皆さま、大変お久しぶりです!
"あいとわ"でございます。
約一年ぶりの更新となりました。
前回が良い所で終わったばっかりに、一年の間更新を止めてしまい申し訳ないです。
しかし、私の記憶ではお気に入り170だったのですが久々に(半年)確認すると、いつの間にかお気に入り200を超えていました。
本当に感謝致します。
また、一年も更新を止めているにも関わらずまだ見てくださっている方がいることに驚きです。
なので、ここは頑張ってまた執筆を再開致します・・・!
さてさて、前回本当の気持ちに気づいた相馬・・・!
一体どうなっていくのか―――――!?
二人だけの世界―――――。
まるでこの世界に二人だけしかいないような。
そんな世界。
そんな世界にいる気がした。
黄昏ている。
そんな訳がなかった。
彼女の方は小さく震え、下を向いていた。
俺と視線を合わせない。
そう、泣いていたのだ――――――。
**********************************
"それでいいはずなんだ"
「えっ・・・相馬くん・・・なんで泣いてるの――――――?」
「えっ!?」
あれからどのくらいの時が経過したのか。
自分でも忘れてしまうくらい緊張していた。
心配そうに顔を覗き込む唯。
ふと頬に手を当てると、そこには一粒の涙の跡が確認できた。
泣いている・・・?
どうして・・・?
俺は何故涙を流してるんだ・・・!
がもその理由が分かる筈がない。
「い、いやっ・・・違うんだ!埃が・・・!そう!目に埃が入っちゃって・・・!」
自分でもよく分からない言い訳をし始める。
自分が何も言っているか分からなかった。
「埃?大丈夫?」
「あぁ・・・ちょっと顔洗ってくる!唯は教室に戻ってて!!」
「え、う、うん!」
「わりぃな・・・!」
「―――――相馬くん!」
唯に呼び止められる。
俺には振り向ける自信と余裕がなかった。
「話したいことって――――」
「ま、また今度な!!」
強引に話を打ち切り、部室から飛び出る。
なんて身勝手な野郎なんだ俺は―――。
がむしゃらに走り出す。
文化祭で賑わう人々の群れの中を掻き分け、俺はただひたすらに走った。
自分のでも吐き気がする。
自分の愚かさと女々しさに。
あと少しだった。
あと少しだったのに・・・。
俺はなんでこんな簡単なことも出来ないんだ・・・。
女々しいっちゃありゃしない。
無我夢中で体育館裏の人目のつかない水道へと走る。
そこで埃なんて入ってないはずの目を洗った。
まるで自分が唯に言ったことを正当化するように。
騒がしい周囲の文化祭の音さえ騒々しく感じた。
"いらっしゃい、よってらっしゃい"の声掛け、子供の騒ぐ声、風の音。
何もかもが俺を強く批判しているように聞こえた。
「なんで・・・なんで言わなかった・・・。なんで言えなかった・・・。」
自問自答してみる。
時に人は気持ちを言葉にしてみることで気持ちが整理できるらしい。
でも分かる筈もなかった。
唯に嫌われるかもしれないことが怖かった?
唯に泣かれてしまうかもしれないと思った?
―――――俺が唯に対して嘘をつこうとしていたから?
違う・・・!
嘘じゃない・・・!
澪を好きな気持ちに嘘偽りなんてあるものか!
でも・・・この形容できない気持ちはなんだ・・・!
