馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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合宿が終わりました。


振替休日の話
考えてみる


 合宿から戻ってきた俺にかかってきた電話は、俺に怒りを覚えさせるには充分だった。

 

 という訳で、振り替え休日を利用してババアの家に乗り込んだ。

 

「うっす学園長。ただいま(・・・・)

「引き取って一度も来てないのによく言うね全く……で? お前さんはあのことについて訊きにいたんだろ?」

「ああそうだ。どうする気だ、これじゃぁうちの学園事実上の廃校だぞ?」

「確かにね」

 

 ババアの部屋に上がり込んで話し始めた俺の態度に気にせずため息をついて「こうなった原因に心当たりは?」と質問してきたので目を瞑って少し考え「あるにはあるが、全部向こうの逆恨みだぞ?」と言っておく。

 

「逆恨みでも立派に理由になるじゃないか。しかもあんたが原因だろ?」

「だから俺のせいにされても困るって。あいつらが転校したのは自分の意志、俺が退学したのは親の意向だから面目潰されたとか思われても知らないって」

「ああ、なるほどね……それで躍起になったのかいあの学園は」

 

 ババアもあの学園について知ってるようで遠い目をする。

 まぁその反応は分からなくもない。何せあの学園はくそがつくほど居心地がよく……くそがつくほど最悪な場所だったのだから。

 

 思い出しただけでも吐き気を催してきたのでこれ以上掘り起こすのをやめ、「ったく。トップが何呑気にしてやがる。西村先生たち引き抜かれる可能性だってあるし、借金抱える可能性だってあるんだぞ」と言っておく。

 

「そうさねぇ……あっちのがなんなのか分からんけど、全面戦争かねぇ」

「なんで俺見ながらそんなこと呟く」

「この際使えるものは何でも使おうってね。どうせあんたもはらわた煮えくりかえってるんだろ? だったら向こうを廃校にしたところで私は文句は言わないさね」

 

 そう言われて俺は頭を掻きながら「やり方ならすでに百通りぐらい思い浮かんでるんだけどよ……」と呟く。

 

「私が言っておいてなんだけど、あんた本当に嫌いなようさね」

「当たり前だろ。つぅか、仮に俺があの学園を存在自体潰したとする」

「まぁそれで今回の件は終わりになるだろ?」

「いやーそれだけで終わりにならんのがまた、ね」

「ん? どういうことだい」

「しらばっくれるなよババア。あの学園俺が潰したらこれまで我慢してたのが全部不意になって恐怖政治になるだろうが」

「そうならないようにうまくできるんじゃないかい?」

「出来なくはないが……恨み潰し回るの面倒なんだよな……うっかり関係ないところ潰しそうで」

「だったらどうするんだい」

 

 だからそれを考える為に来たんだよ。そう言うと、ババアは「っていうか、なんであんたはその事を知ってるんだい」と今更なことを聞いてきた。

 

「え、文科省の役員に知り合いいるから」

「……もう大統領の知り合いとか言われても驚く気も起きないさね」

「いやいるけどよ」

「……あんた、あの爺に引き取られる前にとんでもない人脈造ったね全く」

 

 そう言って嘆息するババア。

 

「って、だからそんなこと話すために来たんじゃないって」

「ああそうさね。で、どうやってあの学園の面目潰す気なんだい」

「というか勝手に自爆して潰れてほしいんだけどなー、非人道的なことに手を出したとか裏金が発覚するとかでさ」

「そんなものが簡単に露見するわけないさねあの学園では」

「だからねー、もう正直困ってる訳よ。本当に全面戦争でどちらのシステムが成績向上に役立つかモニターして第三者に決めてもらうってのはどうよ」

「そんなこと言ってもねぇ。その人員が本当に公正な人間か分かりゃしないさね。どうするきだい」

「こっちで人用意すると面倒だし、あっちに人用意させるわけいかないし、かといって文科省は完全にあっち側に着いたと考えてもいいからな……本当どうしよう?」

 

 そう言って首を傾げると、「あんたみたいな化け物に思い付かないこと、私が思いつくと思うのかい?」と再び嘆息した。

 

「いやーぶっちゃけ観察対象の確保だけすればあとはとんとん拍子に話進むんだけどよ……本当どうすっかな。ババアみたくシステム自体に手を加えててんやわんやしてるだけと同じ状況だからな……」

「いつあたしがてんやわんやしたって、クソガキ?」

「あーこうなったら人は向こうの学園とこっちの学園で交換するしかないかもしれんなー……あ? 試召戦争終ってすぐにシステム暴走させたことがてんやわんやじゃないのかよ」

