馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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お久し振りです。バカテス完結が十年らしいですね。マジか……


家について

 結局家を出てから少しして彼女が駄々をこねたので明久が出て来るまで付き合い、四人で帰ることになったのだが、島田さんの家で変な写真を見たのか会話がかみ合わない状態だった。

 

 で、雄二は駅の方、明久と姫路さんは同じ方向ということらしい。俺はばれたくないのでその時点でさっさと一人で帰ることにした。

 

 夏木さんの滞在期間はまだ伸びそうだ。住民票や戸籍の準備が出来ておらず住む場所の候補が上がっているのに契約できるところまで行っていないのだから。それが彼女にとって嬉しい事らしいけど。俺からしたら迷惑。

 

 

 ……住民票とか戸籍、どうやって送ってくるつもりなんだろうか。俺の住所知らないだろうしあの家。

 

 寝る前にそんな今更な疑問が浮かんだが、向こうがやるだろと思い直し気にせず寝た。

 

 

 翌日。

 メンテがないのでゆっくりと登校しても問題ないのだが、誰かと遭遇することを考えると今まで隠していた場所が判明してしまう恐れがあるので相変わらず誰も登校しない時間に登校。夏木さんは今一般人の常識及び身の振り方を学んでいるところなので干渉する気はない。向こうから話しかけて来るけど。

 

 ……そういや、李里香さん。最近忙しいとか言ってたっけ。書類も何日か毎に置いてあるようだし。

 ひょっとすると夏休みの間はそっちにかかりっきりになりそうか……? いつも通り壁をよじ登って構内に入った俺は、誰もいない間に会社の状況を確認しようと考えた。

 

 

「……李里香さんに長期休暇渡さないとなぁ」

 

 彼女に連絡を取って現況を聞いてみたところ、新作の発表会とかでバタバタしていたらしい。自分にほとんどの裁量が任されているのでここしばらくは大変でしたと聞いた時、素直にお疲れ様と言った。実際相当大変だっただろうし。

 こりゃ、夏休み中は学校に構っていられないな。そう思った俺は手帳を開いて予定を書き込んでいくことにした。

 

 

 普通の登校時間になったころには机に突っ伏して二度寝している俺。朝食は学校で弁当(コンビニで買った。昼食は自炊した弁当)を食べるのがもう日課になっている。

 とはいえこの日課もさすがに飽きた。そろそろ俺の家が判明しても気にせずに行ける気がするし。

 でも知られたくない人間というのは一定数いるからなぁ……。

 

「あぁー……」

「うおっ、流! お前だったのかよ! 来るの早すぎるだろ!!」

「……雄二か。おはよう。まぁ誰も来ない時間帯に来てるからなぁ」

「なんでそんな馬鹿な事……いや、家を教えたくないからやりそうなことか」

「そうなんだよー。でもぶっちゃけ面倒じゃん? 小人数しか知らないで済む方法とかないかなぁとか考えているんだけどよ。人の口に戸は立てられぬとかいうからどうあがいても知れ渡ることになるのが分かっているとまた、なぁ」

「なんというか、お前のその保身に対する努力に驚くわ」

 

 そんな会話をしていると、「そういえば歩く天災。あなた、学園長と一緒に住んでいないようですね」と但野が口を挟んできた。

 

「お前に関係あるのかよ?」

「面倒事になるなら調べるのはこちらの基本でしょうに。ですが、肝心の住んでいる場所が不明なんですもの。面倒すぎますわ、あなたに直接訊く位には」

「お宅らが絡んでこなきゃ俺から絡まないよ。それぐらい知ってるだろうが」

「知っていても不安が残れば調べるに決まっているでしょうに。で、現在の住所は?」

 

 ド直球に訊いてきたのでどう答えたものかなと卓袱台に肘をつけ拳に顎を載せながら考えていると、「朝からどうしたの但野さん、流」と明久が混ざってきた。

 

「あら明久様。おはようございます。今日も身だしなみを整えておられるのですね」

「ははは。そうでもしないと減点が怖くてね……」

「まぁ。良いお姉さまではありませんか。気を引き締めてくださっているのですから」

「そうなのかな……?」

 

 玲さんの行動にそんな意味があるのか疑問らしい。

 俺もそれに関しては疑問に思えるが当事者ではないので「というより、俺の住所を知って何するんだよ」と訊いてみる。

 

