IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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今度はこの二人です。

では本編をどうぞ↓


第146話 コール ゲシュペンスト‼

 

 

ラウラの勝利で終わった第二試合から30分、第4アリーナにはレンも春花が睨み合っていた。

入学したての1年生の相手が3年とあって、観客席にいる殆どの生徒たちは春花のことを可哀想だと言うような目で見ているが、当の彼女は自信に溢れている顔をしている。

 

「さぁ、始めよう。」

 

「手合わせお願いします!!」

 

ライフルを構えるレンに対して春花は足を地面に打ち付けて構えた。

力強く打ち付けた足の衝撃はアリーナの地面を揺らし、観客席にもその強さを伝える。

 

「こちらから仕掛ける! スラッシュリッパー!」

 

レンは上空に三機の小さなブーメランのようなブレードを設置すると体勢を低く構えて突撃する。

それを見ていた春花は空中に設置されたブレードにも気を配りながらレンの突撃を迎え撃つ。

 

「ジェットマグナム!」

 

「流派東方不敗の名の下に!!」

 

加速の乗ったレンの掌打を春花が肘鉄で迎撃し、そこからクロスレンジでの殴り合いに発展する。

レンは腕部に着けたプラズマカッターを使って、春花は装甲の厚さを利用して仕掛ける。

 

「フッハァッ!!」

 

「なかなかやるようね!」

 

格闘戦の技量で言えば春花の方がやや上なのだろうが、経験を活かしたレンの対応力の前に今一決定打を放てないでいた。

熾烈を極める二人の殴り合いは、レン側が距離を取ることで一度終わる。しかし、それから一拍も置くことなくレンが仕掛ける。

 

「さぁ、行くわよ。」

 

「行きます! 十二王方牌大車併!!」

 

ブースターを吹かしながら高速でアリーナを飛び回るレンに向けて春花は小さな漆虎(チィフゥ)を12体放って攻撃させる。

それぞれが意思を持つかのように複雑な軌道を描いて迫る小型漆虎に対してレンはプラズマカッターを使って打ち落としていく。

 

「そ~こ~だぁ!! ダークネス……フィンガー!!」

 

小型漆虎の対処に集中していたレンに背後から春花が奇襲を仕掛ける。

背後からということもあり、一瞬だけ反応が遅れたレンの頭を春花は掴み壁際まで押し込んでいく。

紫色に輝くエネルギーを纏わせながらブースターを更に加速させながら手に力を籠める。しかし──

 

「まだまだ甘いわね。」

 

「ふぇ?!」

 

壁に押し込もうとした春花の背後をスラッシュリッパーが強襲する。直撃を受けた彼女はその衝撃でレンを掴む手を緩め、離してしまった。

その瞬間にレンは体を捻って春花を蹴り飛ばす。そして距離が開いた直後にすかさずスラッシュリッパーを三機設置した。

 

「負けません!!」

 

「甘いのよ!」

 

近寄って拳を打ち込もうとする春花を見てレンは設置したスラッシュリッパーを起動させて迎撃の態勢を整える。

ビームライフルを構え、正確無比な射撃で春花の機動を無理矢理制限しスラッシュリッパーで追い込んでいく。

 

 

 

 

「どう思う?」

 

「先輩:春花ちゃんで7対3ってところじゃない? 一度触ってからペースを掴めば春花ちゃん。でも触りに行くまでが辛いから先輩有利……かな?」

 

「同感ね。」

 

控え室でモニター越しに試合の様子を見ていた面々は口々に所感を漏らす。

皆の意見はレン有利で固まっているが、流れを掴めば分からなくなるというものだ。

 

「設置するタイプの飛び道具とエネルギー兵器で牽制しつつ自分の間合いに持っていくのがレンさんのやり方みたいね。」

 

「おまけに対応力も抜群と来たもんだ。ホントに厄介な人だな。」

 

「春もまだまだね。自分の取り柄が分かってるならそれを活かす練習をしなさいよ。」

 

「いや、(ワン)が懐に飛び込むのが下手なのではない。彼女の技量を圧倒的に上回るほど蓮改先輩が上手いだけだろう。」

 

「懐に入れさせない技術か。」

 

そう口々に専用機組の面々が感想を口にしているとタブレットPCとにらめっこしていたシャルが唸る。

 

「次世代量産機の改良型か……。なるほど、汎用性と対応力が高いわけだ。」

 

「やはりシャルとしては気になるか?」

 

レンの機体データに目を通して険しい顔をしていた彼女に箒が声を掛けると彼女はコクリと頷いた。

 

「まぁね。似たようなコンセプトの機体を使ってる身としては気になるよ。」

 

モニターをじっと見つめていた彼女はそのまま視線を離すことはなかった。

 

 

「行け、春花! 3年に負けんな!」

 

