この素晴らしい女神に信仰を!   作:黄昏たそ

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八話・刀盗

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普通の子に生まれた僕は金ほど地上にためになるものはないと、

聞かされて育ち、まだ見ぬ大金を「権力」の象徴のように幻視するよいになっていた。

 

しかし一文無しなら金を得ねばならぬ

 

一体金を得るために命を捨てようとしているのか、

命を失うために金を得ようとしているのかわからなくなった。

 

綺麗な水に浸されていた私はやがて檻の天井を見上げ、

溜め息を吐いて、一仕事終えて一服する人のように生きようと思う。

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ダクネスがデュラハンに呪いを掛けられたけどアクア様が呪いを解いてしまってカズマとめぐみんの決意に水をぶっかけて台無しにした今日この頃、

はぁ…よく考えたら解けるなら今すぐ解いてもらうんじゃなくてもう少し待ってもらったほうがよかったかなぁ…そうしたら死の恐怖から逃げ場としてアクシズ教を説こうとしたんだけど…

まぁ、そんな感じなイベントで特にデュラハンさんが呪いを解かれたことに気付くことなく、宣告の日数、一週間が経ちましたがなんのイベントもありませんでした。

結局デュラハンが古城から去ってないからお仕事無いけど。

 

 

「クエストよ!キツくてもいいから、クエストを請けましょう!」

「「えー…」」

懐が潤っているので仕事をしなくてもいいカズマとめぐみんから不満の声が漏れた。

まぁ、高難易度しかないのにわざわざ仕事したくないよね。

「僕は構いませんけど…」

「私も構わないが…この3人では火力不足だろう…」

あー、誰か一緒に行ってくれないかなぁ?チラッチラッ

「…行かないぞ」

くっ!頑固者どもめ!

「お、お願いよおおおおお!もうバイトばかりは嫌なのよ!コロッケが売れ残ると店長が怒るの!頑張るから!今回は、私、全力で頑張るからぁぁぁっ!」

「…僕からもお願いできますか?最近コロッケ以外口にしてなくて…」

だって、小型犬のような目で助けを求めて来るんだもん!買うしかないじゃん!

カズマとめぐみんは顔を見合わせてからカズマが言った。

「しょうがねぇな…じゃあ、ちょっと良さそうだと思うクエスト見つけて来いよ。悪くないのがあったら付いてってやるから」

その言葉に僕達2人は嬉々として掲示板に駆け出した。

 

 

「…よし!」

「駄目です」

「何よもう、二匹纏まってるところにめぐみんが爆裂魔法食らわせれば一撃じゃないの。ったく…」

「マンティコアとグリフォンを一箇所にまとめる作戦はどうするんですかねぇ?」

「カズマが考えるでしょ」

「駄目です、今回はアクア様が悪いんですから極力みんなに負担かけないのをですねぇ」

「あ!これこれ!これ、これ見なさいよっ!」

「…あぁ、うん、これならまぁ、…2人で6時間くらいですかね?」

 

 

「ってなわけで!この湖の浄化のクエストはどうかしら!」

「浄化だけなら2人だけでいいんじゃないか?そうすれば山分けできるだろ?」

「いや、浄化してる最中にモンスターが邪魔しに寄ってくるので守ってくれませんかね?」

「…ちなみにどれくらいだ?」

「…6時間くらい?」

「長えよ!」

「ああっ!お願い、お願いよぉぉぉぉっ!他にろくなクエストがないの!協力してよカズマさーん!」

「あー…僕からもお願いします、本当にこれくらいしかないんです」

…カズマは僕達の言い分を聞いてから何か思いついたような顔をした。

「…なぁ、浄化ってどうやるんだ?」

「…へ?」

「水に手を触れて浄化魔法をかけ続けるだけだけど…」

「俺にいい考えがある」

…嫌な予感しかしない!

 

 

 

 

 

・依頼内容:湖の浄化

街の水源の一つの、湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住み着き始めたので水の浄化を依頼したい。

湖の浄化を最優先に、モンスター討伐はしなくても良い。

※要浄化魔法習得済みのプリースト。

報酬は30万エリスなり。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇちゃん、僕達何処に売られちゃうの?離れ離れになっちゃうの?」

「…ごめん、今乗ってあげられる気分じゃないの」

現在僕達は希少なモンスターを閉じ込めておく鋼鉄製の檻の中に閉じ込められています。

この檻を湖に放り投げるんですって。奥様。

人身供養か何か?

