今回は早めの更新ということで、夏合宿編の続き・・・お楽しみください!
久々に二期の最終回見て泣いたとか・・・口が裂けても言えない・・・(笑)
月夜に照らされる部屋。
その中に佇む、秋山澪。
薄暗い部屋中でも、澪の顔はしっかりと見えた。
「澪―――?」
「やっぱり相馬か・・・。こんな時間に何やってるんだー?」
ホッと安心する素振りを見せ、強張る表情が解けた。
泥棒か何かと勘違いされたのかな。
まぁ、部屋の電気もつけてなかったし・・・当たり前か。
「少し喉が渇いちゃってさ。澪こそ何やってるんだ?トイレ?」
「うん、そうしたらリビングに人影があってビックリしたよ」
「悪かったな」
「ううん、大丈夫。隣、いいか?」
「おう」
澪がソファーの隣へと来る。
彼女もまたソファーのフカフカさに気持ちよさそうだ。
しん、と静かな部屋。
目の前には月夜に照らされる海。
幻想的な空間だった。
まるで世界に俺と澪だけしかいないような。
そんな感覚がした。
「綺麗、だな―――」
「うん―――」
こんな時間が来るなんて。
普段だったら女子とこんなところに二人きりなんて、緊張で何も喋れないのだろうけど。
でも、今だけは違った。
何故か嬉しかった。
今、ここに居られて。
今、ここに居ることが出来て嬉しかった。
「外・・・出てみないか?」
「外?」
「あぁ、何か目覚めちゃってさ・・・」
「ハハッ、なんだよそれ」
「少しだけでいいから」
俺は澪を外に連れ出す。
半ば強引感が否めないが、今は外の風にあたりたかった。
玄関を飛び出し、浜辺へと出る。
真っ暗なのかな、と思いきや意外とそうでもなかった。
蒼色に光る満月が程よく浜辺を照らしていた。
俺と澪は浜辺へは出ず、堤防沿いを歩いていた。
波の音しか聞こえない。
そんな中で澪と歩いている。
何か不思議な気分だ。
「どうだ、気持ちいいだろ?」
「こんな時間に普段出歩かないからな・・・気持ちいい!」
「夜の空気って昼とまた違っていいよな」
「うん!」
思いっきり深呼吸する澪。
パジャマにパーカーを羽織った姿はとても可愛らしかった。
澪も女の子なんだなって思った。
近くに居すぎて、あまり意識したことはなかったけど、女子だ。
可愛いし、美人だし・・・男子からモテるんだろうな。
「不思議だな~」
ふと澪が呟いた。
「何が?」
「私、こんなに自然に男子と話せたこと・・・ないんだ」
後ろで手を組み、チラリとこちらを見る。
少し胸が高鳴る音がした。
「私極度の人見知りだし・・・女の子でさえ気を許すのに時間かかるしさ・・・」
「なるほどね」
「でも軽音部は違う。私自身が素の私のままでいられる。だから好き―――。」
「俺もだ――」
「そうなのか?」
「あぁ、それをさっき思ってたんだ。俺は軽音部に救われてるんだなーって。」
「面白い奴だな。私らは何もしてないよ?」
「いや、一緒にいるだけでソレは満たされる」
「へ?」
「俺、中学時代にな、友達を亡くしてるんだ―――」
「―――――!」
真剣な瞳でこちらを見つめ返してくる。
彼女にだから言えることなのだと思った。
真面目で正直で、何事にも真っすぐな彼女だからこそ。
「そいつはバスケ部のエースだった。俺よりずっと凄い奴で、ライバルだった。」
蘇る"あの時"、"あの瞬間"。
弦結―――。
「そいつが本来ならMVPを獲るはずだった。俺より才能があったし、何より努力を欠かさない人間だった。」
「でも―――。」
「ある時、そいつは病気で亡くなった―――。突発性のものだった。」
「いつも当たり前のようにいた存在が、いきなり居なくなった。」
「俺は・・・いつも二番目だった・・・それでMVPに選ばれたって訳だ―――」
「強豪校からのお誘いも来た・・・でも全部蹴って俺はここに進学した・・・」
「逃げたんだよ。あいつがずっと俺を見てるようで・・・あいつを超えちゃいけないと思った―――」
「ここはまだ出来上がって一年目の新設校。強いわけがないし、そもそもバスケ部もなかった。」
「でもそこに俺は身を置いて、ただただバスケだけは続けようって思って・・・」
