更新遅れてごめんなさい!
今回はオリジナル回で、相馬の気持ちが揺れ動きます~
次回から学祭編!突入します!!
「おーい!憂~!」
「あ!梓ちゃん!」
梓が大きく手を振りながら、憂の方へと向かってくる。
横断歩道を右左首振りながら、渡る。
一週間ぶりくらいの再会だが、そのこんがり焼けた梓の肌を見て、憂は戸惑う。
「誰!?」
「ひっどい・・・!憂までそんなこというのぉ~・・・」
「えへへ、ごめんごめん。ちゃんと分かってるよ~!」
「そういうとこは唯先輩そっくりだよね」
「えへへ~」
「褒めてないし!」
二人は挨拶を終わらせると、近くのファミレスに入った。
ウェイトレスに案内され、一番奥の席へと向かう。
「じゃ、ドリンクバーとポテトにしよっかな~」
「私も同じので!」
「夏合宿どうだった?」
「楽しかった!!」
梓は思わず目を輝かせて叫んだ。
憂はそれを見て微笑んだ。
「そっか!良かったね!」
「・・・あ。」
何か思い出したのか、少し照れ臭そうにする梓。
最近まで軽音部の愚痴しか言っていなかったものの、なんだかんだで軽音部色に染まってきた事に気づいたからであろうか。
憂はそれを感じ取り、嬉しく思ったのだった。
「何が楽しかったの?練習?」
「うーん、まぁ練習もしっかり出来たけど、やっぱり遊びの方が多かったかな。でも楽しかった!みんなで花火とかしたし!」
「夏らしいね~!」
「うん!あとお祭りにも行ったよ!あと海!肝試しもした!」
「たくさん夏を満喫したんだね!」
「楽しかったな~。今まで部活の合宿っていったら朝から夜まで練習だったから、こんな遊んだの初めて!」
「良かったじゃん!いいなー、私も行きたかった~」
「憂も軽音部入ればいいのに!」
「うんー。でも今更って感じだし・・・」
「そんなことないのに~。」
ウェイトレスが運んできたポテトをつまむ梓。
それに続いて、憂も手を伸ばす。
「うーん。もう夏も終わりか~」
「そうだね、二学期が始まっちゃう」
「嫌だぁ~」
「でもまたみんなに会えるから、私は楽しみだな~」
「呑気でいいわね~」
「そう?」
「梓ちゃん、変わったよね。」
「へ?」
憂はなんとなく嬉しそうにしながら。
「もちろん、いい意味でだよ?梓ちゃん、なんか楽しそう!」
「そ、そうかな?」
「うん!最初は軽音部の練習について色々言ってたけど、なんか最近は遊ぶことも楽しそう!」
「う・・・それは・・・」」
「お姉ちゃんも楽しそうだったな~夏!」
「たまには羽目を外して遊ぶのもいいなーって。そう思うようになったかも・・・」
「いいことだよ!軽音部らしくなってきたね!」
「うるさーい」
「あ!写真見せて!夏合宿の!」
「いいよ!」
梓はショルダーバックから写真を何枚か取り出す。
大事そうにビニールに包まれている。
「はい!」
「お~!相馬くんだ!」
「へ?」
「これ!」
「あ、それは肝試しのやつ!私、尾形先輩とペアだったんだよね。」
「いいな~」
「いい・・・の?」
「うん!相馬くん守ってくれそう!」
「あー・・・、確かに・・・守ってくれた・・・よ」
「やっぱりーー!かっこいいよね、相馬くん!」
テンションが何故かあがる憂を見て、唯の姿を思い出す梓。
本当にこの姉妹は似てる、と感じる。
(尾形先輩がカッコイイ・・・か。)
梓はどこを見るわけでもなく、尾形の顔を思い浮かべる。
確かに、尾形は梓を守ってくれてはいたが・・・。
(顔は普通より上・・・アイドルや俳優みたいなカッコよさではない・・・すると行動がカッコイイ?)
