--ーアルバート・レイノルズside---
1967年12月15日 イギリス サウサンプトン
【ジャーナリストアルバート・レイノルズによるサリー・バートンへの取材】
レイノルズ「バートンさん、本日はどうもよろしくお願いします」
サリー「ええ、お願いします」
レイノルズ「早速なんですが手紙で申し上げた通り、この写真の陸娘について取材したいのですが」
サリー「この子のこと?ええ、知ってるわ。いい子だったけど、不思議な子だった。私たちは第7師団第26戦車隊に所属していたの。第26戦車隊通称
レイノルズ「その陸娘とはいつあったのですか?」
サリー「最初配属されたのは、私、イザベル隊長、アニー、キャサリンの4人だったんだけど、とある戦闘の途中で私たちの戦車、まぁ『べス』って呼んでたんだけどね、べスに敵の砲弾が命中したの。損傷は軽微だったんだけどキャサリンが着弾の衝撃で車内の角に頭を思いっきり打ち付けちゃったのよ。本人は大丈夫だと言って戦闘は続行。勝利を収め基地に帰ったら、基地に帰った途端倒れた。軍医に診てもらったら脳挫傷を起こしてた。それでそのまま死んじゃった。そんなキャサリンと入れ替わるように配属されてきたのが彼女よ。」
レイノルズ「先程この陸娘は不思議な子だったと仰りましたがなぜそのように感じたのですか?」
サリー「新しい陸娘が配属になるという話を聞いた後、一応念のためその子の経歴を調べることにしたの。RMAの出身みたいだけど、どう見ても東洋人だし、英語も聞き取れなくはないがうまいってわけでもなかったの。だけどね、砲術、馬術、射撃、戦車の操縦は私たちの中でもトップクラスのうまさだったわ。あれはどう考えてもどこかで専門教育を受けてきたって感じだった。そして何より、僅かながらに海の匂いがした。」
レイノルズ「海の匂い?それはその陸娘が海軍軍人だったということですか?」
サリー「いいえ。本人はずっと陸軍にいたって言ってたわ。海の匂いがするというのも気のせいでしょうって。他にも家族のこととか自分の趣味とか色々教えてくれたけど、何度聞いても教えてくれないことがあったの。」
レイノルズ「どのようなことですか?」
サリー「彼女の過去のことよ。」
レイノルズ「彼女の過去?」
サリー「ええ、子供の頃にどんなことがあったのかとか、そういう事は教えてくれたけど、どこの生まれなのか。それだけは絶対に教えてくれなかった」
レイノルズ「何か彼女について覚えている事はありませんか?どんな些細なことでも構いません。例えば癖のようなものでもです。」
サリー「そういえば、あの子がいつも口癖のように言っていた言葉があったわ。昔知り合いの海軍軍人から聞いた教えだそうよ。自分は陸軍軍人だけど、この教えはとても気に入っているから覚えてるって言ってた。でもあの子はいつも、英語じゃない言葉でそれを言っていたわ。かなりうろ覚えだけどどんな風に言っていたかは覚えてる。確か・・・
"シセニモトルナカリシカ・・・ゲンコニハヅルカリシカ・・・キロクニカクルナカリシカ・・・ドロクニウラミナカリシカ・・・ブショニワタルナカリシカ"
確かこんな感じだったわ。」
レイノルズ「どういう意味なのでしょう?」
サリー「私も聞いたわ。教えてくれた。『真心に反する点はなかったか。言行不一致な点はなかったか。精神力は十分だったか。十分に努力したか。最後まで十分に取り組んだか』という意味なんですって。」
レイノルズ「(これは彼女へ繋がる大きな手がかりになりそうだ!)あの、本日はお忙しい中時間を取っていただきありがとうござました!」
サリー「あら、もうお帰りになるの?」
レイノルズ「ええ。彼女に関して色々な貴重な話がたくさん聞けましたし、まだこれから取材がありますので。それでは!」
サリー「ええ。お気をつけて。」
俺は車に向かった。車に乗ると俺は最初に見せた写真を見つめた。どこかの写真館で撮った一枚。そこには全身黒の服装をした女の子が写っていた。
イギリス陸軍第7師団第26戦車隊通称
長くの間イギリスの陸娘だけで構成されていたと言われていたが、そこに東洋人と思われる陸娘がいたらしい。
黄禍論が囁かれていたとは思えない事実だった。調べてみれば面白いかと思った。
今回の取材で海軍と何らかの接点があった事、彼女が持つ天才的な才能、そして彼女がいつも言っていたというあの言葉。これらを一つ一つ丁寧に調べあげていけばきっといつか彼女の正体にたどり着くだろう。
『Mon centre cède, ma droite recule. Situation excellente, j'attaque.
《わが軍の右翼は押されている。中央は崩れかけている。撤退は不可能だ。状況は最高、これより反撃する》』 ーフェルディナン・フォッシュ