馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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お久し振りです。こちらの更新は完全に気まぐれになっておりますが、それでもよろしければどうぞ。


踏んだり蹴ったり

 授業中であるにも拘らず、俺は現在Aクラス前に来ている。

 

 今から誘った場合、報告に書かれることを思い出したので躊躇うことになった。

 

 うん面倒。そう思った俺は回れ右をして、自分の教室に向かった。

 

「どこに行って何をやっていた流」

「すいません西村先生。実は」

「廊下に立ってろ」

「言い訳も言わせてくれないだと!?」

 

 普通に入ったら西村先生に廊下行きを宣告され、俺は弁解の余地もないことに驚く。

 

「なぜだ!?」

「流。私が担当しているのは?」

「生活指導です」

「それが答えだ」

 

 それ以上は時間の無駄だというように授業を再開したので、マジデスカ……と思いながらトボトボと廊下へ移動した。

 

 体育すわりをしながら天井が綺麗だなと思いを馳せていると授業が終わり。

 西村先生が教室を出てきた際に「お前には特別にスペイン語で反省文を書かせてやるから放課後までに持ってくるように」と言って通り過ぎ、取り囲まれて縛り上げられて教室の中心に座らされた俺は、ふと我に返る。

 

「あ?」

「諸君! このにっくきモテ男に対する罰はどうする!!」

 

 いきなり処罰の話に入った。

 

「いやなんでだよ!?」

「黙れ容疑者! 貴様に人権及び発言権などない!!」

『そうだそうだ!! 有罪(ギルティ)! 有罪(ギルティ)!』

 

 まったく事情が呑み込め……てしまったので、どんよりした気持ちのままため息をつく。

 

「さて……この――に対する処罰だが」

「はいっ」

「なんだ」

「逆さづりからの顔面ダイブでいいと思います!」

「いや、よくねぇからな!?」

『ちょっと待て』

 

 俺の発言はスルーされ、FFF団の連中は声を揃えてこう言った。

 

『横溝、それではまだ温い』

 

 温い、だと……!?

 

 俺が戦慄していると、先程から進行している奴――おそらく須川――が「名誉会長、温い理由を説明してくれ」と隣の奴に話を促す。

 隣の奴は「ああ」と言って――雄二か――から説明した。

 

「まずそいつはセリーヌ=アミエ、如月由美、鈴鹿留美から好意を受けている。その上、学年の好きな男子ランキングでぶっちぎりの一位であり、彼氏にしたい男子でも一位。さらには今来ている留学生の奴らにも知り合いがいる。こんな奴にその程度では温い。最低でも紐なしバンジーを屋上から六回経験させなければならない」

「なんでだよ!?」

「うっせぇ! テメェや明久みたいなモテるやつ見てるとな……全力で邪魔したくなるんだよ!!」

「さいっていだ! お前本当に変わりすぎだろ!!」

「なんとでも言え! 俺は絶対に陥れてやる……!!」

 

 滅茶苦茶なイカレ具合に俺はもう絶句しながら、それでも縄をほどいて立ち上がり、驚く周囲に対し、息を吸ってから言った。

 

「須藤は! 実は!! 目当ての奴がいるのかある喫茶店に入り浸っている!!」

『なんだと!?』

 

 一斉に視線が須藤へ向く。当の本人は首を高速に横に振り、「そ、そんなわけないだろ!」と否定する。

 

「一度行ってみたらかわいい子がいたな! そういえば!!」

『須藤を捕まえろ!!』

「だから違うって!!」

 

 全力でターゲットを追いかけて行ったので、誰もいなくなった教室の窓へフラフラと近寄った俺は寄りかかって盛大に息を吐き、「明久も大変だな」と同情の念を禁じえなかった。

 

 少しのんびりしていると、秀吉が戻ってきた。

 

「って、なんじゃこの跡は!?」

「ちょっとつかまってた」

「……ああ、大変じゃったの」

 

 何かを察したのか同情の視線を向けてくる秀吉。俺は手をプラプラさせ「俺もさっきまでいろいろな意味で放心してたから驚いたわ」と何でもないように言う。

 実際身代わりにできるやつの情報なんてたくさんある。タイミングを見計らえば俺への実害をゼロにするなど、たやすい。

 

 でもあそこまで恐ろしいともう笑ってられねぇなと思いながら少しまじめに考えていると、「そういえば姉上が放課後Aクラスに来てほしいと言っておったのじゃ」と伝言を伝えてくれた。

 

「OK.OK.放課後ね。了解了解」

「しかし、なぜあんなボーッとしておったのじゃ?」

「んーやっぱり裏で支配しないと自分に対する被害がなくなりそうにないか……色々あってちょっとやる気なくしてた」

「なるほどの……って、何をしようとしておるのじゃ!?」

「そのためには懐柔しなけれなければいけないのか? いや、それでもモテるやつが気に食わない連中だ。俺への被害がなくなるわけじゃないだろう……う~む。難しい」

 

 これはかなりの難題だな。ミレニアム問題と同じくらいだろう。

 秀吉の言葉をスルーしながら考えていた俺は、結局放課後まで自分の身の安全を確保するすべを探すのに時間を費やした。

 

 ……ん? そういえば西村先生に反省文提出とか言われて……げ。

 

 やばい。一文字も書いてない……ぞ。

 

「あぁぁぁぁぁ!! もう放課後じゃねぇか!! あいつらの対策考えてたら放課後になっちまったじゃねぇか!!」

 

 頭を抱えてブリッジみたいにのけぞりながら叫んでしまう俺。ついついやってしまったことに絶望を感じながら、ついでにAクラスに来いという話を思い出し、全力で頭を回転させながらひとまず反省文を言われたとおりスペイン語で書いていると、

 

「ああ流。さっきの反省文の話だが、お前の状況を鑑みて特別になしだ。Aクラスへ行く用事を優先しろとのことだ」

 

 とあっさり言って通り過ぎてしまったので、シャーペンを止めた俺はしばらく固まった後コテン、と横になった。

 

 

 ……そりゃないぜ西村先生……。

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