けいおん! 〜大切な事は君が教えてくれた〜   作:あいとわ

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#5 楽器!

 

放課後になった。

チャイムの音と共に、皆が帰宅の準備やら、部活の準備やらを始める。

今日はバスケ部は休み・・・か。

「相馬、今日バスケ部?」

和が話しかけてきた。

今日は生徒会なのだろうか。

「いや、今日は何もないや。」

「じゃあ先生に提出物があるんだけど、職員室に持って行ってもらってもいい?」

「おう」

「悪いわね、ありがとう」

そういえば、和も名前で呼んでくれるようになった。

もう入学式から二か月。

結構日が経った。

一方唯も―――。

 

「相馬くん!」

「どうした?」

唯だ。

今日も相変わらずうだーとしている。

机に突っ伏し、顔だけをこちらに向けている。

「今日軽音部おいでよ~!」

「えっ」

「ダメ?」

全く無意識だろうが、上目遣いはやめろ。

一応俺も男だ。

「いや、別にダメじゃないけど」

「やったっ!じゃあおいで!」

「迷惑じゃないなら・・・分かった」

「うんっ!」

凄く嬉しそうだ。

分かりやすい。テンションの上がり具合が半端ない。

「じゃあ先生に提出物預けたら、行くな!」

「音楽準備室で待ってる~!」

「おーう」

パタパタと手を振る唯。

本当に無邪気だな。

不意に笑みが零れてしまう自分が気持ち悪かった。

 

*****************************************

 

「・・・あっ!相馬くん!」

「うーす」

提出物を渡し終え、音楽準備室へと向かう。

音楽準備室は三階の階段を登ったところにある。

中からは音楽は聴こえてこない。

そんな階段の三段目に唯は座っていた。

「行くか」

「うん!皆喜ぶと思うよ!」

「そうかぁ・・・?」

勢いよく扉を開ける。

 

「唯、遅いぞ~って相馬っ!?」

 

あわふたする澪。

心なしか顔がほんのり紅く見える・・・?

「おやおや、相馬も来たのか!大歓迎だぜぃ!」

律が肩を組んでくる。

ところが背が届かず、肩を組むといっても余りにも不釣り合いな感じになってしまった。

「お前・・・背でかいな・・・」

「普通だよ・・・」

「今、お茶入れますね~」

ムギちゃんがお茶を入れてくれる。

あれ・・・ここ軽音部じゃね・・・?

 

あれから彼女たちとは休み時間の廊下等ですれ違ったり、律がたまにウチのクラスに来るか。

そんくらいの程度でしか会っていなかった。

だから少し新鮮だな。

 

「お前ら、練習しねーの?」

 

「まぁまぁ慌てるなや、少年よ。腹が減っては戦は出来ぬだろう」

「そういうことか」

「納得するんかいっ!!」

慌てて澪が突っ込むが、お構いなし。

目の前の高級そうなお菓子に俺は目が惹かれる。

「これは全部ムギちゃんが用意してくれたんだよ~凄いよね!」

唯も同じらしい。

お前ギター早く買え。

 

「結局、相馬は軽音部に入るのか~?」

 

頬杖をつきながら律が聞いてくる。

「兼部っていいんだろうか・・・」

「問題ないっしょ!」

「まじかよ・・・」

「運動部と文化部の掛け持ちってモテそうだよな」

澪がキョトンとしながら呟く。

その言葉を聞き逃さない。

 

 

「よし、入ろう」

 

 

「単細胞かお前」

「いや、男のサガってやつよ」

「は?」

「ごめんなさい」

睨むな澪。

軽く傷つく。

 

「じゃあ部長のあたしが処理したってことでッ!相馬、入部決定ッ!」

 

 

「軽音部へ~!ようこそ~~!!!」

 

 

割と大袈裟に歓迎される。

「あ、どうもどうも」

少し恥ずかしくなるが、表情に出さない。

にしても・・・俺が軽音部か。

 

この俺が―――。

 

いいのだろうか。

 

俺はまた壊してしまわないだろうか。

 

また抱えてしまっていいのだろうか。

 

 

大事なものを―――。

 

*****************************************

 

「とりあえず唯はギター買わないとだよな」

 

 

初の軽音部はこの一言から始まった。

「軽音部は喫茶店じゃないぞ」

「いい加減に諦めなさい唯」

「学園祭に出るしね・・・」

「皆~そんなに言わなくてもいいじゃ~ん・・・」

「いや、入部から二ヶ月経ってるのにギターを買ってない軽音部員も凄いけどな」

冷静な突っ込みに硬直する唯。

本当に分かりやすい奴だ。

 

「じゃあ、今度の休みに買いに行こ!あたしら付き合うからさ!」

 

「りょ」

「だな、了解!」

「分かりましたわ~」

「ありがとね・・・!みんな!」

皆が微笑む。

 

 

「ちなみに俺は何をすればいいの?」

 

 

しーんと時が固まる。

そんな気がした。

「えっ」

「あー、いやポジションは全て埋まってしまったけど、やりたいものがあったらどうぞ!」

敬礼しながら律が叫ぶ。

なるほど、唯でポジションは一応全て揃ったのか。

・・・となると。

 

 

「そういえば、俺ギターとベースなら少し弾けるけど・・・」

 

 

