自称レジスタンスな鬼人に身体を持って行かれたので、彼女の身体で逃げ延びます。 作:クリティカル
初めての方は初めまして。
クリティカルです。
今回のテーマは『入れ替わり』でやって行きたいと思います。
リハビリもかねて書いています。
この作品及び他の作品でもどうか皆様最後までお付き合いお願いします。
突然だが、入れ替わりという現象を信じるだろうか?
オレが昔見たドラマでは、階段から転げ落ちた男女の身体が入れ替わった。
また、最近見た映画では、時間を超えて男女が入れ替わっていた。
何故今こんな話をしているのかと、当然疑問に思っているだろう。
答えは簡単だ。
「ありがとよ。名前も知らねぇおまぬけさん」
壁一枚越しに嘲笑う目の前の女に身体を入れ替えられたからだ。
彼女‥‥嫌、オレの身体を手に入れて目の前‥‥正確にはオレの部屋の鏡の前で満足げにクルクルと上半身を左右に回したりペタペタと顔や身体を触ったりする『鬼人正邪』と名乗った女だ。
そいつは、突然表れた。
いつものように部屋でグータラしていたら、鏡にコイツが写ったのだ。
そして、気付けばこの状況。
まさか鏡越しに自分の身体を眺める日が来るなんてな。
「その身体はやるよ。せいぜい逃げて生きろよ‥‥‥じゃあな」
「あ、お、おい!待てオレの身体!!」
パリィィン!
目の前のガラスが割れると、同時にオレの視界は白い光に包まれ----
「ここ‥‥‥何処?」
全く知らない場所にいた。
見渡す限り大きな湖。
その先には、霧がかった大きな赤い館?がそびえ立つ。
(ここが、あいつの世界?)
ふと、湖の水面に自分を写すと、やはり写るのは自分の顔では無く入れ代わった少女の顔だった。
白と赤のメッシュらしきものが混じった艶のある黒髪に、胸元には上下逆さまなリボン。
矢印がいくつも重なったワンピース。
そして、オレを獲物として見ていたルビーのように赤い瞳と、頭に生えた二本の角。
間違いなく人間じゃない。
「まるで鬼だ」
全く理解が追いつかない。
悪い夢なら是非とも覚めてもらいたい。
ドラマや映画を見るのは好きだが、ドラマみたいな展開に巻き込まれるなんて経験は誰が想像できたであろうか?
「なんでオレなんだよ‥‥‥」
頭から生えている角を指で突きながらぼやく。
はぁ、とため息を吐き現実逃避と座り込む。
パリンッ!
「イタッ!?」
チクリと尻に何かが刺さる。
(なんだ?何か、
あの鬼女と話をしたときも鏡越しだったな。
嫌な予感がしてそーっと、立ち上がる。
座り込んだ場所には、破片が何枚かくっついているだけの手鏡があった。
よくこういうシーンだと、誤って壊したアイテムがまさに鍵となる重要な物だったりするのだが‥‥‥‥‥
「まさかな」
ないないと、頭で否定しようとするも、額からは冷や汗が、胸の鼓動は既にバクバクと音を鳴らす。
タイミング的にどう考えてもコレだろうと。
「ここにいましたか」
「え?」
バシュン!
声のする方に振り向いた瞬間頬を淡いピンクの光が通りすぎツーと生暖かい液体が頬を伝う。
「ーーーーーーーーッ!!!?」
突然だった。
「随分と逃げ隠れしてくれましたね、天邪鬼」
オレの目の前に表れたそいつは、血のような真っ赤な瞳に氷のように冷たい殺意を乗せて、スッと人差し指を前に付きだし銃の形を作るウサミミで女子高生を思わせる制服を着たの少女。
だが、その人差し指を向けられた身体は本物の銃を向けられたように恐怖に駆られていた。
「貴女にもう逃げ場はありません。一緒に来てもらいます」
だが、声は前からだけでは無かった。
いつの間にかもう一人------後ろから人差し指を付きつけてきた。
「そして、永遠亭から盗み取った物を返しなさい」
「貴女にはスペカルールを守る必要はありません」
「よってこの場で殺す事も許可されています」
二人、三人四人。
一瞬にして同じ顔の少女達がオレを人差し指を向けて囲む。
「おいおい、さっきから何言ってるんだよ!?指名手配?スペカルール?永遠亭?それに、殺すだなんて物騒な‥‥‥」
バシュン!
