翌日。
暗澹たる気持ちで学校に来た俺はいつも通りに進捗状況を確認してからクラスに戻った。
ら、
「……どったの康太?」
「…………人違い」
普段ならだれもいないのだが今日に限って康太が顔を背けて席に座っていた。
俺はこめかみを抑えながら「何? お前も退学言い渡されたわけ? 盗撮とかで」と質問してみると、「……盗撮はしてない」ときっぱりと否定された。
「んじゃ何を」
「制服を作って販売していたところを抑えられた」
「…………ちなみにその用途って何?」
「……コスプレ用として買っていく人が多かった。正直一着十万が最低と価格が違う……なんでもない」
「そういや二次元大好きグループがいたな。そいつらか」
それが見つかって退学してこっちに戻ってきてしまった、と……。
「よくやった康太!」
「……なぜ」
「お前のおかげで学校の存続がほぼ確定した!! お前は英雄だ!」
「……どうした流」
「残りが百点取っても平均が最初と変わらない! いやっほおおおおお!!」
「……流もおかしくなった」
何やら不名誉なことを言われたが、不安要素が一つ取り除かれたことによる心の解放感に酔いしれていた俺は無視した。
「つぅことで、ある程度は安心できるようになった! 流石だな!!」
「……それは素直に喜べるのかの……?」
「でもこうしてバカとムッツリーニが戻ってきたら残りは三人だ。翔子たちが満点とってもこの馬鹿二人は零点。平均点は五人の合計だから零点が二人いる時点でこっちはかなり有利だ」
「……なるほど。だから」
「康太久し振りだからってカメラ構えて堂々と盗撮してるんじゃないよ」
「……これは望遠鏡」
「なおさら不要じゃろそしたら」
「ヘルプミ!」
一校時目が終わった休み時間。
康太が戻ってきたことによる現状の説明を本人を交えてしたところ、明久がいつものように悲鳴を上げた。
ちらっと見ると、どうやら島田さんにドロップキックをくらい教室を出て行ったらしい。
いつものことなのでスルーすると、アデーレが「一応の危機は脱した形ですか」と訊いてきたので「まぁな」と答える。
「お前がそう言うんなら大丈夫だろ」
「下駄履くまでわからんだろ。詰めが甘いと逆転される可能性あるし」
「……疑り深い」
「用心深いと言ってくれよ」
「そこら辺は大丈夫ではありません豊橋さん?」
「あん? 明久の介抱は?」
「文華と瑞樹が介抱していますわ。三人いては邪魔になりますし」
「ところで大丈夫ってどういう意味だ但野」
「そのままの意味です代表。あの学園に関してはあまり深く考える意味はないと」
「そうかの?」
「ええ」
秀吉の疑問にあっさり肯定した明美は「もし負けそうになったらこいつを生贄に捧げれば廃校は免れますわ」と俺をさして答えた。
「お前もゲスだな……」
「一番手っ取り早い解決策といってくださいません?」
「ってことはやっぱりお前が原因で起きたのかこれ」
「やっぱりってなんだよ……」
どうやって推測したのか分からないのでげんなりしていると、「いや薫に話を聞いた」と返ってきたので「ああそう」としか言えなかった。
昼休み。
最近食堂で食べることが多かったので雄二たちと混ざって食べることにした。
もちろん食べる場所はFクラス内だ。
「にしても久しぶりだね流が混ざるのも」
「誰かさんが標的にしてきたから逃げてた」
「それは災難だったな」
「てめぇだろうが!」
「……みんなで食べるのも久しぶり」
「そうじゃのぉ。こうして集まったのも久しぶりじゃ」
「それでも変わらずお前水しかないんだな」
「……仕送りがちょっと」
「止められても文句は言えんじゃろ」
「当たり前」
「ゲーム売れよ」
「売れるわけないじゃん!!」
お前本当に破滅するぞそのうち。うっ。なんて会話しながらのんきに食べていたところ「おーい流ー」と聞こえたので廊下の方へ視線を向ける。
そこにいたのは高人と薫だった。
「混ざっていいか?」
「おう来いよ」
「邪魔するねお兄ちゃんたち」
そのままちゃぶ台をくっつけ混ざる薫と高人。
と、弁当を広げていた高人が明久を見て「あれ、食べたのか吉井君は?」と質問してきたので代わりに答えた。
「食べたよ一応。な?」
「そうじゃの。いつも通りじゃ」
「……生きてるから問題ない」
「問題ないぞ高人」
「高人さん。気にしない方がいいですよ吉井さんはその……大丈夫なので」
「? なんで周りの奴らが答えてんのか分からねぇけど……大丈夫なんだな」
「う、うん……」
ぎこちない答えを返した明久を見た高人は納得した様子で「いただきます」と自分の弁当を食べ始める。
薫も食べ始めたところで俺は「どうしてまた?」と質問してみる。
「今日が最後だから、だな。お別れってわけじゃないけどお前のクラスの友達見たかったし」
「ふ~ん」
「いよいよ終わりか……長かったな」
「本当じゃのぉ…色々あったわい」
「でも長浜さんと但野さんは帰らないよね。転校してきたから」
「そういやそうだったな……今にしてあの二人がうらやましい」
「これ以上Aクラスに戦力が増えるのはマジできついから別クラスへ行くなら歓迎する」
だったらFクラスは? お前これ以上このクラスに人増やすな人口密度高いんだからただでさえ。
そんな会話に興じながら昼食を食べていると、不意に高人が「そういや機嫌よく由美さんや留美さんが来たんだがお前何かした?」と訊いてきたので「風邪でも治ったんじゃね?」と言っておく。
実際のところは俺のメールによる心身状態の回復だろう。メンタル回復が速いのは若いからだろうか。
そんなことを思っていると「でもお兄ちゃんがいたらだれが何人来ようとも関係ない気がするけど」と薫が漏らしたので「んなバカな」と答える。
「仮に高橋先生レベルが五十人来られたら無理だっての」
「逆に言うとそのレベルじゃなきゃ何人来ようが問題ないってことか……相変わらず恐ろしいな」
「敵にしたくねぇ」
「つくづくFクラスの意味が分からないね」
「……同感」
「そこまで行くともはやこの学園に敵がいないじゃろ」
秀吉の言葉に一同が納得したようなので「三年生は召喚獣の扱い慣れてるから厳しいかもよ」と付け足す。
「召喚獣か……俺も使いたかったな。面白そうなのに」
「ああ。そういえばメンテ中だったか。いつ頃終わるんだ流?」
「なんで俺に訊くんだよ……多分夏休み終わるころまで続くんじゃね」
「本当に!? そんなに長くかかるの!?」
「……長すぎる!!」
「ていうか雄二の腕輪使えよ。だったら少しはできるはず。うまく発動しない可能性あるけど」
「「「「「あ」」」」」
所持している雄二でさえ思い出したようだったので悪用してないのはいいことなんだがなぁと思いながら「やるときは一応先生に声かけろよ」と言っておく。
それじゃぁ放課後帰る前に一回だけやらせてくれ! と高人の頼みに雄二はそういや明久の腕輪も練習していかないとなと思い出したように言ったので、放課後残って練習することになった。
新年明けました。おめでとうございます。今年も本作をよろしくお願いします。