この素晴らしい女神に信仰を!   作:黄昏たそ

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十三話・ショウグン・オア・アライブ

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異世界の長い夏を抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。集合場所に将軍が止まった。

向側の方から娘が土下座して、将軍が前の男の首を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は体いっぱいに乗り出して、遠くへ呼ぶように、

「カズマさあん、カズマさあん」

刀をさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に兜の毛皮を垂れていた。

もうそんな寒さかと僕は外を眺めると、カズマの血液らしい紅が雪の上に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに紅に呑まれていた。

 

 

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あぁ、働いても働いても働いてもキリがない今日この頃。

季節は冬となり馬小屋では寒過ぎて朝に凍死体で見つかるんでは?とか命を感じたりしますがこれと言ってイベントはありませんでしたとも。

死にたくねぇ…めぐみんからちょむすけを借りられねぇかなぁ…

馬屋の藁の上で冷たく息を引き取ったとかなりたくないし…

 

 

冬になると冒険者も冬眠するらしく宿に篭る。

簡単な獲物も冬眠するから一緒に休む。

仕事はキリギリスみたいに日雇いだけど冬まで貯めるってアリみたいだな。

そして僕はキリギリスになって怠けていたわけじゃないのに何故今も働かないといけないのだ…

街一つの被害と魔王軍の幹部の一人退治をなぜ天秤にかけねばならぬのか…

めぐみんが何かの気まぐれで領主の家に爆裂魔法ぶつけてくれねぇかなぁとか考えたりしたが流石に犯罪はさせるのはダメだろうと僕の中の何かが囁いた。

 

そんな訳でお金も欲しい僕たちは冬でも仕事をする真面目に見えて馬鹿みたいな集団は仕事を探すがない。

仕事が無いではなく仕事が難しすぎると言うべきか。

一撃熊ってなんだよ、ワンミスで死ぬとかリスク高すぎだろ。

狼の群れは継続戦闘の能力が低いうちのパーティには難しい。

そんな暗雲立ち込める中にあった一筋の光。

その仕事内容とは…

 

 

 

 

雪精討伐

一匹討伐につき10万エリス

 

 

 

 

 

 

 

「おおう…雪積もってる…」

街から離れた平原地帯の一角だけ雪が積もっており、

そこかしこに白くてふわふわした丸い塊が漂っていた。

雪のように見えるが上昇していたりするので明らかに違うものだとわかる。

無害だと現地民である女性陣から聞いていたがそれだったら報酬高くない?騙して悪いがとか言って僕たちを消したりとかない?

と思っていたが冬になって少し着込んだ水の女神が無邪気に虫取り網をブンブン振り回しているのを見て考えを改めた。

あ、考えないでいいんだなと。

あと、この氷精、溶けない氷みたく扱えるらしく冷蔵庫みたいにできるらしい

マジかよ、僕も虫取り網持ってくれば良かった。

ウィズに夏に飲み物用に氷作る事を頼みにいくのはちょっと気がひけるし

 

「めぐみん、ダクネス!そっちに行ったの頼む!チョロチョロと!」

なるほど、攻撃すると逃げるんだな。

まだ二匹しか倒せてない。

「四匹目捕ったー!カズマー!見てみて!大漁よ!」

虫取り網が効率良いみたいだし借りたいんだけど…

くそぅ!虫取り網なんて手品で収容してないよ!

あとでかいから隠せないし!

そんな考え事してたら、

「『エクスプロージョン!』」

いつもの爆発音がしました。

そして雪の上にうつ伏せに倒れるめぐみん。

絵的には映えると思うのに何故か決まらないままカズマに冒険者カードを自慢げに見せていた。

仲良い兄妹に見えるな。褒めて褒めてみたいに見せてくる感じで。

 

 

 

そんな平和的な光景の前にそれは突如現れた。

「…ん、来たな!」

鎧を修理に出し比較的軽装のダクネスがそいつを見て、大剣を構える。

表情は嬉しそうだ。あれ?そんなバトルジャンキーみたいな感じだっけ?

というかダクネスが微笑むってことは窮地とかヤバイってことじゃ…

ダクネスの目線の先の物を見て分かった。

というかここ異世界だよねぇ!

なのにさぁ…

 

「そう、冬将軍の到来よ!」

「上様がこのような所に来られる筈がない! 恐れ多くも上様の名を騙る不届き者じゃ!!ダクネス先生!やってくだせぇ!」

「承知!」

「バカッ!このクソッタレな世界の連中は、人も食い物もモンスターもそんなところに流れ着いてた奴もみんな揃って大バカだ!」

 

余の顔を見忘れたかと鎧兜やら日本刀、陣羽織で将軍らしさをアピールしてくる冬将軍が襲いかかってきた!

もう少し異世界感出してよ!和風ファンタジーは散々読んだんしもっとファンタジーしてくれよ!