先ほどと同じ光が通りすぎたと思えば、右肩に火で焼かれる暑さと太い針で刺されたような鋭い痛みそして、そこから広がるとても熱い血。
「ガッ!ア、アアアアアアーーーー!!!」
「今更しらを切り遠そうとしても醜いだけですよ?」
殺される。
これが夢じゃなく現実で、ここが何処で、この身体の持ち主が一体何物なのか、何やらかしたのか、こいつらが誰なのかそんなのが一気にどうでも良くなった。
逃げなくちゃ。
こいつらから。
『せいぜい逃げて生きろよ』
「う、うわああああああああああああ!!!!」
ダッと、ウサミミ少女達に背を向けて森へ森へとがむしゃらに走る。
後ろから何本もの
止まれば死ぬ。
理由なんてわからないがそう確信していた。
とにかく走って走って走り近くの大木に身を隠す。
向こうでは四人のウサミミがキョロキョロと当たりを捜索していた。
完璧に警察と犯罪者の図だな。
「逃げて生きろ‥‥か」
勝手な事を言いやがる。
恐らくーーーーいや、この身体の持ち主は間違いなく追われるような何かをして命を狙われているのだろう。
そして、なんらかのファンタジーな力でオレの身体をこっちの世界から奪い取った。
つまりオレは影武者役って訳か。
「どうすりゃ良いんだよ」
無理だろ。
オレは、追われるような人生歩んでないし、喧嘩だってガキの頃くらいでもう何年もしてないしそれなりに平和に生きてきた何処にでもいる学生だぞ。
こんなところで生きなりリアル鬼ごっこなんて訳がわからないにも程がある。
「せめて、何かお助けアイテムとかがあればなぁ」
そもそもあのウサミミ達、指名手配とか言ってたし、結構探してたような口振りだ。
それくらい有名なら何かお助けグッツの一つや二つくらい。
鏡の入っていたポケットとは別の方を探ると、先端を蝶結びされた手の平サイズの小さな巾着袋のような物だった。
藁にもすがる思いで、その袋を開けて中身を取り出すと、この袋は四次元にでも繋がってるのか?と思うほど収まりきれない物や明らかに大きな物も出てきた。
だが期待したオレが、大バカだった。
なぜなら出てきたのは、カメラに女の子の人形、ミニお地蔵、ただの布、陰陽柄のボール。折りたたみ傘に花火玉(本物かな?)提灯それに昔話の一寸法師にあった打ち出の小槌‥‥‥の多分玩具。
「ガラクタばっかりじゃねぇかよ!」
どうすんだよこれ。
どれもこれも使えなさそうなの入れやがって。
こんなになんでも入る袋ならせめて包丁くらい入れとけよ。
ズルッと、木に背中を預けてその場に座り込む。
良くこんな物で逃げて生きろとか言ってくれたもんだ。
「現実逃避は済みましたか?」
追いついたのか全く同じ顔の三人が、オレに人差し指を向けていた。
もうこいつらは文字通り指先一つでオレを殺せる事は、理屈抜きで分かる。
「マジで理不尽過ぎるだろう‥‥‥」
正にどう足掻いても絶滅ってやつでしょこれ。
人の頭って、ここまで死を覚悟させられると、一周廻って冷静になるもんだなぁ。
走馬灯を見せてくれるサービスも無いのか。
こんな訳わからん所に来たと思えば、追われるし、手荷物はガラクタだし。
「もう一度問います」
「貴女が盗んだ姫様の手鏡」
「今此処でそれを大人しく返すと言うのであれば、この場は見逃します」
手鏡――――そうウサミミの一人が言った事には心当たりがあった。
この身体の持ち主が盗んだ物とさっきこいつらは言っていた。
さっき割れたあの手鏡。
今の話からすれば間違いなくこれなのだろう。
オレとしては、返して見逃して貰えるなら喜んで返すが、この雰囲気じゃそうも行かないよな。
「先生怒らないから手を挙げなさい」と言って、手を挙げたら怒られるみたいなものだ。
「時間切れです」
逃げ場無の無いオレは、ただ目の前の現実を拒否するように、ギュッと目をつぶる。
ヒュオオ----。
ウサミミ少女達が打ち出すのと、突風により布が舞うのはほぼ同時だった。
「え?」
「は?」
ヒラリと布がオレとウサミミ少女達の間に入り
彼女達は血も出さずに、スゥと幽霊のように姿を消した。
(助かったのか‥‥?)