あの、水の女神のアクア様なら1日沈められても平気だろうけど僕は?ねぇ?僕の安全は?

「大丈夫だ、捨てに来たわけじゃないから沈めないぞ。」

湖に運ばれて行く檻。

足元にほんの少し水が入ってくるぐらいだ。まぁ、これなら安心かな。

「…私は紅茶のティーバッグの女神とでも思われているのかしら」

…何も言わずに僕は水の浄化を始めた。

 

何事も無く浄化作業開始から2時間経過

「あれ?全く冷えないや」

「あぁ、その防具、水には強いわ、だって私の加護だもの」

「へー、初めて知りました。」

「おーい!浄化の方はどうだー!トイレ行きたくなったら言えよー?出してやるからー!」

「浄化の方は順調よ!あと、トイレはいいわよ!アークプリーストはトイレなんて行かないし!」

「いや、普通に行きますよ僕、『ピュリフィケーション』」

さて、結構早く終わりそうだな。

そう僕はこの時まで思っていたのだ…

 

 

 

浄化作業開始から3時間経過

「『ピュリフィケーション!』『ピュリフィケーション!』『ピュリフィケーション!』」

「『ピュリフィケーション!』『ピュリフィケーション!』『ピュリフィケーション!』」

「ひぃ!檻がギシギシいってるぅ!ミシミシ言ってるぅ!檻が!檻がぁ!」

「アクア様『ピュリフィケーション!』手を『ピュリフィケーション!』止めないでください『ピュリフィケーション!』」

ワニが!大量のワニが檻を齧ってるぅ!

あぁ!横に倒さないで!僕達の場所を中心からずらさせないで!

足や手が外に出る妄想なんて今はするな!僕!

「『ピュリフィケーション!』ひぃ!メキッて!メキッて言ったぁぁぁぁぁぁ!」

「うろたえちゃダメよ!アクシズ教徒は狼狽えないイイイイイ!『ピュリフィケーション!』」

「お前達ー!ギブアップならそう言えよー!」

「「ここまで来て諦めてたまるもんかぁぁぁぁぁぁ!」」

 

…浄化を始めて5時間経過

 

「ひっく…エッグ…ぐす…」

「泣いてもいい、泣いてもいいです…生き残ってる証です…」

背中をポンポン叩きながら胸を貸してあげる。

「終わった…ぐす…終わったのよね」

「えぇ…ぐす、終わったんでず!見事クエスト完了です!ぐっ」

僕達は泣いた。生を実感して、生きてる証拠を天に示さんばかりの大声で泣いた。みっともないとは思わなかった。2人で落ち着くまで抱き合って泣いていた。

「…ほら、浄化が終わったなら帰るぞ、今回の報酬はお前らだけでいいから、な?いい加減お前ら檻から出ろよ。もうアリゲーターはいないから」

「すみません…このまま連れてってくれませんか?」

「なんだって?」

「…檻の外が怖いから、このまま街まで連れてって」

 

 

 

 

 

「ひっぐ、ぐす、うぅ…」

「大丈夫ですよ…もう街中ですよ…大丈夫、湖は離れましたよー…」

「おい、もう降りてくれないか?ボロボロの檻に入って泣いてる女なんて町の住人の注目集めるからな?」

「やだぁ…ここなら安全なのぉ…外怖いのぉ…」

「大丈夫、アクア様を狙う人はいませんよー怖いワニさんはいなくなりましたよー」

幼児退行してしまってる…

いつも怖いもの無しの幼児なのに怖がりになってしまってる。

まぁ、クエストは終わってるから檻を返せば強制的に退出することになるだろう。その時までは入れてあげるのが優しさだろう。

そうやって泣いてるアクア様を慰めていた。

 

 

 

「めっ女神様っ⁉︎女神様じゃないですかっ!何をしているのですかそんな所で!」

 

 

 

 

いきなり現れた男はそう叫んで僕達の入っている聖域(てつごうし)をグニャリと捻じ曲げた。

「ひぃ!」

そう恐怖してるアクア様の盾となるよう前に出る。

「…おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様、何者だ?知り合いにしてはアクアがお前を怖がっているようだが?」

そう言ってダクネスが男に詰め寄った。

うん、こういう時は頼りになるクルセイダーだ。凛々しくてかっこいい。

ただ、今の精神的拠り所を破壊されたらダクネスでも怖がるだろうけど。

そんなダクネスにやれやれとため息をつきながら首を振る男。

ぶん殴るぞテメー、ハンサムだと思ってんのか?

