けいおん! 〜大切な事は君が教えてくれた〜   作:あいとわ

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御無沙汰しております、あいとわです!
今回も文化祭一日目をゆるりと提供していきます~!

・・・と言いたいところなんですが!!!

今回はそうはいきません。
物語も大きく動き出すこの回。
そして物語も終盤へと近づいて行ってます!(実質的なハラハラ感という意味で)
三年生編もありますのでご安心してくださいね(笑)

感想頂きまして大変嬉しい限りであります。
僕も頑張っていきますので、皆さまどんどん評価ください!
ぜひぜひよろしくお願いします!

それでは今作史上最もドキドキする第29話・・・お楽しみくださいませ~!



#29 嘘!

「はっ・・・はっ・・・ハックション!!!!」

 

 

 

曲の途中でこんな声が聞こえてきた。

もちろん、ボーカルである唯の声であります。

鼻水を垂れ流しながら、ぐへぇ~と蹲る唯。

 

「き、きたねぇぞ・・・唯・・・」

「そうだぞ~唯。唯も高校生なんだから少しくらい女の子らしくしなさい!」

「だってぇ・・・」

「律には言われたくないって顔だな」

「それはど~ゆ~意味かしらぁ~ん?澪ちゅぁ~ん?」

「うっ、気持ち悪いから近寄るな・・・!」

「ボーカルがくしゃみしてどうするんですか・・・?」

「あずにゃ~ん・・・」

「去年は相馬くんが風邪引いちゃって・・・今年は唯ちゃんか・・・」

 

悲しそうに眉を下げながら呟くムギ。

 

「いや、俺は別に風邪引いたってライブには支障ないんだから大丈夫だったよ・・・問題はだな―――」

 

 

 

「――――そんなことない!」

 

 

 

ムギが珍しく声を荒げた。

それは。

それは本当に悲しそうな顔をしていた。

自らの制服のすそをギュっと握りしめながら。

 

――――そうか。

彼女はメンバー"全員"でライブを達成したいのだ。

 

――――そうか。

演奏していない俺もメンバーとしてちゃんと認めていてくれたのだ。

 

なんだかすごく胸の奥が熱くなった。

今さっき涙を流したからであろうか?

俺はちょっとしたことでもうるっと来るようになってしまった。

 

「ムギ・・・」

「ほーら、相馬!ムギを泣かしちゃ駄目だからな!」

「えっ・・・あっ、ごめんな―――」

 

 

 

「私は普段あまり目立つタイプではないし・・・歌も歌えないけど・・・本当に軽音部が大好きで――――!!」

 

 

 

微かに瞳を潤ませるムギに対して俺はなんて良いのか。

唯が風邪を引いて、ライブで出れないかもしれないという事態を誰よりも重く受け止めていたのだ。

 

「ムギ先輩・・・」

「分かってるよ、ムギ。ムギがちゃんと軽音部を大切に思う気持ちが誰よりも強い事は知ってるよ」

 

優しく澪が諭す。

ムギは軽く下唇を嚙み、泣くのを堪えているようだった。

 

「こりゃ、ムギちゃんにあたし達は色々教わっちゃったねぇ」

「そうだな・・・」

「みんなで練習しよ!唯ちゃんも明日には絶対風邪治ってるよ!」

「うん!ありがとうムギちゃん!!」

 

 

また軽音部が一つになる。

 

 

俺はまたそれを見て強くなれる。

 

 

 

 

 

軽音部として、また強くなれる――――。

 

 

***

 

 

今日の昼練習は無事終了した。

ムギの一声で雰囲気がガラリと変わり、思いっきり練習に打ち込むことができたのだ。

また、万が一に備え、俺も唯の代わりで演奏を練習した。

"ふでペン・ボールペン"のみなら一応音を合わせられる。

唯ほど完璧に弾けるわけではないが・・・。

 

また、練習途中にさわ子先生が部室に突入してきた。

文化祭で歌う衣装を持ってきたのだ。

今年のは去年より大胆でフリフリで浴衣が動きやすくなったような形であった。

ちゃっかり男子の僕は皆の生足が見れることに勝手にドキドキしていた。

澪は本気で嫌がっていたが、せっかくさわ子先生が二徹で作り上げた傑作(仮)を無駄には出来ないと決断し着ることにした。

 

 

 

気が付けば、長い文化祭一日目が終わっていく。

 

 

 

本当に長かったと感じる。

クラスの出し物に昼練、放課後練習もあり、クラスの明日に向けての総括もあった。

あれだけ多かった人通りも四時を過ぎると少なくなっていった。

去年にもあったこの感じ。

誰も居ない廊下、夕日が差し込む校舎。

まるで昼の熱気が嘘だったかのように静まり返っている。

 

 

 

そんな中、隣には秋山澪がいた。

 

 

 

静まり返った廊下に窓を背に、生徒会の仕事がある和を待っているのだ。

窓を少し開けている為、そっと風になびく黒髪が美しかった。

たった数秒だったがその横顔を見つめていると。

 

 

「ん――?なに?」

 

 

ふと横目で俺を見て、黄昏ながらそう告げた。

澪はまるでアニメでも見ているような、そんな美しい横顔であった。

 

「い、いや・・・。別に。」

「何よー?」

「なんでもないって・・・」

「そう―――」

 

再び視線を元に戻し、外を見つめている。

 

「相馬。」

「ん、なんだ?」

 

 

 

 

 

「絶対、ライブ成功するよな―――――。」

 

 

 

 

 

 

彼女はそんなことを言う。

本番は明日だ。

不安にでも思っているのだろうか。

まぁ、確かに唯もことを考えれば不安になるのも分かる。

ここまで来ると、何故か緊張している自分が恥ずかしくなった。

 

 

 

 

 

