馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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終・了!

 放課後。

 その間明久が相変わらず血反吐吐いたり康太が堂々と盗撮したり、甲斐甲斐しく但野が介抱したり秀吉が恥ずかしがったりとまぁいつも通りになりつつある日常。

 俺はもう割り切ることにしたそれらを受け流して、放課後。

 

「さて、坂本……君?」

「別に雄二でいいぜ空天」

「だったら俺も高人でいいって雄二……でさ、召喚していいんだよな!?」

「どうなんだ流?」

「ちょい待ち。今校舎内の力場調整中……っと。これでこの場だけ安定させたから何とかできるはず」

「まだかよ流!」

「うるせぇ! お前のテスト反映させるのにもう少し時間かかるんだよ!メンテ中だから留学生のデータ入れる気すらなかったからな!」

「お前もう少しオブラートに包めよ……本当にいつも通りだな」

 

 そういって高人が呆れているが、俺には関係ないのでさっさとデータを入力する。

 物の数分で完了したので「高人の分はいいぞー」と声をかける。

 

「師匠! 私達の分は!?」

「あるわけないだろ。いなくなるお前たちのデータ入れてところで容量の無駄じゃねぇか」

「ふっ。流石に毒舌がさえてるね相変わらず」

「ああん? ほら雄二。周りのことはいいから起動してくれ」

「あ、ああ…起動(アウェイクン)!」

 

 腕輪をした雄二がその言葉を口にしたところ、雄二を中心にフィールドが形成された。

 これが大会の副賞の一つ。使用者の点数を消費する代わりに小さいながらもフィールドを展開できる腕輪。

 これを遣えば試召戦争で独自に召喚できたり、先生のフィールドを干渉して消したりと様々な面で応用が可能である。

 

 ちなみに、この腕輪で召喚されても観察処分者のフィードバックはついている。当たり前だな。

 

 もう一つの腕輪の能力は分身。これは明久が持っている。単純に操作が二倍になるだけでなく並列思考で別々に命令を送らなければならないので要練習な腕輪だ。しかも点数が半分になるのでどちらか消されたらほぼ終わりだろう。

 

 まぁ観察処分者だから使う機会が多くて練習に事欠かないだろう。うん。

 

「もういいのか流!?」

「……あ? あー……いいぜ」

 

 他の連中を置いてテンションが上がっている高人に適当に返事をすると、「召喚(サモン)!!」と叫ぶ。

 その瞬間に高人の足元から召喚獣が出現し、高人をデフォルメしたキャラだ。手にはレイピア、服はどこかの軍服。

 多少ノイズがあるようだが、今のところは安定してるな……。

 

 モニターとにらめっこしながらデータを分析していると、「おお! これが俺の召喚獣か!!」と嬉しそうに叫ぶ高人と、それを見た留学組の黄色い歓声。

 

「空天の召喚獣のくせに、意外とかわいいわね」

「武器とかはどういう基準なんだろうね。僕だったら何になるのか気になるな」

「空天殿うらやましいです!」

「あーデータだから触れないとは分かっていましたが……意外とかわいいのでお持ち帰りしたくなりますわね」

 

 と、なると必然的に俺の方へ視線が向くわけで。

 

「し「やらんぞ」

「そ「データ入力するの面倒」

「って、さ「これでも無理してるんだ」

「「無理なものは無理」私は何も言わせないんですの!?」

 

 時森の言葉を無視する形で俺は「もういいかー?」と高人に聞く。

 向こうでは、明久達によるレクチャーが始まっていた。

 

「いやなんでだよ」

「だって動かしたいって言うから」

「せっかく召喚したんだから、せめて動かしたいんだよ!」

 

 俺の質問に明久、高人の順で答える。その間高人は召喚獣を睨みつけながら頑張って歩かせていた。

 

「何とか初歩はできたようじゃな」

「……実際は走ったり武器を振ったり攻撃を避けたりする」

「その分難しくなるんだよ。そこがまた楽しいんだけどさ」

「なんか嵌るの分かるわこれ。こういうのあったら勉強も自然とはかどる気がするぜ」

「約一名効果の全くない、むしろ別な方面に効果が発揮されてる奴がいるけどな」

「ねぇ雄二? それって誰のこと?」

 

 明久の質問に視線を逸らす雄二たち。なので俺は容赦なく答えた。

 

「お前」

「嘘だっ! 雄二じゃないの!?」

「お前以外に誰がいる」

「ごめんなさい吉井君。擁護できないよ」

「……自業自得」

「どう考えてもお主以外おらぬじゃろ」

 

 と、全員でとどめを刺したら明久がシクシクと泣き始めたので無視し「もうそろそろ終わるぞー」と声をかける。

 

「お前ら時間ないだろ。それに、そろそろ不安定になるからフィールド消さないとまずい」

「まじでかー……まだまだやりたかったんだがなー」

「次回はないからな、たぶん」

「うおー! マジでやりたりねー!!」

 

 やたら叫んでる高人のことを無視し、俺は雄二に腕輪を効果を切るように指示してからパソコンのソフトを消していって電源を切り、「おら帰るぞお前ら」と促した。

 

 

 こうして留学期間は終わった。

 

 

 

 

 

 

 結果。

 

 

 うん。軍配はこちらに上がりました。向こうから抗議は上がっておりません!!

 

 ……あー疲れた。




一話が短いので物足りないかと思いますが、ご愛読ありがとうございました。

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