 

「アクア様知ってます?」

「知らない!知らないわよぉ!」

「ほらほら、落ち着いてー怖くないよー」

「うぅ…檻壊れちゃった…壊れちゃったよぉ…」

「大丈夫、僕が守りますよー」

男が、驚きの表情で見開いている。

これ以上興奮させんなよ?今、危ないんだから

 

「何言ってるんですか女神様!僕です、御剣響夜ですよ!あなたに、魔剣グラムをいただいた!!」

「ひぃ!」

「大丈夫、大丈夫ですよ、あの大声はやめてもらえませんか?怖がってるので」

こいつ、転生者だな。日本人の名前でアクア様から装備貰ってって感じか。

高そうな鎧、黒鞘に入った剣を下げて、茶髪で顔は整ってる。

後ろに槍を持った美少女と腰にダガーぶら下げた美少女を連れてる。

年は同じくらいか?

まぁ、なんだ、主人公っぽいって言えば主人公だけど最近のだと流行らないかな、もうちょっと工夫を入れて頑張って。

そんな男が困惑している。あー話を僕がしたいけどアクア様いるし…でも一から聞いてきそうだよなぁ…

「…ごめん、カズマ、説明頼める?」

 

 

 

 

 

「…バカな。ありえないそんな事!君は一体何考えているんですか!?

女神様を引き込んで!?しかも、今回のクエストでは檻に閉じ込めて湖に浸けた!?」

カズマはいきり立ったミツルギに胸ぐら掴まれていた。

…?なにかいけないことでもあっただろうか?

「ちょちょ、ちょっと!いや別に、私としては結構楽しい毎日送ってるし、連れてこられたことはもう気にしてないんだけどね?魔王を倒せば帰れるんだし!今日のクエストだって、自分から言ったことだし結果的に誰も怪我せずに無事完了したわけだし。しかも、クエスト報酬30万よ、30万!それを檻の中の2人で分けていいって言ってくれるの!」

その言葉に、ミツルギは憐憫の眼差しでアクアを見る。

「…アクア様、こんな男にどう丸め込まれたかは知りませんが、今のあなたの扱いは不当ですよ。そんな目にあって、たった30万…あなたは女神ですよ?それがこんな…」

おい、イケメン、たった?たったって言ったかこのヤロー。

今にもキレそうだから黙ってやるけどよ。

アクシズ教の女神だって知ってんのか?自由がモットーなんだぞ。

 

「ちなみに、今はどこで寝泊まりしてるんです?」

「え、えっと、みんなと一緒に馬小屋で寝泊まりしてるけど…」

「は!?」

明らかにカズマの胸ぐらを掴む手に力が込められていた。

ダクネスがその腕を掴む。

「おい、いい加減その手を放せ。お前はさっきから何なのだ。カズマとは初対面のようだが、礼儀知らずにもほどがあるだろう」

ダクネスが珍しく怒ってた。

見ればめぐみんも新調した杖を構え、爆裂魔法を詠唱してた。いいぞ、こっちを巻き込まないようにリア充を爆発してしまえ。

ミツルギは手を離すとそんな臨戦態勢な2人を観察する。俺の方も見てきた。見んじゃねぇチーズバーガーぶつけんぞ。

「…クルセイダーにアークウィザード、それにアークプリースト。…随分。綺麗な人達だなぁ。君はパーティーメンバーに恵まれてんだね。それなら尚更だよ。君はアクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋に寝泊まりさせて恥ずかしいと思わないのか?」

…何を言っているんだこいつは、拾ってくれたパーティーはここだけって奴らの集まりだぞ。

カズマが近寄ってきてアクア様に耳打ちさしてる。

それを聞いてからカズマの機嫌が悪くなった。

うわぁ…絶対怒ってるよ…

そんなことも気にせずにミツルギはこちらに哀れみの混じった表情で笑いかけた。

「苦労したみたいだね。これからは僕と一緒に来るといい。もちろん馬小屋なんかで寝かせないし、高級な装備も買い揃えてあげよう。というか、パーティーの構成的にもバランスが取れていいじゃないか。ソードマスターの僕に僕の方の戦士、それとクルセイダーと僕の仲間の盗賊と、アークウィザードのその子にアークプリーストの君、そしてアクア様!完璧なパーティー構成じゃないか!」

ふぇぇ…移る前提で話進めてて怖いよう…

「ちょっと、ヤバいんですけど、あの人本気で引くぐらいヤバいんですけど」

「どうしよう、あの男殴りたい、いつもは殴られたいはずなのに生理的に無理だ」

「爆裂?爆裂します?あの苦労知らずのエリート顔を吹っ飛ばしてもいいです?」

…あ、今なら人生で言いたいあの言葉言えるや

 

 

 

「…ほ、本当にその待遇で迎えてくれるんだな…?」

「ちょっと!?」

「な、何言っているんだ!」

「何ですか?爆裂魔法に巻き込まれたいんですか?」

そう口々に非難してから仲間たち。つ、辛い!僕だって移らないから、台詞だけ言わせて!お願い!

