あいとわでございます!
今回から夏合宿編スタートです!!
色々なメンバーとの深い交流を中心に執筆していきますので、どうぞお楽しみに~!
感想・お気に入り・ご意見などドシドシお待ちしております~!
「ごめんなさああぁぁぁい!!」
こんな叫び声から軽音部の夏合宿はスタートした。
勿論、この叫び声の主は・・・唯だ。
なんというか・・・予測はしていた。
前日に澪とこんなこともあるかな~と会話していた。
半分冗談で、半分本気だった。
集合時間の十分前に目覚めるという伝説級の遅刻をした唯のせいで、新幹線に本気で乗り遅れるところであった。
なんとか半分駆け込み乗車をし、駅員に睨みつけられながら、座席へと座る。
唯は何度も"ごめんなさい"、と謝っていた。
「ふぅ・・・なんともまぁ・・・」
呆れながらに律が一言。
朝から汗だくである。
日頃走り慣れてる俺ならまだしも、この子達は文化部ですよ。
「楽しみすぎて夜寝れなくて・・・」
「小学生か・・・」
「そうでもないみたいだぜ?」
俺は目の前のムギを指差しながら告げる。
全員の視線がムギに向けられる。
そこにはスヤスヤと寝るムギの顔があった。
「ふふふ・・・ゲル状がいいの・・・」
「ゲルッ!?」
「どんな夢見てるんだろ~?」
「さぁな・・・」
こんな感じで二時間近く新幹線に乗っていく。
長いトンネルを抜け、海へと出る。
ムギの別荘とやらは海辺にあるらしい。
律と唯は窓を開け、はしゃいでいる。
その様子を遠くから見守るムギと澪と俺。
どうやら澪は少し複雑そうな表情であったが。
なんとなくではあったが、その真意は分かっていた―――。
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新幹線が到着すると、また更に電車に乗り換え、三十分程度乗る。
そこからバスで10分。
ムギの別荘へと着く。
そして家を見るなりこの一言。
「で、でかすぎない・・・?」
「す、凄い・・・」
簡単に言うなれば、豪邸だった。
玄関の門構えは一般の家を遥かに凌駕し、家の広さはパーティー会場ですかと言わんばかりの大きさだ。
「ごめんね・・・大きい所は予約がいっぱいで小さいところしか借りれなかったの。多少狭いかもしれないけど、我慢してね・・・?」
「一番小さい・・・?」
「これで?」
申し訳なさそうに見つめるムギに全員何も返す言葉が見当たらない。
早速、ムギと澪と俺はスタジオへと向かった。
家の中にスタジオついてるっていうのが、まずそもそも一般人の常識を遥かに上回るのだが、もう突っ込まないことにする。
「長く使ってないから、ちゃんと使えると心配だけど・・・」
「うん!大丈夫そう!」
目を輝かせながら澪は叫ぶ。
本当に音楽が好きなんだなと思う。
だが―――。
「あれ、唯と律は?」
「あら、さっきまで居たんだけど・・・」
「あいつ等、水着に着替えて外飛び出してたぞ・・・」
「なぁにぃいーーー!」
ガックリ肩を落とす澪。
やはり・・・な。
「なぁ、澪。」
「んー?」
「なんかあったのか?」
「なんかって・・・?」
「いや、急に夏合宿しようって言い出したし、学園祭近いって言ってもまだ二か月はあるだろ?」
「"二ヵ月"しかないんだよ~」
ゴソゴソと自分のカバンをいじりだす澪。
その中から出てきたのはラジカセだった。
「これは?」
「聴いてみて」
澪がスイッチを押すと、音楽が流れ始める。
何やら、何かのバンドの演奏のようだった。
だが、圧倒的にこのバンドより上手く、そしてクォリティーが高かった。
パンク系の曲なのかな。
叫んだり、激しいロックを奏でている。
ドラムの刻むビートは速く的確。
ベースはそれを支えながらも、存在感を圧倒的に醸し出している。
そしてギターは上手いという表現が当てはまるのだろうか。
素人の俺には異次元のように感じた。
このバンドの曲調は俺の好みではなかったが、認めざる得ない。
"別格"だ。
「上手い―――」
ムギが小さく呟いた。
それを聞き逃すはずもなく、澪が続ける。
「これ、桜ヶ丘軽音部のOGの人達のバンドの曲。整理してたら見つけたんだ。」
