あいとわです!!
皆さん、お元気ですか!?
作者は最近多忙でしばらく更新することができませんでした><
もうすぐ2019年も終わってしまいますので、心残りのないように頑張りましょう!
さてさて、今回のお話は感動のお話!
まぁ、前回の終わり方からすればそうなりますよね…‥(笑)
やっとこさ続きを更新できました!
頑張って執筆しましたので、どうぞごゆるりと読んでくださいませ~!
最近執筆していないのにも関わらず、お気に入りの方も増えてきまして大変嬉しい限りです。
読んだ感想などはまた感想欄でお待ちしております!
それではどうぞ!!!
そうだ。
分かっていたじゃないか。
そうだ。
知っていたじゃないか。
そうだ。
何を今更。
全部、全部、分かっていたことなのに。
彼女を前にして何も言えなくなるなんて。
そうだよ。
涙を流すのは俺の方なのに――――――――。
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目の前にいる彼女は泣いていた。
そう、泣いていたのだ。
俺はその光景をただ只管に眺めることしかできなかった。
スッと重力に逆らう事もせず、流れ落ちる一筋の涙。
それは彼女頬を伝い、下へ落ち制服へと滲んでゆく。
彼女が泣いている姿を見るのは初めてではない。
今までも何度も見てきた。
初めて澪と密に関わり、男から守ったあの日。
初めての文化祭の後。
初めて女の子と深夜の外を歩いた時。
どれも泣いている姿だった。
その度に俺は彼女に寄り添ってきた。
だが。
だが、今俺は目の前にしている彼女の泣いている姿は今まで見てきた姿のどれにも該当しなかった。
別に大泣きしている訳ではない。
ただ一筋の涙が零れ落ちているだけ。
でも、それの重みが今までのどんな姿より重かった。
俺の心のあらゆる場所を貫いてくるのが分かる。
"どうして泣いている―――――。"
そんな事を言える筈もなかった。
彼女を目の前にして。
俺は何も言葉を発する事ができない。
無言がこの場を支配する。
聞こえるのは彼女の小さな吐息と鼻を啜る音だけ。
何を言葉にしていいのか。
分からない。
俺がこれまで人生で積み上げたもの全てを積み上げても、分からなかった。
目の前がグルグル回り始める。
「相馬、ごめんな―――――。」
意外にも、沈黙を破ったのは彼女の方からだった。
彼女はそんなことを言う。
ごめんなって……。
なんだよそれ……。
なんで澪が謝ってるんだよ……。
澪がなんか悪い事でもしたってのかよ……。
なんで女の子に謝らせてんだ俺は……。
そんな想いが俺を硬直状態を容易く解いてくれた。
今、どうするべきか。
今、何を話すべきか。
この瞬間に全てが懸かっている。
「澪……その……」
「おかしいよな……。文化祭が終わったばっかだっていうのに一人でこんな所で泣いててさ……」
「そんなことはない!」
「……どうして?」
「それは……俺も泣いたことがあるからだ……!」
「相馬が?ここで?」
「そうだ。初めての文化祭の後、俺はここで一人で泣いた……!恥ずかしいけどな。」
「そっかそっか。それはまた私と一緒だね。」
「澪、――――――」
そこから先の言葉が出てこない。
もう喉のすぐ手前まで来ているのに。
あと言葉を発するだけなのに。
たったそれだけの事がこんなにも難しいなんて。
でも伝えなきゃ。
伝えなきゃならない。
いつまでも中途半端のままではいけない。
「あのさ、澪。」
「うん―――。」
「聞いてほしい事があるんだ――――――。」
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「あれ、まーた一人減ったな~」
律が頬の汗を拭いながら告げる。
後夜祭の体育館イベントも終了を迎え、律、紬、梓、唯の四人は体育館を出るところであった。
「相馬くんならさっき澪ちゃんを探してくるって言ってたよね?」
「はい、言ってましたっ」
「あぁ、そっか。澪のやつどこ行ったんだろ……」
「そろそろキャンプファイヤーが始まるわよね」
「じゃあ和の手伝いでもしにいく?」
「それいいね!」
「じゃあお邪魔しましょ~」
「はいっ!」
四人は同時に頷くとグラウンドを目指し、歩みを進める。
その中での他愛ない会話。
そんな時間が四人を幸せにする。
ライブの話、余韻、これまでのこと。
そしてこれからのこと。
いつかは終わる、終わってしまう話は一切せずに。
これから。
次どんな曲を演奏するか、どんなバンドにしていきたいか、そして遊びの事、受験の事。
様々な事を話していく。
そんな話でも四人は永遠に話せそうなくらい。流暢に喋った。
時間はあっという間に過ぎ、四人はグラウンドへ到着する。
「のーどかっ!」
「和ちゃん!!」
作業を行っている和へ話し掛ける律と唯。
どうやらもう作業は最終段階へ進んでいるようだ。
「あら、皆お揃いでどうしたの?二人いないけど」
「二人は今どっか行ってるんぜ~い」
「それにしても、今年も始まるわね~キャンプファイヤー~」
「ムギは本当にキャンプファイヤー好きだよな~」
「えぇ。こんなこと滅多に経験できないもの!」
「キャンプファイヤーってどんなことするんですか?」
「ゲッ……」
少しではあるが律が苦々しい顔をする。
梓はそれを見て、
「律先輩?」
「去年はフォークダンスやったよ~!」