ミツルギは爽やかに笑いかけた。

「ああ~約束するよ~~~~。

さぁ、そこからアクア様を連れ出して一緒に行こうじゃないか」

 

 

さぁ、一生に一度言えるか言えない、格好付けて言おうじゃないか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言…言ったぁぁぁ!やったぜ、人生で一度は言いたい言葉ベスト一位を言えた。もう死んでもいいかもしれない。

「こちとら、自由を愛するアクシズ教徒よ!んな話で僕が動くかバァァァァカ!」

「ねぇカズマ!満場一致でみんな話断ったからもうギルド行こう?あの人には関わらないほうがいい気がするわ」

満面の笑みを向けてくれたアクア様、女神かよ。女神だった。

「えーと、というわけなんでクエスト報告があるからこれで…」

…ミツルギキョウヤは動かない…だと…?

「…どいてくれます?」

 

 

アクア様をこんな境遇に放っておけない、僕と一緒に来たほうがいい。君には世界救えない。

そんな人を煽る言葉をよくも言えるな。

カズマが目に見えてキレかけてる。

「僕と勝負しろ!僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら何でもいうことを一つ聞こう。」

ん、今何でも聞くって言ったな?

「よし乗った!!じゃあ行くぞ!」

「ヒャッハァー!」

カズマは一呼吸も置かずに襲いかかった。

同時に僕も奇声をあげて剣を構えて音を立てて檻から飛び出す。

当然、ミツルギはこっちを見る。

当然だ、ソードマスターのイケメン君には最弱職の冒険者なんて考慮する値もない。

「えっ!?ちょ!待っ!」

前方不注意。

流石かなソードマスター、腰の魔剣を抜くと横にしてカズマの小剣を受け止めに入る。

しかし、魔剣に当たる寸前に…!

「『スティール』ッッッッ!」

盗めない時のために備えて二の矢になれるよう攻撃を加える。

しかし、そんな心配いらなかったようだ。

いきなり魔剣を盗みやがった。

「「「はっ?」」」

間の抜けた声は誰のものか。いや、この場の全員か。

魔剣を取られたミツルギになすすべはなく僕が振り下ろした二刀で頭を思い切り強打してやったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

「卑怯者!卑怯者卑怯者卑怯者ーっ!」

「あんたら最低っ!最低よ、この卑怯者達!正々堂々勝負しなさいよ!」

「おい、何か言われてるけど?僕達何悪いことした?」

「何もしてないよな?特にルール決めたなかったしな、あ、この魔剣貰っていきますね」

その言葉に取り巻きの1人が燃えあがる。

ははっ!もっと憎むがいいわ!それがこちらの勝利の美酒じゃあ!

「な、バカいってんじゃないわよ!それはキョウヤにしか使いこなせないわ!」

「そうなんですアクア様?」

「残念だけどマジよ」

「マジかー…超強化だと思ったんだけどなぁ…」

「とりあえず貰っておきましょうよ。カズマとヒロキの卑怯の証として」

「そんな証持っておきたくないからすぐ売りましょうか」

「それじゃあ、ギルドに報告に行こうぜ。起きたらお前が持ちかけた勝負なんだから恨みっこ無しだぜって言っておいてくれ」

そう言って馬車を走らせようとする僕達の前に2人の少女が武器を構えた。

「キョウヤの魔剣返してもらうわよ!」

「売らせてたまるものですか!」

そう立ちふさがる2人にカズマは手をワキワキさせながら見せつける。

 

 

「別にいいけど、真の男女平等主義者の俺は、女の子相手でもドロップキックをくらわせられる公平な男。手加減してもらえると思うなよ。というか女相手ならこの公衆の面前で俺のスティールが炸裂するぞ?」

 

 

さ、さすがカズマ!僕にできないことを平然とやってのける!

そんなカズマを見た2人は後ずさった。

女性陣はカズマを白い目で見ていたのであった。

何でさ!かっこいいでしょ!

 

 

…かっこいいよね?

 

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