「知っていれば何かと便利ですし、安心も出来ますわ……というのは親の言。正直、あなたをそこまで警戒する理由はないと思うのですがね」

「長浜はどうなんだ?」

「あちらはあなたのやってきたことをほとんど知りませんから。警戒する理由も、少しでも情報を集める理由もないでしょう」

「?? 二人とも何を話しているの?」

 

 俺達の話題がついていけていないのか明久が首を傾げる。それに対して説明するかなと思い視線を向けたところ雄二の姿がない。

 

「雄二は?」

「霧島さんが」

「ああ……逃げられなかったか」

「姫路さんも週末以外外出禁止にされちゃったらしくてさ……勉強会が難しくなったんだ」

「あ、マジで?」

「うん」

 

 霧島……あの体躯に似合わず雄二より強いのか……変わり過ぎだろ。

 さすがに怖いなと思いながら、どうしたものかと考えていると霧島が明久の後ろに来ていた。赤色に染めて。

 頭を抱えたくなる状況だがそうもいっていられないので友達の窮地をどう救おうかと考えていると、週末霧島の家で勉強会をしてもいいという話になった……俺も含めて。

 願ったりかなったりな状況にみんな喜んでいたが、面子が俺達だけじゃないのは確定だろうなと一人冷静に考えていた。

 

 

 昼休み。

 

 雄二は早退(入院)で不在なので霧島は来ていないから明久と康太、秀吉と俺の四人で食べている。

 

「それにしても週末は霧島さんの家かぁ……泊まり込みになるのかな?」

「まぁそうじゃね? わざわざ週末って言ったんだから」

「しかし学年一位の家で勉強会とは……またすごい状況じゃの」

「……流もいる」

「そうだね……でも僕、流に教えてもらったことないな」

「あ? 教えられなくはないと思うが、面倒だな」

「酷くない!?」

 

 抗議の声を上げる明久。俺は無視して「週末まで勉強どうするんだ?」と訊いてみる。

 

「まぁ各々でやるしかないじゃろ」「……一人で勉強」「確かにそうだね」

 

 まぁ予想が出来たので少し考えてから「……俺の家でやるか?」と静かに切り出す。

 

「……まぁ流れがいいのなら。って、えぇぇぇ!」

「うるせぇ! 静かに飯を食え!!」

「いや、驚くのも無理はないぞ。教えないと散々言っておったんじゃから」

「(コクコク!)」

「どうしたのさ一体!」

 

 明久が問い詰めるように訊いてきたので「隠すのが面倒になってきたんだよ流石に」と肩を竦めて答える。

 

「なら留美にも教えていただけるのですね!?」

「絶対に教えねぇ」

「そんな!?」

 

 さりげなく出現した外野を無視し「で、どうするお前ら?」と確認する。

 

「え、いいの? それなら嬉しいんだけど」

「それはわしらだけなのかの?」

「話振っているのはお前ら三人だけだよ」

「……それなら」

「うむ。断る理由はないの」

「お兄様! ぜひ留美にもお教えいただけませんか!?」

「いやだよ。お前の親父に訊け。なんでか知ってたぞ俺の家」

「お父様が!? そ、そんなこと何も仰られていませんでしたのに!」

 

 そういうと留美はそのまま教室を出て行った。

 こうなったら出たとこ勝負か。そう思っていると、「あら、案内してくださるのかしら態々」と但野が混ざってきた。

 

「お前が面倒事を持ちこまないというならな」

「……。どうしたんですの? 熱でもおあり?」

 

 どうやら気味悪がっている様子。そりゃそうだろう。が、これでも現状を取捨選択して出した結論だ。

 

「お前のことだから住所知ったらハイ終わりにする気だろ? 厄介事を持ち込まれなければ別にいいと思い始めてな」

「なるほど。『信用』している、と」

「そういうこった」

「あれ、だったら鈴鹿さんにも教えてあげてもいいんじゃない?」

「……やっぱりバカだな」

「直球!? 酷くない流!」

「今のは擁護できませんわ明久様。要は自分の家に騒動を持ち込まれたくないから隠していたってことなんですから。留美たちが知ったらこいつが騒動に巻き込まれることを確信しているのですわ」

「……あ、なるほど」

 

 相変わらず説明がうまいな。バカ専だからなのか、難しい言葉を使わずに出来る説明が。

 それに聞き耳を立てられていることに気付きながらもあえてスルーした俺は、「そろそろ昼食終わるぞ」と弁当を片付けながら三人に言った。

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