「なるほどな。それで夏合宿を―――」
「うん。負けたくないなって・・・。」
若干澪は恥ずかしそうに言ったが、その瞳は頑固たる決意の表明を示していた。
芯が通ってる強い女の子だな。
「負けないと思う」
「私達なら―――。」
それに応えるようにムギが告げる。
それには何の根拠もなかったし、単なる強がりかもしれない。
でも。
「あぁ、俺はお前等の演奏を信じてる」
「みんn―――」
「いえーーーーーすッ!!!遊びに行くぞォ!!!」
あちゃ~。
「澪ちゃん、ムギちゃん、相馬くん!早く海行こっ!凄くキレイだよ~!」
「早くしないと日が暮れちゃうぞ~?」
「え、あの練習は!?」
「それは夜~!お楽しみはまた後で!」
唯と律は散々俺らをクシャクシャにしたまま飛び出していった。
「本当に―――?」
ただ一言澪が言葉を発する。
「たぶん・・・」
ムギと俺はハモる。
「ムギ、澪。一旦今は遊びに行こうぜ。明日もあるんだし」
そう、この合宿は二泊三日だ。
明日タンマリと練習できる。
「じゃあ、待ってるから。澪ちゃん」
「俺も」
あまり乗り気ではない澪を置いて二人で外に出る。
一人残された澪は何をする訳でもなく。
「私も・・・行くぅ・・・ッ!」
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さーて、お待ちかねと言ってもいいであろう、"この時間"が来た。
水着タイムだ。
悪い、俺も男だった。
この世の健全な男子高校生の諸君・・・ええい、隠すな!
正直なことを言いたまえ。
気分が上がらない訳がないであろう・・・。
だが落ち着け。
クールになるんだ。
俺はあくまでも信頼されている。
そうそう、余計なことは考えてはいけない・・・!
「あ~ら、相馬くんったらァ!女の子の水着を見て何を感じてらっしゃるのかしら~ん?」
そうだ・・・コイツがいた・・・。
頭を抱える。
この人が感じていても言葉を発することの出来ない事を、言うことが出来るスキル・・・羨ましい。
「うるせぇ、律。お前には何も感じてねーよ」
「今テメェあんつった!?ああん!?」
「ごめんなさい」
逃げ惑う俺。
本気でNGワードらしい。
「おいおい、そんなはしゃいでたら夜眠くなっちゃうぞ?」
澪が呆れながらに俺らの方へと来る。
あ、と何か時が止まる音がした気がした。
「母音。」
「喰らえッ―――――!!」
無差別に澪にボールを投げつける律。
見事それは顔面に直撃し、澪は倒れこむ。
律となぜか唯が泣きながら走り去っていった。
とりあえず澪に手を貸してやる。
「大丈夫か?」
「あ、うん。ありがと・・・」
その手を取ってくれる。
後から恥ずかしかったのか、顔を赤くしているのが可愛らしかった。
それにこっちも恥ずかしくなる。
「それにしても・・・綺麗なところだな」
「そうだな」
「こんな透き通ってる水の海を見るの・・・初めてだ」
「俺も。これて良かったよ」
「あぁ。遊ぶのもいいだろ?」
「・・・それもそうだな。アハハ!」
無邪気に笑う。
それにつられ俺も笑う。
こうして、一番乗り気でなかった澪が一番はしゃいで終わり、気付けば夕方になっていた―――。
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一日目が終わろうとしていた。
今は八時。
大変豪華な夜ご飯を頂き、もう幸せも腹も一杯だ。
女性陣は風呂へと向かっている。
俺も風呂へと向かう。
ものすごく広い露天風呂に一人で浸かれるというのは本当に気持ちがいい。
バスケ部の合宿だったら男まみれで、ゆっくり浸かれやしない。
そういう意味でも、軽音部は俺の息抜きにはピッタリな場所だった。
心が休まる。
俺の中にある大きな穴も、埋めてくれる。
弦結―――。
君を忘れたことなど、一度もない。
あの日から俺は何か変わったのかな。
逃げてるだけの日々じゃないかな。
どうか俺を許してほしい。
こんな俺を―――。
「相馬ーー!?」
隣から声がした。
もしや・・・。
繋がってるのかッ!?壁一枚で仕切られているだけなんだ・・・!