じゃあなんなんだ―――――。
唯は俺にとってどういう存在なんだ――――。
律に言われた言葉が胸に突き刺さる。
俺は律に言われた通り、唯に真実を告げることができなかった。
馬鹿野郎が・・・。
時間が無限にあるだなんて思ってんじゃねぇ・・・尾形相馬・・・。
顔を洗い、滴る水滴を拭いながら、改めてこの文化祭について考える。
この音、雰囲気、関係性、目指すもの。
全ては無限に続く訳じゃない、一回限りのもの。
合宿でさわ子先生も言ってたじゃないか。
青春は一回きり、戻って来ない。
だからこそ貴重だと。
こんなところで時間を無駄にしちゃいけない。
加えて、唯や澪、軽音部とちゃんと向き合わなければ。
でも――――。
「あぁ、くそ――――」
遂に、俺の心のダムが大きく決壊した。
あふれ出る涙が止まらない。
俺は強引に水道で洗い流すも余計に涙は出てくる。
それは自分に対する嫌悪感からだった。
ずっと気付かないふりをしていたのは分かっていた。
分かっていて気持ちに蓋をしていたのだ。
彼女と対面し、腹を割って話をしようとしたときに。
俺の中の思いに嘘はつけなくなった。
今の気持ち。
今の気持ちに、映るのは一人の女性。
たった一人の女性。
そう、平沢唯だった―――。
***
(SIDE:軽音部)
平沢唯がいる音楽準備室の戸を開く音が聞こえた。
唯はそっと視線を戸へ移す。
「よっー、唯!」
「あっー!りっちゃん!」
現れたのは田井中律。
うっすら額に汗をかいているところを見えると、クラスの出し物である飲食店がよほど大盛況だったことが分かる。
律はふぅ、と息をつきながら椅子に座り、持っていたペットボトルの水を飲み干した。
ジャズ研は今集まりがないからであろうか。
やけに音楽準備室は静かであった。
周囲の盛り上がる音だが微かに聞こえる。
「もう平気なのかー?」
「うーん、もうちょっとって感じ!咳だけ!」
「そっか・・・」
律は遠くを見つめながら。
「なんかちょうどいい気温だな」
「そうだね~」
「もうすぐお昼だけど、皆来れるのかな?」
「来るでしょ~!あ、さっき相馬くんは来てたよ!」
「なにっ、相馬が!?」
「うん!でも目に埃が入っちゃったなんかで顔洗いに行っちゃったー」
「ほ、ほう・・・」
「最近風邪流行ってるもんね~」
「お前が言うなっつーの~」
マスク越しでも分かるが、まだ唯は完全回復などしていなかった。
本当ならまだ家で安静にしてほしいくらいだ。
でも、唯がどれだけ文化祭を楽しみに思っていたか・・・。
律の中にあるのは唯の楽しみな気持ちを奪いたくない、それだけだった。
「今日は絶対安静!そこの長椅子で寝ててもいいからっ!」
「はーいっ」
「明日のライブ出来ない方が大変なんだからなー!」
「分かってるよう・・・」
「明日のライブの為にずっと練習してきたんだ――――。絶対成功させような!唯もボーカル新歓ライブ以来だし、頑張ろ!」
「りっちゃん・・・!うん!!」
目を潤ませながら頷く唯。
それを見て頭をポンと優しく撫でる律。
そこへ再び準備室の戸が開き、紬と澪が入ってきた。
「あら、唯ちゃん!」
「唯!もう平気なのか!?」
「ムギちゃん!澪ちゃん!」
事の経緯を説明し、今日は安静にな、と再び言われる唯。
熱はないのだが、咳と鼻水が止まらないというボーカルにとって致命的な症状が残っていた。
「とりあえず梓来るまで練習してよっか!!」
***
(SIDE:尾形)
「・・・もう全員揃ってるな」
俺はあちらこちらから出し物への勧誘を受けながら、音楽準備室へと向かった。
手すりに亀とウサギの彫刻がある階段に差し掛かった際、準備室から音楽が聴こえた。
「もう練習始めてたか。この曲は・・・」
「相馬先輩?」
背後から声を掛けられる。
その声は、中野梓だ。
背中にギターを背負い、普段とは違うポニーテールで髪はまとめられていた。
「ん、梓か」
「お疲れ様です!」
「おう、練習頑張れよ」
「行かないんですか?」
「えっ、あぁ、行くよ」
「一緒に行きましょう!」
「おう」
「なんか元気ないです?」
「えっ?」
「なんか先輩元気ない!」
「そ、そんなことねぇよ・・・!」
この子意外に鋭いよな・・・。
生意気そうな瞳を俺を見つめる。
梓の黒い瞳を見つめると、何か吸い込まれそうになる気がした。
「何かあったら私に話してもいいですよっ!」
「そうなのか?」
「はいっ!私人の相談とか聞くの好きなので!」
「なにその新事実・・・」
「頼ってくださいな!先輩!」
梓は階段を駆け上がり、俺に振り向き意地悪そうな表情で軽く舌を出した。
それだけだったらいいのだが、駆け上がった弾みでスカートが少し捲れ、透き通る肌色の太腿がちらりと見えた。
思わず心臓の鼓動が速くなってしまうが、それは俺だけにしか分からない。
(単純なやつ・・・俺・・・)
戸を開けると、既に皆が揃っていた。
一瞬、唯と目が合ったが、すぐ逸らしてしまった。
男が女子の前で泣いたなんて恥ずかしいし。
「やっと来たか!相馬!最後練習するから録音してくれ!」
「おう、了解!」
「ギー太!いくよ!」
「えっ・・・ギー太って何・・・?」
「えっ、私のギターの名前!!」
「「「oh―――」」」
「名前なんてつけてないで練習してください!」
「してるもん!あずにゃんの分からず屋~!」
「もー!」
今年も始まった文化祭。
また彼女達の演奏が見れるんだ―――――。
それはそれは。
とても幸せなことだ。
幸せなことって案外幸せなときは気付かない。
だから噛みしめよう。
この上ない青春の軌跡を――――――。
そんな軌跡をもう一度―――――。