馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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雄二の家庭事情

 放課後。

 

 俺達は雄二の家へ向かって歩いていた。

 同じように留美達からの話を断って来ているので今頃向こう荒れてるのかなと(アデーレは向こうに行った)柄にもなくそんな心配をしながら歩いていると、「どうしたのさ流」と明久に声をかけられた。

 

「ちょっと明久の成績が上がるか心配で」

「ちょっと待って! だからこうして勉強会してるんじゃない!」

「じゃがどこまで身に付くかはお主次第ではないか?」

「うっ」

 

 秀吉が止めを刺してくれたので俺は何も言わず、代わりに「そういや久し振りだな、雄二の家へ行くの」と話を変える。

 

「ん? そうだったか?」

「小学生の頃傲慢不遜だったお前の鼻を折ろうと押し掛けた記憶が」

「…………」

 

 昔を思い出したのかさっと顔色が悪くなる。どうやら思い至ったらしい。

 それに気づいた秀吉が「どうしたんじゃ雄二」と声をかけたが反応がない。

 なので俺は口を開いた。

 

「神童って呼ばれてた頃の話。その時__」

 

 両親とも会ったな。そう言おうとしたところ、雄二が勢いよく振り返って眼で「それ以上喋るな」と訴えてきたので「軽くおちょくったんだよ」と真相を話す。

 

「豊橋って性格悪いとか言われなかった?」

「いや島田。こいつはそんな生易しいことばで収まるほど単純じゃないぞ。100の手元で1000つくれとか、提示されてない条件に文句いっても『訊かなかったから』で通すやつだからな」

「そんなものじゃね?」

「……今の雄二も似た者」

「そうだね」

「あははは……」

 

 姫路さんの乾いた笑いを聞いていたところ、雄二の家に到着した。

 

「そう言えば雄二の家って久し振りだね」

「そうなのアキ?」

「まぁ基本明久の家だからな。一人暮らしだし……入って良いぞ」

『お邪魔します』

 

 鍵を開けた雄二に促され俺達も家に入る。そしてリビングへのドアを開けたところ

 

「…………………(ぷちぷちぷち)」

 

 プチプチクッションを一心不乱に潰している女性の姿が一瞬視界に映った……ら雄二が瞬時にドアを閉めた。

 だがバッチリと見えた俺達は、我慢している彼に何と声をかけようかと言葉を探していると明久が恐る恐る訊いた。

 

「ねぇ雄二。今の人って……」

「赤の他人だ」

「さ、坂本の母親なの……? 凄い量を潰していたけど……」

「……凄い集中力」

「そういったお仕事をされているんですか?」

「だから赤の他人だ。何せお袋は今旅行にいってるんだから」

 

 珍しく本気で信じられない嘘をついて誤魔化そうとしてる雄二。このままばらしても良いが、どうせすぐ明らかになると思い黙っておくことに。

 と、此処で向こう側に動きがあった。

 

『あら、もうこんな時間? 続きはお昼を食べてからに』

「何やってんだよお袋ぉぉぉ!!」

 

 時間を忘れて八時間近くもやっていたと言う事実に夕方だと認識していない事実に耐えきれなかったらしい雄二はドアを勢いよく開けて叫ぶ。

 

 その姿を見て大変な家庭環境なんだなと察することは、明久でも出来たことだろう。

 

 

「皆さん初めまして。雄二の母の雪野と言います」

 

 そういって会釈した彼女の容姿を見て、恐らく若すぎるという印象を持っただろう。俺からしても変わってないような感じだしな。昔から。

 とりあえず挨拶がてら訂正しておこうかと思った俺は「お久し振りです雪野さん」と声をかける。

 それに対し彼女は俺を見て首を傾げてから、「あら? 流君? ずいぶん大きくなりましたね」と納得したらしく気付いてくれた。

 

「それにしてもうちの子より頭のいい流君はどうして?」

「あー……色々あって雄二と同じクラスなんです」

「あらそうなの。うちの子をよろしくお願いしますね」

「あ、はい」

「もういいだろ流。俺の部屋に行こうぜ」

「おう」

 

 急かすように言ってきたので雪野さんに頭を下げてから後をついて行った。

 

 

 が、せまい。いかんせん狭い。

 雪野さんがいるリビングでやるかどうか思案していると、島田さんの携帯が鳴った。どうやら両親が帰れなくて学園祭やプールの時に来た葉月ちゃんが留守番している状況らしい。

 だから帰るといった彼女の説明を聞いた雄二がそこに場所を移そうと提案したことにより、そうなった。

 

 家を出る時に親子の会話を聞いていたが……相変わらずな気がした。




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