アンケートの締切ですが、今月の30日21:00までとさせていただきます。
では本編をどうぞ↓
特別実習を控えた日曜日、丁度犬走の休暇も重なったこともあり、一夏は犬走と一緒にレゾナンスに来ていた。
「それじゃあ行きますか。」
「はいはい、行きましょう。」
同じ定期船に乗ってやって来た二人はその足でレゾナンスに向かう。
一夏はラフな私服姿であるが、犬走の方はと言うとそれなりにしっかりとしたコーディネートで来ていた。
「はい、一夏くん。」
人込みに入る前に犬走は一夏に手を差し出す。
その行動の真意が見えない一夏の動きが止まる。
「人がいっぱい居ますし、はぐれたら面倒なので。手をつなぎませう。」
「え、あ、ちょっ!?」
さすがは歳上の女性と言うべきか、照れもせずに一夏の手を強引に握り、引っ張っていく。
そんな一夏と犬走を物陰から見つめる人物が数名ほどいた。
「ねぇセシリア…。」
「なんでしょう鈴さん。」
瞳のハイライトさんが緊急出張していなくなった目をした二人は物陰から手を繋いで楽しそうに歩いている一夏と犬走をじっと見ていた。
「あれ、手を繋いでるよねぇ?」
「ええ、繋いでますわねぇ。」
「あはは、そっかぁ…。白昼夢でも私の見間違いでも幻覚でもないんだぁ…。」
乾いた笑いをこぼしながら、鈴はゆらりと物陰から出る。
「よし、殺そう。」
アハッ☆と笑い、拳を握りしめる鈴を正気に戻ったセシリアが羽交い締めにして止める。
「お、落ち着いてくださいまし!流石に殺害は不味いですわ!」
「離せセシリア!あたしは必ずやかの鈍感不能の朴念仁を除かねばならんと決意したのだ!」
「貴女は牧人ではないでしょうに。」
羽交い締めにされてもがく鈴をセシリアはひょいと持ち上げて進めないようにする。
そうやってじゃれあっている美少女二人に周囲の視線が集まらないはずがなく、彼女らを見つけた知り合いが二人を囲む。
(モヒ・ω・)<ファリィさんお疲れさまです!
(罪゜Д゜)<ご友人の方もお疲れさまです。お荷物お持ちします!
「ありがたい申し出ですが、今のところ荷物はハンドバッグくらいですの。」
(モヒ・∀・)<いえ、そちらではなく、こっちの。
そう言ってストレートヘアの青年が指差したのはセシリアが羽交い締めにして抱えている鈴だった。
それで全てを察したセシリアは“よろしくお願いしますわ”と鈴を青年に投げ渡す。
(モヒ・∀・)<さぁさ、ファリィさんはこっちっすよ~。
「ちょ、離せ!」
鈴の小柄な体を肩に担いで青年はTRF‐Rの方に歩きだす。その後ろをほかの面子がやいのやいのとはしゃぎながらついていった。
その集団をセシリアがついて歩いていく。
「下ろせ! てか、どこ触ってんの!NOタッチの精神は何処に投げ捨てた!」
眉をつり上げて怒りを露にする鈴の怒声を右から左に受け流しながら青年は鈴を運ぶ。
途中で背中に拳を打ち下ろされても顔色1つ変えない様はもはやプロ意識の塊である。
「まったく、社を信じた私がバカだったわ。」
「あぁ?! 元はと言えばテメェの我が儘だろうが!」
「まぁまぁ、社もグーヤンも落ち着いて。ほら、甘いものでも食べようよ!」
そして歩き始めて数分後、言い争いをしながら歩く一団とすれ違った瞬間、鈴の背中を何か冷たいものが走った。
その感覚に直ぐ様すれ違った一団の方に目を向けるも、後ろ向きに担がれていた鈴からはその人物たちの背中しか見えない。
その一団は帽子を被った半ズボンの子どもと、銀髪の大柄な男、そして長く艶のある黒髪が目を惹く少女の3人組。その3人のただならぬ雰囲気に鈴は小さく歯を打ちならしてしまっていた。
そんな鈴の様子など露ほども知らない青年たちはえんやえんやと騒ぎながらTRF‐Rへと鈴を運ぶ。
(蒼・ω・)<人の邪魔しちゃダメだよ、ファリィちゃん。
(侍゜∀゜)<そーそ。そういう事すると黒王号に踏まれちゃうよ?
(暁^Д^)<そういうわけでTRF‐Rにご案内でーす。
やんややんやと担ぎ込まれた先はいつものゲーセン、TRF‐R。今日も今日とて人間を辞めたプレイヤーが集まっている。
(モヒ・∀・)<みんな~、ファリィさん連れてきたよ~。
(モヒ・Д・)<ヒャッハー!
