次の日。というか寝たのが深夜二時なので実質今日。
俺は、まぶたをこすりながら着替えていた。
「眠い……」
そう言いつつ顔を洗い、朝食を作る。
ついでに、テレビをつけてニュースを見る。
「うわぁ、結構あるなぁこの手のニュース」
映っているのは有名人のインタビュー画面。なんかの映画の宣伝なのか、さりげなくそれについて触れつつ会話をしていた。
会話を聞きながら朝食を作り終えテーブルに運ぶと、こんなニュースが流れた。
『鈴鹿財閥が世界の飢えた人たちへ向けて五億円の基金をしたという』
ブツッ
反射的に電源を切った。
まったく。朝から胸糞悪いの聞いちまった。そう思ったが、それは未だに自分の中で収まりがつかないことを指すことに気付いたので舌打ちをして急いで食べ、電話を掛けることにした。
『おはようございます、社長』
「俺は社長じゃねぇだろうが、李里香さん」
『いえ。私はあくまで社員です。真の社長はあなたです』
「……ハァ。まぁいいや。書類終わったから取りに来てくれ」
『これから学校ですか?』
「当たり前だ。いつも通り置いとくから、よろしく」
『分かりました。……ですが、玄関先に放置するのはやめていただきたいのですが』
「それは無理。鍵渡す気ないから」
『……それでは午前中には取りに行きます』
「よろしく」
あー、これで仕事の方は一段落した。それじゃぁ今日も頑張って
「学校で明るく楽しく過ごしますか」
そう呟いた俺は、書類をいつも通りの場所においてから鞄を持って部屋に鍵をかけ、陽気にアパートを出た。
「おいーっす」
「よぉ流。お前は勉強……してるわけないか」
「なんだよいきなり? してるわけないだろ?」
教室に入った俺に返事を返してきたのは勉強中であろう雄二だけ。他はすごく真面目に勉強らしきことをしていた。
……俺も何を言ったのかわからなくなったが、ともかくそんな光景だった。
「まぁいい。お前は次の戦いの要だからな。補充試験受ける必要がないなら「いや、受けるが?」は?」
俺の言ったことが不思議だったのだろう。雄二は教科書から顔を上げて間抜けな声を上げた。
「受ける必要あるのか、お前?」
「いや、受けなかったら零点って可能性が出ると慎重になるからな」
そういうと納得したのか、「だったら頑張れ」と言って教科書に視線を戻した。
いっちょやりますかぁなんて思いながら、俺は絶望に染まった明久に気付かずテストの準備をした。
「昨日に続き楽だったなぁ」
「そりゃお前だけだろうが」
「……テストが楽とは、何とも言ってみたいセリフじゃのぉ」
四時間目まで終わったので背を伸ばしながらそう言ったら、近づいてきた雄二とそれについてきたらしい木下がそんな風に返してきた。
なんだ雄二。以前だったら『楽勝楽勝』と言ってそうな内容だってのに。そこまで学力落ちたのかよ。
そんなことを思いながら、俺は後ろを振り向いて突っ伏している明久に聞いてみた。
「生きてるか~?」
「なんとか……」
どう見ても弱っているとしか思えない明久が、それに似て弱弱しく返事をした。
…………大丈夫だろうか?
ふとそんなことを思えるぐらい弱ってる感じがするのは、決して気のせいではないだろう。
「じゃ、昼食食いに行こうぜー」
明久を無視して雄二はそんなことを言う。……なぁ。
「姫路さんが弁当作ってくれるんだろう?」
「そういえばそうだったの」
「……女子の手料理」
俺の言葉に木下と土屋が頷き、件の姫路さんが来た。
「あ、あの……」
「どうしたの、姫路さん?」
「弁当じゃろ、明久」
「え? そうなの?」
「は、はい……」
明久の質問に頷く姫路さん。ふむ。何とも健気な子だな。
「なら屋上行こうぜ」
とりあえず俺はそう提案する。でないと何かが起きそうな気がしてならないからだ。
「なら俺は飲み物買ってくるわ。流以外の奴の」
「OK.テメェの分は残さないでやるよ」
「んだと」
「落ち着くのじゃ二人とも」
にらみ合いをしようとしたところで木下に止められ、渋々引き下がった俺は財布から一万円札を取り出し雄二に渡した。
「ほれ。これでクラスの奴らの分も買ってやれ。たぶん足りるだろ」
「お前……」
驚く雄二を見ずに、俺は教室を出て屋上へ向かった。
「相変わらず変わってねぇな、お前のそういうところ」
「どうしたの雄二、そのお金。……まさか、カツアゲとか」
「バカか明久! ……流がお前たちの飲み物代として置いてったんだよ」
「随分と太っ腹なことするわね」
「そうじゃの」
「というわけだ。俺は先に飲み物を買ってくるからお前達も先に屋上へ向かってくれ」
「じゃぁウチも手伝うわ」
「それではわしらも行こうかの」
「そうだね」
「(コクン)」
という会話があったのだが、恥ずかしい退場をした俺にとってはそんなこと関係なく。
「消えろ記憶!」
そう言って屋上の床に頭を打ち付けていた。
「お待たせ流……って、どうしたのそれ!? 額から血が出てるよ!」
「どういう事じゃ……って、何やったんじゃお主!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
頭を打ちすぎて血が出たのにもかかわらず記憶がなくならなかったので証拠隠滅を図っていたら、明久たちに見つかった。
俺は陥没した屋上の床にシートを敷いてから、額の傷を器用に消毒して絆創膏を貼り、適当に理由をでっち上げた。
「大丈夫大丈夫。単純に飛んできたボールにあたっただけだから」
「え? 野球やっている人なんていないよ?」
当然だ。俺が今でっち上げたもんだからな。
そう思いつつ、俺は腹をさすりながら話を進めた。
「そんなことより姫路さんが作った弁当食べようぜ? そっちがメインなんだから」
「まぁそれはそうじゃが」
「……確かに」
ふぅ。これで何とか話を逸らせた。このまま昼食の洒落込もうとしますか。
……なんて思っていた時期が俺にもありました。
まさかあんな惨劇が起こるとはな…………。
ではまた次回お会いしましょう。