今回は尾形君の試合ですね!
夏合宿編で言っていたことが、実現した感じです!
そろそろ、さわちゃんとあずにゃんを出したいと思うこの頃・・・。
次章は文化祭編!
楽しみにしていてください!
「りっちゃーん!」
元気な唯の声が聞こえてくる。
唯が集合場所にやってきたのは集合時間の十分後であった。
もう既に律、澪、紬の三人は揃っており、やれやれという表情で唯を迎える。
集合場所は、中央体育館。
桜ヶ丘高等学校から5駅離れた場所にある大きな体育館だ。
何故、そんな場所に集まったのかといえば―――。
「相馬の試合、もうすぐ始まるぞ!?早く行こうぜ~」
唯一の男子部員である、尾形相馬のバスケの試合が行われるのであった。
桜ヶ丘高等学校男子バスケットボール部。
今年から新設され、まだ過去に記録がなく、新参者だ。
弱いかも強いかもわからない。
一体どこまで勝ち進んでいけるのか、見物であった。
「うわ~!凄いね!人がいっぱい~!」
唯は目を輝かせ周りを見渡している。
あちらこちらにジャージを着た男女がうろついている中、私服の彼女らは観客席へと向かう。
普段から行き慣れない場所で落ち着かない四人だが、いざ会場内に足を踏み入れると、四人は更に圧倒される。
キュッキュ!とバッシュが擦れる音、ブザーの音、笛の音。
聞いてるだけで青春を感じざる得ない音が会場内で木霊していた。
「ま、眩しすぎるよ・・・りっちゃん」
「そ・・・そうだな・・・唯」
「本当に青春って感じね~」
「す、凄い!興奮するな!!」
「澪は以外とスポーツ観戦好きだもんな~」
目を輝かせながら身を乗り出すようにコートを見つめる澪。
唯、紬、律は圧倒させながらも、ささやかに興奮していた。
「そろそろ男子の時間じゃない~?」
一番端で座っていた律の隣から声がした。
紫色のジャージを着た女子生徒がゾロゾロと観覧席に座り始める。
「一年、ビデオ回して~」
「はーい」
総勢二十人近くだろうか。
「おおっ、なんか部活みたいだな」
「いや、部活だろ」
律と澪のいつものやり取りが終了した中、唯が澪に小声で耳打ちする。
「ねぇ、澪ちゃん。ジャージに"桜ヶ丘"って書いてあるよ!」
澪が固まる。
「え、じゃあこの人たち桜ヶ丘の女子バスケ部なんだ」
「らしいな~」
「じゃあ、男子バスケ部のを応援してるんだ」
そんな中、桜ヶ丘女子バスケ部の女子達が歓声を上げ始めた。
それにつられ四人もコートを見る。
どうやら桜ヶ丘男子バスケ部が登場したようだ。
そして当然のように。
四人の瞳には、"尾形相馬"の姿が映っていた―――。
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(SIDE:尾形)
試合開始のブザーが鳴る。
マネージャーの茜は落ち着いた表情でベンチに座っていた。
こう見ると、思い出すものだな。
中学の時も同じ感じだったっけ。
唯一違うのは―――。
「あいつら―――」
唯が全力でこちらに手を振っている。
軽く俺も手を振り返す。
「おい、尾形。大丈夫か?」
チームメイトの仙崎が話し掛けてくる。
軽音部に行ってることもあって、練習にそんなに参加してなかったのが現実だった。
だが、メンバーが少ないのもあってスタメンに起用された感じだ。
「あぁ、大丈夫だよ」
「相手はちょい強豪だ。気を引き締めてけよ」
「わかってる」
ジャンプボールからスタート。
最初にボールを手にしたのは俺らだった。
久々の感覚だ。
相手のディフェンスが始まる。
バチバチと圧迫してくるディフェンスをしてくるな。
気迫がすごい。
とりあえず仙崎にボールを渡す。
仙崎はお得意の一対一で勝負を仕掛けた。
うまく相手をドリブルで抜き去り、強引にリングにボールを捻じ込む。
歓声があがる。
最初の試合の流れは俺らになってたはずなのだが、徐々に差を開かれていく。
元々の実力差だろうか。
だろうな、と思いながら流れ作業のように試合を進めていく。
まだ無得点だ。
こんなこと中学じゃ考えられないな。
バスケは10分の試合を4回繰り返す。
そうして最後のブザーが鳴る際に、点数が多いほうが勝ち。
現在は第3クォーターの5分過ぎたくらい。
息が上がって苦しい。
普段から走りこんでおけばこんなことには―――。
「君さ―――」
自分のディフェンスをしている男に話し掛けられる。
顔は見たことないし、知らない人だ。
「中学MVPの"尾形相馬"―――だろ?」
「―――だったら?」
「いや別に」
男はふいと顔を背け、笑う。
「こんなもんか、って思ってよ―――」
「・・・なんだと?」
ブチリと。
何かスイッチが入った音がした気がした。
闘争心が湧いてくる。
体中の疲れが嘘みたいに消えていく。
点差は20点。
まだ100%逆転不可能な点差ではない。
巻き返す・・・!
