IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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嗚呼、第5回モンド・グロッソ編もそろそろ終わりが近付いています。

では本編をどうぞ↓


第128話 白竜と英雄王

 

 

 

 

どんどんと第五回モンド・グロッソは進んで行き、ついにベストエイトまで絞られた。

そして楯無、ハスラー、アンジェは危なげも無く対戦相手を下し、準々決勝最後の仕合はイザベル対ソフィアを残すのみとなった。

 

 

「がおー!」

 

「ふん、威勢がいいな。」

 

準々決勝最後の仕合、イザベルとソフィアはどちらもやる気十分な顔つきでアリーナに降り立った。

金ぴかの装甲を身に纏って既に波紋を展開しているイザベルの手にはすでにあの剣が握られている。一方のソフィアはいつもの白い装甲のISに身を包んでいた。

 

そしてブザーが鳴ると共に二人はそれぞれ動き出す。イザベルは波紋の中から顔を覗かせている兵器を勢いよく射出し、ソフィアはそんなものはお構いなしに突撃する。

 

「駄馬め!」

 

(オレ)は馬ではない、竜だ!」

 

ソフィアは次々と射出される武器を避けながらイザベルに肉薄する。

そして完全に懐に潜り込むと、低い姿勢から大きく跳ね上がってイザベルの顎を狙う。それをイザベルは体捌きだけで避け、カウンターを決めた。

 

「ちぃ…。」

 

「この(オレ)を誰と心得るか! イザベル・ローエングラム、スイス国家代表にして最強の王ぞ!!」

 

「なら己はスペイン代表で、竜の血を引く者さ。がおー!」

 

ソフィアはニヤリとした笑みを浮かべてイザベルの方を向く。

そんなソフィアを見たイザベルはまた波紋を複数展開する。そして先ほどと同じようにソフィアは縦横無尽にアリーナを走り、飛び回りイザベルに接近する。

それをイザベルはアリーナの中央で腕を組みながら目で追う。

 

「ガオー!」

 

「無駄だぁ!!」

 

上空から襲いかかるソフィアの拳をイザベルは手に持った剣で受け止める。そしてその状態から更にソフィアは肉薄し追撃を狙う。

 

「お前が王というなら、己の逆鱗にその刃を突き立ててみせろ!」

 

「あぁ、良いだろう! この剣をその身に受けるが良い!」

 

完全に懐に潜り、インファイトに持ち込んだソフィアは煽るように笑う。そんな彼女の言葉に応えるようにイザベルは剣を振るう。

剣の内側、完全に拳の間合いであるにも関わらずイザベルはソフィアと渡り合う。それはソフィアの技量が低いという訳ではなく、イザベルの剣術の技量が異常なまでに卓越しているが故である。

 

「ちぃ、やはり上手くはいかんか…!!」

 

「どうした、その程度か?!」

 

余裕を見せるイザベルは手に持った剣1本と体捌きでソフィアの攻撃を捌ききる。

鋭い目付きで全てを見透かすようにソフィアを見つめるイザベルの姿は、高貴な威厳さえ感じさせる。

 

「さぁ、そろそろこちらから行くぞ。」

 

「ッ!!」

 

インファイト状態からイザベルは大きく踏み込んで飛び込んできたソフィアに斬りかかる。

ソフィアはその振り下ろされる刃を腕の装甲を使ってガードするが、当たった瞬間に加えられた力で叩き落とされた。そして地面に落ちたソフィアに向けてイザベルは踵を落とす。

それをソフィアは体を転がすことで避ける。

 

「この…、ドラゴンファイアー!!」

 

「ふん!」

 

イザベルはソフィアの吐いたブレスを盾を取り出すことで防いだ。そしてやり返すように波紋の中から武装を射出する。

ソフィアは飛んでくる兵器を受け流しながら、また縦横無尽にアリーナを走り回る。

高速で走り回るソフィアを目で捉えながらイザベルは剣と波紋を構えた。そして、ソフィアは一気に距離を詰めて攻めかかる。

 

一緒に踊って貰おうか(Shall we dance!)!」

 

「我の踊りについて来れたら考えてやろう。」

 

「言質は取ったぞ!」

 

まだ余裕のある笑いをこぼすソフィアはイザベルを間合いに捉えると両腕を伸して掴みにかかる。しかしイザベルは後ろに飛び退いてその腕から逃れると波紋から槍を飛ばして反撃した。

しかしソフィアもそれを見てからすぐさま横に飛んで避けると、そのまま追撃の隙すら与えずにイザベルに仕掛ける。

 

「ガオー!!」

 

ソフィアは拳を突き出してイザベルに突進する。イザベルは余裕を持って回避するが、ソフィアの拳が当たった地面に勢いよく拳がめり込み、大きく陥没した。ソフィアは急いで拳を引き抜くとすぐさま追撃に移る。

