はい翌日。
とりあえず学校に行って普通に回復試験受けて(なんか昨日より難しかった)、まぁいつも通り宣戦布告しに行くわけなのだが。
「なぁ雄二。俺とお前だけで良かったと思うのはなぜだろうか?」
「……そうだな。今更だが、ムッツリーニとあ―バカや姫路達は置いてきても良かったかもしれないな」
「雄二! 今僕の名前を呼び掛けてバカと訂正しなかった!?」
「聞き間違いだと思うぞ、バカ」
「もはや名前すら呼ばないのかこの悪魔!」
「あー……失礼しまーす」
なんかAクラス前で漫才やるのもバカらしく思えたので、さっさと入る。
転校初日に覗いたときから思うのだが、なにこの無駄な設備。たかがAクラスでこれなんて、本当にひどい格差だな。
普通にシステムデスクだけあればいいんじゃねと予算削減および新クラス設立しようと思った時の構想を瞬時に考えながらAクラスに入ると、生真面目そうなやつが近づいてきた。顔がなんか木下に似てる。
双子なのかねぇと思いながら、「ちょいっと霧島さん探してるんだが、どこいるか知ってる?」といつも通り人の良さそうな笑顔を浮かべながら訊くと、「代表に何か用?」と返ってきた。
さっさと終わらせたいので俺は用件だけを述べた。
「うちの代表が宣戦布告しに」
「「「!?」」」
クラスの空気が一変し、警戒態勢をとるのが分かる。
目の前の女子も警戒しているので面倒になった俺は教室から少し出て雄二を連行し、その少女の前に突き出してから「こいつ。こいつが宣戦布告しに来たの。だから話位聞いてやってくれね?」とお願いした。
「え、えぇ…分かったわ」
「…ナイスだ流」
襟首を掴まれながらもそう言ったので、パッと手を放す。
放された雄二は少女の前で襟首を正してから、「じゃ話し合いすっか」と後ろにいる明久たちを部屋から追い出して言った。
代理として話し合いの場にいるらしい彼女――木下優子は名前の通り木下の姉らしい。パッと見好戦的な態度が隠せていないので、おそらく木下は苦労しているだろう。
で、雄二と木下姉はテーブルを挟んでソファに座って交渉を始めた。…場違いな感想だと思うが、雄二は悪役が似合うな。昔は本当に優等生みたいだったのに。
となるとあっちはどうなってるのかなぁと思いながら雄二の後ろでボディーガードのように立っていると、俺の後ろから件の人物の声が聞こえた。
「…流?」
俺は振り返らずに片手をあげて返事をする。
「おう霧島。約六年ぶりか?」
「…別に翔子で構わない」
「目の前にいる悪友に殴られたくないから、パス」
「…ということは、
「ああ……って、霧島は反対側だろう。俺たち敵なんだから」
「……そう」
「ん? 来たかA組代表。霧島翔子」
「代表!」
木下姉と雄二も気づいたらしく声を上げる。その声に反応して霧島は木下姉のほうへ移動し、今までの流れを聞いてきた。
「どこまでいった?」
「五対五の一騎打ちをやることぐらいかしら」
「そっちに二回の科目選択権をくれてやるって話も忘れてんじゃねぇぞ」
本当は一科目の選択権だけ与えるほうがいいんだがな。それでもこちらの勝つ見込みが少ないし。
そのことを言いたかったのだが、雄二がとても自信満々だったので、俺は特に何も言わなかった。
俺だったら、挑発を混ぜてFクラスの現状を伝えてそれでこっちの要求全部飲まないなんてせこいな! ぐらい徹底的に負ける要素省くんだがな。
会社の乗っ取りとかって大体そんなものだろ。弱みを徹底的につついて、自分の会社に乗っ取られたらこういうメリットがありますよと吊り上げて、食いついたら契約完了してるって感じ。
あー学校なのにあっちのこと思い出しちまったぜ、まったく。なんて思っていると、「なら、そこにルールを追加してほしい」と霧島が俺を見ていった。
雄二は少し考えて答えた。
「こいつは一騎打ちに出ない。学力だけがすべてじゃないって証明するために」
「そうじゃない。この一騎打ちが終わったら、私と流を勝負させてほしい」
その言葉の中の隠れた意図に気付いた俺は、すぐさま断った。
「いやだね。どうせ
「留美は今も泣いてる。誰もいない場所で、ひっそりとあなたのために泣いている。それが分からないの?」
「泣く理由は人それぞれだろうが。俺のためっていうなら、泣かずに普通に生きやがれって伝えとけ。
「…。なら、留美は――
「知らん。支えなんて周りにたくさんいるだろって伝えとけ」
「真面目に答えて」
「俺は至ってまじめだが?」
「「…………」」
ついに睨み合いに発展した。どちらか引けばいいのだが、どちらも引く気がない。