「あやや、いや~危ない所でしたねぇ~間に合ってよかった」
ガサッと近くの茂みから表れたのは、背中に大きな黒い翼を持つ少女だった。
それだけでも異質だが、半袖シャツに、足に履いた一本刃の下駄。赤い三角帽子に白いポンポンが左右に付いている。
印象的には、天狗のコスプレをしたOLだ。
「貴女にカメラを奪われてからしばらく活動休止せざる得なかったんですからね」
今の貴女には皮肉にもならないでしょうけど。
そう彼女は付け足して肩を竦めてヤレヤレと首を小さく左右に振りながらこちらへと歩みを進める。
「はいチーズ」
パシャリ!と目の前が光ると同時に思わず手で顔を覆う。
「この通り新しいのを作ってもらったんでそちらのお古は差し上げますよ」
ニコリと、状況を知らない人が見たら思わず惚れてしまいそうな笑顔を向ける。
「とりあえず助かった‥‥‥ありがとう」
「ああいえいえ良いんですよ。良いネタが此処で終わってしまうなんてつまらないですしね。
「外来人?それってどういう」
意味だと、聞こうとした所で静かにと人差し指をオレの唇に当て少々困ったように肩を竦めて立ち話し過ぎたようですねと小声で、呟く。
それと同時に今度は、数十体が俺達を囲んでいた。
本当にこいつらは何なんだ。
「幻覚ばかりで頭がおかしくなりそうですね‥‥‥貴女に自己紹介といきたかったのですが、どうやら囲まれてしまっているようですし、落ち着ける場所までデートとしゃれ込みましょうかね」
「え?ちょっと」
「しっかり捕まってて下さいね!」
ゴオウゥ!!と風を切る音がしたかと思えばオレの身体は宙に浮いていた。
いや、正確にはオレは天狗の女性に抱き抱えられていた。いわゆるお姫様抱っこと言うやつだ。
地上には、先ほどまでいた森、顔を覗き込んだ湖がみるみる小さくなっていく。
逃げ切れたと言う事に安堵し少し落ち着いて来たかも知れない。
「あやや、確かにしっかり捕まってとは言いましたが、此処まで密着するとはなかなかノリの良い方ですね嫌いじゃないですよそういう方は」
どうやら自分でも気付かない間に首に手を回していたようである。
確かにこの人の膨らみがフニュルニと腕に沈むが、離すのも怖いので、このままでいさせてもらう。
「赤くなってか~わいいですね~。一枚写真良いですか?」
「勘弁してください」
この時、この女性と一緒にとんでもない事に巻き込まれる事なんて微塵も想像していなかった。
ちなみに、この作品を作るとき『反逆の鐘』と『ミクロコスモス』をイメージしております。
どっちも良い曲ですね。
仕事帰りに車の中で歌ってたりします。
良いストレス発散です。