馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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さらっと


Bクラス戦

 次の日。

 

「さぁやるぞ野郎どもおよび女性諸君! 準備はいいか!!」

「「「おぉーーーー!!」」」

「作戦は先ほど説明した通り! 気張っていくぞ!!」

「「「「イエッサーー!!」」」」

 

 テスト終わり直後とは思えないほどのテンションの高さに少し辟易するが、雄二の言う「作戦」の要である俺が低いままではどうしようもないので、クラスメイトに交じって返事をする。

 

「勝負は廊下での戦闘が始まってから! お前達、目指すべき場所は分かるな!?」

「「「「イエス、システムデスク!!」」」」

 

 それが合図になったかのようにチャイムが鳴り、男子どもの叫び声を聞きながら、俺は一人で気付かれることなく教室を出て行った。

 

 雄二の言う「作戦」のために。

 

 

 

 

 

 ていうか、こんなの「作戦」じゃねぇよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いたぞ、Fクラスだ!』

『たった一人だ! そのまま突っ切れ!!』

「それだけは困るんだよなぁ……」

 

 俺が今いる場所。それは、BクラスとFクラスをつなぐ廊下。そこにただ一人。

 なんだってこんなの任すんだよあいつ。なんて心で愚痴りながら、学年主任の高橋先生に言った。

 

「んじゃ、やりますので用意してください」

「分かりましたが……いささか不利では?」

「そこは知りません」

 

 そう言って俺は向き直り、腕を組んで足を大に広げて言った。

 

「Fクラス豊橋流! この場にいるBクラスの生徒全員に数学勝負を申し込む!」

「承認します」

『なんだとっ!』

 

 そう言って広がるフィールド。さすがに後ろまで届かなかったらしいが、最初にかけてきた十人は対象となった。

 

「んじゃ、行くぜ。サモン!」

『『『『『サモン!!』』』』』

 

 まず現れたのは幾何学模様の魔方陣。

 次に現れたのは……何故かローブ姿のちっこいやつ。

 

「「「「「「……???」」」」」」

 

 とりあえず俺の召喚獣だというのは分かるんだが、やはりというか全員が頭に疑問符を浮かべていた。

 俺も初めて召喚したので我が目を疑ったが、とりあえず「歩け」と命令してみると、てくてくと前方へ歩き出した。

 

 ……って、やばっ! どう考えても集中攻撃されるだろ、このままじゃ!!

 そう判断して「バックステップしながら戻れ!」というと、これまたその通りに動いた。

 

 動かし方がわからんから言っているが、なんとかなるもんだな。

 

 そう思った俺は、なんかあっけにとられているBクラスの奴らに攻撃することにした。

 

 とりあえずは……

「ダッシュしてから一番左端を殴り飛ばせ!」

 たったそれだけの指示で、一番左端は消し飛んだ。

「次! そのまま順に殴り飛ばせ!!」

 すると、何をしたわけでもないのに気付いたら十人全員が全滅していた。

 

「…………あれ?」

「戦死者は補習ぅーーーー!!」

 

 あまりにもあっけない終わり方に拍子抜けした俺は、突然の西村先生の登場にも驚かず首を傾げた。

 

 どうしてすぐに終わったのだろうか?

 そんな俺の心境を知ってか知らずか、いざ戦おうと思っていたBクラスの連中は『勝てるかーー!』などと絶望していた。

 

 仕方なく高橋先生に尋ねてみる。

 

「どうしてみんな来ないんすか?」

「たぶん、あなたの点数とその召喚獣の動きだと思いますけど……」

「へ?」

 

 そう言って俺の召喚獣の頭上の点数を見ると、『Fクラス 豊橋流 数学 943点』と書かれていただけで、別段おかしいところはなかった。

 

「そうですか?」

「…………」

 

 もはや何も言えない、そう言った感じに高橋先生がなってしまったので、俺は頭を掻いてから言った。

 

「……じゃ、続きやろうか」

『『『『断るっ!』』』』

 

 

 

 ……こうして、雄二の作戦通りかなんか知らんが、Bクラス戦は残り一人となった代表を俺がそのまま倒すことによって終結した。

 

 無論、クラスメイトに呆れの視線をもらいながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まぁ、なんだ。随分あっけない終わりだったが、とりあえず……戦後対談と行こうか、負け犬?」

 

 当初の予定が狂ったのか何やら知らんが微妙な顔をしながら、それでいて悪役みたいな雰囲気を出した雄二がBクラス代表(確か……根本だった気がする)に言った。

 

「まぁ本来なら卓袱台を送りたいわけだが、条件を飲んでくれるなら取りやめようと思う」

 

 まぁそうだろう。Aクラス目標なのにここで立ち止まる必要はないからな。

 俺が頷いていると、根本が聞いた。

 

「…………条件はなんだ?」

「何、簡単なことだ。とある服を着てAクラスへ試召戦争の準備はできているとだけ言ってくればいい。宣戦布告じゃなく、意思と準備ができているとだけ言えばいい」

 

 服? なんでそんなものを変える必要があるんだ? よくわからないんだが。

 そこら辺は根本も同じなのか、「……服?」と呟いた。

 

「一体どんな服を着せるつもりだ」

「ムッツリーニ」

「……あまり気が進まない」

 