(モヒ・ω・)<ハラショー!
「今日も元気ですのね、皆さん。」
(モヒ・∀・)<僕らから元気を取ったら格ゲーしか残りませんから。
「元気過ぎるのも考えものだけどねぇ。いい加減に下ろさないと少女誘拐の容疑でしょっぴかれるよ?」
鈴を担いだまま元気にはしゃぐ常連客にカセンはハァと溜め息を吐く。
その溜め息に鈴を担いでいる青年は丁寧に鈴を下ろす。
「やっと下りれた。」
(モヒ・∀・)<すいません、ついついはしゃぎ過ぎちゃいました。
「そんなに素直に謝られると困るんだけど…。」
鈴を下ろしてから素直に頭を下げた青年に鈴は困惑した表情をしながら髪を指先で弄る。
意図せずして鈴とセシリアを撒いた一夏と犬走はショッピングエリアのとある一店にいた。
「これとか、どうですか?」
「ん~、ちょっとイメージと合わないんじゃないですか?こっちとかの方がいいんじゃ?」
一夏が手に取った商品を眺めた犬走は首を傾げてそれを元あった場所に戻すと、その隣にあった商品を手に取る。
端から見たらただのデートにしか見えない二人のやり取りに物陰で歯噛みして悔しがる人物がいる。
「…やはり嫁は歳上が好きなのだろうか…。」
「どうだろうね…。ラウラにもボクにも手を出さなかったし、もう男にしか興味がないんじゃないかな?」
ふぅむと真剣に唸るラウラの言葉に目の死んでいるシャルロットは半ば適当に返す。
「そう悲観するなシャルロット、その時は自分の体で女の良さを教えてやればいいだけさ。」
「ラウラは前向きだなぁ…。」
ぐっと中指と人差し指の間に親指を挟み込んだラウラに物陰で膝を抱えて座り込むシャルロットは溜め息を吐く。そんな二人の背後に歩み寄る者がいた。
「お前たち、何をしている?」
「「ファッ!?」」
背後から呼び掛けられた二人はクイックターンも真っ青な速さで振り向く。するとそこには腕を組んで仁王立ちする千冬がいた。
「お、織斑、先生…。」
「教官殿…。」
気配を感じさせずに背後を取られたことに二人は恐怖した。
「こんなところでこそこそと何をしているんだ?逆に目立つぞ。」
「あ、いえ…。一夏が知らない女の人と一緒にいたので、つい…。」
シャルロットの“知らない女”発言に千冬はピクリと反応する。そしてつかつかと歩み寄り、先程まで二人が視線を向けていた先を見る。
「あれは…。ふむ、そうか…。」
犬走を視界に捉えた千冬は頷くと物陰から出て二人に近づいていく。
犬走の方も千冬の姿が見えたのか、軽く会釈して一夏にも千冬の存在を教える。
「どうも千冬さん、3月以来ですね。」
「犬走さんはお元気なようで。どうですか、他の方々にお変わりはありませんか?」
「健康そのものですよ。警備員は体が第一ですから。」
握手を交わしにこやかに世間話を始める二人。その脇で一夏は突然現れた姉に呆然としていた。
「さて、申し訳ないがこの愚弟を借りていってもよろしいか?」
「ええ、構いませんよ。学園内じゃ姉弟水入らずとはいかないでしょうし。」
「すまないな。行くぞ一夏。」
「え? 千冬姉? え…?」
そうして世間話に華を咲かせた後、千冬は一夏を連れて何処か別の店へと向かっていく。
流石に世界最強の後をストーキングしようとする猛者などいるはずもなく、この日、IS学園に帰るまで一夏の姿を見た者はいなかった。
その頃、IS学園の格納庫ではと言うと…
「お久しぶりです暁さん。」
「2ヶ月ぶりくらいか…。早いものだ。」
「ホントに早いですよね。…それで今日は新しいパッケージ装備を持ってきたと聞いてるんですが。」
「よくぞ聞いてくれた!」
世紀末企業の尖兵が話し合っていた。
さーて、さっさと水着回に突入しよう。
え?修羅場は何処かだって?
あったじゃないですか。買い物に来たら修羅(ゲーマー)と修羅(直喩)に会ったじゃないですか。
え?そんなんじゃダメだって?
まぁ話が進めば必ずある展開ですから。
それと、もう1つアンケートを行います。
出来ればそちらも協力いただけると嬉しいです。
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新規アンケート↓
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