「フォークダンス……ですか?」
「うん!」
「それは男女ですか……?」
「えぇ。」
「なるほど……」
どちらかと言えば梓は律寄りの思考のようで、男女で手を取り合うのは苦手なようだ。
「去年は私相馬と踊ったから良かったんだけどなぁ……」
「相馬先輩!いいじゃないですか!」
「ね~!あずにゃんも相馬くんと踊りたい?」
「ま、まぁ……踊りたいってことはないですけど、他の男子は嫌ですね……仲いい人いないし……」
「梓ちゃん可愛いからモテモテよね~!」
「そんなことないです!」
そんなことを話していると、ふと背後から声を掛けられる。
「何をしにきた―――――。」
「「「「え。」」」」
声を掛けてきたのは一人の男子学生。
見るからに服装がキッチリしており、目付きも鋭い。
律が梓の様子を見る限りではとてつもなく嫌そうな顔をしている。
「中野梓、君に言っているんだ」
「あずにゃん?」
「こいつがいるから嫌なんですよ……」
「「「な、なるほど」」」
「こーら、音無くん。そんな事言わない。彼女達は手伝いに来てくれたんだよ、多分」
そこで和が男子生徒を制止する。
音無と呼ばれる男子生徒は「しかし……」と苦々しい顔をしながら和の方を見やる。
「彼、私の同級生で同じクラスなんです。生徒会の副会長です。」
「和ちゃんが会長だもんね~」
「よろしくー」
「はい、宜しくお願い致します。」
「なんかめちゃくちゃ堅いな……」
音無は一礼すると、元の自分の作業位置へと戻っていく。
先輩に対しては律儀なようだ。
律が梓の方を見やる。
「ほーう、なるほど。梓が苦手とする理由は音無くんか……」
「そういう事です……」
「梓ちゃんファイト!」
「ありがとうございます……頑張ります……」
梓は小さく背を向ける音無へ意地悪そうに「ベーだ!」と舌を出した。
「じゃあもうすぐ開始するから、火が点く瞬間少し手伝ってもらえる?」
「「「「はーい」」」」
今年もキャンプファイヤーが始まる。
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「あのさ……澪…‥聞いてほしい事があるんだ―――――。」
震える声で告げる。
言い訳なんていらない。
ちゃんと伝えなきゃいけないんだ。
澪のためにも。
ちゃんと伝えるんだ。
どんな言葉より遠い。
どんな言葉より重い。
次の一言を告げる為の時間が無限にすら感じた。
胸が張り裂けそうだ。
どうせ引き裂かれるのなら、己の身を引き裂かれた方がどれだけマシか。
でも時間は待ってくれない。
もう、沈黙を破る時が来たようだ。
「俺さ、唯の事が……好きなんだ――――――――。」
言葉を解き放つと同時に自分の中の全ての想いが一緒に吹き飛んでしまったような気がした。
生まれて初めての"告白"。
自分の想いを打ち明ける、という意味での"告白"。
まるで世界に二人だけしかいないような。
そんな気がした。
沈黙だけがこの場を支配する。
だがそれが長く続くこともなく、彼女の方から沈黙を突き破った。
彼女は笑顔で、一粒の涙を零しながら。
「うん、知ってたよ。相馬――――――。」
「知、ってた――――――?」
うん、と頷く澪。
そうか、知ってたんだ。
俺はおもむろに下へ俯く。
じゃあ余計に澪に辛い想いをさせてたんじゃないのか……?
もっと早く俺が気持ちを伝えていれば……
彼女は――――――。
「でもな、これだけは言える。私も相馬が好きだったって事――――――。」
この言葉を聞いて俺は体中が熱くなる。
生まれて初めて人に好きと言われるこの感覚。
言葉に表すことのできない想い。
油断すれば口から心臓が飛び出てきそうな。
そんな気分だ。
こんな素敵な女の子に好きといってもらえて。
俺はなんて幸せ者なんだろう。
なんて我儘なんだろう。
でも――――――――。
「私、ライブの前に言っただろ?このライブに歌、歌詞に全部の想いを掛けて歌うって――――――。」
そうだ。
澪は確かに俺に向けてそんなことを言っていた。
あれは単なるライブ前の気持ちかと思っていたが……。
「あれはね、私が自分の気持ちに整理をつける為に言ったんだ。もうこれが"最後"って。」
「そうだったのか―――――。」
彼女は大きく息を吸って。
「うん、だから相馬……ありがとう。私、ずっとずっと相馬が好きだった。でもそれは今日のライブで終わりにする―――――。」
彼女は自分の気持ちに深く嘘をついているかのように。
目に大粒の涙を溜めながら。
「今日でその気持ちとはバイバイする。ありがとう―――――。」
俺はただ。
何を言うこともなく、澪の手を両手で握った。
それは、優しく。
そして、とても強く。
そっと、ぎゅっと。
"俺も好きだった―――――。ありがとう―――――。"
これまでの自分のありったけの気持ちを込めて。
頭の中 思い出いっぱい
溢れそうなの ちょっと心配
とりあえずヘッドホンで塞ごう
欲しいものは欲しいって言うの
したい事はしたいって言うの
だけど言えない言葉もあるの
いきなりチャンス到来
偶然同じ帰り道
わお膨らむ胸の風船
急に足が宙に浮くの
上昇気流に乗って
飛んでいっちゃえ
君のもとへ
わたしの"ぴゅあぴゅはーと"
受け止めてくれるなら怖くはないの
この気持ちが大気圏越えたとき
君は見えなくなってた
道の向こう側
I Don't mind
一つの恋の終わり―――――。