八幡「あぁ..今日もマッ缶が美味い。」
波の音を聞きながらマッ缶を飲む八幡。
八幡「この後の仕事..嫌だなぁ。ここでずっと過ごしていたいわ。」
天龍「アホか。仕事しろ。」
八幡「..なんでお前がいんだよ。」
いやほんとに意味がわからん。俺の事を嫌ってる天龍がここに来る理由とか..あ、イジメに来たの?
天龍「お前、俺とかを冷たくあしらうのは別にいい。だがガキども相手にあの態度はやめろよな。」
いやそんなつもりは..ってお前はいいのね。もしかして天龍Mなの?そんな情報手に入れたところで何の価値も無いわ。
八幡「もともとこんなもんだろ。大体極力接触なく仕事していくのが俺の方針だったろーが。それには皆賛成してたろ。」
天龍「まーな。でもな、あいつらは他人から受ける優しさを知らねーからよ、新鮮なんだよ。」
八幡「おいおい..。それじゃあまるで俺が優しい奴みたいじゃん。どこをどー見たらそんなふうに見えるんだよ。」
天龍「お前はクソだが前任のクソ野郎と比べたらかなりマシだろ。」
野郎があるかないかの違いって..そんなに変わらなくね?語彙力無さすぎなのか俺が前任とさほど変わらないのか..ま、どっちでもいいけどな。
八幡「俺より優しい人間なんざ数えきれないくらいいるぞ。そいつらと比べれば俺なんて..」
天龍「けどよ、今はお前が俺達の提督だろーが。俺達は他の人間がどんななのかはよくわかんねー。お前の言う通り他の人間はもっと優しいのかもしれない。けど、俺達の提督はお前だろ?」
まあそーなんだけどな。それでも俺がやらなかった方が、俺以外のもっと優しい人間が、ここの提督になればもっといい解決方法を見つけられたかもしれないだろ。
八幡「意外だな..。お前の評価がそこまで高いとは思わなかった。」
天龍「ガキどもが悲しい顔してるのを見たくねーだけだ。」
八幡「そーかよ。」
こいつは俺の為にここに来たわけじゃないのは最初から分かってはいたが、ここまで自分の為と言い切られるともはや清々しいレベルだ。ま、これくらい遠慮なしに来てくれた方が気が楽なんだろーけどな。
天龍「あぁ」
でもさ..一つだけ言わせてくれ。
八幡「お前、今日出撃の日じゃなかったか?」
天龍「......あ。」
あ。じゃねーよ!自分勝手にも程があるだろ..。
八幡「はぁ..もう分かったから、早く準備して行け。」
天龍「いや、でも話が..」
八幡「だから分かったって..お前が言いたい事。」
天龍「そ、そうか。なら行ってくるわ。」
八幡「お前..余裕ぶっこいてるけど、あと2分もねーぞ?」
天龍「アホ!それを先に言え!」
そう言って駆け足で去っていく天龍。
八幡「いやいや..何故に俺が悪くなってるの?おかしくね?」
冷たくあしらってるつもりは毛頭ないが..いつもより棘のある言い方をしていたのも事実。はぁ..どっちがガキだっての。勝手に決めつけて、自分が傷つきたくないから遠ざける。でもだからと言って、それで俺があいつらと仲良くなる理由にはならない。てかどーすれば仲良くなれるか全くわからん。ボッチには無理だろ
八幡「まぁ、でも前みたく馬鹿言い合えるくらいにはなれる..か。」
さて..仕事が溜まってるからな。戻るか..加賀今日出撃だし。
八幡「よいしょ..っと。」
今日も何事もなく平和に終わると..
天龍「おい!!!大変だ!!睦月達が!!!」
八幡「え..」
俺は走った。何かあったのかは分からないがとにかく走った。
八幡「はぁ..はぁ..何があった、んだよ。」
大淀「今日朝食後すぐに出撃していた、睦月、時雨、島風、加賀、榛名、計5名が出撃して数十分後に敵と遭遇。戦力差もあり、通信が妨害されていたとの事で援軍も見込めなかったようです。」
八幡「被害は..」
大淀「全員大破寸前です。特に酷いのは加賀さんかと。皆の盾になったらしく..」
八幡「..そうか。入渠ドックは空いてるか?」
大淀「空いてはいますが..気を失ったままドックに入れるのは..」
確かに..溺れたりするのか分からんが、色々危険ではある。
八幡「分かった。」
大淀「どうしますか?」
八幡「..各自持ち場に戻れ。出撃、遠征がある奴は行け。気にするな..なんて事は言わん。もし、任務に支障をきたすレベルで心配なら今日は休んでも構わない。」
大淀「..分かりました。皆にそう伝えておきます。提督はどうなさるんですか?」
八幡「こいつらが目を覚ますまでここにいる。こいつらがこうなったのは命令を下した俺が原因でもあるからな。」
大淀「..そんなこと」
八幡「なくても俺がそうしたいんだ。執務は任せるわ。」
大淀「..ホントは執務をやりたくないから、とかですか?」
と、苦笑気味に問う
八幡「はっ..かもな。」
死にはしないだろうし、傷も残らないだろう。それでも自分の見知った奴がこんなになってほっとける程俺は腐ってない。それに俺が出した命令でこうなったんだ。俺が傍にいるのは当然だろ
八幡「はぁ..マッ缶が美味くねーな。」
最悪の気分だ。
ーー数時間後ーー
時雨「ん..うぅ」
八幡「時雨?大丈夫か?」
時雨「提督..?なんで..あっ、他の皆は!?っ!!」
八幡「馬鹿..そんな急に起き上がるな。周り見ろ。全員無事だ。」
時雨「..そ、そっか。良かったぁ。」
八幡「起きたんならさっさとドック行け。傷..痛むだろ。」
時雨「..なんか気持ち悪いね。」
おい..俺の優しさを返せ
時雨「提督が優しい事言うなんて明日は雨かな?」
八幡「やめろ。明日はベストプレイスで飯が食えなくなるだろーが。」
時雨「え〜、そんな理由なの?」
八幡「自分の部下がこんなことになれば誰だって心配するだろ。」
時雨「んーそうなのかな?」
八幡「..もういいから入渠してこい。」
頭をガシガシかきながら気恥ずかしく言う八幡
時雨「..僕、今大破してるんだけど..」
八幡「知ってる。」
時雨「ふ、服が..」
八幡「....すまん!そんなつもりは全く..」
時雨「いいよ、布団にくるまって行くから。」
八幡「もし、他のやつが心配だったら高速修復材使ってこっちに戻ってきてもいいぞ?」
時雨「ううん。提督がいるならいいよ。」
その言い方だと俺がいるから嫌だ。みたいに聞こえるんですが、気のせいですかね?もしホントだったら八幡悲しい。
時雨「あ、別に悪口じゃないからね?提督がいるから安心だねってことだからね?」
八幡「あーはいはい。さっさと行け。」
時雨「はは...あ、入渠終わったらあのマッ缶?貰ってもいい?」
八幡「おう。いいぞ。美味すぎて泣くなよ?俺が泣かしたみたいになるから。」
時雨「そんな事言うと泣いちゃうかもよ?」
八幡「冗談だよ..。」
時雨「知ってるよ。それじゃ、後はよろしくね?」
八幡「おう。」
久しぶりに艦娘とこんな長く話した気がする。
そんな事を思いながら彼女達が起きるのをただただ待つ八幡であった。
肩凝りが酷くて嫌になますなぁ(白目)