あ、あとfgoはやっぱたのしーですよね。いやー20連するも、鯖が二人しか出ませんでした。うん、まぁイベ頑張りまーす
聖杯戦争、それは文字通り聖杯を求める者たちが争い戦う、戦争の呼び名である。
それは七人のマスターとなる魔術師が参加する戦争である。
それは過去に偉業を成し遂げ、英雄として世界に記録された『英霊』たち。聖杯戦争風に言えば『サーヴァント』なる者たちをそれぞれのマスターが召喚し、使役する戦いである。
そして勝者となり聖杯を手にした者は、どんな願いでも叶えることができるのだ。
この聖杯戦争の基盤を作ったのは、『アインツベルン』、『マキリ』、『遠坂』ら冬木の御三家の先祖たちだ。彼等がこの聖杯戦争と言う名の儀式を始めたのである。
そう、遠坂凛はその始まりの御三家の内の一つ、『遠坂』の正統な後継者なのだ。
遠坂凛は聖杯戦争に参加し、勝者となることを目指している。それは聖杯に願いを託す為ではなく、勝者となること自体が目的なのだ。それが自らの達成すべき、誇りに思える自分になるための、目標の一つなのだ。
だから遠坂凛は魔術師であることを誇りに思っている。その自分をより高める為、自分の道に立ち塞がる物は全て粉砕し、二度と自らの道に立つことの無いようになぎ倒す。そう、これもそれとなんら変わらない行動の一つなのだ。疑問に思うべき点など一つもない筈なのだ。けれどーーーー
「………衛宮さや、ね。貴女が此処にたどり着けないように、色々仕掛けておいたからてっきり来れないと思ってたんだけど、どうやらこのポンコツな兄よりかはできるみたいね。」
予想外の出来事にも狼狽えず、優雅に華麗に、そして大胆不適に。その笑みを絶やすことなく、彼女は『魔術師』としてその指を再び相手へ向ける。
ーーーそんな魔術師であろうとするからこそ、それ故起きるジレンマ。それは昔も今も彼女の胸を抉り続けていた。
「……すまん。手を煩わせる事になった。」
士郎の頭のギアは未だ生存を目的に、高速に回り続けている。それ故謝罪は最低限なものとなった。そう、既に彼の頭の中は衛宮さやを戦況に入れた状態で回転しているのである。
つい数秒前まではその事を心より悔やんでいたはず筈だが、今の士郎からは既にそれは消え去っていた。本人すらも理解出来ていない、その矛盾は、歪な形の歯車となり確かなブレを生み出しながら今尚も回転していた。
「……良い、私あいつ嫌いだから。」
兄に呼応するかの様な淡白で直球な返答をすると、予備動作を観せずに前へと跳んだ。
「ッッ!!?」
見た目にそぐわぬ動きに、遠坂凛は即座に反応できず、その逆手に持たれた刃で相手へ向けていた腕に傷を付けられた。腕からは鮮血が流れ、また屋上の紅の割合を広げた。
「……今のは警告。士郎の言った通り私たちに戦う意思は無い。……けど、これ以上彼を傷つけるなら話しは別。」
傷つけられた腕は、士郎が自分によって消し去られたのと同じ右腕だった。
ーーお返しってことね。けど、この私に、『遠坂』に警告だなんて身の程知らずにも程があーーーーー
警告に従うなど一厘たりとも考えることはなく、それならば今度は左腕を消し去ってやろうと士郎を視界に映した瞬間、彼女の思考は完全に停止した。
士郎の左腕。それは肩から指までしっかりと存在している。そう、左腕に問題はない。
士郎の右腕。
ーーーーーー否、明らかにおかしい。何故、そこに右腕が存在しているのか。
「ーーー何よそれ、一体どういう手品かしら……?」
遠坂凛の頭は、正しく現実を捉えることを本能的に拒否した。何故ならそれはあり得ないことなのだ。いや、あり得てはいけないことだ。そう自分に言い聞かせるも、声の震えを止めることはできなかった。
魔術とはあくまで物事を進める手段一つに過ぎない物だ。科学とはまた別の物だが、同じ技術の一つだ。
だからこそ、だからこそ、科学でも不可能な事が今目の前で起きているだなんて信じられる筈がないのだ。そんな事ができるのは魔術の域を超えたこの世に七つしかない『魔法』と、宝具を持つ者にかぎられる。
「いや、手品なんかじゃない。この右腕は本物だ。」
