けいおん! 〜大切な事は君が教えてくれた〜   作:あいとわ

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お久しぶりです、今回はドキドキする回になっていると思います!

それぞれの恋愛が徐々に動き出します~!


#22 うん!

 

夏合宿二日目。

俺らは朝食を済ませ、早速スタジオへと入る。

去年と同じく二日目は練習に明け暮れるのだろう。

 

「ねむい・・・」

「唯ちゃん、しっかり!」

「ムギちゃん眠いよぅ~」

「昨日しっかり八時間睡眠とっただろ?」

「うんー・・・」

「まったく!」

呆れながらに律が溜息をつく。

「でも昨日、私トイレで起きたんですけど・・・」

ふと梓が声をあげる。

唯の方を向きながら、

「唯先輩、一人で練習してました!」

「そのあと一緒に練習したもんね~!あずにゃん!」

「唯にしては偉いな!」

「それで眠かったのね~」

「うんー・・・」

何度も目を擦る唯。

 

 

「さーて、来月に本番を控えてるので、本気を出さないとね!」

「そうですね!」

梓が目を輝かせながら言う。

そうか、梓は学祭が初めてなんだ。

そりゃ気合も入るな。

 

「ねぇ、さわちゃんは?」

キョトンとしながら唯が尋ねる。

「あーさわちゃんなら昨日の疲れでまだ寝てるよ・・・」

苦笑しながら律。

 

「んで、まず歌は何にするかだな?」

「はい!"ふわふわ時間"!」

先ほどまで眠たがっていた唯がすかさず手をあげ叫ぶ。

「急に元気だな・・・」

 

「いいんじゃないか?俺、唯が歌う"ふわふわ時間"好きだぜ」

 

「ほんとっ!?」

「あぁ、今年もやりなよ」

「うん!ありがと~!」

とても、それはとても嬉しそうに笑う唯。

なんだかこちらまで嬉しくなる。

「それじゃ~・・・"ふわふわ"は入れるとして・・・他には?」

スティックを指でクルクルさせながら皆を見渡す律。

今日はカチューシャではなく、前髪をゴムで縛っているだけなのでチョンマゲのような形になっていた。

意外と似合っていて可愛かった。

・・・っと今はそんなこと考えている場合じゃない。

 

「私はあれ歌いたいな!"ふでぺん・ボールペン"!」

「お!早速新曲だな~?いいね!」

「あの歌好きなんだよな~私!」

俺は聞いたことなかったが、澪が言うからにはいい曲なのだろう。

これは澪がボーカルなのかな?

「他には?」

「んー。何がいいだろうね。」

「あれはどうですか?私の恋はホッチキス!」

「梓が入部してくれた曲か!」

「いいね!いれよ!梓歌う?」

「いいね~!あずにゃん歌いなよ~!」

「えっ、い、いいですよ!唯先輩や澪先輩が歌ってくださいっ!」

「えーなんでー?」

「私、ボーカルやったことないんで・・・」

 

「意外と音痴だったりしてな・・・ハハハ」

 

と俺が言うと空気が凍り、梓から睨まれたのですかさず謝った。

「じゃあ私とハモってみるか?」

「えっ、そんな・・・澪先輩とだなんて・・・!」

目をキラキラさせ興奮している梓。

なんかこう俺らとは違う視線だよな・・・。

「梓はほんと澪を慕ってるよなぁ~」

「当たり前です!律先輩とは違うんです~!」

「言ってくれるな小娘がっ!」

律は強引に梓の首に手を回し、頭をグリグリする。

「ご、ごめんなさいいい!」

「グヘヘ・・・もっと悲鳴をあげんか!―――グハァ!」

 

 

律がお約束のゲンコツを澪に喰らったところで、音合わせの練習はスタートした。

 

 

初めに練習したのは、"ふでぺん・ボールペン"。

出だしのリフがカッコイイ。

ひょっとしたら今までで一番好きかもしれない。

 

このまま頑張ってほしいものだ。

 

************************************

 

午後になり、昼食を済ませ、再び練習へと戻る。

俺は気分転換(飽きた・疲れたと言ったら殺されるので)で夕食の買い出しに向かうことにした。

 

夏の海を横目に見ながら長い道路を自転車で漕ぐ。

自転車がある時点で、本当にムギの別荘は何でも揃ってるよな。

なんか車まであったし・・・。

 

すると背後から車のクラクションを鳴らす音が聞こえた。

 

「ん?あ、さわ子先生・・・!」

「おはよう。どこにいくつもり?」

「ちょっとスーパーまで。夕食の分とか色々・・・」

「乗っていきなさいよ!後ろに自転車乗せて!」

「・・・これ先生の車じゃないですよね・・・」

「あら、ムギちゃんが許可してくれたわよ?」

「もう敵いませんわ・・・」

「ほんとよね」

 

