けいおん! 〜大切な事は君が教えてくれた〜   作:あいとわ

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あいとわです!
今回は早めの更新ということで、夏合宿編の続き・・・お楽しみください!

久々に二期の最終回見て泣いたとか・・・口が裂けても言えない・・・(笑)


#9 夏合宿!(2)

月夜に照らされる部屋。

その中に佇む、秋山澪。

薄暗い部屋中でも、澪の顔はしっかりと見えた。

 

「澪―――?」

 

「やっぱり相馬か・・・。こんな時間に何やってるんだー?」

ホッと安心する素振りを見せ、強張る表情が解けた。

泥棒か何かと勘違いされたのかな。

まぁ、部屋の電気もつけてなかったし・・・当たり前か。

 

「少し喉が渇いちゃってさ。澪こそ何やってるんだ?トイレ?」

「うん、そうしたらリビングに人影があってビックリしたよ」

「悪かったな」

「ううん、大丈夫。隣、いいか?」

「おう」

 

澪がソファーの隣へと来る。

彼女もまたソファーのフカフカさに気持ちよさそうだ。

 

しん、と静かな部屋。

目の前には月夜に照らされる海。

幻想的な空間だった。

まるで世界に俺と澪だけしかいないような。

そんな感覚がした。

 

「綺麗、だな―――」

 

「うん―――」

 

こんな時間が来るなんて。

普段だったら女子とこんなところに二人きりなんて、緊張で何も喋れないのだろうけど。

 

でも、今だけは違った。

何故か嬉しかった。

今、ここに居られて。

今、ここに居ることが出来て嬉しかった。

 

 

「外・・・出てみないか?」

「外?」

「あぁ、何か目覚めちゃってさ・・・」

「ハハッ、なんだよそれ」

「少しだけでいいから」

 

俺は澪を外に連れ出す。

半ば強引感が否めないが、今は外の風にあたりたかった。

玄関を飛び出し、浜辺へと出る。

真っ暗なのかな、と思いきや意外とそうでもなかった。

蒼色に光る満月が程よく浜辺を照らしていた。

俺と澪は浜辺へは出ず、堤防沿いを歩いていた。

 

波の音しか聞こえない。

そんな中で澪と歩いている。

何か不思議な気分だ。

 

「どうだ、気持ちいいだろ?」

「こんな時間に普段出歩かないからな・・・気持ちいい!」

「夜の空気って昼とまた違っていいよな」

「うん!」

 

思いっきり深呼吸する澪。

パジャマにパーカーを羽織った姿はとても可愛らしかった。

澪も女の子なんだなって思った。

近くに居すぎて、あまり意識したことはなかったけど、女子だ。

可愛いし、美人だし・・・男子からモテるんだろうな。

 

「不思議だな~」

 

ふと澪が呟いた。

 

「何が?」

「私、こんなに自然に男子と話せたこと・・・ないんだ」

 

後ろで手を組み、チラリとこちらを見る。

少し胸が高鳴る音がした。

「私極度の人見知りだし・・・女の子でさえ気を許すのに時間かかるしさ・・・」

「なるほどね」

「でも軽音部は違う。私自身が素の私のままでいられる。だから好き―――。」

「俺もだ――」

「そうなのか?」

 

「あぁ、それをさっき思ってたんだ。俺は軽音部に救われてるんだなーって。」

 

「面白い奴だな。私らは何もしてないよ?」

「いや、一緒にいるだけでソレは満たされる」

「へ?」

 

 

 

「俺、中学時代にな、友達を亡くしてるんだ―――」

 

 

 

「―――――!」

真剣な瞳でこちらを見つめ返してくる。

彼女にだから言えることなのだと思った。

真面目で正直で、何事にも真っすぐな彼女だからこそ。

 

「そいつはバスケ部のエースだった。俺よりずっと凄い奴で、ライバルだった。」

 

蘇る"あの時"、"あの瞬間"。

弦結―――。

 

 

「そいつが本来ならMVPを獲るはずだった。俺より才能があったし、何より努力を欠かさない人間だった。」

 

「でも―――。」

 

「ある時、そいつは病気で亡くなった―――。突発性のものだった。」

 

「いつも当たり前のようにいた存在が、いきなり居なくなった。」

 

「俺は・・・いつも二番目だった・・・それでMVPに選ばれたって訳だ―――」

 

「強豪校からのお誘いも来た・・・でも全部蹴って俺はここに進学した・・・」

 

 