一方別のモニターにかじりついて観戦しているウィレミアはヴィートに呆れられながら応援していた。

 

「私も見たいのでありますが……、いや、これは聞こえてないでありますな。」

 

「よし、そこっ!!」

 

試合の内容に一喜一憂しながら感情を顕にするウィレミアを見てヴィートはソファに深く座るのだった。

 

 

 

 

「必ぃいっ殺ぅッ!!」

 

「っ!?」

 

距離が離れた瞬間に春花が後方に素早く跳ねて更に離れると、彼女は大きく体を捻った。

そして捻った体のバネを利用して勢いよく回転し始める。

 

「超級!! 覇王!! 電影弾!!」

 

エネルギーを纏いながら高速で回転する春花はまさに弾丸であり、その姿のままレンに向かって突進する。

しかしそれすらも予想していたのか、レンは慌てることなく対処に移る。

 

「行きなさい!」

 

「うぅおおおおっ!!」

 

唸りを上げて回転しながら突進してくる春花を正面に捉えながらレンはスラッシュリッパーを三機設置してギリギリまで引き付ける。片手には身の丈はあるだろう大きなブレードを構え、いざ眼前にそれが迫ると彼女は大きく跳躍した。

 

「残念だったわね!」

 

「くっ、この~!? ぎゃふんっ!」

 

大きく跳躍したレンは手に持ったブレードを使って春花を後方に力強く打ち飛ばした。

突進の推進力も合わさり、止まれない春花は見事にアリーナの壁に激突する。

 

「避けられるかしら? スラッシュリッパー!」

 

壁に激突した春花に対してさらに追撃を仕掛けようと今度は六機、合わせて九機のブレードが空中に設置する。

そのうちの三機が回転したかと思えば春花に向けて高速で飛んでいく。

春花はその三機のブレードを叩き落とそうと身構えるが、その三機に遅れてまた別のブレードが三機、襲い掛かる。

 

「っ!?」

 

「逃がさないわ!」

 

六機による多角的な攻撃に春花は咄嗟に迎撃から逃走にシフトした。

しかしその行き先を狙い済ましたかのように正確なビームライフルの狙撃が彼女を捉える。

そして狙撃によって足の止まった春花に六機のスラッシュリッパーが襲い掛かり、シールドエネルギーを削る。

 

「くぅ……、正解は逃げないでしたか……。」

 

「腕はあるけどまだまだ経験が足りないようね。」

 

ビームライフルの銃口を向けて牽制しながらレンはまた新しく三機のスラッシュリッパーを設置する。

3本のブレードを回転させながら空中を飛び回り、春花の動きを制限するそれは一種の檻にも見える。

 

「デッドエンドシュートッ!だったかしら?」

 

ブレードの檻によって動きを制限されている春花に対してレンは大口径のビーム砲を取り出してその一撃を撃ち込む。

轟音を響かせながら迫る光の一閃はガードする春花を、そのガードの上からも呑み込んでシールドエネルギーを大きく削っていく。

 

「ぐ、くく、うわぁっ!?」

 

「隙だらけよ! デッドエンドスラッシュ!!」

 

衝撃に耐えきれず吹き飛ばされた春花に対してレンは大型のブレードを取りだし、追撃を行う。

手元で回転させながら春花を上空へと打ち上げると、そのまま設置していたスラッシュリッパーのある方向に突き飛ばす。そして春花の接近と同時にスラッシュリッパーは起動し、高速で回転しながら彼女の体を迎え入れる。

 

「決めさせて貰うわ。」

 

レンは腕を突きだし、決めポーズをしたかと思えば勢いよく上空へと飛び立った。

太陽を背に大空からアリーナを見下ろすレンは満足げに笑っている。

 

「この技を使うときは、叫ぶのが決まりでね。」

 

そして彼女はそう言ったかと思えばライダーを思わせる飛び蹴りのポーズを取ったまま、超高速でアリーナの中でスラッシュリッパーと格闘している春花に向けて突撃した。

 

「究極ッ!!ゲシュペンスト──キィイックッ!!」

 

重力とブースターの加速と、全てを乗せたその必殺のキックは当たった瞬間、それを目撃した者たち全員に空中に書き文字すら見えたと錯覚させるほどの迫力があった。

その一撃を受けた漆虎(チィフゥ)のシールドエネルギーは一瞬で消え去り、ブザーが鳴り響く。

そしてレンはアリーナの地面を抉りながら進むことで勢いを殺し、無事止まったかと思えば振り向いて地面に倒れている春花に話し掛ける。

 

「今回は私の勝ちのようね。機会があればまた仕合いましょう。」

 

そう言い残して、勝者であるレン・イェーガー・フェイズィ・蓮改はクールに去るのだった。

 

 

 

 

 





スパロボ的な組み合わせ。


ではまた次回でお会いしましょうノシ

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