士郎の声には『お前の攻撃は意味がない』という戦いの無意味さが込められていた。それは完全ではなくとも、遠坂凛へと確かに伝わった。初めて士郎から遠坂凛への言葉が届いた瞬間だった。
「……さっきまでの言葉、訂正させて貰うわ。……私のあんた達に対する評価は間違ってたみたいね…。」
士郎との三度目の対面。彼が遠坂凛へと向ける目には、初めから変わることなく対話の意思が宿っている。変わったのはその傍らにいる妹と、ーーー彼女自身の心だろう。
遠坂凛は今、自分を辛うじて律していら状態だ。兎を狩っていたつもりが、実は得体も知れないUMAだったことに酷く恐怖を感じながらも自分を何とか保っていた。
けれど、それも次の瞬間脆くも崩れ去った。ーーーーーーそれが目に入った瞬間に
「ッ!!遠坂!!」
物体を破壊する轟音が辺りに響く。遠坂凛の指から再び魔術が放たれたのだ。それは明らかに人に向ける威力を超えており、屋上の出入り口を、建物もろとも破壊した。
士郎は気付いた。今、遠坂凛が冷静さを保てていないことに。同時にこのままでは自分たち以外にも被害が及ぶ可能性を示唆した。
「さや、
「……言うと思った。」
そう、士郎は此の期に及んでも話すことをを諦めていなかった。しかしそれも仕方がないことだ。何故ならそれが衛宮士郎という『人間』なのだから。
さやはそれに呆れながらも断らなかった。
遠坂凛は歯軋りを隠そうともせず、二人に狙いを定め攻撃を続ける。その大砲の如き威力を秘めたそれは、放たれた方向にある物をことごとく破壊する。フェンスは弾け飛び、コンクリートは抉れ本来平面だったそれに高低差ができる程の破壊力を見せた。
自らの得物である。宝石を使わなかったのは、彼女の魔術師としてのプライドを保つ最後のセーフティーが働いていたからに他ならない。しかしそのセーフティーは十全に機能していない様で、このままではいずれ屋上が崩れ、学校の生徒及び教師が危険に晒されるだろう。
「
二人の魔術回路に、魔力が走る。強化の魔術により身体能力を底上げされた二人は人間を超えた速さで、向かってくる攻撃を避け、少しづつ相手との間合いを詰めていた。
冷静さを欠いた人間は、状況の変化に対応することができなくなる。ましてやそれが二人掛かりで行われれば、尚更である。
「もうっ!!あったまくるわね!!なんで、なんであんたら兄弟はッ!!」
二兎を追った結果など、目に見えている。いくら攻撃を放とうが当たる筈も無く、痺れを切らした彼女は遂に自ら間合いを詰めようと足を踏み出した。それを二人は見逃さなかった。
人間が最も隙を見せるとき。それは動き始める瞬間だ。それを見せたときが攻めに転じる絶好の機会に他ならない。
前に足を踏み出した遠坂凛の正面に士郎は移動した。相手は予想外の行動に表情を変化させるも、それは動きを鈍らせるには至らない。
彼女は魔術師だが中国拳法、『八極拳』の使い手でもあるのだ。的が自分から動いたところで何の問題も無い。それ故踏み出した足を即座に移動から攻撃の為の踏み込みに変化させ、間髪いれずに拳を放つ。士郎たちの数段上の強化の精度で放たれた拳は空気を抉り、残像を残しながら士郎へと向かっていく。
しかしここで、冷静さを欠いた仇が彼女を襲う。目の前しか意識を向けていなかった彼女はその腕を狙うさやの存在に気づかなかった。
今士郎目掛けて伸びている腕に、さやは刀の峰を向けて下から掬う様に振るった。
しかし、その刀は腕に当たることなく
そしてさやの妨害を避けた彼女は、踏み込んだ足の力を緩めることなく、曲げた腕の肘を士郎に向け肘打ちを仕掛ける。
ーーーこの身は鞘でできている
「がッ!?!?」
遠坂凛の脇腹に、予期せぬ痛みが走る。気づけば自分の体ははね返され、地面に転がっていた。痛みに咳込み、思考が動かなくなる。自分が何故このような状態になっているのか、理解できなかった。
顔を前に向けると、刀の先が視界に入った。
「勝負有りだ。」
士郎の声が戦いの音が消えた静寂の中響く。
「……私の負けよ。煮るなり焼くなり好きにしないさい。」
負けた。完全に、一分の言い訳も無く負けた。余裕も優雅さも持てなくなった時点で、遠坂凛に勝ち目は無かったのだ。そう悟った彼女はだらしなく胡座をかき、死を待った。