 根本の質問に雄二が土屋を呼び、土屋はとある服をいつの間にやら用意していた。

 まるで事前に打ち合わせをしていたかのような流れに驚いたが、土屋の持っていた服に驚いた。

 

「なんで女子制服なんだよ!?」

「……秀吉コスプレよなんでもない」

 

 プイッと顔を背ける土屋。

 そう。土屋が持っている服がこの学園の女子制服だったのだ。

 

 ……本当、無法地帯だなぁ。

 

 土屋が言ったことをさらっと流して根本を見ると、いつの間にか気絶していた。

 

「さぁやろうぜ!」

「えぇそうね!!」

「「「…………」」」

 

 俺達そっちのけで盛り上がるBクラス。雄二もここまで盛り上がるのが想定外だったのか呆気にとられていたが、すぐさま表情を戻し「じゃ、始めるか」と宣言した。

 

 

 

 途中、根本の制服から封筒を発見した吉井が中身を見ようとしたら姫路が奪い取り、それで浮き上がったスカートの中身を見逃さなかった土屋が血の海に沈み、代わりに俺が写真を撮ったりする羽目になったが、あんなに大量に写真を撮る必要があったのかは甚だ疑問である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー豊橋のおかげで楽に終わったな!」

「そうそう! あいつが学年主席を超える存在だったとはなー」

「まぁなにはともあれ」

 

「「「「次はAクラスだな!!」」」」

 

 

 Bクラス戦終了のお知らせ。そしてクラスに戻ったクラスメイトがそんなことで騒いでいる中、俺は一人悩んでいた。

 

「……おかしい。絶対おかしい……」

「おい流。今回の功労者はお前なんだから……って、何をそんなにぶつぶつ言っている?」

「雄二。聞いてくれ。俺は今とても不可思議なことに頭を悩ませているんだ」

「……まぁ聞くだけ聞こうか」

 

 雄二が聞いてくれるそうなので、俺は言った。

 

「なんで俺の召喚獣の顔が見えなかったんだ!?」

 

 そう。何故かは知らないが俺の召喚獣はフードを深くかぶっているせいで顔が一切見えないのだ。

 あの後、高橋先生に無理を言って全教科で召喚してみたが、一切見えなかった。

 何度やっても何度見ても、一切顔を見せない俺の召喚獣。

 他の奴らはデフォルメっぽくなっているのだから俺の召喚獣の顔がどうなっているのか気になるのに、一切見せない俺の召喚獣。

 その事に頭を悩ませていた。

 

 なのに雄二はと言うと、なんか引いていた。

 

「お前……ナルシストになったのか?」

「違う! 俺はただ自分の顔がデフォルメされたらどうなるか知りたいだけだ!!」

「……やっぱりお前、変わってないな」

 

 あー畜生。すげぇ気になるってのに、何この生殺し感。酷過ぎるんだけど。

 こうなりゃ学園長室に乗り込んで詰問でもしてやろうか……なんて思っていると、声をかけられた。

 

「大活躍だったね、流」

「……あれが活躍の範囲内であればそうだな、明久」

「あーーー」

 

 明久は俺の話を思い出したのか、気の抜けた返事をした。

 そこに木下や土屋まで加わった。

 

「そう謙遜するでない。たった一時間で943点とるなど、もはや教師以上じゃ」

「……学園最強」

「ていうか、どうしてそこまでとれるの?」

 

 明久に聞かれ俺は少し考えてから答えた。

 

「……習ったから、だな」

「「「それはおかしい(ぞ)」」」

「そうか?」

 

 習ったものを覚えてるだけで別段おかしいわけじゃないんだが。

 三人の反応を不思議に思った俺は、おかしいか~? と腕を組んで考え始めたが、そこに雄二が加わった。

 

「まったくお前は……昔と変わらず自分を基準に考えるのはやめろ」

「俺は基準にしてないぜ、最近は。俺の周りにいた奴らを基準にしてる」

「お前の周りは優秀な奴らしかいないのか!?」

「まぁそんなことより。「話を逸らすな」次、Aクラスだな」

 

 俺が次のことを言うと、雄二たちの表情が一気に硬くなった。

 まぁ分からんでもないが。最終決戦、ゲームで言うとラスボスにあたるクラスだからな。緊張するのもわからんでもない。

 

 そう思いながら、俺は笑って励ますことにした。

 

「な~にここまでやって来れたんだ。うちのペースに巻き込んで勝ちに行こうぜ?」

 

 ややあって、雄二も同じく笑いながら言った。

 

「……そうだな。学力だけがすべてじゃないって証明してやるんだもんな」

「そうじゃの。夢物語のようじゃったが、手が届くところまで来たんじゃな」

「…………目指すべき頂は目前」

「よし! 頑張ろう、みんな!!」

 

 そう言って明久は見渡したが、すでに帰った後らしく、俺たち以外の人間はいなかった。

 

「「「「「…………………………」」」」」

 

 黙る俺達。そこに、

 

「なんだお前らまだ残ってたのか。さっさと帰れよ、まったく」

 

 西村先生が見回りに来たらしくそんなことを言い、去っていった。

 

「……じゃ、帰るか」

「そうだな」

「うむ」「(コクン)」

「待ってよみんな! そんな冷静な態度が逆に悲しい配慮だよ!」

 

 こうして、俺達は帰ることになった。

 

 

 

 

 

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