ご無沙汰しております、作者のあいとわです。
随分久しぶりの更新となってしまいましたので、前の話を少し読んでから今回の話を読んでいただくと分かりやすいかなーって思います。
さて、今回は#28の冒頭部を軽く読んでからの方が、ちょっと泣けます(笑)
いやー、泣けるのかな~
微妙なところですが、作者は感極まって執筆しておりました。
今回のお話はライブ終了後の後夜祭のお話です!
完全オリジナル回なので存分に彼女達のやり取りを楽しんでいってくださいね!
最後まで読んだ方は感想欄でご意見を是非お願いします><
作者自身執筆しながらかなり悶絶してるのでご意見をご参考にさせて頂きたいです(笑)
それでは、どうぞ!
俺はこれをなんて表現すればいいんだ。
形容し難いこの想い。
俺は――――――。
こんなにも。
こんなにも強く。
放課後ティータイム、彼女達に恋をしていたんだ―――――。
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時間というのは矢の如く早く過ぎ去っていくもので。
ライブが終了した。
あんなも時間を掛けて練習したのはこの為だったのに。
でも、終わってしまったんだ。
……遂に終わっちまったんだ。
俺は呆気にとられていた。
周りはとっくに帰る支度や、次の出し物に向けての準備を行っているのが見える。
その中で、ただ一人立ち尽くす俺。
周りから見たらただの邪魔な奴だろうな、と心の中で客観的に自分を見つめるも、そんな事はどうでも良いと感じる。
そう、どうでもいいんだよ。
頬を伝う涙を拭うこともせず、三回のうちの二回を終了した彼女らのライブの儚さを痛感する。
この姿を見れば人は俺を女々しい、と言うだろう。
でも。
好き、というのはそういう事なのだ、と思う。
何かを好きになれば、必ず人はそれを追い求める。
好きと向き合っている時間が濃いほど、それに伴う代償は大きい。
俺にとっての代償とは、ライブが終了してしまう、ということだ。
この軽音部という組織で結成された放課後ティータイムをいつまでも応援し続けたい、という気持ちが俺の胸を苦しくさせた。
だが、それと同時に込みあがってくる気持ちもある。
彼女達のライブを目の前で見ることが出来て、とても幸せだということだ。
彼女達と高校生活を共にすることで、とても幸せだということだ。
平沢唯を好きになれて、とても幸せだということだ。
今は思いっきり彼女達と喜びを分かち合いたい。
ただそれだけだった。
「相馬くん!!」
そんな声が聞こえた気がした。
とても、とても俺の心が満たされていくのが分かる。
「唯ッ!!」
唯は興奮で頬を赤らめ、うっすらかく汗を浮かべながら俺の右腕に抱きついてくる。
彼女の茶色の髪の毛からはとてもいい匂いが漂ってくる。
俺は緊張のあまり、そっと唯の手首を掴み、右腕から離させた。
高く心臓が高鳴っているのが分かる。
「相馬くん!どうだった!私達のライブ!」
「最高だったぞ……!ほんとお前等、最高だぜ……!」
「あーら、嬉しいこと言ってくれるわねぇん!」
律が舞台袖から降りて来ながら、叫んだ。
「律……!」
「相馬、演奏ありがとな~!お前も最高だったぞ~!」
「へへ……!サンキューな!」
次に出てきたのはムギだ。
彼女は最後の最後でサプライズ演奏を行い、"ふわふわ時間"のサビを再演奏してくれた。
恐らくそこがライブで一番盛り上がったと思う。
「ムギ!!」
「あら、相馬くん!演奏素敵だったわ~!」
「いや、俺の演奏なんかより!ムギのサプライズ演奏が俺は一番グッと来た……!ムギ最高だったよ!」
「うふふ。どうしてもやってみたかったの。それに前に言ったでしょ?"恩返し"がしたいって。」
「そういう事だったのか―――。」
次に降りてきたのは梓。
彼女も俺と同じで呆気にとられているようだった。
「梓、お疲れ!」
「先輩……相馬せんぱぁい……!」
「えっ!?おまっ、梓!泣いてんの!?」
「えぇー!!あずにゃん!?」
「だって……こんな凄いライブ……やったことないもん……!」
「梓――――。」
次に降りてきたのは澪だ。
澪はとっても頑張ってくれた。
苦手だったボーカルも上手く対応したと思う。
本当に澪には驚かれされてばかりだ。
「澪―――。」
「相馬、お疲れ様!」
「ありがとう、澪とっても良かったぞ!隣で演奏しててスゲーってずっと思ってた。」
「そんなこと……ないよ!」
「澪は本当に歌声が綺麗で透き通ってるよな!一曲目のサビなんて隣で聞いてて痺れた!」
「あーダメダメ!今澪を褒めちぎるとこの子爆発しちゃうから!」
「うぅ……」
「でも、本当の事だ――――。」
そうだ。
今言った事全て。
俺の中で、本当の事なんだ。
そこで憂ちゃん、さわ子先生、和も駆け寄ってきた。
憂ちゃんが唯を思いっきり抱き締める。
さわ子先生も昔を思い出したかのような優しい表情で皆を眺めている。
和は澪、律と手を取りながら話している。
