IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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これでモンド・グロッソ編は終わりとなります。

では本編をどうぞ↓


第132話 竜と剣士は闘技場で踊る

 

 

「……いよいよ、か。」

 

「えぇ、始まるわよ。」

 

テレビの前で生唾を呑んでその仕合を待ちに望んでいた8人は緊張した面持ちで画面を見ていた。

そして映し出されるのはゆっくりとアリーナに入場するソフィアとアンジェの姿。二人はアリーナの中央に辿り着くと同時に専用機を纏う。

 

 

 

「…ソフィア・ドラゴネッティ、良い仕合にしよう。」

 

「望むところさ。」

 

お互い専用機を身に纏った状態で二人は睨み合う。

好戦的な笑みを浮かべているが、二人とも友好的な感情を向けている。

そして堅く握手を交わすと、二人とも後ろに下がって距離を取った。

 

 

「最強の剣士が相手とあらば、(オレ)も心が踊ると言うもの。全力で愛し合おうじゃないか!」

 

「あぁ、私もお前と闘って見たかった。直ぐに果ててくれるなよ?」

 

ソフィアはいつものように構えを取り、アンジェも月光(Clair de Lune)を二振り構える。

そして暫くの沈黙の後、観客達が見守る中開戦を告げるブザーが鳴った。

 

 

「ガオーッ!!」

 

「見えてる動きだ!」

 

全力で突進するソフィアに合わせてアンジェは右手の月光で切り払いにかかる。それをソフィアは跳ぶことで回避し、アンジェは跳躍したソフィアに対して反射的に左手の月光を突き出した。

 

「おおうっ!?」

 

「逃がさん!!」

 

「なんのッ!」

 

ソフィアは突き出された月光を左足で横殴りに蹴って払い、体を宙で一回転させて右足の踵をアンジェに向かって振り下ろす。

アンジェは振り下ろされる踵を右腕で受け止めると力業でソフィアの体を持ち上げて右手の月光で斬りかかる。持ち上げられた視界の端でそれを捉えたソフィアは身を翻して必殺の刃をギリギリで避けた。

そして着地と同時にソフィアは地面を強く蹴り、アンジェと距離を取る。

 

「「……。」」

 

一瞬の間の、技巧を凝らした攻防を終えた二人は距離を取ったまま無言で見つめ合う。

数秒間、そうして見つめ合った二人は突然声高らかに笑い始めた。

 

「「ハーッハッハッハッ! 最高だ!!」」

 

全く同時に、全く同じ事を口にした彼女達はまた得物を構える。

 

「嗚呼、最高に燃える相手だ。己の全てを懸けて倒すに値する強者だ。己は嬉しいぞ。」

 

「それはこちらの台詞さ。ソフィア・ドラゴネッティ、お前は私の持つ技量全てを尽くして斬る。」

 

本当に心の底から笑っている二人はその嬉しそうな顔のまま接近していき、お互いの得意レンジに入る。

そしてお互いが大きく踏み込んで最高の一撃を放つ。

ソフィアの右拳はアンジェの顔面を、アンジェの右手に握られた月光はソフィアの首を狙って放たれる。

 

「ッ!?」

 

「っ?!」

 

ソフィアの拳はアンジェの顎を捉え、逆にアンジェの月光は紙一重でソフィアにかわされた。

 

「甘いぜ!」

 

「アレを──かわすのか!?」

 

「そう言う訓練をしてきたからな!!」

 

顎を捉えられ、体勢を崩されたアンジェは驚愕に目を見開いてソフィアに視線を移す。

そして着地したソフィアは直ぐ様地面を蹴り。アンジェに追撃を仕掛ける。

 

「ガオーッ!!」

 

「ちっ!」

 

勢いよく突撃してくるソフィアを見て、アンジェは両手の月光を構えてそれを迎撃する。

直ぐ様体勢を立て直したアンジェは肉薄せんと突撃してくるソフィアに右手の月光を突き出す。

そしてそれをかわしたソフィアに左手の月光が襲いかかる。紙一重で突きをかわしたものの、最小限しか動かなかった為に、その一刀を受けてしまった。

 

「がっ?!」

 

「捉えたぁ!!」

 

なんとかして腕で受けて直撃だけは避けたソフィアであったが、アンジェの豪腕から放たれた月光の一撃によりソフィアの体は大きく揺らぐ。

そして止めと言わんばかりにアンジェは右手に持った月光を振りかぶり、勢いよく全力で振り落とした。

振り下ろされるブレードを腕の装甲でどうにか受け止めたが、俄然不利な状況であることは変わりない。

 

「ぐっ…──バルムンクッ!!」

 

「それは…見たっ!!」

 

アンジェは上空から急降下してきた黒鎧の騎士に即座に反応してソフィアから1歩飛び退く。

そしてソフィアを守るように立ちはだかった騎士とアンジェは激しい斬り合いを繰り広げる。

騎士が黒刃の大剣を力強く振り回すと、アンジェはそれに反応して捌き切り、切り返す。

その間にソフィアはアンジェから距離を取って立て直した。

 

「英雄殿…!!」

 

「斬り倒す!!」

 

騎士が上段から振り下ろすと、アンジェは左手の月光で受け止めて右手の月光で斬りかかる。それを黒騎士は避けると横凪ぎに大剣を払う。

そして騎士とアンジェが斬り合っていると、アンジェの死角となる背後の上空からソフィアが殴りかかった。

 