「……」

 

 すっと視線を背けるババア。それを見た俺はため息をついて「そんなことはどうでもいいんだよ。今は廃校寸前のここをどうやって復活させるか考えないと」と頭を掻き毟る。

 

「どうやって俺の影響なしでやろうかな……」

「それは無理なんじゃないさね」

「あーやっぱり? そこは開発者のババアが矢面に立ってさ……我が物顔で意見主張してこぎつけてくればいいんじゃねぇの?」

「いくら開発者だからって知り合いいないんだからできるわけないだろクソガキ」

「だよなー。知り合いいたら今頃乗り込んでるだろうからな」

「あんたは乗り込んだのかい?」

「いや? 俺は電話で怒鳴ってから『じゃぁどうするか』という事をババアと相談して、そこから乗り込む予定」

「結局乗り込むんじゃないか」

「じゃねぇとはらわた煮えくりかえって日本破滅させかねないし」

「さらっと怖いこと言うんじゃないよ! ……ったく。そこら辺はあの爺さんと似た者同士さね。血のつながってない上にそれほど長くいなかったというのに」

「あの人とは波長が合ったからな。結構いい人だよ」

 

 そう言って話題が変わる前に終わらせ、「さって、本気でどうすっかねぇ」と天井を見上げながら呟く。

 

「あのくそジャリどもに被検体になってもらえばいいさね」

「それ俺がさっき言った奴じゃん。なんか人身御供っぽくていやだ。洗脳されて戻ってきたらどうすりゃいいのさ。死の淵に追い込んで覚醒させるぐらいしか思いつかねぇぜ?」

「なんでそんな発想にまで飛躍するのか不思議だけどそれは置いとこうかね……で、本気で今言ったこと以外に手立てはあると思うのかい?」

「だからその話をしに来たんだろ」

 

 スゴイループに入ってる気がするなんて思いながらふんぞり返っていると、「……それなら、これはどうだい」とババアが珍しく提案してきた。

 

「なんだよ?」

「あの学園のトップを闇討ちして亡き者にする」

「いいねぇ……っていうと思ったかババア。なんだよ闇討ちって。そんなこと俺が……いやなんでもない」

「ちょっと待ちな。今なんか自白しそうになってなかったかい?」

「え、やってないよ闇討ちなんて。ただオイル撒いて半年入院させたぐらいだよ」

「……あんた、直接的な原因造ってるじゃないか」

 

 ジト目でこちらを睨んでくるので肩を竦めてから言った。

 

「そんなの小学生の頃だし。犯人俺だってばれてないし。そもそもいたずら好きとして完全犯罪させてたから実質的に俺が手を下したわけじゃないし」

「尚更最悪じゃないかい! あと完全犯罪とか言うんじゃないさね!」

「本格的な犯罪行為はしてないって。精々けが人が出たとか、入院者が出たとか、持病が悪化したとかその程度だから、軽い軽い」

「確かに……って全然軽くないさね! 持病が悪化って下手したら死ぬじゃないかい!」

「だから悪化させて入院させて、治療受けさせたんだよ」

「……ああ、なるほどね」

 

 納得してくれたようなので、実は憂さ晴らしの気持ちが強かったというのは呑み込むことにした。

 そして、これ以上話しを続けても無駄のような気がしたので俺はため息をついてから言った。

 

「ババア。この事に対する意見文と、どちらが良いかという勝負についての説明を書いた書類を作って文科省に送りつけようぜ。『読まないで破棄した場合は容赦なく首を飛ばそうと考えています』とか付け足して」

「本気で隠す気あるのかいあんた? 一応向こうがいきなり変更した手前読むんじゃないかい?」

「上がアホばっかだから捨てられる可能性あり」

「堂々とアホと言い切るのすごいさね全く……まぁいいさ。内容については話し合おうじゃないか」

「了解」

 

 そうして俺とババアの二人で抗議文という名の挑戦状(脅し付)を作成し、文句を書いてたらきりがなかったので別にまとめてそれぞれ郵送した。

 

 あっちの業務が滞っても知らん。

 

 

 

 

 ちなみに。

 

 ババアの家から帰っていたら李里香さんから電話があり、内容が学園に関してでどこから聞いてきたんだろうかと思いながら聞いていたり、今まで知り合った連中が似たような感じで電話してきたので苦笑しながら全部聞き流した。

 

 引き抜く気満々じゃねぇかと心の中で思いながら。

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