創世機神デウスマキナ   作:黄金馬鹿

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Chapter1は全部書いてある状態で一部を区切っては張り付けて、という感じで投稿しているので話の区切りが変な場所も一部あります


Chapter1.2

 朝の日差しがさす早朝。時間があった二人は準備をしておいた鞄を手に外に出てそのまま学校に歩いてく。部活に所属していない二人は早い時間に登校する意味はないのだが、偶には教室に一番乗りというのも悪くない。

 朝の光が気持ちよくて欠伸が出てしまうが、そこまで眠くはない。他愛の無い話をしていると学校にはすぐに着いた。部活に打ち込む生徒達を尻目に教室に着くと、案の定誰も居ない。こうして教室に着くと思い出すことがある。

 中学時代を不登校で過ごし、高校生になってこの学校に来た時、最初に感じたのは特異な物を見る目。見世物を見る目。珍しい物を見るような目。顔写真付きで公開された情報で誰もが有希の顔を知っていた。だからこそ、有希は注目の的に成り得る存在だった。

 そして最初に聞こえたのは噂通りだとか本当にここのクラスだとかそんな言葉。そして有希が割り振られた席に座った時、有希には人が群がった。

 何で取材を受けなかったのとか、どうやって生き残ったのとか、何で生き残ったのとか。有希の気持ちを考えない、心を抉る言葉たち。答えたくない。言いたくない。思い出したくない。そう思い俯いていると根も葉もない事実が飛び交う。

 視線に当てられ吐き気を感じて謂れの無い言葉を言われ。朱里が人混みを書き分けて来てくれなければ教室で吐いていた所だった。トイレで思いっきり吐いてそれでも吐き気は収まらず、歩くことも間々ならなかった有希は朱里の引率で入学式にも出ずにそのまま早退した。

 次の日、先生から何か言われたのか、生徒達は何も言って来なかったが、視線は感じた。そして何度も吐いて、早退した。何時しか有希には根も葉もない噂が飛び交ったが、それでも登校を続け、いつしか有希は腫れ物のように扱われ、友人が出来ることがなかった。が、朱里がいるから楽しかった。

 入学してから一ヶ月は地獄のようで、時々下校を狙っている記者も見かけ、今でも偶に見かけるが、それでも乗り越えて、人の目こそトラウマのままだが、毎日登校している。

 席に座って、先生の配慮で隣同士になった朱里と一緒に喋っていると何時の間にか時間は過ぎて、いつも登校している時間も過ぎてホームルームの時間になり、授業が始まった。

 ノートに板書を写して分からないところを朱里と教えあいながら時間が過ぎる。ふと窓の外を見ると一人の生徒が遅刻して登校してきていた。

 

「有希、どうしたの?」

「えっと……今登校した人がいたから見ちゃってただけ」

 

 へぇ、寝坊したのかな。かもね。と一言二言話してから再び板書に戻る。五十分の授業が終わって有希が一息ついていると、周りの生徒が噂話をしていた。

 

「なぁなぁ、つい三十分前にズヴェーリが隣の県に出たらしいぜ」

「マジかよ。どうせならこっちに来て学校を早退させてくれればよかったのによ」

「でも、デウスマキナが出てから数分でやっつけたらしいぜ」

「やっぱスゲェな、デウスマキナ」

 

 男子生徒の話だったが、男子生徒はふざけた様に言っていたが、有希にとっては冗談ではなかった。

 ズヴェーリもトラウマの一つだ。流石に吐いたりはしないが、生で見れば恐怖で竦み上がるだろう。

 昔から日本の全国でズヴェーリの対策はされている。しかし、ズヴェーリからは存外逃げ切る事は容易い。故に、各地にあるシェルターは飾り程度にしか過ぎない。そのため、目の前の男子学生も含め、日本のほとんどの人がズヴェーリに対しては対処の簡単な自然災害、程度にしか思っていない。が、有希はその中には入らない。

 暗い表情をする有希を朱里が背中を擦って大丈夫だよと慰める。それを見た男子生徒がヤベっと呟いて少し遠くに歩いていった。気にしなくてもいいのにと有希が呟いたが、もう聞こえない。

 あと少しで昼休み。昼食を希望に有希はもう一度気を引き締めて授業に向かった。

 そして時間は過ぎて昼が過ぎて夕方。放課後となり学生の時間が始まる。部活のある生徒はそのまま部活に行き、部活の無い生徒はそのまま個人の時間に入る。

 有希と朱里は特に予定を考えていなかったが、商店街に行って買い物をする事にした。買う物は今日の夕食。有希の希望により、今日はハンバーグ。有希と朱里は他愛も無い会話をしながら校門へと行く。

 

「おっ、東雲と錦じゃないか。今日はもう帰るのか?」

 

