ハデスの砂時計   作:アリス・リリス

6 / 13
第五話~夢のままで~

逆滝(さかたき)逆滝(さかたき)!ねぇ、目を覚ましなさいよ!逆滝(さかたき)ったら!」

「…………」

 

響古(キョーコ)が泣き叫んでも、逆滝(さかたき)の瞳は閉ざされたままだった。

 

響古(キョーコ)一行は倒れたままの逆滝(さかたき)を城まで急いで運んだ。

 

医師が逆滝(さかたき)を診察して、こう言った。

 

「何も異常ありません。むしろ、目覚めないのが不思議なくらいです…」

 

「そんな…。嘘でしょ!?『な~んちゃって』って笑ってよ!ねぇ…」

 

寝台に横たわる逆滝(さかたき)の体にはわずかに黒が残っていた。

 

「なぜ逆滝(さかたき)の体がわずかに黒いのか?」

響古(キョーコ)、どうしてにっ?」

 

尋ねる王とちょこらに響古(キョーコ)は、蛍族の村であったことの一切を話した。

 

「それならば、心を浄化させなければならないと思うぞよ」

 

(心を浄化…)

響古(キョーコ)は、しばらく考えた。

 

「!そうだ!」

響古(キョーコ)が急に立ち上がった。

 

輝光異邦人(ライトストレンジャー)の力なら心の闇を浄化できるかもしれないわ!」

 

 

星奈(せいな)は、響古(キョーコ)の言葉を聞いて、すぐ異邦人(ストレンジャー)としての姿を取った。

 

「蛍族伝統の儀式の準備をさせてください」

 

 

寝台を部屋の中心に置き、周囲に灯籠を円形に並べ、灯をともした。

 

響古(キョーコ)姫、この儀式は心の闇を祓うきっかけを生み出すものです。儀式が済めば、あとは逆滝(さかたき)様の心の強さにしか頼れません。それでもよろしいですね?」

 

逆滝(さかたき)が目を覚ます可能性があるなら、私はそれにかけたい…」

 

その言葉に星奈(せいな)は、頷いた。

 

「わかりました。では、儀式を始めますので、響古(キョーコ)姫以外の方は灯籠の外に出ていただけませんか?」

 

 

「どうか、逆滝(さかたき)くんを…」

 

氷月(ひづき)が灯籠の外に出ると、結界が張られた。

 

シャン…シャン…

シャン…シャン…

シャン…シャン…

 

鈴の音が辺り一面響き渡った。

 

 

「高天ヶ原におはしまするアマテラスオオミカミよ…」

 

星奈(せいな)の澄んだ声が詠唱を始めた。

 

「今、ここに一時(いっとき)の御顕現を…。そして、この者の願いを叶えたまえ…」

 

 

天から一筋の光が射し込んだ。

 

光の階段をゆっくりと降りてくる女性の姿があった。

 

(天女…?女神…?それとも…)

 

響古(キョーコ)は、その女性を見たことはなかった。

 

女性は、古代を思わせる装飾品を着けて、光輝いていた。

 

階段を降りきって、女神が厳かに言った。

 

「…(わらわ)の名は、アマテラス。星奈(せいな)よ、そなたか?妾を呼び寄せたのは」

 

「ええ、そうでございまする」

 

「妾に何の用事か?」

 

星奈(せいな)響古(キョーコ)の方に顔を向けた。

 

響古(キョーコ)姫、あなたから願いをおっしゃってください」

 

響古(キョーコ)は、一歩前に進み出た。

 

「私は、時空異邦人(タイムストレンジャー)響古(キョーコ)。あなたにお願いがあるの!」

 

女神が答えた。

 

響古(キョーコ)…。聞いたことがあるぞ、そなたは時の神・クロノスの娘か?」

 

「私の真の父様は、確かにクロノスよ。父様を知っているの?」

 

「もちろん、知っておる。響古(キョーコ)、そなたの願いは何ぞ?」

 

「この逆滝(さかたき)を蝕む闇を浄化してほしいの!」

 

「やってみようぞ」

 

 

女神は、横たわる逆滝(さかたき)に近づいて、手をかざした。

 

「…これは…、魔族によるものか…?」

 

「ええ」

 

「妾の力で祓ってやりとうのだが、祓いきれるか分からぬ。それでもよいか?」

 

響古(キョーコ)は、強い眼差しをかえした。

 

「…覚悟はあるようだのう…。では、始めよう…」

 

手から光球が現れた。

 

…この者を蝕む闇、祓われよ…祓われよ…祓われよ…

 

しばらくして…

 

「妾の力ではここまでじゃ。すまぬ、心にわずかに魔族の闇が残ってしまった。あとは、この者の精神(こころ)が闇に打ち勝てるかじゃ…」

 

女神の言う通り、黒に染まった逆滝(さかたき)の体は、元に戻っていた。

 

「アマテラスオオミカミよ、あなた様もお疲れでしょう。高天ヶ原へお帰りくださいませ」

 

星奈(せいな)が女神に言った。

 

 

「さらばだ、響古(キョーコ)星奈(せいな)…」

 

 

女神は、天に昇っていき、光が消えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。