果たして、憂はどこがカッコイイと思っているのか、素朴な疑問を持つ。
(そういえば、ギター弾いてる男の人とかは、漠然にカッコイイとか思った事はあるけど、恋愛したことないからなぁ・・・)
「梓ちゃんは好きな人とかいないの?」
「へっ!?」
思わず梓は変な声をあげてしまう。
自分が考えていたことと憂が言った事がシンクロしたからであろうか。
「い、いないよ!私、好きとかよく分からないし・・・」
「そうなの?」
「うんー。」
「ギターが恋人?」
「それは憂のお姉ちゃんでしょー?」
「ギー太ね~!」
「そうそう」
「確かにお姉ちゃんはギー太好きだけど・・・」
憂はストローに口を当て、飲み物を口に含み、飲み込む。
「最近は、それだけでもないみたいだよ?」
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「いや~始まりましたな~!二学期!!」
律のこの声でいつも通りの放課後が始まる。
蝉の鳴き声が静かになる頃、二学期がスタートした。
久し振りに学校に登校した尾形は、久々のこの空気感に懐かしさを覚えた。
この教室中がザワザワする空気感と、外から聞こえる部活の朝練の掛け声。
これだけで学校が始まったな、と実感するのであった。
随分と久しく、部室に入った気がする。
夏休みに何度か清掃のために来たものの、やはり懐かしさを感じるのであった。
「二学期と言えば~!?」
律が思いっきり皆を煽る。
尾形以外に澪と梓も目を点にしていたが、唯と紬はノリノリであった。
「ライブ!」と紬。
「学祭!」と律。
「屋台!」と唯。
「メイド喫茶!!!」と律。
その言葉を発せられた瞬間に、澪の怒りの鉄拳が律の顔面にクリーンヒットした。
こうなることを予測されていたのだろう。
変な発言をしなくて良かった、と安堵する小心者の尾形であった。
「今年もそういうこと言うのかな?律ちゃんは・・・」
「殺気出すな、澪・・・」
チリチリと感じるどす黒いオーラが痛い。
「相馬も見たいんだろ?澪!貴様に仲間はいないぞ~!」
横目でニヤつきながら律は尾形の横腹を突いた。
考えていたことがバレた、と言わん顔で、ひえっと尾形は変な声をあげる。
「そうなの・・・?」
「おいおい、誤解だぜ誤解。俺がそんなこと思うわけないだろ~。俺は紳士なジェントルマンだぜ?」
「あぁ、そう・・・」
少し拗ねた表情を浮かべた澪は、尾形から視線を外した。
それに?マークを浮かべる尾形。
結局、乙女心は難しいのであった。
「そんなことより!もう学祭まで時間ないですよ!?練習しましょうよ!」
あまりにも脱線し過ぎた話題に痺れを切らしたのか、梓が叫ぶ。
「そうだね!さすが真面目あずにゃん!」
「真面目っていうか・・・これが普通なんですけどね・・・」
「梓にとってもこれが初めての学祭だから、緊張するんだろ?練習したい気持ちもわかるよ」
「澪先輩・・・」
「くっー、また澪にいいとこ持ってかれたぜ・・・」
「律、君が悪い」
なんだかんだで始まる学祭。
尾形達二年生にとっては二回目の学祭。
梓にとっては初めての学祭。
ここに違いなどあるだろうか?
否。
このバンドメンバーにとっては、そんなものは存在しなかった。
ただ純粋に。
ただ単純に。
そう楽しむだけだった。
毎回新鮮な気持ちで挑むことができる、それがこのバンドのいいところなんだろう、と尾形は感じる。
その唯達が互いに笑いあって練習する光景を見ているからこそ、思うのかもしれない。
改めて、このバンドに入ってよかったと感じる尾形であった。
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(SIDE:尾形)
「相馬!起きて!起きてってば!」
「ん・・・んん!?」
ふと体を強く揺さぶられて、睡眠の底にいたところ叩き起こされる。
いきなり現実に突き戻される感がたまらなく気持ち悪かった。
この声は誰だろうか・・・。
澪、か。
「あれ、俺いつの間にまた寝ちまったんだ・・・」
「もう放課後だよ?掃除始めるぞ?」
「そうか・・・そんな時間か・・・」
ふと時計に目をやると本当に午後四時くらいになっていた。
だがまだ眠い。
二学期に入ってからこの調子だ。
「終礼のときも寝てたじゃん!先生も呆れてたぞ~」
「わりぃ。最近家だと寝付き悪くてさ・・・」
「そうなの?なんで?」