ピッーと笛が鳴り、ベンチへと戻る。
タイムアウトの時間だ。
所謂、作戦会議。
仙崎は息が上がり、かなりしんどそうだ。
そりゃ相手チームからはエースだと思われ、ディフェンスが徹底的にマークしているか体力も減るか。
俺がヘバってられない。
「おい、尾形」
「ん?」
「お前、相手に挑発されて黙ってるほど・・・そんなタマじゃねーだろ?」
「・・・・・」
「MVPの力見せてくれよ」
「それ嫌いなんだよな」
「え?」
弦結の顔が思い浮かぶ。
"高橋弦結"。
最高のライバルで、友達で、若くして亡くなってしまったプレイヤー。
俺はあいつの分も頑張らなきゃいけないのに―――。
全力を出せないままでいる。
軽音部の夏合宿で、澪に話したことを思い出した。
マネージャーの茜以外で初めて打ち明けた・・・気がする。
でも・・・。
「俺はMVPだとか、そんな器じゃないんだよ俺は―――。もっと上手い奴がいて、俺なんかまだまだだ。」
「でも、今自分に出来る最善のことをしないのは違うよな・・・。俺は俺が出来ることをするしかねーよな・・・!」
「俺があいつの分までやってやる―――ッ!俺に任せろ・・・!」
ブザーが鳴り、再びコートへと戻る。
息を吸い込んで深呼吸をしてみる。
疲れてはいるが、体が温まってきた。
ふと応援席に目をやると、女バスと、軽音部がいた。
ガヤガヤと声援が木霊する中、アイツらの声だけはしっかりと聞こえた気がした。
唯。
何を言ってるかは分からないけど、身振り手振りですごく応援してくれてるんだなって伝わるよ。
律。
いつもお調子者のくせに、こういう時はクールに応援してるんだな。
澪。
顔を真っ赤して応援してくれてるから、薄っすら汗をかいてるな?
ムギ。
小さく手を振ってくれるあたり、他のメンバーとは違う"頑張れ"が伝わってくる。
彼女達には彼女達の世界があって。
彼女達はそれを自分たちの手で生み出すことができて。
それがすごいと思った。
いつか文化祭で彼女らはスポットを浴び、輝くだろう。
俺は・・・いつ輝く?
彼女達みたいに・・・いつ輝くべきだ?
「"今"・・・か」
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「「「試合、お疲れ様~!!!」」」
どーんと労われる。
すっかり夜になってしまっていた。
終わるのを待っていてくれていた軽音部らと合流し、唯の家で夕食を頂くことになったのだ。
試合後何も食べていなかったので、本当に腹が減っている。
今なら大食い選手権出れるのでは?というレベル。
「相馬くん、お疲れ様です」
満面の笑みで憂ちゃんが案内してくれる。
既に夕食の準備は整っており、なんとカツカレーが用意されていた・・・!
「な・・・なんと・・・!」
「今日、試合に勝ったって聞いたので!今度の試合の願掛けにも!」
「あぁ!そうさせてもらうよ!」
「さすが憂ちゃんだな~美味しそう」
「唯は幸せものだな~」
「そお?」
「いや、冗談でもそれは言っちゃダメ」
「えへへ~」
「「「いっただきま~す!!」」」
早速、スプーンでルーを啜り、カツを食べる。
う・・・旨すぎる!!
腹減ってるからとかじゃなく、料理のレベルが高く感じる。
お店出しな、憂ちゃん。
結局、約五分で平らげる。
「おかわり!」
「相馬くん食べますね!」
「憂ちゃんのご飯なら半永久的に食べれるよ☆」
イケボで言ってみる。
・・・が律に睨まれ、すぐやめた。
「にしても、今日の相馬は凄かったな~」
唐突に律が切り出す。
「そうだよな!特に最後!」
「そうね、ルールあんまり分からない私でも凄いと感じたわ~」
「スリーポイント?一本も外してないもんね!」
「一人で何点くらい取ったんだ?」
「知らん。とにかく必死だったからな~」
「次回もこの調子で勝てるといいね!」
「目指せ!相ちゃん!甲子園!だよ!」
「うーん、何か若干違うし、甲子園は野球な」
「そうなの?」
「あのな・・・バスケはインターハイだよ」
「へ~」
「ウチらは武道館目指してるから、相馬もそのインターハイっての?・・・目指したまえ!」
「も~りっちゃんそれまだ言ってたの~?」
「りっちゃんったら~」
そうか。
たとえ夢だとしても。
目指すことは悪いことではない。
彼女達は、本当に武道館を叶えてしまいそうで。
少し怖い自分がいた―――。
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「あ、相馬くん寝ちゃった」
「本当か?」
「そりゃな~あんな頑張ってたんだから・・・仕方ない仕方ない」
「寝かしてあがましょ。今日は唯ん家泊まらせてあげな」
「分かった~」
「おやすみ、相馬くん☆」
尾形は夢の中で何を想う―――