この身は鞘でできている   作:内臓脂肪が多いガリノッポ

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FGO二部が始まりモチベができたので。
駄文だけどね。


描くは二つの朱槍

時間は少し飛び、場所は居間。今現在、我が家では前代未聞のことが起きていた。

 

「貴女はマスターの妹君だと聞きましたが、参加者では無いのでしょう?席を外していただきたい。」

 

「……一緒に戦う。士郎と決めた。」

 

「魔術師は基本一子相伝と聞きます。故に貴女に戦闘能力があるとは思えない。危険だ、ここで貴女は降りた方が良い。」

 

「……私、戦える。士郎よりも強い。」

 

「口だけならば幾らでも言えます。」

 

「……論より証拠。その目で確かめれば良い。」

 

場の雰囲気が段々と戦場のそれになっていく。一触即発のこの場を作っているのは、ものの数分前に初めて会った筈のさやとセイバーだった。

そもそもの発端は、セイバーにさやを紹介したことだ。今しがたもセイバーが言った通り魔術師の家系というのは、兄弟がいても一人にしか教えない物らしい。だからもう片方は一般人として育てられるらしい。つまりセイバーには さやが兄を心配している妹にしか見えないみたいだ。

 

「ここまで忠告しても退かないというのなら、貴女の言う通り私自身の目で確かめるのも、吝かではありません。」

 

正に売り言葉に買い言葉。居間でお茶を片手に座っていた筈の彼女らは、その場に立ち上がり戦意を燃やし始めていた。……二人とも俺の為を思ってくれているだけあって、止めるわけにもいかない。

なんだか胃がキリキリと痛む。俺には乾いた笑いをするしかできなかった。

 

二人の足が道場へと向こうとしていたその時ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?マスター!近くでサーヴァント同士の戦闘が起きています!指示を!」

 

あたかも第六感に何かを感じたかの様に、セイバーはそれを言葉にした。指示を仰がれるも、突然のことに俺の思考は瞬時に働いてくれなかった。

セイバーを召喚する前に覚悟は決めたつもりだった。けれどいざ生を賭けた戦いが始まっていると聞かされると、思わず尻込みしている自分がそこにいた。

 

「ーーー士郎、」

 

不意に右手に暖かい感触を感じた。そう、手を握られていた。誰かなんて言葉にする必要も無い。ああ、そうだ。覚悟は俺一人でしたものじゃなかった。

 

「セイバー、場所は分かるか?」

 

「この街の地形を詳しくは知りませんが、気配の様子からある程度広い場所で戦っているようです。」

 

「方角は?」

 

「気配はこっちから感じます。」

 

セイバーが指差す方角に開けた場所は一つしかない、そうーーーーー

 

「ーーーー学校だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー27本。」

 

戦いの最中、不意にランサーが呟いた。

 

「俺が破壊した剣の数だ。おい弓兵らお前の得物は随分と数があるみてぇだな。いいぜ、名乗れよ。お前どこの英雄だ?俺の知る限り弓兵でそれだけの数の剣を持っている奴は一人もいねぇ。」

 

英雄同士の戦いは熾烈を極めていた。互いに寸分の狂いもない、英雄に相応しい技量を持っていた。ランサーのその俊敏さは一切相手を懐に入れさせず、絶え間無い攻撃をアーチャーに放っていた。

しかし、アーチャーの両手にある短剣をいくら弾いても次の瞬間には新たな剣が握られていた。それには流石のランサーも予想外だったのか驚いているようだ。

 

宝具というのは基本各サーヴァントに一つだ。ライダーでもない限り、いやライダーでも十を超える数の宝具は持ち得ない。しかしアーチャーはそれを可能としている。ランサーと同じく私も驚きを隠せなかった。

 

「生憎君の様に高名な英霊ではなくてね。恥ずかしくて間違っても口には出来ないな。」

 

一貫して人を小馬鹿にする話し方を止まないアーチャーに、ランサーは次第に機嫌を悪くし始めていた。

何度目かの対面。初めと変わらぬ構えを取るアーチャーに対し、ランサーは今までとは明らかに違う雰囲気を纏っていた。

 

「……ほう、その口振りを察するに、俺の真名に心当たりでも?」

 

ランサーの身体から威圧感とでも言うべき魔力の高まりが起きる。姿勢は低く、槍の矛先は下向きに。けれどそれは確実にアーチャーへと向いていた。

 

「その神がかった槍さばき、そしてその眼光。私の知る神話伝説の中でその二つを持つ英霊に私は一人しか心当たりがない。ーーーークランの猛犬。」

 

ーーーー真名、それは文字通り英霊の本来の名前だ。それが露見すれば、その英霊の強みも弱みも知られることとなる。それがどれだけのアドバンテージになるだろう。

 