「わかんねー。なんでだろ」
澪はそんなことを言う俺の目をずっと見てくる。
俺がなんだよ、と言おうとした瞬間。
「何か悩みでもあるのか?」
ちょこん、と聞く澪。
いきなりの質問で何を返せばいいのか。
「いや、そういうんじゃないけど・・・」
「その・・・こ、恋の・・・悩み・・・とか?」
何故か照れ臭そうに言う澪。
頬を赤らめながら髪をいじる。
「なんでそうなる・・・?」
「違うのか?」
「あたりめーだろ。俺の恋人はバスケだ!」
「・・・そうなんだ」
「いや、そんな白い目で見ないで・・・」
「じゃ、部活行くな!相馬はバスケ部頑張れよ!」
「あ、おう―――」
澪はスタスタと教室を出ていき、俺に背を向けて廊下を歩いて行った。
***
俺も部活、バスケ部に行くとするか。
教室を出て、体育館へと向かう。
多くの生徒が下校へ、校門へと向かう。
その校門を通り過ぎ、俺は体育館へ。
最中、俺はあるものを目にする。
「平沢~、これ忘れていったぞ~」
この声と顔は知っていた。
同じバスケ部の仙崎だ。
そして、彼が呼んだ名前の苗字もまた、俺は知っていた。
「あ!仙崎くん!ありがと~!」
「おう、前も忘れていったよな。平沢はおっちょこちょいか?」
「えへへ~、それ友達にもよく言われるんだ~」
「ハハ、やっぱ面白いやつだな。平沢。」
「そうかなぁ?」
「今度試合見に来いよ、軽音部頑張れよ!」
「うん!観に行きたい!あちがと!じゃあね!」
その一連のやり取りを、俺は見てしまった。
別に普通の会話だが・・・。
そうだ。
俺と唯はクラスが違う。
もう一年の時みたいにずっと一緒ではない。
あいつにも新しい出会いなどがあるわけで・・・。
それが自分の部活のライバルってことも十分あるわけで・・・。
そんなことにずっと気付かなかった自分がいて・・。
「お!よう、尾形!」
「よ・・・よう」
「何してんだ?部活行くぞ」
「あぁ・・・」
「平沢唯、軽音部で一緒だろ?」
急にそんなことを言われる。
全身から嫌な汗が流れる。
「あぁ、そうだよ」
「可愛いよな~、俺のタイプだ。ストライクっていうの?」
「そうなのか?」
「あぁ。同じクラスで同じ班なんだ。今年は文化祭で模擬店をやることになったし、さぞかし可愛いんだろうな!」
「そうだろうな」
「なぁ!軽音部での平沢ってどんな感じ!?」
「・・・明るくて良い奴だよ」
どうしても声のトーンが落ちてしまう。
くそ・・・、何なんだこの気持ちは・・・!
「好きになっちまうよ・・・全くよ。今度試合に誘ったんだ!お前からも誘ってやれよな!」
「いいよ、別に・・・」
「頼むって!じゃ、行くか!」
いつの間にか体育館へと着いてしまう。
あぁ、くそ。
嫉妬?憎悪?独占欲?
この気持ちはなんだ。
俺は澪が好きなのではないのか・・・?
でも澪は確かにモテるが、男子と仲良く話すところを見ていない。
・・・というか常日頃からそんなことはあいつの性格上起こらない。
だが、唯は別だ。
唯は友達なんじゃないのか・・・?
なんだっていうんだ・・・。
************************************
夕暮れ。
すっかり時計も七時を回っていた。
校門でバンドメンバーが俺を待っていた。
「うぃーす!お疲れ!相馬!」
「おう」
律が腕を肩に回してくる。
「どうだった?何点決めてきた!?」
「今日は試合じゃねーよ。てか汗臭いのバレるからやめろ・・・」
「全く可愛げがないのぅ。」
「お疲れ様でした~」
「サンキュームギ。」
「先輩バスケ部もやってるなんて・・・大変ですよね。」
「掛け持ちはつらいよ、ふう」
いつもの道を歩く。
駅までの道のりが短く感じる。
律やムギや唯が今日あったことを面白おかしく話してくれる。
澪も梓も俺のバスケ部の話を聞いてくれる。
だけど、そんな中で会話に集中できない俺がいた。
どうしても、唯のことが気にかかってしまうのだ。
別に唯に友達がいていいはずなのに、当たり前のことなのに。
まぁいずれ時間が解決してくれると思う。
そうなることを祈ろう。
いつの間にか駅に着き、解散となる。
俺は電車に乗り、唯一駅が一緒の唯と帰る事に。
「今日、相馬くん元気ないね。」
「え?」
不意に彼女は言葉を発した。
その表情に、いつもの彼女の笑みはない。
心配そうな表情でこちらを見つめている。
「そ、そんなことないよ!」
