少しだけ間が開いてしまいました。
すいません。
いやー、成人式に出たんですが、中学の頃のクラスメイトが皆大人になってましたね。
特に女子はホントにキレイになってまぁ…。
では本編をどうぞ↓
「ふぃーばー!!」
「ウボァー!?」
掛け声とともに辺り一面で火薬が爆発し、鮮やかな火花が散ると、その衝撃で白式を纏った一夏は壁に叩きつけられる。
そして爆発の中心部では翡翠と瓜二つな何かがサタデーナイトフィーバーポーズで立っていた。
「つ、強い…。」
「ふふ、そうでしょう、そうでしょう。なんせその子は我が倉持技研が総力を上げて作り出した汎用メイド型戦闘ロボ、その名もメカ翡翠ちゃんです!」
「…そんな技術力があるならもっと性能の良いISが作れたんじゃとか言いませんからね。」
ボロボロになった一夏は刀を杖代わりに立ち上がって、強化ガラスの向こうにいる琥珀に呟く。
琥珀はそんなことなど露知らずむふーと胸を張っている。
「…それにしても、白式の性能は化けましたね。多少最高速度は落ちましたが、それでも既存のISよりもよっぽど速い。そして一番は瞬間火力、失った速度を補ってお釣りが溢れるほどに返ってくるまで伸びました。」
手元のタブレットに表示されている画面を見ながら琥珀は対面のソファに座る一夏に告げる。
琥珀の言葉に一夏は同意をするように頷いた。
「それは操縦してて感じました。すこし遅くなったのに違和感があって、始めは戸惑いましたけど、今はもう馴れました。」
「ふむふむ、なるほど。それなら大丈夫そうですね。あともう少しだけデータか欲しいので、手伝ってもらいますよ。」
「え? まだ戦うんですか?」
「白式のデータは充分なのですけど、折角の機会なのでうちの子達のデータを取っちゃおうかなと。」
そう言ってニッコリ笑った琥珀がパチンと指を鳴らすと、2体のロボットが扉を開けて現れた。
背の高いメカメカしい顔つきのロボットと、背の低いこれまたメカメカしい顔つきのロボットのペアだ。
「紹介しますね。こっちの背が高い方が高校時代の同級生をモデルにしたロボカイくんで、こっちの背が低い方がその同級生の恋人をモデルにしたロボレンちゃんです。」
「…しすてむ起動、ばとるしすてむ異常ナシ。」
「織斑一夏ヲ認識。」
ロボット2体は一夏を認識するとそれぞれ手元に得物とおぼしき物を握りしめ、つかつかと詰め寄る。
そんな2体の行動も予想済みなのか、琥珀はニコニコしている。
「サァ行クゾ。貴様ヲぼこぼこニシテヤル。」
「天然じごろ朴念仁ノ反応ヲ感知、女ノ敵ト認識シマシタ。」
背の高いロボカイは一夏の首根っこを掴んだまま戦闘フロアに引っ張って行く。
ロボットの合成音声にどことなく殺気が籠っていたのは気のせいだろう。
「サァ、サッサト構エロ!」
「今度は2体同時にお願いしますねー!」
「嘘だろ!?」
フロアの中央に手荒く放り投げなれた一夏は琥珀によって告げられた一言にかるく絶望した。
しかし現実は非情であり、ロボカイとロボレンは既に臨戦モードである。
もはや逃げ場はないと観念した一夏は白式弐型・ハクメンを展開して刀を構えた。
THE WHEEL OF FATE IS TURNING, REBEL1
ACTION!
一夏の地獄が本格的に幕を上開けた。
「ホラホラドウシタ!!」
「ぐっ!?」
合成音声で煽りながらロボカイは空中でハンマーを振り下ろす。重たい一撃を刀で受け止めた一夏はずずいと押され、高度を下げる。
そしてそれを見越していたのか、ロボレンは既に巨大ピコハンを構えており、目の前に降りてきた一夏へと襲いかかる。
「喰ラエ!!」
「ぬぅぉおっ!?」
ロボカイのハンマーを受け止めたまま、身を捩ってロボレンのピコハンを避けた一夏は、力ずくてロボカイを押し返し、ロボレンを蹴り飛ばす。
「2対1とか、卑怯だと思わないのか!!」
「全然思ワナイ。」
「勝テバイイ、ソレガ全テダ。」
一夏の言葉にロボット2体はぶんぶんと首を横に振って否定する。
正々堂々?何だそれは、旨いのか?と言わんばかりの2体の態度に一夏は“あぁ、そうかよ。”と呟いた。
「くそが!こうなったら自棄だ!お前ら2体ともスクラップにしてやる!」
「勇マシイナ、朴念仁。……後ロヲ見テミロ。」
ロボカイの言葉に一夏は2体の行動に警戒しつつ、視界の端で背後を見る。
するとそこには手をドリルにしたメカ翡翠が一夏に向かって突進してきていた。
「ふぃいばぁああああ!!」
「ぽっこぉおおおんっ!?」
メカ翡翠は目にも止まらぬ速さで、ドリル付きハンドで抉り込むようなアッパーを一夏の脇腹に叩き込んだ。
そのあまりの衝撃に、一夏はフロアの床にへなへなとうずくまった。