その圧倒的優位に働く情報を、アーチャーは見抜いたのだ。

 

「ーーーーよくぞ俺の正体を知りながらその言葉を口にした!その蛮勇とも呼べる貴様の覚悟に此方も確かな敵意を送ろう!」

 

本能的な恐怖が私の身を襲う。ランサーの放つその眼光が今までにない程鋭く、かつ大きくなる。眉間に皺皺ができる程見開かれたそれは私ではなくアーチャーを見ていた。しかしそれは余りにも濃厚な死のイメージを孕んでいて、その後ろにいる私にまで影響を及ぼした。

 

けれど足は震えなかった。もう覚悟はしてある。あの二人を倒すまではこの足の歩みを止めないと誓った。それに私は信じている、この皮肉屋な自分のサーヴァントを。

 

「アーチャー!!命令よ!!貴方の全力を見せて!!」

 

「ーーーーその言葉、確かに聞き入れた!此処に君のサーヴァントが最強である証を立てよう!!」

 

この場に二つ目の魔力の高まりが起きる。ランサーにも劣らないそれは今放たれようとしていた。

 

「いくぜ、そっちも全力で来な。この一撃、手向けとして受け取るがいいーーーー!!」

 

膨大な魔力を纏った槍は色を赤から紅へ色を変え、怪しげな気配を放つ。それが今アーチャーへと向かう。

 

 

ーーーーー『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 

 

瞬間、私は妙な感覚に襲われた。それはまるで、世界の法則がひっくり返ったかの様な、到底信じられない景色が私の目に写った。

 

二人の距離は数メートル離れている。なのに、ランサーの手に握られている槍は が既にアーチャーの胸に当たっている様に感じた。

 

何を言ってるのか私にも分からないけれど、確かに私の五感は既に槍が当たっていると、訴えている。そう、それはつまりアーチャーの心臓に、槍が刺さっているということにーーーーーーーーーー

 

 

 

甲高い金属音が、響く。ぶつかり合ったことにより響いたそれらは、まるで共鳴しているかの様に、全く同じ音を立てた。……聞こえた音はそれだけ。肉体に突き刺さる音も、身体を引き裂く音も、私には聞こえなかった。

 

 

 

「ーーーーーおいおい、一体全体どういう冗談だ? 流石に訳を話して貰わねぇと、俺も引き下がれん。」

 

「私が言えることはただ一つ、君が見た物は真実ということだけだ。」

 

ーーーーー二人は何の傷も無く、其処に立っていた。そう、両者共にお互いの攻撃を防ぎ切ったのだ。

 

「違うッ!俺が聞きたいのはそんなことじゃねぇ!!俺が聞きてぇのは何故貴様がその槍を持っているかだ!!答えろ弓兵ッッ!!事と次第によっちゃありとあらゆる手を使ってお前を破滅させる!!」

 

今までに無い程声を荒げるランサー。それもその筈だ。何故ならアーチャーが今手にしているのは、ランサーがその手に持つ呪いの朱槍『ゲイ・ボルク』と瓜二つ、いや全く同じなのだから。

 

そう、おそらくあれは因果逆転の呪槍。心臓に突き刺さる結果を基に、槍が飛んでいく。一度放たれれば最期、回避は愚か心臓から逸らすことすら不可能だろう。そんな世界の理をひっくり返すとんでもない宝具をランサーは所持している。しかし、アーチャーはそれを防ぎきった。

 

一体どんな方法で?因果を逆転させる槍を弾くなんて同じ槍でしかーーーーッ!!??

 

「……まさか、ホントに同じ槍……?」

 

そんなまさか、だってアーチャーのサーヴァントが槍の宝具なんて、いや、けどそれ以外に説明が……

 

私の思考は堂々巡りに陥る。アイツの真名の知らなければならない理由がまた一つ増えることになった。

 

「………………………」

 

ランサーの質問に、アーチャーはさっきのようにぼやかす訳でもなく、何も答えなかった。

 

「……一つ答えろ。その槍、墓荒らし紛いの真似をして手に入れたわけじゃあるまいな?」

 

その槍の切っ先を降ろすことなく、ランサーは問うた。その鋭く獣の如き眼光は、未だアーチャーに狙いを定めたままだ。

 

「ーーああ、決して戦士の尊厳を穢してはいない。」

 

左右対称。ランサーの構えと寸分の狂いもなく、その槍をアーチャーは構えていた。

 

「ーーーーーーふん、興が冷めた。今夜はここまでだ。」

 

不意にその槍を降ろし、ランサーは私たちに背を向けた。

 

「じゃあな嬢ちゃん。またやり合おうぜ。」

 

そして後腐れのない言葉を残して去っていった。

 

この場に残ったのは私たちと夜の静寂だけだった。

 




最後が、ぶ千切った終わり方になってしまった。
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