ムギは梓にハンカチを渡し、頭を投げている。
これら全ての姿を見て、俺は強く思う。
とても幸せだ。
これからも彼女達が俺の中で強く生きるのだろう。
彼女達がくれた日々。
彼女達がくれた時間。
彼女達がくれた幸せ。
これが運命だったのだろうか。
それは分からない。
でも、これだけは自信を持って断言できる。
彼女達の存在が、俺の中の全正義のど真ん中にいるという事だ――――――。
**********************************
時刻は17時を回る。
講堂の全出し物が終了し、展示も終了した。
来場客は全て校内を出て、全生徒が片づけを行いながら、後夜祭の準備を行っている。
そう。
俺にとっての高校生の文化祭は終了したのだ。
だが、今は感傷的というよりも後夜祭の楽しみの方が強かった。
前回の思い出が頭に過る。
もうあれから一年が経過したというのか。
時が過ぎるのは本当に早い。
日はすっかり暮れ、校内には薄暗さが増していた。
そんな中を歩く、放課後ティータイムのメンバー。
皆がライブの思い出に浸りながら、会話を続ける。
「んんー!この後は後夜祭か!最後まで思いっきり楽しもうぜ~!」
「ですね!後夜祭って何するんですか?」
「講堂ではなんかイベントやってて、外ではキャンプファイヤーかなー」
「澪先輩!一緒に行きましょう!」
「えっ!?いいけど……」
「どうしたの?澪ちゃん?」
「あ、あぁ……なんでもないよ、ムギ!」
「澪のやつ、へーんなの。」
「うるさいっ!」
「うふふ!とっても楽しみね!後夜祭!」
「フォークダンスもあったよね?」
「ええー……フォークダンスですか?」
「そうだよ~!あずにゃん!」
「男子と手繋がなきゃ……ですよね?」
「そうだぞ~?クラスにカッコイイ男子いないのかにゃん?」
「律先輩、可愛くないです……。それといないです。」
「じゃ、相馬!相手してやりなさい!」
「えぇ、俺!?」
「なんで少し嬉しそうなんだよ……」
そんな日常会話を続けていると、外から大きな歓声が聞こえてくる。
恐らくキャンプファイヤーが始まったのだろう。
律の声を合図にメンバーも向かうことにする。
ふと平沢唯の方を見る。
相変わらず整っている美しい横顔をしていた。
大きい瞳、綺麗な茶髪、どこかを見ているような表情。
その顔を見て、どこか俺は緊張してしまう。
俺……今顔赤くなってないかな。
そんなことを考えていると、横から律に肘内を食らう。
慌てて律の方を見ると、優しい表情をしているものの、どこか口角をあげニヤニヤしていた。
くそ……完全に楽しんでやがる。
律には感謝いないとな。
気付かせてくれたのは律なのだから。
「相馬、決めろよ。」
「えっ?」
「この期に及んでまだそんな"えっ?"とか言ってんのー?決めたんでしょ?気持ち。」
「……あぁ。」
「なら言わなくちゃ。恋はタイミングっていうけど、タイミングなんて男が自分から作らなくっちゃ。」
「……分かってるよーー。」
「なら、後日報告楽しみにしてるぞー?それと――――――。」
「……?」
「澪の方も、しっかり、ね。」
「――――――あぁ。」
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キャンプファイヤーの火が俺らの影を長く映した。
今年も立派なキャンプファイヤーだ。
生徒会や先生方のおかげです、ありがとう。
俺ら放課後ティータイム組は校庭にあるベンチで腰を下ろしていた。
今現在、校庭は人影が少ない。
恐らく、ほぼすべての生徒は講堂で後夜祭イベントを大いに楽しんでいるのだ。
……。
今の俺らにはその盛り上がりは必要なかった、と思う。
ライブという激動な時間を終えた俺らに今必要なのは黄昏る時間だ。
それぞれの思い出を語り、振り返る。
そんな時間がたまらなく楽しかった。
まるで一時一時を噛みしめるように。
思い出のノートを皆で眺めるように。
これで全てが終わる訳ではないが、それでも寂しいという気持ちがあったからだ。
ステージ上で輝くあの子達を見ることはあと一度しかない。
その事実が胸を締め付ける。
そんな中、律は口を開いた。
「キャンプファイヤーが始まるまであと30分くらいか……。あたしはどっかほっつき歩てようかねぇ~」
「はいっ!私も行きます!」
「よっしゃ!ムギ!行くぞ!」
「はい~!」
「あっ、私も行こうかな。」
「えっ、澪も?」
「うん。」
一瞬だが、律の動きが止まった気がする。
なんだろう。
「―――、分かった。」
「私は憂と潤に会ってきます!」
「唯と相馬はどうするんだー?」
「ん、俺はここ残ってるよ。足疲れちゃってさ……」
「ジジイかよ……。唯は?」
「んー。相馬くん一人になっちゃうから、少しここに居るよ!」
「オッケー。じゃあ、また後でな~!」
「ほーい!」
俺と唯除く四人が校庭から去っていく。
各々がどこかへ向かっていく。
……こんなことを言っている場合じゃなかった。
今、状況的にチャンスじゃないか?