「そんな時に、唯に出会った。」
「君たちに出会った―――。」
澪の方を見る。
月明りだからよく見えなかったけれど。
少し瞳が潤って見えた気がする。
口をつぐみ、黙って俺の話を聞いていてくれた。
別に慰めてほしくて言った訳じゃないが、それでも澪は俺の話を?み砕き、しっかりと受け止めてくれた。
「そうだったのか・・・」
「あぁ、だから俺がやってることの全てが"逃げ"だ。あいつに会わせる面がないよ」
「そんなことない―――」
「どうして?」
「私が保証するから。」
「え?」
「私が、相馬に出会って、救われてるから―――。」
「え―――?」
一瞬だが、波の音が重なり、よく聞こえなかった。
彼女は大事なことを言っていた気がするが・・・。
「ごめん、なんて・・・?」
「ううん、なんでもない。元気出せっ!」
澪は笑顔で背中を擦ってくれた。
女の子に励まされてるようじゃ・・・俺もまだまだだな―――。
「よし!明日はみっちり練習だぞ!しっかり寝なくちゃな!」
「おー、澪先生、よろしくお願いします!」
「うふふ」
俺と澪は別荘へと戻る。
来たときとは違う。
何か違う想いを秘めて―――。
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「おっっっはよーーーーございますッ!!!」
耳を劈くような音が響き渡った。
律がドラムを叩き始めたのだ。
一瞬で脳が目覚め、上半身を起き上がらせる。
「やっめろぉぉおおおぉ!!」
と叫ぶものの、寝ていたのは俺だけだったようだ。
あれ・・・今何時だっけ。
時計を見る。
・・・八時か。
「いつまで寝てんだ相馬!朝風呂行くぞ~!」
「あのさ・・・心臓と耳に悪いから朝に人の隣でドラム叩くのはやめて・・・」
「そうでもしないと起きないだろ~?」
「起きるわ!」
着替えとタオルを持ち、浴室へと向かう。
その間に澪がおはよう、と言ってきてくれる。
そうか、そういえば昨日俺と外に出たっけか。
澪はなんとなくだが、テンションがいつもより高かった。
朝風呂を終え、朝食。
律とムギが厨房に立ち、朝食を作ってくれた。
俺と唯はフカフカソファーで二度寝をかます。
「おいおい、二人とも出来たぞ~」
やれやれという表情で俺と唯の顔を覗き込む律。
律は男勝りなところがあるが、女子力は高かった。
「わーい!卵焼き~!」
「へっへ~アタシ特製の卵焼きは格別だぞ~!」
「頂きます田井中さん!」
「上手い!」
「ムギは味噌汁を作ってくれたのか!」
「ええ。、アサリも入れてみました~!」
「ムギちゃん!本当に美味しいよ!」
「あら、唯ちゃん。ありがとう」
確かに美味しかった。
本当に人の手料理って・・・最高だな。
**
「朝食も食べ終わったところでっと。」
律が腕を組みながら、立ち上がる。
「れんしゅ―――」
「海いっくぞおおぉお!!」
「えええぇええええぇえ!!??」
「ごめんごめん、お約束じゃん?」
「ふざけんな!」
「澪ちゃん怖い怖い~」
「みんなもあの演奏聴いたでしょ?昔では軽音部のライブって言ったら相当有名だったらしいよ。私達も頑張ろうよ!」
「分かってるよ~」
「スタジオいこっ」
ムギと澪に引き連れられ、スタジオへ。
律はドラムを移動させるのに忙しそうだった。
自業自得だ・・・。
「よし、じゃあ作曲したフレーズを1から弾いてみよう!」
あぁ、一回聞いたことある。
ギターのソロから始まるやつか。
「唯、弾けそう?」
「えーと、スコア持ってくる~!」
「律は叩けそうか?」
「まぁ、特別難しいってことも無さそうだから・・・練習すれば何とか・・・」
「そうか、私もあとちょいってところだから頑張ろっと」
「あのー・・・」
「どうした?相馬?」
「俺は何をすればいい?」
「じゃあ、録音!そして音のズレとかあったら教えてくれ」
「了解」
唯、律、ムギ、澪が各々セッティングへと入る。
そして律がスティックを大きく上にあげ。
「行くよー!?ワンッ!ツーッ!スリーッ!」
ジャカジャカッ!と唯がソロを奏で始める。
すごい!
