周りの音をかき消すほどの豪雨の中、私は立体機動装置や刃が入っていない刀身ボックス、重りが入ったリュックを背負って走っていた。
一応雨具を着ているけど、この豪雨ではほとんど意味をなしていなかった。
一粒一粒が大きく、私の体に当たるたびに衝撃が来る上に体温を奪っていく。
私は今ほかの訓練兵から少し遅れて走っている。前には私と同じ格好をした数十人の訓練兵が無言で走っている。
皆すごいなぁ……、私なんてもう限界が近いのに。
兵站行進は今回が初めてというわけではなかった。
初回は天候も良く、初めてだからということで重りも立体機動装置等を持たずに走ったため、他の人たちから遅れながらもなんとか最後まで走る切ることができた。
しかし、二回目からは重りも立体機動装置等を持って走れ、と言われた。
寒いよ……、きついよ……。
そんな時だった、激しく降り注ぐ雨の轟音と私たちが走るたびに飛び散る水の音とは別の音……、誰かの声が聞こえてきた。
「おい、ジェイミー。ほらよっ」
その声はライナーのものだった。
ライナーはそう言うと走るスピードを落とし背負っていたリュックを前に回し、背中をあけ、少し腰を低くする。
「あ…りがとっ」
私はそう言うと残ったわずかな力を振り絞ってライナーの背中に飛び乗る。
「気にすんなって」
こんな風にライナーに助けてもらうようになったのは確か、二回目の兵站行進の時だった。
あの時も今みたいに豪雨で、今にも倒れてしまいそうな私に声を掛けてくれたのがライナーだった。
だが、訓練中は必ず教官が付き添う。
もちろんこんなことをしたらすぐに教官に見つかって私だけでなくライナーまで怒られると思った私は断ろうとしたのだが、このままでは途中で離脱してしまうのは確実だったので、息が整うまでライナーに助けてもらうことにした。
もちろん、途中で教官が近づいてきたらすぐにライナーから降りるつもりだったのだが………。
私がちゃんと走っているときは見回りに来るというのに、ライナーにおんぶしてもらっているときは今まで一度も教官が見回りに来たことはなかった。
そのため、今でも本当にダメそうな時は息が整うまで助けてもらっている。
しかも、なぜかライナーは毎回私が本当にダメそうな時にタイミングよく声をかけてきてくれるため、自分から「助けてライナー」と呼んだことは未だにない。
「本当に不思議だよね、ライナーにおんぶしてもらってる時は教官見回りにこないんだもん」
「もしかして私がライナーにおんぶされているだけ虫除けみたいな感じで教官除けの成分が発生でもしているのかも」
「いや、多分、教官は黙認してるだけだと思うぞ。誰にでも得意不得意はあるが、お前の場合は極端すぎるからな」
なんと! 教官は気づいていないふりをしていただけだったなんて………!
で、でも、例え気づかれていたとしても、黙認されてるんだから別にいいよねっ!
ライナーはいい奴なんです。