6月は仕事忙しかったからちょっと更新できなかったんです。
7月はまだマシだから許してくださいツナが何でもしますから!!
――――これは沢田綱吉がイタリアから帰ってきた頃の出来事で、山本武と親友になるまでの物語である。
×××
「……………本当に、ちょこまかと逃げ回ってるな」
ビルの屋上に座り込み、綱吉は町全体を見下ろしていた。
プランプランと地に着かない足を揺らしながら浮遊感を楽しみ、手に持っていた牛乳を飲み干す。
両方の瞳から流れ落ちる血涙が僅かに入ってしまったのか、少しだけピンク色になった牛乳の味は濃厚なミルクの風味に鉄の味がミスマッチしており、とてもではないが飲めた味じゃない。
しかし栄養は取らないといけない。徹夜で街中を見渡していたのだから疲れがたまっているのだ。
特に脳に栄養を送り届けなければならない。雑味である鉄の味も、流れ出た血液を補給するという意味に変えれば何とかなる。
自らにそう言い聞かせながら綱吉は飲み干した牛乳瓶を投げ捨てる。
綱吉の手中から離れた牛乳瓶は重力に従って自由落下し、ガシャンと音を立てて砕け散った。
「……………今回の事件、間違いなく人為的に起こってる」
幽霊にはこのようなことは出来ない。
そう結論付けた綱吉の脳裏に親友の言葉が蘇る。
『霊と呼ばれるものは例外を除き、基本的に生前の恨みや後悔で動く』
親友の言葉通りだった。今回のは明らかに霊が一人で動いたものではない。
生前が人間だったとしても基本的に肉を持たない存在だ。生前と同じように行動ができるわけでもないし、意思だって希薄な物になるだろう。
よって強い意志、つまり恨み等の要因が必要になるのだ。
だからこそ、霊が肉体を手に入れるという行動を取った時点で第三者が介入しているというわけなのだ。
「ま、誰かが関わってるのが分かったってどうしようもないんだよなぁ…………」
「いやいや、そこまで分かるだけでも見事だよ沢田綱吉君。やっぱりこの世界の君はかなり変わってて面白いよ」
ガキィンと甲高い金属同士がぶつかり合う音が響き、互いに持っていた武器が唾競り合う。
綱吉がその手に持つ日本刀と背後に立っていた男が持っていた青、赤、緑の三条の光を有す近未来的な剣は擦れ合いながら火花を散らす。
「うん♪ やっぱり、出会って良かったよ綱吉君。僕の名は白蘭って言うんだよろしくね♪」
「…………お前が全ての元凶か?」
「アハハハハ♪ 尋ねながらも攻撃してくるなんて、もう殆ど確信してるよね」
一見好意的に話をする白蘭と名乗った男は綱吉の拳を紙一重で避けながら心底楽しそうに笑う。
その笑みに嘲りは無く、ただひたすらに純粋だった。
「……………お前、一体何者だ? 一体どうしてこんな事を――――」
「やだなぁ。君も分かっているくせにさ」
「……………………」
言外に自分が主犯だと言っている白蘭は奇怪な剣を振り回しながら楽し気に告げる。
綱吉は白蘭の背後に、とても恐ろしい死を連想させるような髑髏が浮かんでいるのを見てしまう。
「うーん。やっぱり見えてるんだね、まぁその眼は便利だからねぇ。ああ、僕も欲しいよ」
「お前が思っている程、便利な物じゃない」
「そうだろうね。でも僕は欲しいよ。君のその眼と違って今僕が使ってるコレは冥界の神を謳ってる割に便利じゃないし。まぁあそこのは主神筆頭にゴミ屑だから数少ないまともなのが酷かったらダメなんだろうけどさ」
「………………分かった、もうお前とは話さない」
他人事のように話す白蘭の言葉に、綱吉は話しても無駄と結論付ける。
実際のところこの男は苦手だ。天敵だ、正直二度と会いたくない。
そう自分に言い聞かせながら綱吉は距離を取って構える。
「お前が今使っているそれが例え神様であろうと、俺の眼は死を見る。生きていようが死んでいようがそこに居るのであるならば、神様だって殺してみせる」
そう、どんな相手だろうが殺すことが出来るのがこの眼だ。
この男が全ての原因であるならばここで仕留めれば良いだけの話なのだから。
「――――君、何でそんなに悲しそうな顔をしているのさ」
