馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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相変わらず更新するのに間が開きます。お久し振りです


逃げるが勝ち

 放課後。

 買い物しないと食材無くなるからさっさと帰らないとまずいんだが、この後の展開を考えるとそれも厳しいかもしれない。

 

 そう。俺を巻き込んでの勉強会だ。

 

 ……いや、素直に断って行けばいいんだが、雄二が勘付く恐れがある。

 まぁそこはうまく話をそらして忘れさせれば……

 

「なぁ流」

 

 来た。

 しかも雄二から。

 

「何だよ」

 

 帰る準備を終えいつでも逃走出来るように警戒しながら話を聞くと、予想通りの言葉を口にされた。

 

「俺達の勉強を見てくれないか?」

「神童も落ちたもんだなぁ? 自分の勉強すらまともにできないなんて」

「くっ! 滅茶苦茶ぶん殴りてぇ……!!」

 

 図星を言われたことで拳を構えたらしいが彼は我慢し、「……確かにそうだ。俺はもう昔の俺じゃない」と口にする。

 と、その間に明久がこっちに来たので先に声をかける。

 

「雄二に何か用?」

「え、あ、うん。もしよかったら流にも頼みたいんだけど」

「よっし姫路さん達に声かけだな。任せろ」

「ちょっと待って!? なんでいきなりそういう話になるのさ!」

「お~い秀吉!」

 

 俺は明久の言葉を無視して秀吉に声をかけると、彼は「なんじゃ?」と荷物をもってこちらに近づいてきた。

 その動作が相変わらず女っぽいなぁと思いながら「明久が勉強会開きたいんだってさ」とあっさり言う。

 

「ちょっと流!?」

『な、なんだ、と…………!!』

 

 クラス内に衝撃が走る。万年最下位で観察処分者である彼が「勉強」なんて言葉を口にしたのだから。

 当然秀吉も目を丸くして「なんじゃと!?」と驚いており、その反応に明久はショックを受けているが自業自得だろう。

 

 この騒ぎに乗じて逃げ出そうと思った俺は、雄二に聞こえないぐらいの声で明久に「雄二も勉強したがっていたし、一緒にやったらどう?」と言ってから騒ぎに乗じて教室を出た。

 

 

 テストまでの間、俺は基本的にシステムの方へ行かなくてよくなった。まぁ夏休みの補習一人だけ前倒ししてることに関してはため息交じりにババアに説教を受けたが。

 そんな訳で普通に下校した俺なわけだったが、その普通とはどうやら、俺の思い描くようにいかないらしい。

 

「待ってくださいませんかお兄様!」

「待ってよお兄ちゃん!」

「お待ちください流様!」

「……待って」

 

 そんな声が後ろからかけられた。振り返るまでもなく、あいつらである。

 その声が聞こえた瞬間、俺は黙って駆けだした。

 

「なんで逃げるんですかぁ!!?」

「敵戦力増強なんて誰がやるかバカ!!」

 

 

 坂を全力で駆け下りてから俺は自宅とは逆方向へ走りあいつ等を撒く。そして息を整えながら速度を緩め、これからのことを考える。

 

 これから__つまりテスト前までの事。

 一応夏木さんが出ていくのは二日後を予定している。つまり、その間は何としても隠し通さなければならない。

 そもそも俺の家自体かなり厳しく情報統制している。だから安易に家へ招待する気がない。

 

 まぁつまり俺の家へ招待する以外――他の奴らの家での勉強会なら参加してやってもいいんだが、俺が参加しない方が結果的にいい気がする。

 まぁ念のために食材多く買って強制呼び出しに対応しておこうかなと考えながらこのままスーパーへ向かうと、その途中で電話が鳴った。相手は明久。

 

「もしもし」

『あ、流!? ちょっと聞きたいことがあるんだけど!!』

 

 何やら興奮気味にまくし立ててきたので、こんなに慌てて俺に質問してくる内容ってあれしかないかと瞬時に思い至った俺は「確かにお前の姉と同じ学校だったけど?」と冷静に返す。

 

『へ? あ、うんそうなんだ…………って、なんでわかったのさ!!?』

「聞きたいことなんてそれぐらいしか思い浮かばないから……それだけなら切るぞ」

『え、ちょ』

 

 何やら混乱しているようだったが俺は電話を切り、明日説明しなくちゃいけないのか……と空を見て思いながらスーパーへ向かった。

 

 

 あまりに遠回りしたせいか時間だけ無情に過ぎた形となったが、なんとか買い物を済ませ帰宅した俺。

 

 自分が普段使っている部屋にある程度の荷物を置き、残りの日持ちする材料が入った袋を持って夏木さんの部屋に向かった。

 

「ただいま。名前とか決まった?」

「うん。向こうに報告したら誕生日には住民票送るって……あ、ありがとね」

「あっそ。じゃ、それが送られたらいよいよ不動産探しか。これ置いとくから。暫く買い物いかないから、それで生活して」

「あ、うん。分かったよ……それにしても」

「ん?」

 

 玄関先に袋を置いたらエプロン姿の夏木さんが来て袋の中身を確認しながら彼女は呟いた。

 

「普通の生活って、結構大変だね。自分でやらないといけないから」

「一人暮らしはそんなものだよ。時間の管理しないとね」

「秘書って凄いありがたいんだね」

「そんじゃ」

 

 どうでもいい会話になりそうだったし、俺もやることが残っているので遮って戻った。




それではまた。

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