そうして一夏がロボット3人に次々と撃墜されている時、イギリスに帰国したセシリアはと言うと…
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
ロールスロイスから降りて屋敷の扉を開けたセシリアを一人の老紳士が出迎える。
黒スーツに赤いワイシャツの老紳士は、しかし、その老いを感じさせないほど若々しい体つきと身のこなしであった。
「ただいま爺や…。屋敷に変わりはありませんでしたか?」
「ええ、もちろんですとも。」
老紳士はセシリアの問に再度頭を下げて答えた。
それを聞いたセシリアは満足そうに頷いて言葉を続ける。
「ところで爺や、頼んでおいた件は大丈夫かしら?」
「はい、連絡を受けた日に招待状と航空機のチケットを送りました。」
「そうですか、ありがとう爺や。」
老紳士の返答を聞いたセシリアは嬉しそうに笑って、そのまま自室に戻っていった。
ロンドンのオルコット邸でそんなやり取りがあったのとほぼ同時刻、することもなくIS学園に残っていた鈴はというと──
「久しぶりネ、鈴。逞しく育ってるみたいで嬉しいアル。」
「お、お師さん…?!」
格闘技の師匠、呂虎龍と久々の再会をしていた。
「ふふふ、久しぶりアルね、鈴。」
「お師さん…、お師さーん!!」
鈴は虎龍を見るやいなや、直ぐ様駆け出した。
そんな弟子の様子を見た虎龍は小さな笑みを浮かべると両腕を広げて迎え入れる準備をする。
「お師さん!!」
「ふふ、相変わらず甘えん坊さんネ。」
鈴は虎龍の胸に飛び込むと、すりすりとその堅い胸板に頬擦りする。
虎龍はそんな甘えてくる弟子を抱き締めて髪型が崩れるのも構わずに思いっきり頭を撫でてやる。
その様子は二人の体格が近いことと、虎龍の顔つきが幼いことも手伝って兄妹のじゃれあいにも見える。
「鈴、本当に大きくなったアルね…。あの頃が懐かしいヨ。」
「えへへ、もうお師さんにだって簡単には負けないから!」
昔よりも大きくなった弟子を見て、虎龍は目を細めながらその頭を何度も撫でる。
髪を通る手の感触の懐かしさに、鈴は頬を緩ませてまた虎龍の胸に顔を埋めた。
「う、うわぁ…。あんな虎龍さん初めて見ましたよ…。」
「貴女はそうよね。でも昔はよくあんなふやけた顔晒してたわよ?」
微笑ましい師弟の再会を繁みの中から覗いていた弥子と犬走はそれぞれのリアクションを見せた。
犬走は尊敬する職場の先輩の見たことない表情に、見てはいけないものを見てしまったという具合に手を口許に当てて、食い入るようにその風景を見つめる。
一方で、犬走の隣で虎龍の様子を見ていた弥子はどこか懐かしい物を見つめるように、目の前の光景を眺めていた。
「…お師さん、どうしてここに? その、KGDOのお仕事は?」
「ふふ、仕事でIS学園に来てるアルよ。実はネ、鈴と同じくらいの日にIS学園に来てたアルね。」
「ふぇ?」
虎龍の発言に鈴はすっとんきょうな声を上げる。
そんな弟子のリアクションさえも愛しいと言わんばかりに虎龍は微笑んだ。
「今までは、鈴に会っちゃいけないと思ってたアルけど、たぶん…、鈴には必要になるって思ったから、会いに来たネ。」
「え、あ、必要になるって…、その、何が…?」
鈴の問に虎龍は今まで細めていた目を開いて、鈴の目をじっと見つめる。
「稽古ネ。」
「っ!?」
全てを見透かすような鋭い虎龍の目付きに鈴は息を呑む。しかし、虎龍は次の瞬間にはいつもの優しい笑みに戻った。
「…鈴は、昔から強くなりたいって、一生懸命な子だったアル。そんな鈴だから私は力を貸したくなったネ。」
「お師さん…。」
「だから、鈴が困っているなら手を差し伸べる、立ち止まっちゃったなら、背中を押してあげるヨ。だからまた私は鈴の前に来たネ。」
そんな虎龍の言葉を聞いた鈴はススッと虎龍から距離を置き、頭を下げる。
そして頭を上げるとキリッとした表情になり、いつもの構えを取った。
「ありがとうございます、お師さん…。でしたら、さっそく1本お願いします。今の私の全力を…。」
「ふふふ、そう来なくちゃネ! 良いアルよ、鈴の全力を見せて見るネ!」
鈴の行動に虎龍は笑顔を浮かべ、ネクタイを緩めると、スーツの上着をそこらに放って構えを取った。
今話のたった数行でオルコット家の爺やが分かる人は果たしているのだろうか。
恒例になりつつあるMUGENストーリー紹介のコーナー!
「ほら、僕らはショウマンだから。」(やつ戦国 氏)
綺麗なワラキアさんはここにいた!という感じの作品です。
他にも登場人物はいい感じでキャラが崩れていたり、しかしそれでいて嫌にならないように纏めてあります。
ほのぼのとした日常系のMUGENストーリーをお探しの人はおすすめです。