「そちらの湯加減はいかがですか~?」
ムギの問いかけに、バッチリ!と答える。
「もしこの仕切りが何かの拍子で壊れちゃったら~澪ちゃんの裸が男子の目に晒されることn―――」
あ、律が澪にゲンコツを喰らったな。
もうお約束過ぎて予測可能だよ・・・。
「それにしても気持ちいいよね~景色もいいし、夜空が綺麗~!」
「夜空?」
ふと見上げてみると、そこには満点の星が広がっていた。
無数に輝く星達は、俺らを照らすかのように夜の海に輝いている。
同じく月も。
「なぁ、"夏の大三角形"って知ってるか?」
「あ!聞いたことある!」
「冬にも別のがあるんだけどな、夏は左からデネブ・アルタイル・ベガって言うんだ」
「へ~!物知りだな!」
「凄い、相馬くん!」
「いやいや、それほどでもないよ」
「冬にも大三角形あるんだ~」
「あぁ、プロキオン・シリウス・ベテルギウスっていう名前の星だよ。」
「ベテルギウスは聞いたことある~!」
そんな会話をしながら、宇宙への思いに馳せる。
こんなに気持ちのいいことがあるだろうか。
向こうの様子は分からないが、同じ空を見上げている。
こんなに素敵なことは。
あるだろうか―――。
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「んじゃ、そろそろ寝るぞ~」
「はーい」
律が大きな欠伸をしながら、寝室へと向かう。
先ほど各々がしいた敷布団と布団があった。
本来なら大きなお姫様ベッドがあったのだが、みんなで寝ることが出来ないので、全員で雑魚寝しようということに。
「じゃあ俺はあっち行くよ」
「え、相馬もこっちで寝ればいいじゃん」
「え?」
「えっ、り、律!?」
あわふたと澪が律をつつく。
「なーにさ?」
「流石に高校生が男女同じ部屋で寝るのはまずくないか・・・?」
「いやー、相馬はそこら辺の男とは違うだろう」
「どういうことだよ・・・」
「襲ったらムギのSPが射殺するからね?」
「怖すぎだろ・・・」
「まぁ・・・確かに相馬なら大丈夫だな・・・」
澪も納得したのか、頷く。
嬉しいような、悲しいような。
「わーい!みんなで一緒に寝よ~!」
無邪気に騒ぐ唯とムギ。
みんなでお泊り・・・夢だったって言ってたもんな・・・ムギ。
ちょっとだけ心が温かくなる。
「じゃ、消すぞ~」
「おやすみ~」
「おやすみー」
各々が寝始める。
一日目だからか、疲れているのか。
皆がすぐに寝息を立てているのが分かる。
「明日は練習か―――」
「―――――ッ」
約一時間半くらい経っただろうか。
少し寝れたのだが、すぐに目覚めてしまった。
最悪だ。
少しうっすら汗もかいている。
気持ちが悪いので少し水を飲みに行くか。
皆が爆睡をしている中、一人リビングへと向かう。
冷蔵庫を開け、炭酸を一口飲む。
シュワッ!という痛快感がたまらなく美味しい。
目が少し覚めたな。
フカフカのでかいソファーに座る。
窓には月の光で照らされる海が見える。
―――――。
この雰囲気だからであろうか。
俺は、軽音部について考えてみようと思った。
高校に入ってもう半年。
中学の時の自分は、こんな高校生活を思い描いていただろうか―――。
否。
そんなことはなかったはずだ。
俺は一人孤独の闇の中にいて。
誰もそこから救い出せないのだろうと思っていた。
でも違った。
違ったんだ―――。
高校初日に、唯と出会ってから。
全てが変わったんだ。
"友達一号"だと言われた。
彼女にとっては、別に大きな意味をもって言った事じゃないのかもしれない。
でも、俺にとっては大切な。
かけがえのない一言だった。
俺は・・・・・。
軽音部に救われていたんだ。
「相馬―――?」
ふと真後ろで声がした。
驚き、慌てて振り向くと。
そこにはパジャマ姿の、澪が立っていた―――――。
運命の悪戯---