 校門で話しかけてきたのは体育の教師、前川源十郎。彼は有希達の担任というわけではないが、有希が早退する時等は親切にしてくれたため、彼女達の中では比較的に接点のある先生だった。朱里がどうしても席を外せない時なども前川が有希を運んでいたりした。

 その時に有希が元陸上部だと言うことを話したため、源十郎は有希をよく陸上部に入らないかと誘っている。しかし、誘い始めて一年。有希は一向に首を縦に振らない。有希は一年、陸上をやらなかったため、体力を付けるためにやっていた陸上をやめたのだ。

 そして、朱里は元々文芸部だったため、有希と一緒に陸上部に入るということはない。有希が陸上に入らないのは朱里と一緒にいたいからでもあるのだ。

 

「あ、前川先生。特にやる事は無いので帰りですよ」

「そうかそうか。用事がないなら走っていかないか?気持ちいいぞ?」

「遠慮しておきます」

「そうか。なら、気をつけて帰るんだぞ」

 

 しかし、源十郎は無理に誘わない。やんわりと断った有希を見て笑顔で笑いながら有希達に手を振りながらグラウンドへと走っていた。相変わらず元気な先生だなぁ。と思っていると源十郎は途中で反転して戻ってきた。

 

「どうしたんですか?」

「今から出張があるのを忘れていたんだ。すまん、部員達にそう伝えておいてくれ」

「えー……」

 

 ははは、すまんな。と有希達に笑いかけてから源十郎は何処かに走り去っていった。少なくとも、その方向に車は無い。走っていくつもりなのか自転車で行くつもりなのか。

 有希と朱里は顔を見合わせてから一緒に溜め息を吐いてからグラウンドへ行って陸上部の部長に源十郎が来ない事を知らせてから再び校門へと戻った。

 その時、有希と朱里のスマホが同時に震えた。二人がスマホを取り出して画面を見ると、そこにはズヴェーリが隣の県に出現したという緊急ニュースが表示されていた。朝は携帯の電源を消していたため分からなかったが、今は携帯の電源を付けているため分かる。

 しかし、何時もデウスマキナはこの画面が出てから数分後には現れてズヴェーリを倒してくれる。

 特に危機感を持たずに携帯をスリーブにしてポケットに仕舞うと、空を見上げた。そこには、時間外れな流れ星が見えた。間違いない、あれは空を飛んでいるデウスマキナだ。

 

「はやいよね、ホント」

「うんうん」

 

 デウスマキナにはロケットエンジンのような物はついていない。その代わりに、外付けのブースターを装着する事で空を飛ぶことができる。

 よく切り離しているシーンを見るが、きっと関係者が回収しているのだろう。ここは今までそんなにズヴェーリの襲撃を受けたことはないし、シェルターもちゃんとあるため、例え来たとしても安心だ。目の前にでも来られない限りは。

 有希が朱里と共に商店街へと行き、食材を買い求める。

 

「あ、今日はひき肉が安いね」

「うん、これならいっぱいハンバーグ作れるね」

 

 有希が鼻歌を歌いながらひき肉を買い求める。財布から金を払ってひき肉を買い、ついでに明日や明後日の分の食材を買い求める。

 その中で有希と朱里のスマホが同時に震えた。なんだろうか。二人が同時に携帯の画面を見ると、そこにはズヴェーリの出現情報が書いてあった。まだ先ほどのズヴェーリの撃退情報は流れてきていない。

 

「えっと……またズヴェーリ襲来?場所は……」

 

 有希が呆れたような顔で画面を見る。そしてそれを読み上げようとした瞬間、地面が震えた。その瞬間に響き渡る人々の悲鳴。

 朱里もスマホの画面を見て固まる。そして上を見る。

 そこには青色の巨体。下から見上げるのは二度目。まさかこいつがこんな所に。しかもピンポイントが来るなんて。

 ピンポイントな襲来に二人は言葉を失う。そして、有希がさっき出そうとした言葉を口にする。

 

「ここ……」

 

 その瞬間、二人は同時に悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

「なんでここに来るのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

「知らないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 二人は叫びながら逃げ出した、ズヴェーリはそれを追ってくる。何で追ってくるの!?知らないよ!そう二人で叫び合いながら全力疾走で逃げていく。しかし。巨体のズヴェーリは二人よりもゆっくりとした動作とは言え、人間の走る速さよりは速い。

 所詮は車でも十分に逃げ切れる程の速さのズヴェーリ。それに、進行方向から横の方向に逃げておけば簡単に逃げれる程度だ。しかし、人の足での追いかけっこでは横に逃げなければ逃げ切る事はほぼ不可能だ。

 追いつかれてしまう。永遠にも感じる鬼ごっこの中、有希は偶然倒れている自転車を発見する。その自転車は見たところ、乗り捨てられた物のようで、鍵は一目見ただけだが、確認したところ、かかっていなかった。有希はすぐにその自転車の元へと走ってすぐに起こす。

