って西村先生は階段を降りていったので俺は壊れた人の壁を通り抜けて「お疲れー」と声をかける。
「……ああ、疲れたぜまったく」
「とんでもなく楽しかった! みんなすごかったしね」
「はい。先生方の本気というのも初めてでしたし」
「そりゃ良かったぜ」
「教師陣の実力を知れたのは収穫だ。そのことに関しては、お前に感謝してもいいな」
「……って、お前教師に喧嘩でも売るの?」
「売るかよ! もしものためだもしもの!!」
「あっそう」
そう言って談笑していると、他の奴らが沈黙しているのが気になったので質問してみた。
「つぅかなんで周りにいる奴ら全員沈黙してる訳?」
「あ? 全員鉄人の化け物加減に意気消沈しているんだよ」
「……ああ、なるほどね」
雄二の説明に納得したところ、『集計が出たさね』というババアの言葉に反射的に上を見る。
『じゃ、教頭先生よろしくさね』
『え、あー分かりました。それでは発表します……第一位は』
そう言って一旦区切ってから次に名前を言った。
『1-A、妃由美さんです!』
「……え、本当、ですか、流様」
「そうなんじゃね? 集計に参加してないから分からんけど」
「嬉しいです!」
「うおっ」
あまりの嬉しさに俺に飛びついてきた由美。俺はそれを抱き留めて昔のように頭を撫でてしまった。
途端に嬉しそうに目を細める彼女。俺はすぐさまやめて彼女を引き離す。
名残惜しそうな彼女を見た俺だったがやっちまったという思いに駆られたのと現状からの脱出のため、駆け出した。
『死ねやァァァァァ!!』
「テメェらその元気どこから出てくんだよ!」
――こうして、合宿は終わった。
ちなみに、一位の商品は二泊三日のペア旅行券なんだが……なんだかとても嬉しそうにしていたので「俺はいかんぞ」というと露骨にショックを受けていた。
もう一つおまけに言うと十位圏内に雄二と明久が残っていた。後は大体Aクラスと西村先生に高橋先生という二人以外は想定内の結果だった。
――で。
「あ、なんだって? もう一回言え文科省」
『だから君達の学園から
「だったらなんでそんな話が決定したか。その理由をちゃんと説明できるんだろうな!? 俺が、きちんと、納得できる理由を!」
『それは……大変言いにくい理由なんだが、君達の学園で問題行動がたくさん起きているのが一番の理由だ』
「二番目の理由は! んなの俺が一番よく知ってる!」
『二番目の理由は……急に偉い方が方向転換をしたんだ。君達のシステムとは別の勉強促進システムに興味を持った……と言えば聞こえはいいんだが』
そう言われて俺は奥歯をかみしめながら原因に思い当たり、電話を切ってから自室の壁を殴って叫んだ。
「ふざけんなよ極聖学園! 何いきなりぶんどってやがる!!」
ご愛読ありがとうございます。またもオリジナルが続きます。