そりゃそうだ。俺はもうあそこから縁を切られた。完全に見放されたんだ。なのになぜ一人で社会の波にもまれながらも生きてきて、静かになったと思った途端に会わなくてはいけない。
対してあちらは、
学園長よりは深く知らないだろうと思いながら、俺はため息をついて言った。
「言っておくが、俺の人生は俺のものだ。今更泣いてこっちに来たところで、すでに縁が途切れている。よりを戻すとかは絶対にありえない。言葉を交わすこともな」
「…………それは流が決めているだけ。留美はあなたを未だに家族の一員だと思っている」
「なら言っておけ。お前の父親の言うとおり、
「流!」
久し振りに聞いた霧島の怒鳴り声。誰かのために本気で怒れたり泣いたりできる
心なしかゆらゆらとオーラが見える気がするが俺は取り合わず、「あと頼んだぜ、雄二」と言ってAクラスを後にした。
「どうしたの流? なんか怒った声が聞こえたけど」
「別に。ただ久し振りに会ったから喧嘩しただけだよ」
「仲直りした?」
「そういう問題じゃないんだよ、その喧嘩は」
「待ってよ!」
明久がしつこいのでそのまま教室へ戻ろうとすると、こいつもくっついてきた。どうやら、先程の霧島との会話の一部が聞こえていたらしい。それを聞きたいがためについてきてるようだ。
こいつ本当にお人よしだなぁと思いながら、こうなるまでにクラスで起こったことを思い返した。
「さて、いよいよAクラスだ。ここまで俺を信じてついてきてくれたこと、感謝する」
「というか、お前前線で戦ってないが大丈夫か?」
「大丈夫だ問題ない」
あーこりゃ負けるな。こいつ昔から詰めが甘いからなぁ。
そんなことを思った俺は、周りが盛り上がっている中卓袱台に顔を伏せて寝た。
という訳で目が覚めたというか起こされた時にはなぜか雄二が俺を盾にして(見た通り力あるな)おり、俺達はクラスメイト(ただし女子と木下と明久は除く)に靴下を構えられており、明久は島田さんと姫路さんに追い詰められていた。
「一体どうした?」
「幼馴染だと言ったら狙われた」
「で?」
「だからこいつは翔子と昔近所だったと言っておいた」
「そうか」
それだけで大体理解した俺は、後ろに隠れている雄二を右のひじで打ち付け(おそらく顔面)て排除し、息をすってから大声で怒鳴った。
「大概にしろお前ら!! 次はAクラスだろうが! …勝てるものも勝てなくなるぞ」
『『『それとこれとは話が別だ!!』』』
「元凶伸びてるんだからいいだろうが!」
『『『お前がやったからだろ!?』』』
「伸びてるうちに恨み晴らせや!」
『『『……その手があったか!』』』
ついつい言ってしまった言葉に罪悪感を感じたが、事を起こしたのがこいつだから別にいいよなと思いながらサソリ固めを食らっている明久を見てため息をついた。
――――それがこの教室に来る少し前の話である。
「はぁ……」
「さっきからどうしたの流? なんかすごい疲れた顔してるけど」
「今日が結構疲れたからじゃね?」
「あー確かに」
教室に戻る道中。仕方なく俺は明久と会話しながら歩いていた。なぜかついてきたから。
「今からやるのかな?」
「どうだろうな。準備関係でひょっとしたら明日になるかもしれないし」
「そっか…いよいよだね」
「ああ」
そう言えば何の疑問も抱かなかったが、どうして俺達はAクラスを倒すことになったんだったか。気付いたらそんなことになっていたから良く分からな……そういえば、福原先生が出て行った後に明久と雄二が出て行ったな。ひょっとしてその時か?
「どうしたのさ」
「いや、お前らが発端でここまで来たんだろうなって」
「な、何言ってるのさ流。それじゃまるで僕と雄二が企てたみたいになってるじゃないか」
「とか言いつつ思いっきりキョドッてるぞお前。黒だろ」
「そ、そんなことない! 僕は決して姫路さんのためなんかじゃ……」
「なるほどなぁ。好きな人のためか。良く乗ったな雄二も」
「だ、だから違うって!」
「いやでも雄二の奴が今霧島のことを好きだったなら……あり得るかもしれない」
「違うって……って、え? 今なんて?」
「バカなのに勘が鋭いのか目ざといのか。まぁいいやなんでもねぇよ」
「さらっと流まで僕の事を馬鹿と言った!? ヒドイや!」
そんな会話をしていると、いつの間にか暗い気持ちが消えていた。不思議なものだ。
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