「ーーーいや、何もしないさ。」
士郎の口から出たのは、そんな文字通り阿呆な台詞だった。死を覚悟した側からすれば怒りすら湧いてくるだろう。
「なっ!あんたねぇ、ふざけたこと言うのも大概にしなさいよ!殺されかけた相手に対する扱いがそれだなんてーーー「黙れ。」ッ!」
冷徹な声が彼女の耳を貫き、言葉を止める。
「……お前は敗者、口を開くな。」
「おいさや、なんてこと言うんだよ。俺はただ遠坂凛と戦いたく無いだけなんだ。仲良くできるならそれに越したことは無いだろ?」
「……それで命狙われたら元も子もない。」
煮ることも焼かれることもなく、兄妹の口喧嘩を暫く聞かされ続ける遠坂凛。それは負けたことよりも屈辱を感じた。
結果として、遠坂凛は聖杯戦争において、他陣営の全てを倒すまで同盟を組むこととなった。一方的なものをさやは希望したが、士郎の意向により実に双方に損の無いものとなった。それにより更なる屈辱を味わされた遠坂凛だったが、これが彼女に対して最も有効な契約の形なのかもしれない。
そう、私が冷静さを欠いた原因はあの光景を目の前で、しかも動揺している状態で見せられたからだろう。
兄妹が互いに思い合い、共に行動する光景。それは私が魔術師になって喪ったものだ。いや、魔術の道に進んだことに後悔はない。今の自分が選んだ道は間違っていないと、確信している。
けど、けれど、私と同じ道を歩く人がいた。一人で歩くことを決められた道を二人で歩いている人がいた。助け合いながら歩いている人がいた! 私と同じ境遇にありながら二人で歩いている人がいた!私は一人なのに!!
そして、更にはその二人の意思を認めるが如く、彼の右手の甲には、聖杯戦争の参加者の証、『令呪』が宿っていた。アイツが聖杯戦争の存在を知ってものの数分の出来事だ。あの兄妹が認められると、私を否定されるように、その時の私はどうしようもなく感じてしまったのだ。
あの二人を見ていると、私は自分の歩いてきた道が間違っていたように見えてくる。だからあの兄妹を倒して私は、私は自分自信の道が正解だと証明したかった。その思いはあの二人を調べている時からきっとあったんだと思う。それが今回私の迷いを生み出した原因。
けどもう、私は自分の道に迷いを持ってしまった。きっとこのままだと私は前に進めない。この迷いを消し去る為にはーー
「……正面から正々堂々と戦って、勝つ。」
きっとそれしか方法はない。遠坂凛が遠坂凛である為にはそれしかないのだ。私が選べたかもしれない道を歩く彼等を私は認められない。
「……桜。」
手の甲に宿る令呪を見つめ、感傷に浸る。今晩はこれを止めることができそうになかった。
ーーー少女を襲うジレンマ。それは未だその手を休めることなく彼女の胸を抉り続ける。今まではその痛みに気づかなかった。けれど一度その傷を見せられれば最後、何時でも何処でも痛みは止まることなく彼女を責め立てる。
隣の芝生は青く見えるものである。今まだ知らなくとも、これからあの兄妹を見ていくのならば、その歪さ。その手の繋がり方に違和感を覚えるであろう。色々なものが見えてくるだろう。敵と自らを知ることで危うさを消していく。それが当面の彼女の目標だろう。
否、既に見えているものもいくつかある。例えば、衛宮士郎の精神。あの精神は明らかに狂っている。自らを害そうとした者と、事が終われば仲良くしようとする。そんなこと人間ならあり得ない。
例えば衛宮さやの攻撃方法。彼女は、確かに見ていた。あの認識できなかった攻撃の後、衛宮さやの腹部の服に穴が空いていた。
聖杯戦争はまだ始まっていない。
個人的に遠坂はこんな兄妹みたら羨ましくて仕方がないと思い書きました。けど、冷静さを失うまでは自分でも微妙な部分です。まあ、話しを展開させてくのに必要なんで、是非も無いヨネ(言いたかっただけ)
あと、原作士郎ではあり得ない描写を入れたのですが気づきましたでしょうか?
そしてもう一つ原作との大きな違いをそれとなく、大分遠回しに描写しました。
では
追記)セルフギアスロールについて、勘違いしていたのでその部分を改訂しました。