しかしどこまで勢いに乗って攻め込んでもイザベルはそれを回避し、防ぎ、致命傷には至らない。それでもソフィアは手を緩めない。どこまでも真っ直ぐに、誰よりも諦め悪く仕掛け続ける。

 

 

「グラウンド──ゼロッ!!」

 

肉薄した状態から跳ね上がるようにして身体全部を使って放ったアッパーさえもイザベルはかわして見せる。

 

「まだだ…!! まだ己は、やれる!!」

 

ギリっとした鋭い瞳でソフィアはイザベルを睨みつけ、食らいつく。その姿勢に観客達は固唾を呑んで彼女の戦いを見守った。

 

「うぉおっ!」

 

「良いぞ、その瞳だ! 面白い!!」

 

ボロボロになりながらも臆することなく前のめりに仕掛け続けるソフィアにイザベルはニヤリと満足したように笑う。

 

「己のターンッ!!」

 

ソフィアは気合いを入れるように地面を一度踏み鳴らすと一目散にイザベルへと向かって全速力で走り出した。

それをイザベルは波紋から武装を射出して止めようとするが、それらを気にすることなく、飛んでくる凶器を防ぐ事もせずソフィアは真っ直ぐにただひたすら直線でイザベルを捉える為に走る。

 

「うぉおぁああっ!!」

 

「そこだっ!」

 

イザベルは低い姿勢のまま突撃してきたソフィアに対して手に持った剣を彼女の首へと落とす。

しかしそれをソフィアは左腕を振り上げることで迎え撃ち、振り上げて跳ねた勢いを利用してイザベルへと殴りかかった。

 

「何ィ!?」

 

「ゥウアタタタタタタタタッ!! ウゥアチャアッ!!」

 

初撃を全力で殴り付けたソフィアはイザベルの体勢を崩したのを確認すると何発も何発も、どこにあたっているかなど気にすることなく連続で殴り付ける。

そして最後に大きく回し蹴りを入れてイザベルを大きく蹴り飛ばした。

しかしソフィアはそれだけでは止まらない。蹴り飛ばしたイザベルに更に追撃を仕掛けるようにソフィアは彼女に飛び掛かった。

 

「くっ、ええい友よ!」

 

「ッ!?」

 

飛び掛かって来るソフィアを見て苦虫を噛み潰したような顔を浮かべたイザベルは右腕を前に突きだした。

するとソフィアの周囲にイザベルの兵装である波紋が出現し、その中から大量の太い鎖が飛び出してソフィアの身体を捉えて拘束する。

 

「ハァ…ハァ…。まさか、天の鎖(エルキドゥ)まで使わされるとはな…。しかし、これで我の勝ちだ!」

 

「ぐっ! この…!!」

 

「無駄だ、その鎖を引き千切ることは出来ん!」

 

最後まで抗おうとして鎖からどうにか逃れようと藻掻くソフィアであるが、その鎖はビクともしない。そして鎖で拘束されたソフィアを見るイザベルは勝ち誇ったようにその手に握る剣を掲げる。

イザベルが剣を掲げるとあの時見せた時のように剣を構成する円筒が回転し始めた。

 

「残念だったな、ソフィア・ドラゴネッティ…。竜とは英雄に狩られる宿命、英雄王たるギルガメッシュの、我の勝ちだ…!」

 

「いいや、己の勝ちだよ英雄王…。…バルムンク!!」

 

ソフィアがそう力強く叫ぶとイザベルの上空から黒い何かが高速で降下し、イザベルの専用機である“ギルガメッシュ”の黄金の装甲を切り裂いた。突然の出来事だったこと、そして天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)の発動準備をしていたことが災いしイザベルは動くことが出来なかった。

その黒いそれは黒刃の刃でもってギルガメッシュの装甲を傷つけ、一瞬のうちに残ったシールドエネルギーを空にする。

 

「何だと…、この我が…!?」

 

「慢心したな、イザベルよ…。」

 

ギルガメッシュのシールドエネルギーがゼロになったことで鎖の拘束が解けたソフィアはよろよろと歩き、仰向けに倒れているイザベルに近寄った。その傍らにはソフィアよりもやや大きな人型の何かがいる。それは黒塗りの甲冑を身につけた騎士のような出で立ちであり、手には大きな剣を握っている。

 

「これが己の唯一の第三世代兵装で最後の切り札だ…。よく言うだろう? 切り札は最後までとっておけ、とな。」

 

「……。そうか、ならば焦って天の鎖を使った時点で我は負けていたのだな…。」

 

イザベルは仰向けの態勢から立ち上がるとソフィアに向けて手を差し出した。その表情は晴れやかなものである。

 

「我を倒したのだ、必ず優勝しろよ。」

 

「勿論、己はそのつもりだ。」

 

二人は固く握手を交わしアリーナから出ていった。

こうして第五回モンド・グロッソの準々決勝は終わり、残す所は三試合のみとなった。

 

 

 

 





さて、誰が優勝するのやら。

では次回でお会いしましょうノシ


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