第一次深海大戦   作:夜間飛行

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どうも夜間飛行です!

投稿がかなり遅れてしまいました!

今回はあきつ丸を主役に進めていきます。見知らぬ土地まで飛ばされたあきつ丸。そこで突きつけられる現実に彼女はどう向き合うのか。


霧の都

石炭を燃やした匂い。外を走る自動車の音で目がさめる。薄汚れた白い天井が目に入る。時計台の鐘の音が聞こえその大きな音が脳を覚醒させる。あきつ丸は起き上がり周りを見渡した。目に入る文字は全部日本語ではなく英語だった。顔も東洋人ではなく明らかに西洋人だ。

 

軍医「おっ、起きたのね。気分はどう?」

 

横須賀鎮守府の全員が外国艦の影響で英語、イタリア語などが理解出来た。

 

あきつ丸「大丈夫であります。それよりもここはどこでありますか?」

 

軍医「どこって、陸軍病院だけど?」

 

あきつ丸「陸軍?帝国陸軍に欧米人がいるなんて話は聞いたことがないであります!」

 

軍医「西部戦線に日本人の従軍看護婦がいるって話は聞いたことがあるけど前線止まりで英国本土に来たって話はまだ聞いたことはないわ」

 

あきつ丸「・・・ん?」

 

あきつ丸は兵士の話の中の一つの単語に引っかかった。

 

あきつ丸「どこの国だと言ったでありますか?」

 

軍医「へ?え、英国」

 

あきつ丸「なぜ英国軍が日本にいるでありますか!?それに英国軍は1941年の英国本土攻略作戦で壊滅したはずであります!」

 

軍医も大きな違和感に囚われた。

 

軍医「え?1941年?英国本土攻略作戦?何のこと?」

 

軍医(ちょっと待って子供の頃読んだ小説にこんな展開があったな。ちょっと試してみるか。)

 

軍医は子供の頃SF小説を読みあさっていた。そこで読んだ本の中に今のような状況の本があった。軍医はそれの真似事をすることにした。

 

「君、これからいくつかの質問に答えてもらうよ。まず君の名前と所属は?」

 

「自分は大日本帝国陸軍所属特種船丙型あきつ丸であります」

 

「あきつ丸さんね。ん?陸軍所属って言ったけどあなた艦娘よね?」

 

「自分は帝国陸軍が開発した世界初のドック型揚陸艦『神州丸』を発展させた揚陸艦なんであります」

 

「なるほどね。我々の敵は何ですか?」

 

「もちろん深海棲艦であります!」

 

「ところで今日は何年何月何日ですか?」

 

「1945年4月24日であります」

 

軍医は黙り込んでしまった。どうやら軍医の予想は当たったようだ。

 

「あきつ丸さん。落ち着いて聞いて欲しい。今は1915年5月21日です。」

 

「・・・・・・・・は?」

 

あきつ丸の思考が止まった。

 

(え?1915年?自分は確か演習場にいて雷に打たれて・・・みんなは?じゃあここはどこ?)

 

「あ、あの!ここは・・・ここはどこでありますか!?」

 

「ここはロンドンよ。アーサー・ウェルズリー陸娘専用陸軍病院。あなたは一週間前テムズ川に浮かんでいるのを発見されたの。それで艤装が展開されていたから艦娘だろうということで一度海軍に引き取られたの。だけどこの戦争でどこの海軍病院も満員らしいのよ。それでとりあえず陸軍で預かっておくことになったってわけ。それで、問題はこれからのあなたの処遇についてなのよ」

 

「何か問題があるのでありますか?」

 

あきつ丸は恐る恐る聞いた。すると軍医は悲しげな顔を浮かべてこう言った。

 

「・・・さっきも言った通りあなたはテムズ川に浮かんでいた。つまりそれは艤装が機能してなかったってこと。それでね、海軍のほうで修理はできないかってことになったんだけど妖精さんたちが言うにはね、あなたの艤装とこの時代の艤装は根本的に構造が違うものらしいの。だから修理は・・・不可能だって」

 

「そんな・・・」

 

あきつ丸は底知れぬ絶望感に襲われた。その時ドアをノックする音が聞こえた。入ってきたのは白、ではなく黄土色の軍服を着た男だった。

 

「お目覚めですかなお嬢さん?」

 

「あきつ丸であります」

 

お嬢さんと呼ばれたのが気に入らなかったのか訂正するあきつ丸。

 

「これは失敬。私の名前はアラン・マクフィールド。陸軍参謀本部所属です。あきつ丸さん率直に申し上げます。どうか我が陸軍に協力していただけないでしょうか?」

 

このアラン・マクフィールドという男。普段はプライドがとても高いのだが、頭を下げなければいけない時はしっかりと頭を下げる。そう言った男なのだ。

 

あきつ丸はこれでも人を見る目は持っているつもりでいた。だからこそわかった。この人は本気で頭を下げているのだと。

 

いうまでもないが艦娘が陸軍に移籍する場合、陸娘か空娘のどちらかに変更になる。基本的には構造は同じなので艤装が使えれば他のも使用可能である。しかし我々人間も急に職場が変わるというのは困るどころの話じゃない。そしてそれは艦娘にも言えることだった。

 

「もちろん決定権はあなたにあります。急に環境が変わるのも困るでしょう。1週間期限を用意しました。その間じっくり考えて答えを出してください」

 

マクフィールドはそう言うとゆっくりと立ち上がり部屋から出て行った。出て行くと5月のさわやかな風が病室に吹き込んだ。

 

6日後

 

あれからずっと考えているが一向に決意が固まらない。あきつ丸は艦娘ではなくなる恐怖と闘っていた。そうしていると扉がそっと開く。

 

「随分と悩んでいるみたいね」

 

軍医が入ってきた。そして具合は続けて言う。

 

「少し外の空気を吸ってきたら?ここら辺ならハイドパークがいいわ。噴水があって野鳥やリスなんかもいるしいい場所よ?行ってくるといいわ。頭の整理もつくだろうし少し位ロンドンになれたほうがいいと思うの」

 

「そうでありますな。ではお言葉に甘えて。それでどうやって行ったらいいのでありますか?」

 

「ここを出て右に少し行ったところにバス停があるの。そのバス停で車体に26番って書かれているバスに乗って。それがハイドパークに向かうバスよ。まだ時間はあるはずだからゆっくり向かうといいわ。それに乗って5つ目のマーブルアーチというところで降りて。それで!あなたお金持ってないでしょ?ほらお金。」

 

「ありがとうございます!では行ってくるであります!」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

あきつ丸が部屋を出て行こうとすると軍医が何か思い出して呼び止めた。

 

「『イーストエンド』へは近づかない方がいいわよ」

 

「イーストエンド?」

 

「ロンドンの吹き溜まりのような場所よ。貧しくて犯罪率が高いの。戦死した兵士の遺族の恨みも強くて。もしかしたら殺されるかも・・・」

 

「わかりました。では行ってくるであります!」

 

あきつ丸は病院を出るとバス停へ向けて歩き出す。街行く人は女性が目立つのを除けばさほど大戦を感じさせず、平和な時間に包まれていた。

 

 

 

『平和そのものは仮面をかぶった戦争である』 ―ジョン・ドライデン

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