記念すべき50話目ですね。
わりと時間がかかってしまいましたが…。
では本編をどうぞ↓
昼休み、それは育ち盛りの高校生にとっては待ち遠しいものの一つだろう。
それは女の園であるIS学園でも変わらないようで、昼休みの購買や食堂は大盛況だ。
そんな中、一夏達専用機組は今は誰もいない屋上へと来ていた。
普通の高校ならば屋上は立ち入り禁止の場所か、入れたとしても柵の張り巡らされた殺風景な場所のどちらかである。
だがさすがはIS学園と言うべきか、屋上に配置された花壇は季節の花々が咲き誇り、欧州の街並みを思わせる石畳が落ち着きのある美しさを演出している。
置かれた円テーブルにはそれぞれ椅子が置かれ、晴れた昼時であれば昼食を撮る生徒達で賑わう場所だ。
しかし、今は一夏達以外に誰もいない。
恐らくではあるが、噂の転校生シャルル・デュノアを一目見ようと皆食堂に詰めかけているのだろう。
当のシャルルは一夏と一緒に屋上に来ているのだが。
「さーて、そんじゃあパパっと食べちゃいましょ?」
弁当箱片手に鈴が椅子に座る。それを見て一夏達は彼女が座ったのと同じ円テーブルに着く。
一夏の両隣には箒とシャルル、向かい側に鈴とセシリアが座る。
「ほら、一夏。約束の弁当だ。」
「おお、サンキュー!」
箒は席に着くと小さな弁当箱を一夏に渡す。
それを受け取った一夏は待ってましたと言うように蓋を開ける。
そこにはほうれん草のごま和えに唐揚げ、鮭の塩焼き、こんにゃくとゴボウの唐辛子炒めというなんともバランスのとれたおかずが詰められ、見ただけでもそれが美味しいということが分かる出来だ。
そんな箒お手製のお弁当を眺めている一夏にずずいと大きめのバスケットが差し出された。
「さあ一夏さん、召し上がってください。」
そう言ってセシリアがバスケットの中身を一夏に向ける。
中には見た目にも美しいサンドイッチが詰められていた。
だが鈴は一夏に気の毒な奴と言いたげな視線を向けて小さな弁当箱を渡す。
「はい一夏、あんた食べたいって言ってたでしょ?」
「おお! 作ってくれたのか!」
鈴の渡した弁当箱に入っていたのは酢豚だった。
ご飯なしで酢豚単体という弁当の体をなしていないような気もするが、一夏にとってはそんなことは重要な事ではない。
誰かに作ってもらったことが重要なことなのだ。
彼は幼い頃から両親不在であり、実姉の織斑千冬は生活費をどうにかする為に仕事に奔走し、家にあまりいなかった。
そのため一夏は幼少期から自分で家事をこなし、食事も作っていた。だからこそ料理の大変さは知っているし作ってもらえる有り難さも身に染みて理解している。
故に一夏はそれがどんなにマズくとも出された物は完食するのだ。
「…鷲頭さん、ご説明をお願いします。」
南美は格納庫の前で電話相手の鷲頭に問う。
理由は単純、南美の専用機“ラスト”用のパッケージ装備が完成し、IS学園の格納庫に搬入されていた事をついさっき知らされたからだ。
ややご機嫌斜めな南美に対して、電話口の鷲頭は笑っている。
「ははははは、すまない。ちょっとしたサプライズのつもりだったんだ。ビックリしただろ?」
「ビックリはしましたが、時と場所、場合を考えてくださいよ…。パッケージ装備のような大事なものをパイロット側が知らされてないと言うのはダメだと思うのですが…。」
「キミのビックリした声を聞いてみたくてついね。今は反省しているよ。」
からかうような声でそう言った鷲頭は電話越しに笑っている。
だがこれももはや慣れたことなのか南美は小さく溜め息を吐いて話を進める。
「それで? パッケージ装備ですけど、具体的にはどんなものなんです?」
「あぁ、前に電話で話した3次元の立体的な機動力を重視したものさ。万能型のラストに尖った性能を持たせることを主題に開発された物の一つでね。」
電話越しに鷲頭の説明を聞きながら南美はそのパッケージ装備が入ったコンテナの前に移動する。
そしてスマートフォン片手にコンテナを開けるとそこにはIS用の武装パーツが納められている。
パーツは薄い青色をしており、洗練されたその流線形の装甲やスタピライザーは美しさを感じさせる。
「これが…ラストの新しい力…。」
「そうさ、コレこそがキミの専用機“ラスト”の立体機動戦特化型パッケージ装備、その名も“水鳥”さ。」
電話越しでもドヤ顔を浮かべていることが容易に想像できる調子で鷲頭は言った。
南美は目の前に存在する物の美しさに思わず息を呑んでいる。
「それの詳しいスペックはインストールしてみれば分かるから、時間のある時に確認してくれ。」
「はい、分かりました。稼働データはいつものように送れば良いですよね?」
「ああ、そうだね。いつものように頼むよ。開発班も楽しみにしているし、上手く行けば別のパッケージにも応用出来るかもしれないからね。それじゃあよろしく。」
最後にやや引っかかる言葉を残して鷲頭は通話を切った。
「別のパッケージって言ったよね、鷲頭さん…。」
鷲頭の残した言葉にワクワクするものを感じつつ南美はコンテナの中を眺める。
そこには変わらず美しさを魅せるパッケージ装備の装甲がいる。
一通り見て納得がいったような顔になると、彼女は次の授業の集合場所である所に向かう。
その時、一機の見慣れないISの傍に座り込み、端末を弄る青髪の少女が目についた。
その髪色と後ろ姿を見た南美は一も二もなく近寄る。
「楯無さん!」
快活な声でそう呼び掛けると青髪の少女はぴくりと反応し、ゆらりと立ち上がって南美の方を向く。
その少女は南美の知る更識楯無ではなく、別人だった。
そしてその少女は南美の事を一瞥すると奥歯を強く噛み締め口を開いた。
「アナタもなの…。」
近接格闘しかできないラストを万能型と言い張る世紀末企業の鑑、それがLast Of Century Enterprises社であります。