「ちっ!?」

 

「うぁったぁあっ!!」

 

前を騎士、背後をソフィアに挟まれたアンジェはソフィアの拳を甘んじて受けながら騎士の一撃だけは防ぎ、その場から離脱した。

 

「逃がすかぁ!!」

 

「───!!」

 

「ちぃ!?」

 

離脱するアンジェを逃がすまいとソフィアは黒騎士と同時に左右から仕掛けた。

右からソフィア、左から黒騎士がアンジェに殺意を剥き出しにして迫る。

 

「勝たせて貰うぞ!」

 

「こちらのセリフだ!」

 

アンジェは黒騎士の剣を防ぎつつ、ソフィアの拳にカウンター気味に蹴りを突き込む。

しかしそんなアンジェであってもすべてを防ぐことは出来ずに何発かはもらってしまう。

 

「うぅあぁたぁっ!!」

 

「ちぃ!? このっ!」

 

ソフィアの渾身のボディブローを貰ったアンジェは苦痛に顔を歪ませながらもどうにか踏ん張って切り返す。

しかしその一撃は黒騎士の剣に阻まれ、ソフィアに届くことはない。

そして黒騎士のサポートを盾にソフィアは力強く踏み込んで攻勢に打って出た。

 

(手数で押されてきたか…!! だが私は負けられない! ジャックの為にも、シャルの為にも!!)

 

踏み込んできたソフィアを見てアンジェは黒騎士を鍔競り合いの状態から押し返し、ソフィアに斬りかかる。

まだまだ気迫充分と言った様子のアンジェは鬼気迫る形相で月光をソフィアに振り下ろす。その刃は確かにソフィアを捉えた。

ソフィアの専用機、恋するドラゴン(ドラゴン=エネモラーデ)の装甲をしっかりと捉え、破壊する。

 

「まだだ!!」

 

ソフィアの右腕の装甲を破壊してもアンジェはまだ止まらない。

左手の月光を投げ捨ててソフィアの喉元を掴むと、右手の月光を引き絞り、彼女の喉に向けて突き出した。

 

「がっ…!?」

 

喉という急所を見事に突かれたこともあり、恋するドラゴンのシールドエネルギーは一気に削れ、しかも突き刺さったのが一撃必殺を信条としたアンジェの月光だったこともあり一瞬で空となった。

その直後に仕合の終了を告げるブザーがなり、歓声が沸き起こる。

 

 

 

「やった、やった、アンジェさんが勝った!!」

 

「……あれだけの攻めを捌いて攻勢に移れるのかよ…。」

 

テレビの前で手に汗を握りながら見ていた彼らであるが、アンジェの勝ちが決まった瞬間にシャルが嬉しそうに声を上げた。

他の面々はほぼ2対1の状況から攻勢に転じたアンジェの技量に面食らっている。

 

「あれが剣の道を極めた存在…なのか…。」

 

「恐ろしいな。」

 

 

 

アンジェとソフィアによる激闘の決勝戦が終わるとセレモニーが行われる。

ヴァルキリーとして出場した各国家代表達への労い、そして各部門での優秀者・最優秀者達への表彰、そして何よりも優勝し、ブリュンヒルデの栄冠に辿り着いたアンジェ・オルレアンへの優勝杯授与が行われたのだ。

 

 

以下は各部門の受賞者である

 

・総合優勝

フランス代表 アンジェ・オルレアン

専用機「オルレア」

 

 

・総合準優勝

スペイン代表 ソフィア・ドラゴネッティ

専用機「恋するドラゴン(ドラゴン=エネモラーデ)

 

 

・近接格闘(刀剣)部門

最優秀賞

フランス代表 アンジェ・オルレアン

専用機「オルレア」

 

優秀賞

日本代表 井上真改

専用機「斬月」

 

イギリス代表 インテグラ=ヘルシング

専用機「キング・アーサー」

 

 

近接格闘(拳闘)部門

最優秀賞

スペイン代表 ソフィア・ドラゴネッティ

専用機「恋するドラゴン(ドラゴン=エネモラーデ)

 

優秀賞

ロシア代表 更識楯無

専用機「霧纏いの淑女(ミステリアスレディ)

 

国際企業連盟選抜代表 巻紙・オータム・礼子

専用機「ジャッカル」

 

 

中距離戦闘部門

最優秀賞

スイス代表 イザベル・ローエングラム

専用機「ギルガメッシュ」

 

優秀賞

ドイツ代表 ヒルデガルト・ワーグナー

専用機「ラインの乙女(Frau der Rhein)

 

フィンランド代表 スミカ・ユーティライネン

専用機「コーラルスター」

 

 

遠距離戦闘部門

最優秀賞

アメリカ代表 ハスラー・ワン

専用機「ナインボール」

 

優秀賞

中国代表 李青蘭

専用機「陽蜂」

 

フィンランド代表 スミカ・ユーティライネン

専用機「コーラルスター」

 

 

各部門の受賞者の表彰が終わるとセレモニーはいよいよ終わりを迎え、盛大なファンファーレと共に幕が閉じた。

 

 

 





優勝はアンジェさんとなりました!

開催地代表なのにどの部門にもランクイン出来なかった恥知らずな国家代表がそこにいた。

では次回でお会いしましょうノシ


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