なんでもアクアが送った日本人の妄想が奴を作ったらしい。

そんな解説の途中でダクネスの剣が斬られた。

きれーに真っ二つ。

アクアが土下座してる。

めぐみんはそういえば声一言も発してない。

…あっ、そういうことね。ふざける状況じゃないのね。

 

「い、命だけは!あっしには病気のおっかぁとおっとぉが!」

「お前ポジションコロコロ変わってんじゃねーか!」

「おねげーします!おねげーします!」

「ほら!カズマも頭下げて!きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!」

視界が真っ白になる。誰が好き好んで首を刎ねられたいものか。

額が冷たさではなく暑さを感じるくらい地面へとこすりつけた。

「おい、何やってんだ!早くお前も頭下げろ!」

「くっ…私にだって聖騎士であるプライドがある!怖いからといってモンスターに頭を下げる訳には…!」

「そんなもの持ってないだろ!いつもホイホイ付いて行こうとするくせに!」

「やめ、やめろぉ!くっ…下げたくもない頭を無理やりさげさせられ、地に頭もプライドもつけさせられるとかどんなご褒美だ!」

そのあとから乱れた息が聞こえてくる。

お前、命賭けて興奮するって同情すらするわ…尊敬は絶対にないけど、こんな状況じゃないと興奮できないって…

そんな中、叫び声が聞こえた。

「カズマ、武器武器!早く手に持ってるのを捨てて!」

その直後にチンっとアニメとか時代劇とかでよく聞くしまう時の音か、鯉口を切ったような音が聞こえた。

あれって両方とも演出で本当は音しないらしいけど、彼を作り上げた日本人は知らなかったみたいだ。

鉄の匂いが広がり、思わず顔を上げたら、デュラハンカズマを見てしまった。

冬将軍はスッと消えた。

 

 

 

 

 

あ、ヤベッ断面図グロい、詳しく描写するとR-18になっちゃう。

しかしカズマが死んだことをいまいち飲み込まないでいる。

「ちょっと生き返らせるからカズマの首取ってくれない?」

サラッとすごいこと言うなこの女神。

やっぱ神様ってすごいや。

「すいませんいきなりのグロ画像でちょっと体調が…」

「だらしないわねぇ!ヒロキが酷い怪我とか治すかもしれないんだからちゃんと見て耐性つけておきなさい!」

解剖の授業始めての医学生とかこんな感じなんだろうか、モグリの医者の漫画の描写しか見たことないけど。

「えっ、カズマの首がどうしたんです。」

うつ伏せになったままめぐみんが聞いてきた。

うん、分かんないよなその状態だと。

「カズマがデュラハンになった」

「嘘…ですよね?」

「いや、今アクアが蘇生魔法かけてるから」

不安になったのか最後らへんすすり泣きが聞こえた。

まぁ、腐っても女神だから成功するだろう。

「うわ、切り口すごい綺麗」

「そ、そうなんですか」

ちょっと胃から逆流してきそう、あ、やばい、酸っぱい臭いする。

ダクネスはちょっと放心してた。カズマの返り血も浴びてるし見た目からヤバイ。

なんか一人殺した後に見える。

「目逸らしちゃダメよ!ちゃんとしてるところ見なさい!」

意外に教育ママの素質ありなんだろうか、丁寧にかつ早くヒールを唱えてくっつけてる。

あ、ダメだもう喉のダムが決壊しそう。

「すいません、もう無理です!」

「くっつけたからもういいわよ、木陰に行ってきてしてきなさい。」

僕はダッシュでその場から立ち去った。

今日は野菜だけしか食べたくない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スッキリして戻ってきたらカズマはアクアに膝枕されてて、ダクネスは右手を握り祈り、めぐみんはすがって泣いていた。

「カズマっ!カズマ、起きてくださいっ!」

ラスボス倒した後に何故か目を覚まさない主人公か何か?

…カズマって結構クズとか言われてたけどやっぱり慕われてはいたんだなぁ

あっ、目を覚ました。ボーとした感じで今まで死んでたとか微塵も感じさせない。

「…あ、やっと起きた?ったくあの子は相変わらず頭固いんだから全く」

優しく声をかける感じから母神かな?たまに女神っぽく見えるのが悪いところだ。

二人は無言で抱きしめていた。

あ、赤くなってる、ニヤニヤしててやろう。

「もう一回死んだ感じどうだった?」

「最高の女神がいた、正直チェンジしてほしい」

「上等よこのクソニート!そんなにあの子と会いたいなら、今すぐ合わせてあげようじゃないの!」

「まぁまぁ、アクアせっかく生き返えらせたんだ」

ダクネスが押しとどめてくれてた。手が光って唸っていたがマジで送り返そうとしていたのか…

「…具合は大丈夫なんですか?どこか調子が悪いところは?」

めぐみんがペタペタと触っている、正直羨ましい。でも死にとうない。

「一応大丈夫そうだ。そういえばどうやって殺されたんだ?」

「デュラハンでグロ画像だった…うっ、吐き気が…」

「デュラ…!」

 

 

 

 

そんなこんなで雪原を真っ赤に染めて今日のお仕事は終了した。

なお、後日死んだ時のことを聞いたらなんで死ななかったんだろうと不謹慎ながらも思ってしまった。

僕はカズマで酸っぱい思いをしただけなのに。

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