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ええ、うちの村の近くにゴブリン共が現れたんですわ。
まだ娘っ子がさらわれたとかじゃないんですが、牛を殺されちまって。
それであぶねえって思ってギルドにお願いしたんですが、
やってきた若いお兄ちゃんお姉ちゃんが誰も帰ってこねえんですわ。
…この際、あんたらが何者でも構わねぇ。
いくら頼んだのが新人だからって、冒険者が何人も帰ってこねえようなゴブリンとかおっかなくって。
あいつらをなんとかしてくれるなら、お金も食事も全部用意しまさぁ・・・・
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「ふぅ~・・・・・小鬼どもめ、何度も何度も面倒くさい・・・」
どっか、と床に腰掛けて、一匹のリザードマンが水筒をあおっている。
布でできたリザードマン伝統の貫頭衣は所々刃物で引き裂かれているが、その裂け目から覗く鱗には傷一つ無い。
それどころか遺跡の壁に取り付けられた魔法の明かりの光を反射して、黒々と輝いているではないか。
見れば両の手は血で濡れ、周囲には小鬼の死体が転がっている。
勿論、これは彼の成した業であった。
都合四度の
全ての攻撃は体術で防ぎ、鱗で弾き飛ばしてきた。
だが・・・如何に熟練の
なにせゴブリン共と来たら戦っても全く楽しくない。
コソコソと変に小細工を巡らせるくせに、小細工の範囲を一歩もでない。徒党の仲間のように、龍に至るが如き智慧を磨くならまだしも。
そしてでは武勇に秀でるかというと全くそうではない。そしてそのくせ勇気があるわけでもないのだ。
まったくもって全てが中途半端である。不満の一つも言いたくなろうというものだ。
「既に送り込まれた
そうやって愚痴る彼を、壁画を見ていた同じくリザードマンが咎める。
同じく、リザードマン伝統の貫頭衣を身にまとっているが、胸から赤い宝玉を下げている。
もしも魔法の知識あるものがそれを見たならば、魔法の発動体であることに気がつくであろう。
そう、高価な発動体を
かれは、希少な
「おお、何やらわかったか?…学があるお主にしか古代語は読めぬからなぁ」
そう、彼らはゴブリン退治に来たはずだった。だが、誰がゴブリンの巣が地面の裂け目で地下遺跡とつながり、そこまでゴブリンが入り込んでいると想定するだろうか?
その結果、洞窟に少し潜ってすぐ終わるはずであった依頼はいつの間にか本格的な
「全く…まあ、実に興味深いことは分かったがな。…この遺跡、ゴブリン共に汚させておくのは始祖への非礼となるやも知れぬ。」
蜥蜴魔術師は呆れて顎を落とした後で語り始める。蜥蜴戦士はこうなると蜥蜴魔術師の目に輝きが宿ることを知っている。ひたすら自分の得た知識を語りたがるのが悪い癖だ。
…或いは、そういう知識欲と言うやつが、魔術師の才能というやつなのかもしれないが。
「この模様を見てみよ。これは戦士を表すものだ。そしてこれは光。即ちここは戦いの神の神殿であったことを表している。そして・・・・これは、竜だ。」
「ほう、竜!?」
竜と聞いては黙ってはいられないのがリザードマンという種族である。
リザードマンは、自分たちを龍の子孫であると信じているのだ。
強くなって強くなって、竜に近づき、そして竜になることこそリザードマンの栄光であり、名誉。
「この神殿を作り上げた者達は、竜を戦いの神の使者と信じていたらしいぞ。戦いの神と共に、竜に祈りを捧げていたのだぞ。」
「…成程。となると、種族は違えど同朋と呼べるやも知れぬ。それならば・・・」
「面白そうな話をしているのはいいけど…戻ってきたよ。」
そうやって話をしていると、先の通路から足音なくもう一匹のリザードマンが姿を表した。
同じく伝統の貫頭衣を身に着けているが、リザードマンとしては極めて小柄。
その貫頭衣には、龍の牙や骨等の飾りが結わえ付けられている。
そして、貫頭衣の上から、細かな道具がいくつも入った小袋を背負っていた。
リザードマンとしては小柄ながら、手先の器用さと素早さは随一。
その証であるかのように、四度の遭遇で一度も傷を負わないどころか、貫頭衣に破れ目一つ無い。
その器用さとすばしっこさ、そして部族の狩りの経験を活かして、彼は徒党の斥候役を買ってでていた。
「ふむ・・・小鬼どもは?」
「暫くは小鬼の足音も無い。先にいかにもという感じの門があったから引き返してきた。門に耳を当てた限り、向こうで待ち構えてる」
「準備は如何ぞ?」
「やれる。ただ、後三回。そっちは?」
「既に2回も使っておるのだぞ・・・後一度が限度ぞ。」
「所詮小鬼の小細工、策を弄するまでもないであろうが…覚悟は決める必要があるか。魔術師は最後尾で、退路の確保を。」
「分かっているともぞ。厳しいようであれば一発ぶちかまして撤退ぞ。」
三人は慣れた様子で作戦会議を済ませる。
お互いに、部族にいた頃からの狩りも含めて何度も連携を重ねてきた。言葉は不要。