スコアを見ながらではあるが、弾けるようになってる!
それに合わせるように澪がベースを混じらせ、ムギと律が遅れてやってくる。
一つ一つがバラバラでも。
それが一つに合わさった時。
彼女らが創り出す世界が始まった―――。
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キャンプファイヤー。
・・・と呼べるのだろうか。
ただ数本の薪に火を付けただけの小規模なものだったが、それでも炎は輝き始めた。
あれから本当にみっちり練習し、個人個人のスキルはかなり上がっていった。
そして音のブレもかなり修正され、文化祭への演奏に近づいて行ってる気がした。
そして夕食を外で食べ、キャンプファイヤーをやろうといった次第だ。
「ほーのおよ、燃えろーよ!炎よ、燃えろーよ!」
「・・・なんの歌だよ・・・」
「キャンプファイヤーの歌!知らない?」
「知らねーよ・・・」
「そっかぁ~」
「綺麗!みんなでキャンプファイヤーやるの夢だったの~!」
「夢多いな~ムギは~」
炎をみんなで囲う。
律が皆に切ったスイカを食べながら、燃え上がる炎を見つめる。
「いやー今日は本当に充実してましたなぁ~」
「だね!」
「うん!」
「だな!」
「俺も聞いててレベルアップの音を聞いた気がする」
「パンパカパンパーン!みたいな?」
「そうそれ」
「アハハハ!」
皆で笑いあう。
"こんな時間が永遠に続けばいいのに。"
「もうすぐ文化祭だな」
「今まで色んなとこあったね!」
「だな~最初はメンバー集めに苦戦したっけ・・・?」
「そうそう!唯が入って来なかったら廃部だったもんな~」
「誰かさんは私の文芸部の申し込み届も破ったしな」
「アーラ、誰のことかしらァ~ん?」
「私は合唱部だったわよね~」
「さすがりっちゃん!部長!」
「エッヘン!もっと褒めるがいい!」
「そうやってあっという間に高校が終わっちゃうんだろうな・・・」
「さり気なく嫌なこと言うなよ・・・」
「俺も・・・バスケ頑張るか―――」
「そうだよ!相馬くんの試合観に行きたい!」
「お、いいぜ。俺のバスケシーンはかなりカッコイイぞ?惚れてもしらないからな」
「ますます見てみたい!」
「いいぜ、唯!絶対だからな!」
「うん!」
俺らは五人だった。
最高の友達だ。
それぞれが、それぞれの個性を発揮し、いい感じに纏まっている。
そんな感じが、素敵だった。
今度は失いたくなかった。
こんなにも大切なものを。
失いたくなどなかった―――。
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「準備出来たか―――!?」
「おっーけいです!」
「私も~!」
「唯がやりたいって言った事なんだからな~!チャンスは一回しかないぞ~」
「うん!ふんす!」
澪と俺は黙って座っている。
何やら別荘に戻る前にやっておきたい事があるらしい。
一体何をしようってんだ・・・?
静かな浜辺に立つ唯。
そして―――。
「せーーーのッ!!」
刹那、バッ!と無数もの光線が空へと舞い上がった。
打ち上げ花火だ―――!!!
その前に立ち、エアーギターをしている唯。
・・・正直それになんの意味があるのか分からなかったが、スター気分になりたかったのだろうか。
でも、それでも唯は輝いて見えた。
文化祭でスポットを浴びる唯は、あんな感じなのだろうか―――。
たった数十秒の出来事だったけれど。
俺には輝いて見えて。
少しだけ。
ほんの少しだけ、唯が遠くへ行ってしまう気がして複雑な想いだった―――。
その想い、確かに―――。