この素晴らしい女神に信仰を!   作:黄昏たそ

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一話・めがみのおしごと

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恥の多い人生を送って来ました。

自分には、神というものが、とんと見当つかないのです。

見たこと無い神を信じろと言われても、見たことも無いのですから確信を持っては信じられません。

聞いたことのない神の声で神が言われたことを信じろと言われても、確かに言われている事は良い事もありましょうが神というものではなく学がある人が語った言葉にしか思えません。

 

しかし、ある日分かりました。

死をもって分かりました。

「山本広樹さん、ようこそ死後の世界へ」

小さな事務机と椅子しかない部屋で自分に人生が終わったことを事務的に告げた人物を見れば、聞けば誰でも分かることでしょう。

人間離れした美貌、そして自分に告げた出来事。

「短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」

自分は16年間神を信じて来なかった私をなんと恥な人間だと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも過去の私より生まれたままの姿で女神様の前に立った私の方が間違いなく恥の多い人間です。

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「…死因はお風呂場で携帯をいじりながらの不注意で滑って転倒死…?もっとトラックとかに女の子助ける為に撥ねられたーとか無かったの?」

「そんなの撥ねられる人が悪いでしょ」

「つまんない奴、だから彼女の一人も出来ずに経験もせずに一人虚しくつまんなく死んじゃうのよ」

べ、別に女の子に好かれたいわけじゃないしー、ただ本読む方が好きなだけだしー!

…可愛い女神直々に死を知らせてくれるのは嬉しいけど、僕が裸なのはどんな羞恥プレイ?ねぇ?女神様可愛い過ぎてヤバイんだけど、緊張でスタンドアップしないだけで辛いんだけど、タオル一枚でもいいからください、お願いします、なんでもしますから。

「…あー、こほん、あらためてはじめまして山本広樹さん。私の名前はアクア。日本において、若くして死んだ人間を導く女神よ。で、人間として転生するか何にもない天国行くかどっちがいい?」

青い女神アクア様は何事も無いように眼を逸らしながら聞いてきた。

なるほど、転生と死後の世界、どっちか選ぶのが正しい死後か。

徳を積んでなくてもいつでも解脱出来そうだ。

手で局部を隠しながら気になることを僕は聞き返した。

「何もない天国って?」

「言った通りだけど?貴方たちが想像してる素敵空間天国とは全く違うところなの。死んでるんだから、食べ物は必要ないし、死んでるんだから、物は当然生まれない、作る材料もないから。本当になんもないのよ?ゲーム、テレビ、漫画、映画、ネットなんかもね。

居るとしたら先に居る人だけど、死んだんだからえっちいことだって出来ないし、そもそも体ないしで永遠に日向ぼっこをして世間話をするぐらいしかやる事ないわね」

地獄がないと思っていたら天国が地獄だったのか、セルフ閻魔。

この二択なら転生かな…あーでも今の自分が消えて赤ん坊からやり直しで両親ガチャか…

はぁ、出来る事ならこの世界の女神がいる真実知ったまま転生したい。

うんうん唸って選択を考える僕に、女神は満面の笑みを浮かべた。

 

「そうそう、天国なんてなんもないところ行きたくないわよね?でも、やり直すのも今の記憶が消えるから嫌よね?そこで!ちょっといい話があるのよ」

女神アクアから悪魔の取引みたいな胡散臭さを感じる。

人間、いい話には警戒するのだ。

アクアはニコニコしながら言った。

 

 

 

「あなた、ファンタジー小説とか異世界転移物好きよね?」

「大好きです!行きます行きます!」

 

 

即断即決。

今、服を着ていれば両手で万歳三唱していただろう。

ファンタジーの世界!あぁ、死んでよかった!

ドワーフ、エルフ、モンスター狩りに魔法!夢にまで見た現実がそこにある!

 

「でも、また赤ん坊に戻るのは嫌だなぁ」

「大丈夫大丈夫、服を着させてそのまんまで送ってあげる。」

「今、服をもらえませんかねぇ?」

「転送時に一括でやる方が楽なのよねぇ」

くっ、人の恥より神の楽とは、流石は神か。

「で、なんでこんなことしてあげるかって言うと、その世界ちょっと過酷で死んじゃった人がさ、怖がって生まれ変わりを拒否しちゃうの、だから赤ちゃんが出来なくて世界滅んじゃうのよ、だから他の世界の未練がある若い人にちょっとテコ入れして恐怖の元の魔王を殺してきてくれないかしらって」

なんと言うリサイクル鉄砲玉。

でも、なる!手駒になるのは正直悔しい!

