さて、Aクラスとの試召戦争だが。
さらっと行くと俺達が当たり前のように負けた。二対二のいい勝負で、雄二のバカがバカやった結果負けた。まぁ如何に霧島が間違える場所を知っていたところで勉強しなければ意味はない。
そんでもって霧島が勝った時の条件(俺は知らないからおそらく出て行った後だろう)を使って雄二に結婚を強制して雄二の方が袋叩きに合う直前になったり、西村先生が担任になり補習という絶望に送りこまれたFクラスが次こそAクラス獲ってやる! と叫び、明久は姫路さんと島田さんの二人にデートの誘いという名の強制連行で消え、雄二も似たような感じで消えた。
ちなみに。霧島があまりにもしつこいので勝負を受け、とりあえず瞬殺して黙らせた。その時の教科は数学で、点数が700いってたかな確か。で、普通に「やれ」といったら霧島の召喚獣は一瞬で消えた。霧散したって言葉が当てはまるぐらい早く。
……で、帰ってきたんだが……
「社長。ずいぶん遅かったですね?」
「李里香さん。何人の家の玄関でたむろってるんですか。不法侵入で訴えますよ」
「すいませんでした」
なぜか玄関で現社長の李里香さんがたむろっていた。
ちょくちょく出てるけど説明しなかったから今説明するけど(というかそんな機会なかったけど)、俺ね、ここ来る前は会社経営してたんだよ。名義はちょっと副社長の名義だけど、実質的なトップってやつ? ま、自慢にもならない話だが。
で、その副社長が現社長の金成李里香さん。俺当分会社行かないから社長やってねと言ったら書類だけ回してくる酷いけど結構有能な人。出来るキャリアウーマンの鏡じゃないかな。
ちなみに会社はゲームソフト製作会社。規模としては成長中だが社員数三百人を超え利益は六億ぐらいだったか? あまり興味がないというか金稼ぐのに手っ取り早かったのがこの業界だったからな。
ま、未成年なのでちょっとした事情で知り合った李里香さんに起業申請してもらったり色々矢面に立ってもらったんだけど。
そんな感じで割と重要な役割を任せてるので住所を教えているんだが……割と来るのが初めてだったりする。
「どうしたんですか?」
「社長の存在がばれてあそこがすぐに面会を要求してきました」
なんら気負いもせずに淡々と用件を述べてくれる。それはありがたいんだが、正直彼女との意見が食い違ってないかどうか確認するために「あそこって財閥?」と質問すると、黙ってうなずかれた。
あーやっぱり思ったより早かったな。色々と煙に撒いてセキュリティ掛けたのに。
そんなことを思い浮かべながらため息をついた俺は、「ちょっと待ってて」と言ってアパートの玄関へ入る。このアパートの土地含めて買ったからね俺が。知り合いの不動産に掛け合って。
全部屋(といっても二階建てで部屋数は十)の三部屋ぐらいしか使ってないんだけど。
その内の一部屋――いつもの生活スペースに入った俺は、制服を脱ぎ捨てて鞄をソファに放り投げ、スーツに着替えてネクタイを締め、取りあえずビジネスバックを片手に革靴を履いて部屋を出る。もちろん眼鏡をかけて印象を変えることも忘れない。伊達だけど。
腕時計とか忘れたとか思いながらそのまま玄関を出た俺は、待っていた李里香さんに「じゃ、行きますか」と軽い口調で歩き出す。
そのすぐ後に、彼女は黙ってついてきた。
しばらく歩いたら駐車場に車を止めたと言われたのでそちらへ向かい、車で(もちろん李里香さんの運転で)会社へ向かう。
「学校の方はどうですか?」
「学園長に掛け合ったがクラスは変わらないって言われた。まぁ今いるクラスの奴らが面白いから別にいいけど」
「それは良かったですね。こちらは社長がいなくなってから色々と大変です。合併話を全部突っぱねたり新作ソフトを作ったり。売れ行き的には好調ですが」
「そんなに嫌なのかよ」
「いやという訳ではありません。ただ、社長がどうして今更学校に通うのかわからないだけです」
「だって俺、
「え?」
俺の言葉が衝撃的だったのか少しカーブに対する反応が遅れる李里香さん。
知ってるはずなんだがなと思いながら、「俺はちゃんと自己紹介しましたよ。
「そうだったんですか。そこまで想像が及ばなくてすいません」
「別に些細なことだからいいけど。それに、今回の入学はババ……学園長の『依頼』だし」
「それも初耳です」
「ま、くれぐれも内密にって言われてたし」
そう言って俺は背伸びをする。
「ていうか、これからクラスの設備落ちるんだよな……」
「ああ。試召戦争ですか」
「そうそう。Aクラスとやって負けたからさ。卓袱台から段ボールだってよ」
「……それ勉強できないじゃないですか」
「意外とできるかもよ? 貧乏学生のテーブル代わりになってるし」
「かなり特殊ケースですね……あ。着きました」
「さて。面倒だ」
車内でそんなことを呟きながらも表情を真剣にし、目の前のリムジンが駐車されている建物へ、反対車線から歩道におりて横断歩道で向かった。
「ウィーッス」
「社長。お客様なら会議室でお待ちです」
「正直面倒なんだけどよ」
「行ってあげてください。社員一同萎縮しています」
「了解了解」
もぬけの殻の高級車を見ながら三階建ての建物に入った俺は、受付嬢と少し応酬してから言われた場所へ向かうために階段の方へ歩き出す。
エレベーターやエスカレーターはあるけど、重要な部屋の近くへ行くには階段が一番手っ取り早い。
それは、非常時を考慮した配置になっているから。というか、俺が考えたんだけど。
なんか自分で自分の首を絞めた気がするな…と思いながら階段を上る。一歩一歩踏み出すごとに、段々息苦しくなっていく気がする。
あー本当になんでこんなことになっているのかね。すべて捨て去ったというのによ…。
明らかに気が沈んでいるけどどうすることも出来ないからどうしようと思いつつ三階まで上ってしまった俺は、盛大にため息をついてから意を決して会議室のドアをノックもせずに開ける。マナー違反? どうでもいい。
開けた俺は視線を下へ向けたまま会議室の中に入り、閉じてから来客者の顔を確認するために顔を上げる。
そこにいたのは
「お久し振りでございます、豊橋流様。いえ――
――――霧島との話で出てきた、勘当させられた家の中で唯一気味悪がらなかった人だった。
割とすぐに二巻の内容へ飛べるかもしれません……まぁ、其の前にあの話がありますが。