馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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悩む

「ハァ…………」

 

 昼休み。雄二達と食べていたが、現在は安息の地を求めるために一人で食堂に来ている。

 

「師匠! 前の席大丈夫ですか!?」

「他当たりなさい」

「すみません……」

 

 カツカレー定食を食べていると華凛が同席を願い出たのですぐさま却下して追い払う。

 周りには誰もいない。来る奴来る奴全員追い払った結果。周囲はにぎやかだが。隣のテーブルが特に。

 

「お、遠坂お前もか」

「空天殿も?」

「にべもなく、な。時森なんか席に座ったと同時に移動されてたし」

「まったく失礼ですわ!」

「涙目になってたじゃないのあんた」

「そ、そんなことありませんわ!」

 

 本当、隣が賑やかだ。

 いやー本当、この学園がつぶれる瀬戸際だなんて思えないほど賑やかだなぁぁ!!

 

「安息の地がほしい……」

「あ、あの、豊橋君。前、大丈夫?」

「ん……? 珍しいというか、明久のところ行かなくていいの?」

「えっと……その」

 

 そう言いながら長浜は静かに腰を下ろしてしまった。

 まだ食べている途中なので無暗に席を移動するのを許されないし、そもそも何か言う前に勝手に座られるのが不愉快なので「明久のことなら雄二たちに聞いてくれ」と不機嫌な口調で言う。

 

「……すいません。でも、吉井様のことをお聞きできるのが、豊橋君しかいなくて……他の人は怖くて」

 

 自業自得なクラスメイトに同情する気がない俺は「ゲームが好きな奴だぞ」と一つだけ教えておく。

 

「そうなんですか。ありがとうございます」

「あとはまぁ、自業自得で毎日金欠だが……そこの支援はしない方がいいぞ。あいつのためにならん」

「なるほど……分かりました」

「だから食料は喜ばれる」

「……ありがとうございます!」

 

 そういうと彼女はそのまま立上がり、スキップしながらその場を後にした。

 

 残されたのは俺と、FFF団と、隣で視線をぶつけてくるAクラス留学生組。

 

 どこから手を付けたものかと思いながらスプーンの動きを止め、「そういえば横溝がナンパ成功したのかキレイ系の女子と一緒に歩いてたな、駅前で」と呟いて標的を変える。

 

 生贄を差し出して周りがいなくなったので、今度は隣に視線を向けて「なんだ」ととりあえず聞いてみる。

 返ってきた答えは「どうして文華さんだけ良かったんだよ」というもの。

 

「だって必要なことしか聞いてこないから。あいつ明久に惚れたみたいだし」

「って、え!?」

「うそっ!?」

「本当ですか師匠!!」

「そういや転校してきたとか言ってたな……但野と一緒にFクラスに」

「そうそう。あいつも明久狙い。知ってるだろ? あいつの家系」

『ああ……』

 

 それだけで一同が納得したようなので、食べ終えた俺はトレイを持ち上げて「そんじゃ」とその場を後にした。

 

 

 

 さて――。

 昼休みも終わり、午後の授業が始まったのだが、俺は今席を移動して窓側一番前でノートをとっている。そりゃもうあっさりと了承してくれたからな。

 これで爆心地から遠くなったので問題の一つが原則的になくなった。

 残る問題としてはこの留学中の話。向こうの様子を断片的に知る限りでは昔より随分分かりやすい授業にシフトされていることぐらい。康太はなぜか制服について詳細に書いていた。あとは授業についていけているかどうかってことぐらいか。

 

 このままやってればこちら側の勝ちになると思うのだが、果たしてすんなりいくのかと思うと首を傾げてしまうのは生きてきた中の経験だからだろうか。

 

 困ったもんだなとため息をついたら授業が終わっていた。

 明久の大声が響く中、俺は静かに教室を出た。

 

 

「ちーっす」

「休み時間毎にこっち来るのやめてもらえんかね」

「いいじゃん別に。静かなんだし」

「……あんたね」

 

 とりあえず学園長室に避難して騒ぎから逃げておく。

 なんというか、ここ以外騒動が起きない場所がないから。かかわるとマジ面倒だしな。

 

「ったく。いちいち逃げ込むんじゃないよクソガキ」

「いいじゃん。この戦いどうなるかなぁっていう考えぐらいまとめたって」

「観察処分者が戻ってきた時点で勝ったも同然じゃないか」

「先が見えないって怖いんだよ。向こうでほかの四人が点数上げてたら勝ち目ないしね」

「……そんなことできるとしたらAクラス代表ぐらいじゃないさね」

「おい」

 

 さらっとそれ以外を貶したので思わずツッコミを入れる。

 

「自分の生徒貶すなや」

「向こうの学力を鑑みた結果だというのに……それにしても、あんたのクラスの観察処分者は大したやつさね」

「褒めてる?」

「どっちでもいいじゃないかそんなの。いつも通りに遅刻した挙句に喧嘩して追い出されたら女二人連れてくるなんて。流石は観察処分者だね」

「それは流石と言えないだろ」

 

 さてはこのババア、もう勝った気でいるな?

 楽天家多すぎ……とため息をつくと、「それよりメンテナンスどうなったさね?」と訊いてきたので「自分で確認しろやババア」と呟く。

 

「くそジャリ。あんたが自分でやり始めたんだろうに」

「ハァ? ここ数年まともにメンテナンスやってないで使ってるババアが悪いんだろうが」

「……」

 

 沈黙した。

 

「なぁ」

「…なんさね」

「マジでどうする?」

「何が?」

「この後」

「勝ったらかい? そうさねぇ……特に何もしないよ。期末テストもあるしね」

「なるほどねぇ」

 

 あくまで不問にして貸しを作ろうと。別にどうでもいいけど。

 

「あ、俺夏休みに墓参り行くからしばらく消えるわ」

「あ? Fクラスは補習でつぶれるの忘れたのかい? 丸々休めるわけないさね」

「知ってるけど。そこら辺どうにかならん?」

「無理さね」

 

 にべもない。

 一人だけ特例ってのも問題になるのは重々承知だったので「ところでさー転校する話来てる?」と話を変える。

 誰の、と聞いていないにもかかわらず、ババアは察したのか「来てないさね」と返事する。

 

「いい加減、あんたも素直になったらどうだい?」

「いつでも素直でーす」

「……そういやそうだったね」

 

 ハァとため息をつくババア。その態度を見た俺はそろそろ授業が始まりそうだったのでソファから立ち上がり「また来るわ」と言って部屋を出ることにした。

 

 

 …………まさか家に呼ばれる、なんてないだろうな。

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