ピクリと、白蘭の放った発言によって綱吉の身体の動きはそのまま停止する。
「僕だって前まではさ、この世界の事を退屈とか思ってはいたよ。でもさ、よく考えるとね、この世界程面白い物は存在しないって答えに辿り着いたんだよ。楽しもうと思えばなんだってできる。まぁ、それでも自分の居場所がここじゃないって気持ち悪さはあるけどね」
先程までの笑みを浮かべていた青年の物とは思えない表情で語るその言葉に、綱吉は言葉を失う。
「なのに、君はとても悲しそうだよ」
「…………俺からしたら、どうしてそんなに楽し気に出来るのか分からないけどね」
白蘭の言葉に綱吉は思わず苛立ちを隠そうともせずに言葉を吐いていた。
口から出た言葉はもう自分の意思で止めることも出来ず、決壊したダムの如く言葉が飛び出て行く。
「この世界程悲しい物は存在しない、最終的に死と断絶で終わる物語だ。楽しかったことも、嬉しかったことも、最終的には悲しいことで終わるんだ。それなのに、どうして楽しめるんだよ!!」
この世界は今にも崩れそうで、簡単に砕けそうで、悲劇は簡単に訪れることをこの眼を手に入れたことで知った。
今までは楽しいと思えたことが本当は辛いことだと知ってしまった。
「俺の居場所はここにあるし気持ち悪いなんて欠片も思わない。でも俺はこの世界が決して楽しい物でないことを知っている。この世界程悲劇に満ちている物を俺は知らない。壊すことはできるのに壊れないことは無いこの世界はあまりにも悲しすぎるから―――――」
「―――――うん♪ やっぱり、この世界の君はとても良いよ」
綱吉の言葉を聞いた白蘭は心底愉快そうに微笑んだ。
その笑顔を見てしまった綱吉はゾッと背筋が凍り付くのを実感してしまう。
初めてだった、このような感覚を覚えてしまうのは。
「やっぱりライバルは必要だからね。じゃあね、綱吉君。今度は優勝賞品を掛けて闘おうか」
「―――――ッ、待て!!」
この場から去ろうとする白蘭の背に向かって綱吉は手を伸ばそうとする、が――――、
「あ、そう言えばさ。幽霊、放っておいて良いの?」
白蘭の放った言葉により、中断してしまったのであった。
綱吉が一瞬動きを止めてしまったのを見て白蘭は口の端を吊り上げ、燃え上がるオレンジ色の炎とともに消え去った。
逃がしたか…………、いや、逃げさせてしまった。綱吉は心の中で後悔しつつも、白蘭が何故このようなことを行ったのかを考える。
しかし、残念なことにあの男は計画的な行動と見せかけて基本的に面白ければそれでよいという刹那主義的なところがあった。
だからこれ以上は無駄と考えたところで――――あることを思い出した。
「待て。あの霊は何に固執していた?」
その事を思い出した綱吉は答えに辿り着き、後悔することになる。
×××
「やっぱり、黙ってみてるしかねぇのかな?」
バッティングセンターからの帰路についている山本武は昨日綱吉に言われた言葉について考え込んでいた。
確かに、綱吉が言った通り彼に任せていた方が良いだろう。自分もそれなりに喧嘩の腕には自信がある。しかし、あの時のぶつかり合いは喧嘩の領域を超えていた。
剣同士がぶつかり合う剣戟の応酬、それは目を惹かれるものであった。
「……………やっぱり、俺には何にもできねぇのかな?」
自分に出来ることは少しでもあるのではないだろうか。
その様に考えながら歩いていた、その時だった。
「―――――ッ」
空気が変わった。世界が変わった。常識は非常識に、生は死に反転した。
ガシャンガシャンと金属が擦れ合う音と共にそれは山本武の前に、恐怖を伴って現れた。
「――――――――本、つよ―――――ッ!!」
出現した存在は昨日見た甲冑男そのもので、男はそのまま刀を引き抜いて武に斬りかかろうとする。
武は自らに迫り来る刃に反応することすらできず―――――、
―――――血が飛び散った。
白蘭「もっと楽しい世界にするんだ(人類悪)」
ツナ「皆が死なないように護るんだ(人類悪)」
ユニ「―――――――――――――(人類悪)」
わぁい、この作品こんなのしか居ねぇ。
なお、ユニはランボさんが来てからやらかします(ネタバレ)