だけど僕だってまだ生きたいのだ、それに異世界に行きたいのだ。まだ16だもの。

 

「じゃあ、早くお約束をしようじゃない。

たった一つだけ、あなたに、何者にも負けない力を授けてあげましょう。例えばそれは、強力な特殊能力。それは伝説の武器。さあ、どんなもので一つだけ。異世界に持って行く権利をあげましょー」

そう大袈裟に語る僕の前の女神様が差し出した特典のカタログを片手で受け取り目を通してみる。

超魔力、怪力、魔剣、妖刀、多種多様に揃っている。

何にしようか迷っちゃうなぁ…

 

 

 

「ほらほら早くしてー?冴えない根暗のネット小説オタクで短小な奴には期待してないからさー」

「た、たたた短小じゃねーし!まだ戦闘状態じゃないだけだから、武者震いしてるだけだから!」

「あなたの股間の大きさなんてどうでも良いから適当に選んでー、ほらはやくーはやくー他の死者とかもいるのよー、あと早く服着たいでしょ?」

僕だって服は着たい、でも異世界生活一生を軽はずみに決めて後悔したくない!一時の恥より一生の恥にならないように決めるんだ!

ブーブーうるさい神をこちらも気にせず読み進めると気になる能力を見つけた。

 

 

()()()()()()()()()?」

 

 

「それに目をつけるとはいいセンスしてるじゃない」

さっきまで早く早くと煽りながらポリポリとスナックを齧っていた女神がその単語を聞くと食いついてきた。

「なにこれ?」

「私の宗教に入る代わりにステータス全てを最高級にしてあがるわ!」

「これにします!」

 

即断即決。これ僕の心情。

女神を信仰するだけで全パラアップはおいしい!本物の神様だし嫌がる理由も無い!教義とか知らないけど水属性っぽいし食べ物NGとかはないだろう。それに死者の管理を任されているのだ、現地でも高位に違いない!まさにいい事尽くめではないか!服があればじっくり決められるのだがこの辱めはもう嫌だ!

「あなた…なかなか神を見る目あるじゃない」

神様見たの初めてですけど。

「じゃあ特別にこれをあげるわ!」

そう言うと青いカソックが身に纏うように現れた。

やった!羞恥プレイが終了した!

「あ、改宗するとそのカソックがあなたを絞め殺すから」

「呪われた装備!?」

「失礼ね!祝福された装備よ!そう言う能力を選んだんだから変えられたら意味がないでしょ!」

い、一理ある。

「それじゃ、この魔法陣の中央から出ないようにしなさい!私の新しい可愛い信者よ!失敗して頭がパーになりたくなかったらね!」

えぇぇぇぇ、そんなリスクあったのかよ!まぁ、説明をちゃんと受けてればそんなことにならないだろう。魔法陣の中央に移動した。

 

 

「新たなアクシズ教徒兼勇者候補、山本広樹よ。あなたはこれからこの美しき女神アクア様が異世界へと送るわ。魔王討伐の暁にはどんな願いでも一つ叶えてあげる特典付きよ!」

「どんな願いでも?」

「どんな願いでも!」

いきなり聞かされて呆けて返した答えに満面の笑みで答えてくれる女神アクア様、そんなにも信者というのは可愛いものなのだろうか

 

「そして最後に私自らのありがたいお言葉よ、心して聞きなさい!」

さっきまでの笑みをやめ、真面目な顔をした本物の女神様が言う教義とは何か、向こうの世界に早く馴染むために必要だろう、僕は言葉を心に深く刻もうとした。

 

「汝、楽に生きなさい。自由に生きなさい。大丈夫、非難されても悪いのは他人の方よ。でも悪魔とアンデットと魔王は真っ先に殺しなさい!それじゃ、あなたが魔王を倒せることを祈っているわ!」

 

良い言葉だ。屑っぽい言い訳にも聞こえるけど。

そう僕が考えた時には明るい光に包まれ、一面に白が視界に広がっていた。

 

 

 

 

 

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恥の多い人生を送ってきた僕ですが、

まだまだ恥の多い人生が続きそうです。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。

僕はこの時を思い出してこう思うでしょう。

 

 

時間よ戻れ!お願いだから!

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