俺は助手席に乗る。

車の中はクーラーが効いていてとても涼しかった。

なんか運転するさわ子先生は少しカッコよかった。

いつもあんなんだからな。

 

 

「あなたもすっかり軽音部ね~」

「そうですね。なんでなんだか自分でも。」

「いいんじゃない?男の子一人でハーレムだし。」

「うるさいですよ~。それ皆に言われるんですから。」

「他には何やってるんだっけ?」

「バスケ部です。」

「そっちは大丈夫なの?」

「上手く両立してます。今度また大会があるんですよね」

 

「目指せ!相ちゃん!甲子園!―――か。青春ね~」

 

「あの先生・・・それ競技違うんで。」

「あれ、バスケはなんなの?」

「インターハイですよ。それ分からなくても甲子園じゃないのは分かるでしょ・・・」

「ヘテッ☆」

「いや、あの、キツイデスヨ」

とっさに睨まれたので即座に謝る。

この人怒らしちゃいけない人だった・・・忘れてた・・・。

 

「スーパーだとアレだから、デパート行きましょうか。」

「え?」

「ほら、あなた達、花火とかしたい年頃でしょ?だから付き合ってあげるって言ってんの!」

「あぁ、ありがとうございます!」

 

実際いい先生なんだよな・・・。

地味に自分もやりたいオーラ出てるけど。

 

 

***

 

 

デパートに行き、食材や花火等を買い占める。

なんかさわ子先生の買い物にも付き合いさせられるし。

まぁ、色々買えたからよかった。

だが、少し長居し過ぎてしまったらしく、すっかり夕方になっていた。

 

そんな、帰りの車の中にて。

「あら、こんなとこでお祭りやってるわね」

さわ子先生が運転席側の窓を見る。

視線の先には、結構規模の大きい祭りがやっていた。

「ほんとですね~」

「あとであの子達も誘ってみましょうか。」

「そうですね、練習で疲れてるだろうし」

「ほんと青春よね~あなた達」

 

 

「先生も昔、軽音部なんでしたよね?」

「えぇ、そうよ」

 

 

さわ子先生はこちらを向かずに返した。

遠くを見つめるように。

そして軽く微笑みながら。

何かを懐かしむように。

 

「懐かしいわ」

「そうですね」

「今の軽音部とは方向性はまるで違うけど、それでも私はあの時が一番輝いてたわね、確実。」

「輝いてた―――」

 

「ええ。だって青春だもの。」

 

何故か。

本当に何故か、その言葉は俺の胸に大きく響いた。

そうか、誰にだってあった時期なんだ。

それは誰しもではないかもしれないが、輝ける場所なんだ。

一番、可能性のある自分なのか。

 

「私にだって青春の時期はあったんです~。今と違って女子高だったけど、他校に好きな先輩だっていたし、友達と喧嘩したり、色々大変だったわよ~」

 

「へぇ」

「でもそれら全部含めて、今良かったと思えるから、青春なのよ。今しかないのよ、今しか!」

「今しか・・・ない、か」

「えぇ。あなたも全力で楽しみなさい!現に、あの子達はものすごく楽しんでるじゃない?」

「そうですね」

「どうかしたの?」

 

さわ子先生は今度はこちらを向いて問いかけてきた。

赤信号待ちがとても長く感じる。

 

「いや、別に」

「私は仮にも先生なのよ、話してごらんなさいよ。恋の悩み?」

「あっ、いや・・・そういう訳じゃ・・・」

「じゃあなに?」

 

 

「怖いんです、俺」

 

 

「何が?」

 

 

「いや、今が楽しすぎるから・・・俺こんなに楽しかったのは初めてで・・・。」

 

「うん―――。」

 

 

 

「こんな生活がずっと続けばいいな、って思ったんですけど・・・。そんなのは無理な話で・・・」

 

 

 

「おんなじね、私と。」

「え?」

予想外の返事が返ってきて、案外驚く。

同じってどういうことだろう。

 

「私、三年になって最後の学祭終わった瞬間に号泣しちゃってね、今まで貯めてた気持ち全部曝け出すかのようにね。」

「――――」

「もう終わりなんだなーって、ずっとバンドしてたいなーってさ」

「そうですね」

「でも時間は待ってくれない、進んでいくものなのよ。」

「・・・・・」

「気が付けば、卒業式。いつも見送る立場だったのに、見送られる立場になっちゃってね。いつもみんなと帰ってた道もこれで最後か、ってなってまた泣いちゃって。」

さわ子先生はまた、軽く微笑んだ。

 

 

「そういうものなのよ、青春って。そういうものなの。だから貴重なのよ?」

 

 