「逃げたんだよ。あいつがずっと俺を見てるようで・・・あいつを超えちゃいけないと思った―――」

 

 

「ここはまだ出来上がって一年目の新設校。強いわけがないし、そもそもバスケ部もなかった。」

 

「でもそこに俺は身を置いて、ただただバスケだけは続けようって思って・・・」

 

 

 

「そんな時に、唯に出会った。」

 

「君たちに出会った―――。」

 

 

澪の方を見る。

月明りだからよく見えなかったけれど。

少し瞳が潤って見えた気がする。

口をつぐみ、黙って俺の話を聞いていてくれた。

別に慰めてほしくて言った訳じゃないが、それでも澪は俺の話を?み砕き、しっかりと受け止めてくれた。

 

 

「そうだったのか・・・」

「あぁ、だから俺がやってることの全てが"逃げ"だ。あいつに会わせる面がないよ」

「そんなことない―――」

「どうして?」

「私が保証するから。」

「え?」

 

 

 

「私が、相馬に出会って、救われてるから―――。」

 

 

 

「え―――?」

 

一瞬だが、波の音が重なり、よく聞こえなかった。

彼女は大事なことを言っていた気がするが・・・。

「ごめん、なんて・・・?」

「ううん、なんでもない。元気出せっ!」

澪は笑顔で背中を擦ってくれた。

女の子に励まされてるようじゃ・・・俺もまだまだだな―――。

 

「よし!明日はみっちり練習だぞ!しっかり寝なくちゃな!」

「おー、澪先生、よろしくお願いします!」

「うふふ」

 

俺と澪は別荘へと戻る。

来たときとは違う。

 

 

何か違う想いを秘めて―――。

 

 

*************************************

 

「おっっっはよーーーーございますッ!!!」

 

 

耳を劈くような音が響き渡った。

律がドラムを叩き始めたのだ。

一瞬で脳が目覚め、上半身を起き上がらせる。

 

「やっめろぉぉおおおぉ!!」

 

と叫ぶものの、寝ていたのは俺だけだったようだ。

あれ・・・今何時だっけ。

時計を見る。

・・・八時か。

「いつまで寝てんだ相馬!朝風呂行くぞ~!」

「あのさ・・・心臓と耳に悪いから朝に人の隣でドラム叩くのはやめて・・・」

「そうでもしないと起きないだろ~?」

「起きるわ!」

 

着替えとタオルを持ち、浴室へと向かう。

その間に澪がおはよう、と言ってきてくれる。

そうか、そういえば昨日俺と外に出たっけか。

澪はなんとなくだが、テンションがいつもより高かった。

 

 

 

朝風呂を終え、朝食。

律とムギが厨房に立ち、朝食を作ってくれた。

俺と唯はフカフカソファーで二度寝をかます。

 

「おいおい、二人とも出来たぞ~」

やれやれという表情で俺と唯の顔を覗き込む律。

律は男勝りなところがあるが、女子力は高かった。

「わーい!卵焼き~!」

「へっへ~アタシ特製の卵焼きは格別だぞ~!」

「頂きます田井中さん!」

「上手い!」

「ムギは味噌汁を作ってくれたのか!」

「ええ。、アサリも入れてみました~!」

「ムギちゃん!本当に美味しいよ!」

「あら、唯ちゃん。ありがとう」

確かに美味しかった。

本当に人の手料理って・・・最高だな。

 

 

**

 

 

「朝食も食べ終わったところでっと。」

律が腕を組みながら、立ち上がる。

「れんしゅ―――」

 

「海いっくぞおおぉお!!」

 

「えええぇええええぇえ!!??」

 

「ごめんごめん、お約束じゃん?」

「ふざけんな!」

「澪ちゃん怖い怖い~」

「みんなもあの演奏聴いたでしょ?昔では軽音部のライブって言ったら相当有名だったらしいよ。私達も頑張ろうよ!」

「分かってるよ~」

「スタジオいこっ」

 

ムギと澪に引き連れられ、スタジオへ。

律はドラムを移動させるのに忙しそうだった。

自業自得だ・・・。

 

「よし、じゃあ作曲したフレーズを1から弾いてみよう!」

あぁ、一回聞いたことある。

ギターのソロから始まるやつか。

「唯、弾けそう?」

「えーと、スコア持ってくる~!」

「律は叩けそうか?」

「まぁ、特別難しいってことも無さそうだから・・・練習すれば何とか・・・」

「そうか、私もあとちょいってところだから頑張ろっと」

「あのー・・・」

「どうした?相馬?」

「俺は何をすればいい?」

「じゃあ、録音!そして音のズレとかあったら教えてくれ」

「了解」

 

唯、律、ムギ、澪が各々セッティングへと入る。

そして律がスティックを大きく上にあげ。

「行くよー!?ワンッ!ツーッ!スリーッ!」

 

ジャカジャカッ!と唯がソロを奏で始める。

すごい!