咄嗟にでた台詞がそれ。
取り繕ってしまう。
「ううん。絶対そう!何かあったでしょ!唯先輩に話してみなさい!」
「先輩って・・・。なんもねーて。」
「嘘だぁ~」
彼女の優しさが逆に辛い。
俺の中での気持ちが何かに変わっていく。
「なんもないって!!そう言ってるだろ!!??」
気付けば。
俺は思わず声を荒げてしまっていた。
唯は何も悪くないのに・・・。
なんてことをしてしまったんだ・・・俺は・・・。
「ご、ごめん・・・。相馬くん・・・。」
「あぁ、いや!違う!違うんだ!今のは・・・俺が悪かった・・・唯は何も悪くないよ。ごめんな・・・」
「何かあったら言ってね・・・私で良ければ聞くから。」
なんて優しいんだ。
唯は・・・何も悪くないのに・・・。
この思いを唯に打ち明けてもいいのだろうか。
それが解決策なのだろうか。
分からない。
分からないことだらけだ。
でも・・・聞かなきゃ。
そんな矛盾している思いが、俺の口を動かした。
「なぁ、唯は好きな人とかいないのか?」
「え?」
一瞬だが、時が止まった気がした。
本当に一瞬。
会話を続ければ、無限にでも続けられるような子なのに。
そんな彼女でさえも止まってしまう。
そんな重くとらえなくてもいいつもりで言ったが。
それでも俺は茶化さず待った。
彼女が返答するのに、僅か三秒くらい経過したが、それがものすごく長く感じた。
「好きって、どんな?」
「どんなって・・・その・・・恋愛面において。」
「恋愛かぁ。私、恋したことないから分からないんだよね、あんまり。」
「そうなのか?てっきり俺はあるのかと・・・」
「いつもボーッとして過ごしてたからかな?あんま考えたことなかった!」
「そうなんだ・・・まぁ唯っぽいっちゃ唯らしいな。」
「えへへ。」
そんなことを言い微笑む彼女の横顔を見て、思わず見惚れてしまった。
いつもは見せない女性の一面を見たからだろうか?
そうだとしても、思い返せば、唯とそういう話をしたことすらなかった。
だからこそかもしれない。
「相馬くん、恋のことで悩んでるの?」
ふいに彼女が口を開いた。澪と同じことを聞かれる。
「あぁ、そうだよ」
でも答えは違った。
何故だろう、唯には素直に話すことが出来た。
理由は分からない。
でも、今のこのモヤモヤした気持ちを晴らすには、それしかないと思った。
「そうなんだ。じゃあ私はあんまし力になれないかもなぁ・・・。経験ないし・・・」
「俺も同じだよ、ない」
「あはは。一緒だね!」
「嬉しくないけどな・・・」
こんな唯は初めて見た気がする。
いつも無邪気で、元気で、いつも笑っていて。
そんな唯の一面しか見てこなかったから余計に。
だからこそ。
「相馬くんは好きな人、いるの?」
「―――――、いる。」
「えーー!!誰ーーー!?気になる気になる!!!」
「それは―――――・・・」
「澪ちゃん・・・とか!?」
「え!?」
「あたり?」
何故か、嬉しそうにこちらを見る唯。
なんでそんな嬉しそうなんだろう。
しかもなんで澪ってドンピシャで言われるんだ・・・?俺って分かりやすいのかな。
「ち、ちげーよ・・・」
さすがにここまで素直になれなかった。
でも、またそれで心の中の霧は深くなっていった気がする。
「え!?じゃああずにゃんとか!?私のあずにゃんがーーー!待って!りっちゃん、ムギちゃんの可能性もあるなぁ・・・キャーー!!」
「待て待て、勝手に話を進めるんじゃない・・・。なんでそもそもバンドメンバーに限定される!?」
「えー、だって私クラス違うし、そこしか分かんないもん。もしや、和ちゃんとか~?」
楽しそうに話す彼女の言葉一つ一つが胸に響く。
・・・そんなんじゃないのに。
「まぁ、私で良ければ、相談に乗ろう!」
ふんす!と意気込む彼女の笑顔が・・・痛い。
そんなことを思っていると、いつの間にか唯の家へと着いてしまった。
いつもの帰路が速く感じた。
「あぁ、頼んだ」
「うん!任せて~!」
「おう」
「じゃ、またね!」
「おう、またな!」
手を振り、彼女を見送る。
一人になり、そして自分の家へと帰っていく。
夜の風が少し心地よく感じた。
そんな気がした。
***
刹那。
ブーッと携帯のバイブが鳴った。
真っ暗な夕闇の中で携帯を開く。
宛先覧を見ると、そこには"平沢唯"と書いてあった。
『好きな人・・・実は!私もいるんだ~~!』
ハジマル―――――。