「先生・・・何か俺先生に対する考え方変わりました・・・」

「どーゆーことよ!?」

口を尖らせる先生だが、実際見方が変わったのは事実だ。

来年の担任は先生がいいな。

そんなことを考えていたら、さわ子先生がニヤニヤしながら俺に語り掛けてきた。

 

 

 

 

「それで?あなたは誰を選ぶの?」

 

 

 

 

「・・・はい?」

「あら、はぐらかしちゃって~。先生はなんでもお見通しなのよ?」

「本当に分かりません。」

「好きな子はいないの?」

「そういうことですか・・・」

 

「若い子の恋愛話は大好物なのよ。どうなの?澪ちゃんは?」

 

思わず吹き出してしまう。

横目でチラりとさわ子先生を見るが、言い逃れは出来無さそうな様子だった。

「なんで澪なんすか・・・?」

「気付かないとでも思ったの~?青春を感じたわよ、先生のセンサーがね」

「どんなセンサーですか・・・」

「でどうなの?」

この人からは・・・逃げられねーか。

一回溜息をついてから、口を開く。

 

 

 

 

 

「正直、分かんねーす。自分がどんな気持ちなのか・・・これが好きなのかっていうのも・・・。」

 

 

 

 

 

「可愛いわね~澪ちゃんの事は目で追っちゃう?」

「うるさいですよ!どうなんですかね・・・いつも一緒にいるし、分かんないですね」

「なるほどね、自分なりに決めればいいのよ。自分なりに、ね」

「自分なり・・・か」

「まぁ軽音部は可愛い子しかいないから、あなたも大変でしょうけど。」

「それはまぁ認めます」

「素直じゃない。私はてっきり唯ちゃんかと思ってたけどね。」

 

 

 

「え―――――」

 

 

************************************

 

 

「うっわ~!こんな山奥でもお祭りやってるんだ~!」

「凄いわね~!」

「うん!確かに凄いな!!」

「久々にお祭り来ました!」

「テンションあがるね~!あずにゃん!」

「くっつかないでくださーい!」

 

さわ子先生に連れられて、さきほど見かけたお祭りへと彼女達を連れて行った。

練習で疲れてたのか、彼女達は大喜びしていた。

「連れてきて良かったわね!」

「ですね!」

 

「相馬!あっちで花火配ってるぞ!行くぞ!」

目を輝かせ、俺を呼ぶ律。

ドラムの疲れなどどこにも見えなかった。

タフだな、と思う。

 

「早く早く!」

「分かったよ!」

係員の人から花火を人数分もらい、律と半分個ずつ持つ。

「無料配布ってすごいな。余ったのか?」

「余計なことは気にしないの!」

「だな。律、それ持つよ」

「え?」

「お前、ドラムで疲れてんだろ?ほれ!」

律の前に手を出す。

少し頬を赤らめながら、ありがとと小さく言った。

意外と乙女っぽいんだよな、律って。

「じゃあ皆のところ戻ろうぜ、行くぞ」

「うん!」

 

 

***

 

 

 

時間は少し巻き戻る。

 

「うんしょ、うんしょっと」

 

唯はさわ子の荷物運びを手伝っていた。

車にのせた買い物袋やさわ子の荷物を降ろしていたのだ。

「ごめんね、手伝わせちゃって。本当なら相馬くんにしようと思ったんだけど・・・」

「全然いいよ~!私力持ちなんで!ふんす!」

「た、頼もしいわ~」

「よいしょっと!」

「これ運んだら終わりよ!ありがとう!」

「はーい!」

 

最後の荷物をリビングへと持っていく唯。

さわ子はその跡を追う。

うっすら汗をかいているTシャツが見える。

練習頑張ったのか、とさわ子は納得する。

 

夕暮れになり、部屋もすっかり薄暗くなったリビングには、さわ子と唯の二人しかいない。

 

「さわちゃん先生~ここでいい~?」

「ええ、ありがとう」

「ふぅ、疲れた~」

「ありがとね、後で美味しいもの買ってあげる」

「わーい!ありがと~!」

「皆は?」

「外で遊んでると思います、たぶん」

「そうなの」

 

さわ子はどこを見るわけでもなく、軽くソファーに腰掛ける。

唯は自分の背以上に大きい窓の前に立ち、大きな伸びをする。

短パンとTシャツがキュと引き締まって背中が少し見えた。

こう見ると、唯はかなりスタイルがいい方である。

足も細く、スレンダーである。

さわ子は若干羨ましそうにするも、自分の愚かさに呆れ、溜息をついた。

「どうしたの?」

「いいえ、なんでもないわよ」

 

静まり返る、リビング。

こんな状況は去年にもあったが、それは誰も知らない。

 

 

 

「ねぇ、唯ちゃん。」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

「唯ちゃんは、相馬くんのことが好きなの?」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

どこを見るわけでもなく。

 

唯は何も躊躇わず、答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん!」

 

 




秘められた、恋心―――。
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