「ええええええッ!!?」

全員が声をあげて驚く。

そりゃそうか。

「いや、父親が元バンドマンで家にあったんだよ。小さいときに少しだけ教えてもらってたんだ」

「へぇ~!」

「じゃあ私、相馬くんに習う!」

はいはーいと手を挙げながら唯が叫ぶ。

目がキラキラしてて何か辛い。

「待て、今の俺は唯より弾けるかどうか分からない」

「それって初心者ってことだぞ」

「Cコードなら押さえられる!」

「アホか!初心者じゃん!」

「でも一応コードは知ってるんだな~」

澪が一応関心してくれる。

優しい。

「Cコードって?」

「ギターを始めた人が最初に押さえる事が多いって言われてるコードだよ。」

「へ~」

「とりあえず、相馬は保留で!唯の指導役でもよし!」

「マネージャーってことか」

「一旦ね!」

「分かった」

 

とりあえず今日はこれにて解散となる。

次の休みにギターを買いに行く事となる。

 

*****************************************

 

日曜日になった。

時計を見ると、十二時過ぎを示していた。

・・・そろそろか。

一時に駅に待ち合わせだから早めに行こう。

家を出て駅へと向かった。

 

 

「うーす」

待ち合わせ場所には唯以外全員揃っていた。

「あいつは・・・?」

「遅刻だとさ・・・」

「あの野郎・・・」

そういえば、全員の私服は初めて見る気がする。

改めて女性なんだな、と思い知らされる。

新鮮だった。

素直に言うなら、可愛いの一言だった。

律はボーイッシュな服装、澪はジーパンや大人の服装、ムギはお嬢様っぽいワンピース。

それぞれ違って、それぞれが良かった。

そんな事に関心していると、唯が慌てて改札から出てきた。

 

「ごめんなさい!!!」

「よし、じゃあ行こうか」

やれやれ、という表情で楽器屋へと向かい始める。

唯のキャラで許されるんだろうな。

誰一人として怒るような人はいない。

 

楽器屋へと着く。

様々なギターやベース、ドラムが並べられており、一同は感動の目を光らせる。

「レフティーのベースだ!!」

左利きの澪が物凄く目を輝かせている。

普段左利きのベースはあまりないらしい。

楽器にも右利き左利きあるんだな~。

「スティック新しいの買おうかな~」

「これ可愛い!!」

「レフティーまたあった!レフティーフェアだって!!!」

 

 

「あのさ・・・君達・・・本来の目的を忘れてはいないだろうな・・・」

 

 

誰一人として俺の話など聞いてなかった。

隣で苦笑いしているムギ。

彼女だけは一般常識があって接しやすい。

いや、澪は例外。

少しムギと話すことにする。

「ムギのおうちって、その何をやっているんだ?」

「詳しくはよく分からないのですけど、ここもウチの系列のお店ってことは知ってる・・・かな?」

「え、そうなの!?」

「何かのビジネスをやってるのだけれど詳しくは分からないの」

「へ~。スゲェな・・・」

「相馬くんは今日はバスケはやらないの?」

「あぁ、今日はサボりだ!」

「あらまぁ・・・」

口に手を当て、驚いた表情を浮かべる。

本当に一つ一つがお嬢様っぽい。

 

「ムギはさ、どうして軽音部に入ったんだ?」

「え?」

「なんか軽音やるようには見えなかったからさ、なんでかなーって思って」

「あぁ、なるほどですね。中々いないような素敵な人達と部活をしたかったからよ」

ニコッと微笑む彼女。

一瞬ドキッとしたが、すぐに視線を逸らし話しを続ける。

「確かに、素敵かどうかは置いといて・・・なかなかいないよな。あんな奴ら」

「えぇ。だから毎日が楽しいわ」

クスクスと口に手をあて微笑むムギ。

その視線の先には、各々楽器に夢中になっている三人の姿があった。

 

*****************************************

 

結局ムギの一声でギターを買うことに成功した唯ちゃん。

何をしたのか分かりませんが、まぁ琴吹家って凄いなってことですねはい。

帰り道、唯と二人で帰る。

「ギター!本当に可愛い!本当に嬉しい!」

「良かったな」

「うんっ!」

満面の笑みだ。

つられてこっちも微笑んでしまう。

 

彼女はひょうたん型のギター、いわゆるレスポールギターを購入していた。

外側は赤で中はオレンジ色と言った方がいいのだろうか。

確かにいいギターだ。

これから唯の相棒のギターになる。

購入した寸前から溺愛状態に陥っているしな。

「これから練習頑張れよ」

「相馬くん教えてね!!」

「いや俺より澪の方がいいだろ・・・」

「澪ちゃんにも教わりたいけど、相馬くんも教わりたい!」

「なんだよそれ・・・」

「なんでしょうかねぇ~!」

やけにテンションが高い。

おっと、もう家に着いてしまった。

 

「じゃあ、俺ここだから」

「え!相馬くんってマンションに住んでるんだ!」

「一人暮らし状態だけどな。学校には内緒だよ?」

「了解しやした!」

ビシッと敬礼される。

俺も敬礼を返すが・・・。

 

「送ってくよ、家まで」

 

「えっ、ほんと!?」

「あぁ、澪のこともあったしな」

「やった!紳士だね、相馬くん」

「俺が紳士な訳ないだろ」

「どうして?」

「どうしてって・・・」

「ありがと!」

強引に話を打ち切られる。

唯の家まであと五分ほどだが、送ってくことにする。

まぁ頭痛はないから大丈夫だとは思うけど。

 

 

そして。

 

この後、買い物途中の憂ちゃんと遭遇して、夕飯をご馳走になるのは数分後の話だ。

 

 




積もる想い―――
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