「なーに当たり前のこと言ってんだよっ」

 

 

 

 

 

軽くポンっと澪の肩を叩く。

そうすると緊張が嘘みたいに解けていった。

女子は触れる事すら無理だった俺でも、今だったら全く余裕な気がした。

仲間を励まそうと思っているからかな。

なんか自分を客観的に考えすぎて訳が分からなくなる。

 

「ハハッ・・・だよな――――。」

「当たり前だ。そのためにずっと練習してきたんだろ?」

「うん――――。」

「ならそれを信じるしかないだろ。」

 

まるで自分に言い聞かせるように。

 

 

 

 

「夏合宿とか頑張ったじゃないか。まぁ、少しふざけたところもあるけど、それでも力を出せるのは去年証明済みだろ?」

 

 

 

 

「うん。」

「ほら、元気出しなさい。澪ちゃん。らしくないらしくない。」

 

 

 

「ありがとうな、相馬――――。」

 

 

 

「おう」

 

 

 

「また相馬に助けられちゃった。全く、私は相馬に助けられてばっかりだな―――――。」

 

 

 

「助けるって・・・。俺はそんなカッコイイもんじゃないよ・・・。別に普通に―――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん。相馬は・・・その・・・・・かっ・・・カッコイイよ――――。すっごく――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人ともお疲れ様」

 

 

 

俺の思考が停止している中、ふと委員会の仕事を終えた和が戻ってきた。

ありがとう和・・・。

和がいなければ俺は何かの症状で死んでいただろう。

全身から噴き出る汗を隠しながら、平然と装い、三人で帰る。

高鳴る鼓動のせいで和と澪が何を話しているのか全く耳に入らなかった。

 

校舎を出たところでムギ、唯、梓、律が待っているのが見えた。

おーい!とこちらに手を振っている。

 

「おまたせ~」

「和ちゃん!お疲れ様!!」

「唯・・・そんなマスクつけちゃって本当に大丈夫なの・・・?」

「うん!明日には絶対!ぜっーーたい治すから大丈夫!!」

「そ、そう・・・ならいいけど。」

「明日は全力で出し切るしかないな!」

「梓も頑張れよ!」

「はい!!先輩達の熱い演奏の一部になれることがとっても幸せです!今!!」

「お前も言うようになったなぁ~!このこのぉ~!」

 

律がいつも通り梓に抱き着き、おちょくる。

やめてくださいよ~と幸せそうな表情を浮かべる梓。

初めは色々なことがあったが、今では梓も立派な軽音部の一人だ。

それがとても嬉しく思う。

 

「だって俺が梓を勧誘したんだからな――――!」

 

「おーい、心の声が漏れてるぞ~」

「あっ・・・!やべ・・・!」

「相馬先輩!ありがとうございますね!」

 

珍しく梓がテンション高く、俺の腕に手を回してくる。

ぐほぉ!と俺はテレ死にしそうになったが、律にゲンコツを喰らってすぐ離されてしまった。

何故か唯が羨ましがっていたが、意味不明だった。

 

 

 

それぞれが帰路につき、俺と唯、和が同じ駅で降りる。

そして和も帰路で別れ、唯と俺のみになった。

 

 

 

("あの事"を話すか・・・?いや、今はとても話せる気分ではないし・・・気持ちの整理がついていない・・・)

 

 

 

「ねぇ、相馬くん!」

 

 

 

唐突な唯の呼びかけ。

俺は恐る恐るそれに応じる。

 

「私ね、高校入ったばっかのとき、何かしなきゃ・・・でも何をすればいいんだろうって思ってたの・・・。」

 

「うん。」

 

「そういえばって今思い出したんだけど、本当に出会いって不思議だよね。こんな幸せで大切な場所ができるって思ってなかったもの!」

 

「そうだな。」

 

 

 

そう、始まりの場所はここなのだ。

唯と俺が初めて出会った場所。

唯が何故かすっころんで、俺がそれを助けて・・・。

出会いはたったそれだけの些細なこと。

でもそれがこんな大きく、そして重要なものに進化していったんだ。

たった一年半で。

 

 

気付けばキッカケはいつも唯だった。

 

 

何があっても、そこには必ず唯が居た。

 

 

いつもニコニコ笑っていて、誰かの幸せを願い、どんくさい奴って思うかもしれないけど、それが彼女の長所で。

 

 

一緒にいるだけで周囲をも笑顔にしてくれる、不思議な女の子。

 

 

それが唯だった。

 

 

本当にスゲー奴だよ、唯は―――。

 

 

こんな女の子がこの世の中にいるんだ。

 

 

そんな女の子に出会えて俺は本当に幸せだと思う。

 

 

もっと。

 

 

 

 

 

もっと早く唯と出会いたかった―――――。

 

 

 

 

 

高校なんて三年間っていう短い間だけじゃなくて。

 

 

幼馴染とか、幼少の時からもっと。

 

 

そうしたら俺はもっと幸せだったのだろうな、と思う。

 

 

そんな風に思わせてくれる唯はすごい。

 

 

本当にすごい。

 

 

 

 

 

 

 

「唯。」

 

 

 

 

 

 

 

 

自然と口が動いていた。

頭では何も考えていない。

俺の感情が溢れかえって、つい口から零れ出てしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"嘘"ついてもいいか―――――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――。いいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも唐突なことだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唯も戸惑っているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも唯はしっかりと聞いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は今後一生・・・何があっても・・・放課後ティータイムの"ファン"で居続ける――――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日のライブ・・・必ず"成功"させる――――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで―――――――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「           ・・・・・       、"   "     ―――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん―――――」

 

 

 

 

 

 

 

この日、夏にしては遅すぎる、夏の大三角形流星群が観測されたという――――――。

 

 




やっと言えた"嘘"―――――。
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