スコアを見ながらではあるが、弾けるようになってる!

それに合わせるように澪がベースを混じらせ、ムギと律が遅れてやってくる。

 

 

一つ一つがバラバラでも。

それが一つに合わさった時。

 

 

彼女らが創り出す世界が始まった―――。

 

 

*************************************

 

 

キャンプファイヤー。

 

 

・・・と呼べるのだろうか。

ただ数本の薪に火を付けただけの小規模なものだったが、それでも炎は輝き始めた。

あれから本当にみっちり練習し、個人個人のスキルはかなり上がっていった。

そして音のブレもかなり修正され、文化祭への演奏に近づいて行ってる気がした。

そして夕食を外で食べ、キャンプファイヤーをやろうといった次第だ。

 

「ほーのおよ、燃えろーよ!炎よ、燃えろーよ!」

 

「・・・なんの歌だよ・・・」

「キャンプファイヤーの歌!知らない?」

「知らねーよ・・・」

「そっかぁ~」

「綺麗!みんなでキャンプファイヤーやるの夢だったの~!」

「夢多いな~ムギは~」

 

炎をみんなで囲う。

律が皆に切ったスイカを食べながら、燃え上がる炎を見つめる。

 

「いやー今日は本当に充実してましたなぁ~」

「だね!」

「うん!」

「だな!」

「俺も聞いててレベルアップの音を聞いた気がする」

「パンパカパンパーン!みたいな?」

「そうそれ」

「アハハハ!」

 

皆で笑いあう。

 

 

 

"こんな時間が永遠に続けばいいのに。"

 

 

 

「もうすぐ文化祭だな」

 

「今まで色んなとこあったね!」

 

「だな~最初はメンバー集めに苦戦したっけ・・・?」

 

「そうそう!唯が入って来なかったら廃部だったもんな~」

 

「誰かさんは私の文芸部の申し込み届も破ったしな」

 

「アーラ、誰のことかしらァ~ん?」

 

「私は合唱部だったわよね~」

 

「さすがりっちゃん!部長!」

 

「エッヘン!もっと褒めるがいい!」

 

「そうやってあっという間に高校が終わっちゃうんだろうな・・・」

 

「さり気なく嫌なこと言うなよ・・・」

 

「俺も・・・バスケ頑張るか―――」

 

「そうだよ!相馬くんの試合観に行きたい!」

 

「お、いいぜ。俺のバスケシーンはかなりカッコイイぞ?惚れてもしらないからな」

 

「ますます見てみたい!」

 

「いいぜ、唯!絶対だからな!」

 

「うん!」

 

 

 

俺らは五人だった。

最高の友達だ。

それぞれが、それぞれの個性を発揮し、いい感じに纏まっている。

そんな感じが、素敵だった。

 

今度は失いたくなかった。

 

こんなにも大切なものを。

 

 

 

失いたくなどなかった―――。

 

 

*************************************

 

「準備出来たか―――!?」

「おっーけいです!」

「私も~!」

「唯がやりたいって言った事なんだからな~!チャンスは一回しかないぞ~」

「うん!ふんす!」

 

澪と俺は黙って座っている。

何やら別荘に戻る前にやっておきたい事があるらしい。

一体何をしようってんだ・・・?

静かな浜辺に立つ唯。

 

そして―――。

 

 

「せーーーのッ!!」

 

 

 

刹那、バッ!と無数もの光線が空へと舞い上がった。

打ち上げ花火だ―――!!!

その前に立ち、エアーギターをしている唯。

・・・正直それになんの意味があるのか分からなかったが、スター気分になりたかったのだろうか。

でも、それでも唯は輝いて見えた。

文化祭でスポットを浴びる唯は、あんな感じなのだろうか―――。

たった数十秒の出来事だったけれど。

 

 

俺には輝いて見えて。

 

 

少しだけ。

 

 

ほんの少しだけ、唯が遠くへ行ってしまう気がして複雑な想いだった―――。

 




その想い、確かに―――。
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