いや、待て。
今言うのか……?
ふと自分の足を見ると震えているのが分かった。
人に想いを伝えるってこんなにも難しいんだ……。
そんな中、唯はどこかを見つめていた。
遠く。
遠く。
視線の向こうに、彼女の瞳に何が映っているのだろうか。
いつも俺に見せる無邪気な表情は、そこにはなかった。
ほのかに施されている化粧が、いつもと違う唯を際立たせている。
つまり、なんか大人な唯だった。
いつもは普通の女子高生。
だが今は一人の大人な女性に見える。
そのギャップが俺を戸惑らせた。
どう話し掛ければいいのか、分からない。
どう切り出していいのか、分からない。
「相馬くん」
「―――――。どうした?」
「去年と同じこと言うね、」
「えっ……」
「いつもありがとね。本当に。」
いつもの唯がそこにいた。
確か去年にも同じことを唯に言われた気がする。
満面の笑顔でこちらを見つめている。
いつもありがとう、か。
それはこっちの台詞なんだけどな。
いつだって助けられたのは俺の方だった。
軽音部に入ってなければ……俺は……。
「なぁ。"嘘"、ついていいか?」
「えー、また嘘ー?」
意地悪そうに微笑む唯の表情に引き込まれそうになる。
それでも。
「唯、俺は―――――――――。」
息を飲む瞬間。
その瞬間、ある人物が背後から声を掛けてくる。
「お!!唯じゃん!」
「「え」」
なんということだろうか。
唯のクラスメイトの仙崎だった。
別に彼に罪はないが、本当に空気を呼んでくれ土下座してもいいから。
「こんなところで何やってんだ?お前等も講堂行こうぜ!」
「そうだね!」
「あ、あぁ……」
唯に気持ちを伝えるのはまた改めてになりそうだな……。
トホホ、とはまさにこの事なのだろうなと心底思った。
**********************************
あれから講堂に三人で向かい、イベントに参加することとなった。
そこで律やムギとも合流したが、早くこの場から抜け出したい気持ちが強い。
というか足が痛いのが本音だ。
未だに震えが止まらないっていうのもあるが。
「あれ、そういえば澪は?」
「さっきトイレ行ってくるって言ってたけど、そういえばずっと見てないな……」
「大丈夫か?」
「多分夜風にでも当たってるんでしょ。」
「マジかよ……」
少し気になるな……。
別に校内だから大丈夫だとは思うんだが。
……探しに行くか。
この講堂からも出たいし。
「俺、ちょっと行ってくるわ!」
軽く律達に挨拶をすると、俺は走って講堂を飛び出す。
澪がいそうな場所はどこだ……。
屋上、トイレ、教室……。
分からない。
どれも全て探し回るとなれば、かなりの時間を費やす。
少し大げさな気もするが、まぁいいか。
「ん、待てよ……。部室は――――――。」
なんとなくだが、澪はそこにいる気がした。
前触れもなく、唐突に。
澪……。
俺は一度足を止めて、思考を駆け巡らせる。
中途半端な気持ちで彼女と会話していいのだろうか。
唯に気持ちを伝えるということは、そういうことだ。
彼女の気持ちは聞いていないが、律の雰囲気からすると……そのまさかなのだろう。
前の俺だったら飛んで喜んでただろう。
澪のことを好きだったのは事実だ。
それは変わらないし、否定するつもりもない。
でも。
それでも。
あぁ……くそ!話さなければ何も進まねぇ……!
再び俺は走り出す。
澪がいるであろう部室へと――――――。
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部室の戸を開ける。
中は薄暗く、キャンプファイヤーの火が部屋に微かな明かりを当てているだけだ。
その中に人影が一つ。
やはり、そこにいたのだ。
「澪――――――。」
「来ないで。」
彼女はそんなことを言う。
二人だけの世界――――――。
まるでこの世界に二人だけしかいないような。
そんな世界。
そんな世界にいる気がした。
だが、何故彼女がここにいるのか。
分からない。
……馬鹿野郎! 目を背けるな尾形相馬……!
彼女は黄昏ている。
―――――そんな訳がなかった。
彼女の肩は小さく震え、視線は下に向いていた。
無論、俺と視線が合う訳がない。
否。
合わせようとしていなかった。
そう。
彼女は泣いていたのだ――――――。
あの夏、あの夜から、二度目の、二人きり―――――。