 大丈夫だ。鍵はかかっていない。すぐにサドルが高めの自転車に跨って朱里に視線で乗ってと合図する。朱里を後ろに乗せると、有希はそのまま全力で走り始めた。

 

「これ誰の!!?」

「永遠に借りるだけ!!」

「答えになってないよ!!」

 

 揺れる足場で自転車を漕ぐのはかなり疲れるもの。そしてバランスもとりにくい物。しかし、有希は根性と本能でズヴェーリから自転車で逃げる。

 しかし、どの方向に逃げてもズヴェーリは有希を追ってくる。どうしても振り切れない。しかし、距離はそうそう縮まらない。

 このまま全力で走っていればズヴェーリを振り切れるんじゃ?そんな甘い考えで走っていると段々と足に乳酸が溜まってくる。足を回すのが億劫になり、寝転んで休んでしまいたくなる。元陸上部とは言っても、有希は短距離走の選手だった上に二年の月日で体力は並み程度まで落ちてきている。

 だけど、朱里だけは。親友であり、恩人である背中にしがみつく少女だけは、絶対に守りたいと思う。歯を食いしばり、ペダルにかける力を捻り出していく。すると、気のせいかもしれないが、疲れが段々と消えてきてまだまだ、何十キロ、何百キロも走れるような気がしてきた。

 いける。このまま、デウスマキナが来るまで、何処までも。息を規則正しく吐きながら、走り続ける。

 だが、ズヴェーリはたかが小人二人を逃がすほど、知能は低くは無かった。

 ズヴェーリは一旦足を止めて近くの建物を殴り崩し、なるべく大きな破片を手に持って有希と朱里に向かって投げつけた。

 

「ゆ、有希!後ろぉ!!」

「えっ、ちょ、それは反則ぅぅぅぅぅ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 有希と朱里の必死の抵抗。しかし、悲しいかな。ズヴェーリにそんな言葉は通用するまでもなく飛来した瓦礫は二人の近くに着弾。二人の逃走劇は終わりを告げた。

 悲鳴を上げて地面の上をもう走行不可能になった自転車と共に滑っていく有希と朱里。肌がアスファルトで擦れて血がにじみ、ぶつけた場所は鈍痛を放つ。

 しかし、まだ二人は生きていた。瓦礫に押しつぶされること無く、生きていた。

 奇跡とも言えた。直径十メートルはありそうな瓦礫が近くに落ちたのに、その破片にも潰される事が無かったのだから。

 だが、もう逃げられない。逃げることはできない。どうしようもない。

 ズヴェーリはすぐ近くにまで迫ってきている。いや、もう真上から見下げられる位には近くにいる。

 

「あ、朱里……」

 

 有希は痛む体で立ち上がり、朱里の元へと行く。

 朱里は目立った傷こそ無いが、足から、変な風に着地してしまったためか、足首が赤く腫れていた。もう、この状態だと走るどころか、立ち上がる事も間々ならないだろう。

 死が近づくのが分かった。朱里はうめき声をあげ倒れている。ズヴェーリは真上に。ここで朱里を見捨てたとしても死ぬのは時間の問題。

 嫌だ、死にたくない。死なせたくない。まだ、朱里には恩を返しきれていない。一緒にいたい。二人で、生きていたい。

 ドクンッ。心臓が大きく飛び跳ねた気がした。

 そうだ。生きなくちゃ。生きなくちゃ、あの時のデウスマキナのパイロット……名も知らぬ、爆発で死んでしまった人の代わりに、生きなくちゃ駄目なのに。

 ズヴェーリの手が迫る。まるで、有希と朱里を捕まえようとするように、迫ってくる。

 死んでたまるか。こんなところで、あんな不気味な化け物の手で。朱里が小さな声で逃げてと言っている。けど、逃げない。そうだ、逃げちゃ駄目だ。逃げるな。

 

「だって……だって――私は、朱里と一緒に生きたい!生きなくちゃ駄目なんだ!!だから、こんな場所で死んで、たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 何故なら、戦う力は、ここにある!!

 

「えっ……ゆ、有希……?」

 

 朱里の困惑したような声が漏れる。有希は決意を孕んだ目でズヴェーリを睨み付ける。

 有希の体は、光っていた。文字通り、金色に光り、有希を中心に光の膜のような物が展開され、有希と朱里を守っていた。

 その膜はズヴェーリの手を寄せ付けず、有希と朱里を包み込む。

 有希が胸に手を当てる。鼓動は早く、尚且つ暖かい。

 力はここにある。三年前のあの日から。ずっと、ここで眠っていた。見守ってくれていた。それが、今分かった。

 その力が言っている。叫べ。この力の名を叫べと。

 なら、叫ぼう。全力で、全開で、目一杯に、自分の全てで、戦う為に――守る為に!

 

「全ての希望を超え、未来を掴む!!来い、デウスマキナ――ビヨンド、ホォォォォォォォォォォォプッッ!!」




次回、戦闘
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